インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~   作:ガーネイル

21 / 25
 すいません、就活がなかなか思うように上手くいかず未だ手間取っています。
 暫く不定期になる可能性が濃厚です。


17.天才(天災)との邂逅。そしてその間……

 一日目の夜。エミルたちは夕食を食べていた。一夏の隣には箒が座り二人で楽しそうに食べている。一方、エミルの右隣にシャルロット、反対側にセシリアが座っている。ラウラはテーブル席で鈴と寧はクラスが違うため別の場所で食べている。この場にいるのは一組の生徒だけだ。

 セシリアは慣れない正座で足が痺れたのか少し落ち着きがない。エミルが少し落ち着きのないセシリアに気付く。

 

「セシリア、どうかしたの?」

「い、いえ。何でもありませんわ」

 

 気丈に強がるセシリア。必死の思いでエミルの隣をゲットしたのだ。ここで離脱してどこの馬の骨ともしれない女子にエミルの隣を取られるわけにはいかなのだ。それを知らずにセシリアの右側に女子がセシリアの足をつつく。

 痺れている足をつつかれたセシリアは反射的に反応してしまい、体勢を崩す。それを受けとめるエミル。

 

「セシリア、大丈夫?」

「は、はひぃ」

 

 

 エミルに抱き留められたセシリアは茹蛸のように赤くなっている。元の体勢に戻ったが、一向に食事に手を付けない。それを見かねたエミルが声をかける。

 

「セシリア、はい」

 

 エミルは箸でセシリアのお皿の上にあるお刺身を掴みセシリアの口元に持っていく。セシリアはワタワタとしながらもそれを口に入れる。それにより、周りの女子たちが騒ぎ出す。その瞬間、エミルの後ろにある扉が勢いよく開かれる。扉を勢いよく開いたのは……。

 

「馬鹿者! 何をそんなにはしゃいでいる!」

 

 千冬だった。その横には真耶が経っている。千冬の目線がエミルと一夏を順番で見る。そしてもう一度エミルを見る。

 

「キャスタニエ。食事は静かにしろ」

「はい、すいませんでした」

 

 エミルの謝罪を聞いた千冬は再び戻っていく。もう一度セシリアに食べさせて騒動になるのを回避したいエミルは謝罪してそれをやめる。

 エミルは代わりに学校に帰ったら手料理を振る舞うということで手打ちにする。その後、エミルはセシリアやシャルロットと楽しく会話しながら夕飯を食べた。

 そして、夕食後。エミルは千冬に許可を取り、一人で旅館付近を散歩している。

 

(おい、近くに誰かいるぞ)

(うん。分かってる)

 

 エミルは気付いていないふりをして散歩を続ける。

 そしてたどり着いたのは夕食の前まで遊んでいた砂浜。波打ち際まで歩き、エミルは後ろにいるだろう人物に話しかける。

 

「一体、僕に用でもありますか? 篠ノ之 束(しののの たばね)博士」

「やっぱり気付いていたんだ」

 

 エミルは振り返る。そこには機械で出来たウサ耳をつけ、なかなかファンシーな恰好をした女性がいた。その女性こそ、IS開発者である天才・篠ノ之束。

 束はエミルが気付いていることに気付いていた。でなければ、エミルもこんなところに来ないはずだ。

 エミルと束は無言で見合う。そして口火を切ったのは束だ。

 

「お前は何?」

 

 その言葉には一体どれほどの意味が込められているのだろうか。それは束にしか分からない。エミルからすると束がどれくらいの情報を持っているのかが分からない。エミルは逆に質問する。

 

「なんだと思いますか?」

「ただの男じゃない。それは分かる。いっくん以外にいないはずの男性操縦者。そして突然、現れたかのよう出来た、エミル・キャスタニエという戸籍。何か裏があるはずだ。一番最初に考えたのはあるかも分からない異世界の存在。だけどそれには確証はない。もしくは学園の生徒、結城寧に関係があるかもしれないとも考える。彼女が学校に通いだした前後にお前が現れたのだから」

 

 束の考察は真実から遠からずといったところだ。そして結城寧と何かしらの関係があるというのもある意味当たっている。彼女の記憶を復元させ、ラシェーラという七次元先にある世界から地球に帰還させたのは他ならぬエミルなのだから。

 そしてエミルには本当のことを言うことだけしか道は残されていない。何故なら束は最初から言う言葉を信じているわけではないからである。天才だからこそ分かるもある。だが、束の考察は足りていない部分がある。それはエミルが必ずしも人間ではないということだ。

 

「そうですね、あなたの考察には驚きました。ですが、まだ一歩足りないですね。あなたの考察通り、僕は異世界の住民。ですが、僕は人間ではなく、精霊です」

「その証拠は?」

 

