インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~   作:ガーネイル

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21.終戦/真実

 少しずつ陽が昇り始める。

 朝焼けで淡く色づいて行く世界に白、紅、黒、銀。四つの閃光が高速で入り混じる。

 福音が距離を取ろうとするが、それを鈴とシャル、ラウラが許さない。三人の後方から核装備で狙撃する。それに対応しようと動くがそれより素早くセシリアのBT兵器と寧のESカソードから放射状に弾丸が発射される。

 動きを止める福音に一夏と箒が飛びかかる。が、それら一つ一つに対し器用に反応する。

 背後から近づくエミルにも対応し、反撃する。

 

 箒が単一能力である絢爛舞踏を発動させながらサポートに回るが、それ以上にこの場にいるほとんどが体力の限界が近づいていた。

 福音が上空へ離脱しながら全方位に攻撃を仕掛ける。これに対し取れる選択は防御だけしかないだろう。安全圏への回避は間に合わない。

 エミルはそれに合わせるように単一能力を発動する。左半身を前に出し、剣を逆手に持ち替えると剣に光が集まりだす。

 

「アイン・ソフ・アウル!」

 

 剣を前へと振り抜くとその線を縫うように光が帯状に飛んでいく。エネルギー弾は全てそれの前では無へと帰す。

 エミルは一夏と箒にもう一度攻撃を仕掛けさせる。それに合わせるようにもう一度動く。

 

「箒!」

「あぁ!」

「……La!」

 

 一夏と箒は福音に入っている罅の部分を狙う。それを分かっているはずならば回避が正しいだろう。だが、二人の攻撃に対し回避ではなく防御を選ぶ。

 その瞬間一夏が口角を上げる。

 

「エミル、今だぜ!」

「任されたよ! 秋沙雨!」

 

 瞬時加速を用いて接近し、加速した状態で突きによる攻撃を連続で行う。

 最期の一撃がESを削りきったのか福音が解除され、搭乗者が投げ捨てられる形で自由落下状態に入る。だが、エミルがそれを受け止める。

 位置の問題でエミルは正面からではなく少し下の方から突き上げるような形で攻撃していたのだ。そのため、すぐに受け止めることが出来たのである。

 銀の福音暴走事件はこうして幕を下ろしたのであった。

 

 全てのことを終えた後、エミルたちは花月荘の前に仁王立ちしていた千冬の説教を受けている。

 

「これで作戦完了と言いたいところだが、お前らは作戦違反を起こした。学園に戻り次第反省文の提出と懲罰用のトレーニングを用意しておくからそのつもりでいろ。しかし、まぁよくやった。全員よく帰ってきたな。今日一日良く休め」 

 

 言葉は少ないが千冬から称賛の言葉があまりにも予想外で8人は呆けたが、各国の代表候補生たちと一夏はその言葉に喜び、エミルと寧は性格が全く違う、ただ素直になれないという点で似ているあの世界の少女の姿を重ね、クスリと笑顔をこぼした。

 

***********************

 

 

 その日の夜。エミルは専用気持ちとラシェーラ組、そして千冬、真耶たちに全てを話すことにした。生涯を共にした少女との約束を果たすその第一歩として。

 そして今、その全員がエミルの元に集まっていた。

 

「それで、キャスタニエ。私たちに話とは何だ?」

 

 この場で最初に口火を切ったのは千冬だ。そしてエミルは一つ深呼吸をして全員と向き合う。

 

「この場にいる皆さんにはこれ以上隠し事をするのはやめようと思います。今から見るてもらうものは全部実際にあったことです」

 

 エミルは寧に事情を話し、とある端末を借りていた。そしてその端末とISを接続させる。そしてその機械はこの場に居る全員を包み込み、ユメセカイへと誘った。

 

 まず始めに一夏たちが見たのはとある港町での暴動。そして目の前で両親を殺されるというところから始まった。叔父に引き取られ、そこで生活しているエミルはとてもじゃないが、同一人物とは思えないほど気が弱く、オドオドしていた。

 そして長髪の青年・リヒターとの出会い。この男性との出会いがある意味全ての始まりだった。

 

『勇気は夢を叶える魔法。昔、頭のネジの弛んだ『人間』がほざいていた台詞だ』

 

 シャルロットはこの青年の言葉にハッとした。それはつい先日、エミルの口から告げられたモノと全く同じモノだから。

 『エミル・キャスタニエ』という人間のルーツはここにある。

 少女・マルタとの出会い、そしてラタトスクとの契約。それにまつわるモノを目覚めさせる為の旅。再生の巫女やその仲間との出会い。エミル()ラタトスク()の乖離。そしてエミル・キャスタニエと言う少年の正体。彼の旅の結末とその終着点。それらを経て、その後の生活とこの世界に来てからの行動と想い。

