インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~ 作:ガーネイル
選抜戦当日。
エミルは一夏、箒と共に第三アリーナのAピットに来ていた。
「キャスタニエ。済まないが、織斑の専用機の準備にはもう少し時間がかかる。だから先にお前が行ってこい」
「分かりました」
「本来はカタパルトに乗せてから射出するのだがお前のは勝手が違い、それが出来ない。お前の準備が出来次第、好きなタイミングで出てくれ」
「了解です」
エミルは射出口の方を向く。すると、一夏が横に来て拳を握ってエミルに向ける。
「負けるなよ」
「うん。頑張るよ」
そう言ってエミルは拳を合わせた。
「行くよ、ラタトスク」
「(おう)」
エミルは宙をも駆けるラタトスクの騎士となりハッチから出ていく。
「ようやく来ましたわね。降参するなら今のうちですわよ。でないと、無様な姿を皆さまにお見せすることになりましてよ?」
「例えそうだとしても僕は降参するわけにはいかないんだ。一夏との約束もあるしね。それにやる前から負けを認めるのも嫌だしね」
「そう。男同士の友情というものですか。顔に合わず泥臭いことですのね」
「何にしてもオルコットさん、全力で来てね。僕も全力で行くから」
エミルは目を閉じる。
「分かりましたわ。後で後悔なさっても遅いですわよ」
「それはやってみないと分からないと思うよ」
『両者位置についてください。……それでは始め!』
開始の合図とともにセシリアは距離を取り、スターライトmk.IIIを展開。
「残念ながらこの一撃で終わりですわ!」
セシリアがスターライトmk.IIIを構えたところでエミルが目を開く。ただ、目の色はいつもの深緑色ではなく、燃えるような緋色だった。
そしてエミルに照準を合わせトリガーを引く。
「所詮、こんなものですわね」
セシリアは既に決まったと思い、スターライトmk.IIIを下ろす。
だが、放ったレーザーはエミルに当たることはなかった。何故なら……
「そんな攻撃が当たるかよ!」
そう言い放ち、エミル(ラタトスク)がレーザーをネザートレイターで切ったからだ。
「なっ!?」
セシリアは驚きを隠せなかった。今まで自分の攻撃が切られるなんてことはなかったのだから。ましてや、エミルはISを扱うのはほとんど初めてで自身の方が稼働時間は何倍も多い。当然、セシリアからすると受け入れられることではなかった。
「今のはまぐれに決まっていますわ。次は必ず当ててみますわ」
今一度、スターライトmk.IIIを構え、エミル(ラタトスク)に照準を合わせてトリガーを引く。が、エミル(ラタトスク)は再びレーザーを破壊する。
「終わりか? なら今度はこっちから行くぜ!」
エミル(ラタトスク)はセシリアを見据えて挑発するように言った後、羽を震わせてセシリアに迫る。が、当然セシリアも接近を許すほど甘くはない。セシリアは機体の特殊武装『ブルーティアーズ』を起動させ、ビットが四方に飛んでいく。ビットはエミル(ラタトスク)を包囲してレーザーの雨がエミル(ラタトスク)に降り注ぐ。
「さあ踊りなさい! わたくしとブルーティアーズの奏でる円舞曲で!」
「ちっ! 目障りだな!」
エミル(ラタトスク)は舌打ちをして急停止、回避行動に移る。
「避けるので精一杯のご様子ですわね?」
「はっ。寝言は寝てから言いやがれ! 魔神剣!」
エミル(ラタトスク)はセシリアの言葉を笑い飛ばす。ネザートレイターを振るって斬撃を飛ばし四つ飛んでいる内の一つのビットを破壊する。
レーザーを切られ、ビットを一つ壊されたセシリアはようやく受け入れた。目の前にいる敵(エミル)は自分より遥かに格が上だということに。そしてそれ故に全力で戦わなくてはエミル(ラタトスク)には勝てないことに。
「どうやら、わたくしは貴方を軽視しすぎていたようですわね。これから本気で行きますわ!」
「へっ! かかってきやがれ!」
「思っていたより情熱的な方ですのね!」
エミル(ラタトスク)は楽しそうに言い放ち、セシリアを煽る。セシリアは残り三機のビットを先ほどとは比較にならない速さで操作してエミル(ラタトスク)を包囲する。
エミル(ラタトスク)は縦横無尽に飛び回りながらチャクラムを展開する。
「次行くぜ! レイスラスト! レイシレーゼ!」
エミル(ラタトスク)は三連続でチャクラムを投げ、残り三機も難なく破壊する。その後、チャクラムをしまい、再びセシリアに接近を始める。
「これで終わりだな!」
その言葉に対してセシリアはにやりと笑う。まるでひっかかったと言わんばかりに。
「おあいにく様、ブルーティアーズは六機あってよ!」
セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマーが外れてエミル(ラタトスク)の方を向く。そしてそこからミサイルが出てくる。
「何!?……なんて、まだまだな。鳳翼旋!」
エミル(ラタトスク)は不敵に笑い、上等だと言わんばかりにミサイルを切り裂き尚且つ大きく移動して回避までやってのける。ここまでくるともはや戦闘狂か病気のように思えてくる。
セシリアはめげずにミサイルやレーザーを放つ。 エミル(ラタトスク)は正面突破でぶつかりながら切り抜けていく。一体どこの激突王だろうか。
切り抜けた エミル(ラタトスク)そのままセシリアに近づきネザートレイターを振り下ろす。
「インターセプター!」
セシリアは近接武器『インターセプター』を展開させエミル(ラタトスク)の攻撃を受け止めるが、簡単に弾き飛ばされてしまう。
「これで最後だ。魔神閃光断!」
合計三回の斬撃がセシリアの機体のSEを一気のゼロまで持っていった。
SEが尽きたセシリアの機体は武装解除され、空から落ちていく。エミル(ラタトスク)は落ちていくセシリアを受け止め、ゆっくり降下していく。
『試合終了! 勝者、エミル・キャスタニエ!!』
エミル(ラタトスク)はハッチに降り立ちセシリアをそっと降ろす。
「お優しいですのね。さっきまであんなに荒々しいことをなさっていたお方とは思えませんわね」
「ふん、別に俺は全力で戦いたかっただけだ。それに俺は優しくなんてねぇよ」
エミル(ラタトスク)はそう言って目を閉じる。セシリアはそれを怪訝に思った。
「どうかなさいましたの?」
目を開くとさっきまで燃えるような緋色の目はいつもの深緑色に戻っていた。
「ううん、何でもないよ。僕は遠距離に関して何も言えない。だけど接近戦に関しては努力すればもっと力がついて今より上手に戦えるようになるはずだよ。よかったら僕が相手になるから。次は一夏と戦うんだよね。頑張ってね、オルコットさん」
エミルは笑顔でセシリアにそう言ってからピットに戻っていった。
言われたセシリア本人はエミルの笑顔で頬を染めていた。
「エミル・キャスタニエ……」
セシリアは頬を赤くしながらエミルの名前を呟く。セシリアにとって今まで会ったことのないタイプの男だった。普段は優しさに溢れている目をしながら戦いになると覚悟のこもった強い目をする清と濁の両方を持っているような男。
セシリアは去っていくエミルの後ろ姿を熱が籠った目で見つめていた。
とりあえずここまでです。アップできるのはここまでです