 束が証拠の有無を聞き出すのも当たり前だ。目の前にいるのは確かに人間だ。だというのに人外だと言う。異世界なら地球の常識は通用しないのかもしれない。だが、神話一つ持ち出しても人外には共通しているものがある。それは人間といくら似ている種族がいても何かしらの特徴があるということだ。エルフなら長い耳、獣人なら獣耳や尻尾。小人なら小さすぎる。巨人ならその逆だ。必ず人外というのは人間と違うものがある。だが、今、束の前にいるエミルは普通の人間にしか見えない。

 

「僕の記憶、見てみませんか?」

「そんなことが出来るとでも言うつもりかい?」

「はい、僕のこれをあなたのISと繋げば見れるはずです」

 

 そして束は知る。エミルの人となりを。過去を。彼が体験してきた全てを見る。だからこそ、束はそれを信じる。信じることが出来る。なぜならエミルが体験してきたそれらは決して紛いもので誤魔化せるものを超えているからだ。

 その結果、束にとってエミルは興味のある存在、いわゆるお気に入りの存在に変わる。

 

「なるほど、エーくんは結城寧ともそういう繋がりがあったんだね」

 

 この場にいない寧も有象無象からお気に入りへと変わる。それは当然と言えば当然の帰結独学で異世界へと物質を転送する機会を作ったのだから。

 ただ、エミルは束の変わりように呆気にとられている。

 

「エーくん?」

「うん。エミル・キャスタニエだから、エーくん。あ、私のことは束さんでいいよ」

「なら、分かりました。束さんにお願いしたいことがあります。僕と寧のISを通して体験したものを映像にできるものを作れますか? もしかしたら使う時が来るかもしれないので」

「モーマンタイだよ。束さんに任せなさい! それじゃ、また明日ね。アデュー!」

 

 束が手を振りながらこの場を去っていく。

 束が去ってから少し経ってから一夏がやってくる。まるで束が去ったタイミングは一夏が来るのが分かっていたかのようだった。実際のところ知っていてもおかしくはない。何故なら彼女は自他ともに認める天才であり、天災なのだから。

 

 ************

 

 海辺でエミルが束と話している最中のことだ。一夏は部屋で千冬にマッサージをしている。そして盗み聞ぎしている少女が六人。千冬からは艶やかな声が時々漏れ、聞き耳を立てている少女たちは顔を赤くしている。そして急に扉が開かれ、部屋へと流れ込む。少女たちが見上げると呆れたように千冬が立っていた。

 

「何をやっているんだ、お前たちは……」

「「「「「「ははは…………」」」」」」

 

 少女たちは苦笑いを浮かべるしかない。その後、少女たちは千冬を囲うように座る。千冬は一夏に散歩に出ているエミルを誘って温泉に行ってこいと命令して、一夏は「あぁ」と一つ返事で部屋から出ていく。

 一夏が出て行ったのを確認してからおもむろに立ち上がり、冷蔵庫へと向かう。ビールを一本とジュースを六本取り出し、座っていた場所に戻る。ジュースを少女たちの前に置く。

 どういう真意なのかを測りかねる少女たちは顔を見合わせながら戸惑っている。

 

「どうした? お前らも好きな物を飲め」

「はぁ……」

 

 呆気にとられたように反応してから各自飲み物を手に取る。そしてそれを確認した千冬は悪戯に成功したような意地の悪い表情を浮かべている。

 

「これでお前たちも共犯だな。まぁ、それはそれとして本題に入るとしよう。この中で一夏に惚れてるやつは? 次にキャスタニエに惚れてるやつは?」

 

 真面目な顔して弟とその友人のことを聞く千冬。一夏に惚れているというので手を挙げたのは箒のみ。そしてエミルに手を挙げたのは、セシリア、シャルロット、ラウラ、寧の四人。鈴はどちらにも手を上げない。鈴の表情には悩みが浮かんでいた。千冬は鈴に質問する。

 

「なんだ、お前は昔、一夏が好きだっただろう?」

「はい。でも、今はよく分からないんです。確かに一夏のことは気になります。でもエミルのことも気になっているんです。私はどっちのことが好きなのか分かりません」 

 

 千冬は「そうか」と短く呟き、もう一口ビールを飲む。

 

「それで、お前たち、あいつらのどこがいいんだ?」

 

 それは一夏、もしくはエミルのどこに惚れているのかということである。箒、セシリア、シャルロット、寧、ラウラの順で答えていく。

 

「わ、私は、別に……以前より腕が落ちているのが気に食わないだけですが……優しいところです」

「エミルさんが奥底に持っている強い心、彼の側にいると安心できるんです」

「優しくて包容力があるところかな」

「人のために一生懸命になれるところです」

「つ、強いところ、でしょうか……」

 

 

 各々が思っていることの一端を零す。千冬は少女たちの想いを聞き押し黙っている。一度頷き、小さく「なるほどな」とこぼす。

 