 彼は、きっとこの場に居る誰よりもずっと大人で、心身ともに、強く優しく誰か(ひと)を思いやることが出来る男性。ただ、寧を除いた皆に対して、何となくラインのようなモノが引かれていた。あと一歩を踏み込ませない防衛線。その線は自分が精霊であり、この世界の人間ではないこと。そしていずれ元の世界に帰るということ。これらのことを寧はあの世界(ラシェーラ)で知っている。だが、一夏達はそれを知らない。千冬も鈴も真耶も知っているのはこの世界人間ではなく、精霊であること。だが、これらはエミルが引いた線の中で話せるギリギリのモノ。ある意味当たり障りのないもの。

 最後に映ったのは福音に堕とされた後、エミルの中であった出来事(仲間との再会)。そして映像が白くなっていく。誰もがこれで終わりだと思ったが、終わる前に紅い目のエミルが一夏達の目の前に現れる。というより別視点での記録。

 

「あいつのことはよろしく頼む。あいつには優しすぎるところがある。だけどそれはただの甘さ(弱さ)じゃないんだ。誰よりも他人のことを思えるやつだ。過去に俺のフリをしてあいつらに倒されて鍵になろうとしたように自分を犠牲にしようとするだろう。今回みたいにな。だから、そんなあいつを支えて助けてやってくれ。……お前達と過ごした時間は楽しかったぜ。それじゃあな」

 

 そう言って今度こそ映像が終わり、現実へと戻るような感覚がある。

 少し不思議な感覚の中、寧を除くこのメンバーの中では付き合いの長い方であるセシリアは思った。良かったと。自分が彼を好きになったのは間違いではなかった。自分が好きになった殿方はこんなにも人を思いやることが出来る男性なのだと。誰にも負けない強さ()を持っている。きっと今ほど想い、焦がれる男性はこの先ずっと出会うことはないのだろうと、そんな予感さえある。この胸に宿る熱い想いはとても「好き」という簡単な言葉で片づけていいモノではない。

 

(あぁ……。私はエミルさんに恋をしているのでなく、彼を愛しているのですね)

 

 

***********************

 

 機械が開き、目の前の景色が旅館の部屋に戻る。そしてこの部屋の中を沈黙が支配する。そして、この沈黙をエミルが破る。

 

「これが、僕の『エミル・キャスタニエ』という人物の全てです。僕は今のを見せた上であなた達が良しとしてくれるのであれば、これからも一緒に過ごしていきたいと、そう考えています。きっと、頭を整理する時間も必要だと思います。なので、明日、この旅館を出る前に考え抜いた答えを教えてください」

 

 そう言ってエミルは一度部屋を出ていく。夜ではあるが宿を出て砂浜を歩く。ここだけの話。あの場にいるのが怖くなったのだ。マルタは、ロイド達は、『エミル』という存在を受け入れてくれた。だが、この世界の人たちが受け入れてくれるという保証はどこにもない。だから、というわけはないが少し、一人になりたかったのだ。だが、そんなエミルの後ろを付いてくる人がいた。

 

「エミル……」

「寧、どうしたの?」

「私ね、嬉しかったよ。前にエミルのことは掻い摘んで教えてくれたけど、きちんと教えてくれたのは初めてだから。だから、ありがとう」

「寧……」

「あと、もう一人。エミルに言いたいことがあるみたいだよ」

 

 もう一つの足音は寧の隣で止まる。後から来たのはこの世界に来て最も付き合いがある少女だった。

 

「セシリアも来たんだね」

「はい。わたくしもエミルさんのことを知られてとても嬉しく思いましたわ。貴方に、先程お会いしたもう一人の貴方に、わたくしはたくさん助けてきました。クラス代表戦の時も、ラウラさんと模擬戦をした時も。ですので、ありがとうございます。そして、ここに来る前に寧さんとお話をしまして決めたことがありますの」

 

 寧とセシリアはお互いの顔を見合わせ頷く。

 

「わたくしは貴方のことを愛しています。貴方の強く優しい心に惹かれました。貴方の傍にいたい、特別にしてほしいと。わたくしはエミルさんが何者であろうと関係ないのです。貴方以外は嫌なのです、貴方でないとダメなんです」

「まだエミルの中にはマルタちゃんがいるんだよね。でも、私はね。エミルのことずっと想ってたんだよ。あなたの顔が分からなかったあの時からずっと……。あなたは何があっても私を助けてくれた、守ってくれた。記憶がない私の傍にいて励ましてくれた。ラシェーラを旅している時もずっと。……愛しています。例え、束の間の存在でも。この想いだけは本物だから」

「二人とも……」

「答えを聞かせてほしいとは言いませんわ」

「今は、ただ私たちの想いを聞いてほしかったの。今すぐは無理でも、必ずあなたを振り向かせて見せるから、だから」

「「覚悟しておいてね(くださいまし)」」

 

 困ったような、照れたような不思議な表情のエミルと顔を紅くしながらも笑顔の少女。そんな三人がいる空間はまるで世界にこの三人しかいないと錯覚さえしてしまいそうな雰囲気だった。

 三人が一緒に宿に戻っていく様子を月明かりが優しく照らしていた。

 

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