インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~   作:ガーネイル

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 いつもより短いです。
 少しスランプ気味ではあります。


臨海学校編
15.寧と買い物


 あれからすぐにシャルルは部屋を変更することになり、今、エミルには同室者はいない。とりあえず、あれから数日が経過し、臨海学校の前である。エミルにとって初めての体験が近づきつつある。

 日が部屋に入り、その明るさで目を覚ますエミル。体を起こそうとするが、足の部分に何か重さを感じて何が乗っているのかを確認した。その瞬間、パニック状態に陥る。なぜなら、には全裸のラウラが猫のように丸まって寝ていたのだから。飛び上がり、距離を取る。

 

 

「え! ボーデヴィッヒさん!? どうしているの!!」

 

 エミルの声で目を覚まし、未だに眠そうな目をこするラウラ。

 

 

「夫婦というのは同じ部屋で寝ると聞いた」

「この前から急にどうしたの?」

 エミルは戸惑いながらラウラにそう質問する。

 

「日本では気に入った相手のことを俺の嫁というのだろう?」

 質問に対し質問で返すラウラ。

「そんなの聞いたことないよ! って、いいからこれで体を隠して!」

 

 

 エミルがラウラに布団をかけようとした瞬間扉がノックされる。

「エミル?」

 

 ノックしたのは寧だった。エミルの頭の中には警報が響き渡る。とりあえず、いきなり部屋に入られるのを防ぐ。

「寧!? どうしたの?」

「ちょっと相談があるんだけど……。入っていい?」

「えっと、ちょっと、それは……困るかな」

「どうかしたの?」

 

 

 エミルとしては言えない。ここに全裸になっているラウラがいるとは何があっても言えない。下手したら○○が死んだ! この人でなし! なんてことになりかねない。強制的に何とか道場に行くことになるのは間違いない。急いでなんて答えるか考えるがとてもじゃないが、いい案は出てこない。

 

「? ……入るよ」

 

 努力は無へと還り、無情にも扉は開かれる。エミルの頭の中に出てきたのは終了の二文字。

何も知らない寧がエミルの部屋で目撃してしまったのはラウラに布団をかけようとするエミル。どこからどう見ても誤解しか招かない。むしろただの事後のようにしか見えないような気もする。

「エミルーー!!」

「誤解だぁ!!!!」

 部屋の中にはエミルと寧の叫び声が響き渡った。

 

 

 

 

 ラウラが部屋に戻り、寧の誤解を解いたところで本題に入る。

「えっと、それで相談って?」

「セシリアちゃんとか一夏とかいつ新生ラシェーラに連れて行く? って言うのと臨海学校に行くから買い物に付き合ってほしいぁ……なんて。ダメかな?」

 寧は後半照れながらそう言う。エミルは少し考えるしぐさを示す。

「夏休み中でいいんじゃないかな。長期休暇だし長めに滞在出来ると思うし。買い物は僕でいいなら付き合うよ」

 

 エミルは笑顔でそう言う。寧もその返事に笑顔になる。

「寧はもうここら辺を散策した?」

「うーん、してないかな。ほら、覚えることも多かったし」

「お店の場所とか分かる?」

「実は……全然分からないんだ」

 

 照れ笑いのような笑みを浮かべる寧。エミルは一度頷き、言う。

「了解、じゃあお昼ご飯を食べたら校門に集合でいいかな?」

「うん! じゃあまた後でね」

「また後で」

 

 

 寧はそう言ってから走って部屋に戻っていく。エミルは見送った後、簡単な食事を作る。今はシグルムとフェンリルもいないため、用意するのは一人分である。

 少し味気ないかな、と思いつつ久しぶりに一人で食事を取る。食べながらエミルは思った。やっぱり、一人で食べるより、誰かと食べたほうが美味しい。

 食器を片づけてから私服に着替えて他の身支度を終わらせる。校門に向かうと既に寧が待っていた。エミルは寧の服装に見覚えがあった。まだ、寧がイオンとして生活していたとき。デルタの母親であるルウレイから借りた服、リンカージェン。寧が来ている服がそれに似ていた。

 

 

「あれ? その服って確か……」

「うん! ルウレイさんから借りた服に似てるでしょ? せっかくだから着てみたんだ。……どうかな?」

 

 寧は、懐かしそうにでも、嬉しそうにそう言う。

 

「うん。大丈夫、似合ってるよ」

「よかった。エミルもその服、似合ってるよ」

 

 

 

 エミルは黒い七分丈のパンツに白の半そでTシャツ。その上には淡めの青いリネンシャツを着ている。……もっとも蛇足ではあるが、これを買ったのは春先にセシリアと出かけたときである。

 

「ありがとう、寧にそう言ってもらえて嬉しいよ。それじゃあ、早速行こうか」

「うん!」

 

 寧はエミルの左隣を一緒に歩く。

「どこに買い物に行くの?」

「僕も前に一度言っただけなんだけど、大型ショッピングモールのレゾナンスに行こうと思ってね。きっと気に入るんじゃないかな? さすがに真空管とか寧が好きそうなものは置いてないと思うけどね」

 

 

 言い方は悪くなるが、以前エミルがセシリアに連れまわされた場所である。

レゾナンスにはフードコートやら、雑貨、衣服、食品等々。あらゆるものが売っている。もっとも寧が好きそうなものが置いてあるかと言われたら首をひねることになりそうだが……。今回の目的としては十分だろう。

 