「……いずれ本人から聞くことになるだろう。本当のことは本人が話すのを待っていてあげろ。そしてこれを信じる、信じないもお前たち次第だ。それでもキャスタニエのこと聞きたいか?」

 

 エミルがいないところでエミルのことが話されようとしていた。でも、千冬が知っているのはエミルの一端のみ。多少の差異はあれど一端を知っているのはこの場に二人存在する。それは鈴と寧だ。

 鈴は無人機・魔物騒動の後に、寧は地球に戻る前までいた世界を旅している間にそれを知った。だが、それを知らないセシリアとシャルロット、ラウラが頷く。

 

「あいつはこの世界の人間ではない。異世界からイレギュラーな存在だ。故にあいつのISも完全にオリジナルのもの。そしてあいつは私よりも強い。いや、正確に言うならばこの世界で一番強い。あいつのことを一言で表すなら『未知』だろうな」

 

 未だ知らずと書いて未知。それは当然だろう。なぜなら己の知らないことは誰も知らないことが多いのだから。だが、鈴と寧は知っている。異世界で人間ではなく、精霊であることも。

 千冬は、エミルが世界で一番強いと言い切った。その根拠はどこにあるのか。それは四月にあった無人機の騒動だ。エミルは生身で無人機とは別にいた二体の魔物を同時に戦っていたからである。人の体より大きな生物で一体は陸、もう一体は空。これらを同時に相手にするのは難しい。

 だが、エミルからすればそれくらいは出来て当たり前だった。なぜなら魔物と戦うのが普通の世界だったからである。エミルからすればこの世界はものすごく平和なのかもしれない。女尊男卑という差別を抜きにすればという条件もつくが。

 今の話を聞いて納得できる人物がいた。それはセシリアだ。彼女も彼の一端を何回か垣間見ている。一回は代表決定戦の時。二回目は魔物騒動の時。そしてラウラから守ってもらった時。いずれも彼なら大丈夫だという根拠のない安心感があった。もし、それが彼の経験から溢れ出るものだとするなら千冬が言う『世界で一番強い』という言葉も納得できる。

 千冬は言葉を続ける。

 

「だが、あいつはどうも自分で全てを背負い込む癖があるようだ。だから一緒に背負ってやる必要があるのかもしれないがな。……さて、今の話はここだけのもので一切の他言は無用だ。もちろん本人にもだ。キャスタニエから話してくれるのを待ってやれ。そうだな、全て受け止めた後で逃げないように捕まえとくのが得策かもしれないぞ。キャスタニエも一夏もな。自分を磨けよ、小娘ども」

 

 最後にそう言った千冬の顔は楽しそうだった。

 

 ************

 

 

 エミルは一夏と旅館に戻り温泉に入っている。完全にリラックスしているのだが、エミルには懐かしい出来事を思い出していた。それはまだ旅をしていた時の話。エミルが温泉に入っている時に、マルタが看板を立てて誰も入ってくれないようにしたのだ。エミルが余りの驚きで大声を上げてしまい、ロイドたちが中に入ってくる。それにより、ロイド以外からはまるで蔑むかのような目で見られ、ロイドからは何故か同情された。そんなことを思い出したエミルは頭を振る。

 前回はそれがフラグとなって当時、男子と偽っていたシャルロットが大浴場に入ってきた。だが、さすがに今回はフラグは立たなかった。

 頭を振っているエミルを見てを一夏は話かける。

 

「エミル?どうかしたのか?」

「ううん、何でもない」

「そうか? それにしてもやっぱり温泉って気持ちいいな」

「……そうだね」

 

 一夏とエミルはお湯に浸かりながら空を見上げる。見上げた空は満点の星空だった。それはシルヴァラントやテセアラ。ラシェーラでも多少の差異はあれど地上から見える星空は美しかった。

 

 ただ、エミルには妙な胸騒ぎを感じていた。臨海学校はこのままじゃ終わらない。何か大きなアクシデントがあるかもしれない。そんな予感がしている。

 エミルは星空を見ながら一つ覚悟を決める。例えそれが、皆から避けられる原因になろうとも全力で皆を守ると。

 

「もしものときは頼んだよ、ラタトスク」

 

 ISはエミルの言葉に応えるように鈍く輝く。

 エミルの予感が現実になるのはそう遠くない。

 戦いが始まり、エミルが自身の全てを告げるまで残り……時間。




 就活が終わらないぃぃ…………。もう嫌だ。
 二次創作を書く時間が欲しいし、オリジナルを書く時間も欲しい。でもバイトでお金も稼ぎたい。色々と多すぎて死ねる……。

 という訳で、束さんの口調が良くわからん……。まぁ、いいや。

 3ヶ月ぶりの更新になるのか……。申し訳ないですがまだ不定期が続きそうですが、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。