「むぅ……。そんなにいつも機械中心なわけじゃないんだからね。本当だよ?」

 

 むくれながら寧は言い訳を言うような感じでそう言う。エミルはそれがおかしくて思わず笑みがこぼれる。

 エミルは笑みを絶やさず口を開く。

 

「そういうことにしておくよ。それより何を買うのかもう決めてある?」

「臨海学校用の水着とか日常品とかだよ。水着はエミルに決めてもらってもらおうと思って」

 

 寧はコロコロと表情を変えながらエミルにそう告げる。でも、その姿はラシェーラにいた時のように自分を偽っている訳でなく、自分が思うように行動している、心から楽しいと思っているものに見える。

 

「それはいいんだけどネロはよかったの?」

「うん、ネロは他の友達と一緒に行ったみたい」

 

 エミルは、そっか、とだけ返事をして会話が途切れる。

 それからしばらくして寧が何を言おうと口を開いては閉じることを繰り返している。なお、エミルがそれに気付かない。そして寧が意を決して口を開いた。

 

 

 

 閑話休題。

 そして後方に物陰に隠れながらその様子を窺っている3人がいた。セシリア、シャルロット、鈴である。三人とも共通して瞳からハイライトが消えているところ、今にも人が殺せそうな雰囲気を醸し出しているところが怖い。

 そこにラウラが通りかかる。

 

「む、お前たちはそこで……」

 

三人に声をかけようとして彼女たちの視線の先にいる人物を見る。ラウラの視界にエミ

ルと寧が入る。ラウラは堂々と二人の後をついて行こうとする。

 

「あんたは!? こんなところで何してんのよ! っていうか今、何をするつもりだったの」

 

 鈴がラウラの首根っこを掴み引き寄せる。が、ラウラは意に反さず、さも当然のように反論した。

 

「そんなの尾行に決まっているだろう。情報は大事だからな。うん、情報大事、超大事」

 

 ラウラにとって大事なことなのか頷きながら三回同じことを繰り返し言った。情報は大事という言葉に感化されたのか、セシリア、鈴、シャルロットは雷に撃たれたようなリアクションを取る。

 そして四人は目を合わせ頷きあい、エミルたちの後を追いかけていった。

 

 

 

 

 エミルと寧は目的地であるレゾナンスに到着した。寧はレゾナンスにいるのが初めてだから辺りを見回している。それに人が思いのほか多いのが原因なのか妙に落ち着きがなく、そわそわしている。

 

「ここがレゾナンスだよ。どこから見たいとかある?」

「うーんとね、とりあえず色々見て回りたいな」

 

 寧が辺りを見回しながらそう言う。

 エミルが少し考えてから上から順に見て降りていくことにする。エミルは寧を連れて最上階である四階まで連れて行く。

 三階から二階に降りようとする時に寧が声を上げる。

 

「待って、あそこのお店に行きたい」

 

 そう言って寧が指を指したのは水着販売店だった。それが分かった瞬間、エミルの頬が引き攣る。何とか自分は回避しようと抵抗を始める。

 

「えっと、僕はお店の外で……」

「駄目だよ、着いて来てくれるって言ったのはエミルだよね?」

 

 エミルが全部言い切る前に寧が言う。寧のあまりの迫力にたじろくエミル。その迫力は一度見たことがあるものだった。それはラシェーラを旅している途中でジェノメトリクスに入った時でレナルルを痛めつけた時に似ている。だから既に引き攣っている頬がさらに引き攣る。

 

「そ、そうだけど……」

 

 それでもエミルは逃げようとするのは諦めない。なおも、抵抗を続ける。が、生憎と言うべきか、その抵抗は失敗に終わる。

 

「ならいいよね? それにね……私はエミルに選んでほしいな。ダメ……かな?」

 

 さっきまでの迫力はどこまでに行ったのか、急にしおらしく寧。しおらしくなった寧に負けてエミルが折れる。

 

「……分かったよ、一緒に見よう」

 

 それを聞いた寧は笑顔になる。元の世界では魔物の王と呼ばれる精霊も女の子のお願いには勝てないらしい。

 寧はエミルの手を掴み、水着ショップの中に入っていく。エミルの言葉は半ば仕方ないというような思いやそれ以上の想いが込められているように感じる。言葉以上に浮かべている表情は楽しそうなものだった。

 

 

 買い物を終えた後、二人は海岸沿いのベンチでクレープを食べながら休憩していた。太陽はすでに傾き、暗くなり始めている。

 

「エミル、ありがとう」

「?」

 

 急に寧にエミルは何のことか全く分からず首を傾げている。

 

「今日のことだけじゃなくて、今までのこと全部。ねりこさんの世界にいる時、ソレイルを旅している時。ずっとあなたはわたしを助けてくれた。あなたがいてくれたお蔭でわたしは今、ここで生きていられるの。あなたがいなかったらきっと私は向こうの世界で生きていたはずだから」

「気にしなくていいよ。僕がやりたくてしたことだからね」

「ううん。それでも言わせてほしいの。本当にありがとう」

 

 その言葉を言い終えると同時に太陽が沈みきる。

 

「どうもいたしまして。……もう遅いし帰ろうか」

「うん!」

 

 こうしてエミルと寧の買い物は終わった。

 

 

 そして翌日。臨海学校当日。 この時、エミルたちはまだ知らない。自身たちの身に何が起こるのかを。そして二度とない邂逅をすることになるのを……。

 

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