インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~ 作:ガーネイル
翌日の朝、教室ではもっぱら転校生の噂で話題は持ちきりだった。
「もぅすぐ、クラス対抗戦だね」
「そうだね、二組のクラス代表が変わったって聞いた?」
「あぁ。なんとかっていう転校生でしょ」
転校生の名前まではいまいち覚えてないらしい。それでも一夏は隣に座ってる女子に話しかける。
「転校生? 今の時期に?」
「うん、中国の代表候補生なんだって」
「わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」
「別にこのクラスに来るのではないのだろう? さわぐほどでもあるまい」
もっともセシリアと箒は周りと比べてさほど興味がない様だ。
「どんな人なんだろうね」
「ん? エミルも興味があるのか?」
「うん、人並みにだけどね」
どうやら男二人は転校生が誰だか気になるようだ。その会話を聞いてたセシリアと箒は自分の想い人に視線を送る。もっとも二人は送られてくる視線には気付いていない。エミルの隣にいる朴念仁ともかく、マルタと結ばれた時期もあったはず。それなのにいつからそんなに鈍くなってしまったのだろう。そんなことではいつか後ろから刺されてしまうのではないだろうか……嫉妬的な意味合いで物理的に。
「そういえば、一夏。特訓は今日からでいいよね?」
「あぁ、よろしくな、エミル」
そんな会話をしている隣では、
「まぁうちには専用機持ちが三人もいるし、楽勝だよね」
「ねっ。織斑君」
「えっ? あぁ……」
「その情報古いよ!」
エミルとの会話で聞いてなかった一夏はとりあえず、と言う風に頷いた。すると、教室の入り口から威勢のいい声が聞こえてきた。その方向を見ると小柄な体格のツインテールの女生徒が立っていた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから!」
一夏は一拍置いて何かに気付いたように声を上げる。
「鈴? お前、鈴か?」
「そうよ、中国代表候補生、凰 鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
どうやら一夏の知り合いらしい。そして、その子は中国代表候補生である。おそらくクラス対抗戦で戦う可能性はあるだろう。そして鈴はビシッと言う効果音が付きそうな感じで一夏に向かって指をさす。が、一夏は笑って鈴に向かって言葉を返す。
「鈴。お前、何かっこつけてんだ? すげー似合わねぇぞ」
そういうことではない。突っ込むところ、言うべきことは絶対にそこではないはずだ。たまにだが一夏は突っ込むところがずれている時がある。それは意図的にやっているのではないだろうかと感じる時もある。
「なっ!? なんてこと言うのよ、あんたは!」
返しも絶対に違うはずだ。……それはそれとして鈴の後ろに立つ一人の女性。その女性が音もなく、鈴の頭に拳を振り下ろす。
「っ!? ……何すんの!? うっ……」
「もうSHRの時間だぞ」
「ち、千冬さん……」
鈴が勢いよく噛みついたのは千冬だった。一気に鈴の顔が引きつっていく。
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」
「す、すいません。また後で来るからね。逃げないでよ、一夏!」
そう言ってからクラスの方に戻っていく。
時が経過して昼休み。
エミルたちは食堂に移動する。食堂に着くと先に鈴が待っていてともに列に並んだ。
「じゃあ、一夏。僕はお弁当だから先に言って席を取ってるね」
エミルは食堂の列に並んだ一夏にそう言って座席の確保に向かう。
一夏は日替わりランチ、箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ、鈴はラーメンを注文していた。それぞれ注文の品を受け取り、エミルが待っている席へ向かう。
「悪い、エミル。席の確保サンキューな」
「ううん、そんなに大したことじゃないよ」
席には左から順に鈴、一夏、エミル、セシリア、箒の順番だ。鈴と一夏はお久しぶりの再会で話が盛り上がり、箒はそれを睨むように見ている。なお、セシリアはエミルの隣に座れたということに有頂天になっていた。
「あの、エミルさんはいつもお弁当なのですか?」
「うん、そうだよ」
セシリアは勇気を出して一歩踏み出してみた。
「そうなのですね。あの、エミルさんがよろしければなんですが、その……、お一つでいいのですがそれをくださいませんか?」
セシリアはそう言ってエミルのお弁当に入っている唐揚げを指さす。
「うん? いいけど。はいどうぞ」
特に気にした様子もなくエミルはセシリアの洋食セットが盛り付けられているお皿の上に唐揚げを乗せる。
「ありがとうございます(こ、これがエミルさんの手料理!!)」
なお、この時周りからセシリアに羨望の眼差しが向けられていたが有頂天になっていて全く気付かない。そして一夏と鈴は丁度話がひと段落着いたようでエミルと箒が割ってはいる。
「一夏、そろそろ説明してほしいのだが」
「そろそろその人の紹介してもらっていいかな」
「あぁ、わりぃ。こいつは鈴。小学五年からの幼馴染みなんだ」
「幼馴染み?」
一夏の言葉に箒が反応する。
「あぁ、そうだ。丁度お前とは入れ違いで転校してきたんだけなぁ」
そう言って一夏は箒の方に手を向ける。
「篠ノ之箒。前に話ただろ? 箒はファースト幼馴染みでお前はセカンド幼馴染みってところだ」
「ふぅん。そうなんだ。初めまして。これからよろしくね」
「あぁ。こちらこそ」
この時、二人の間に火花が散った。一夏はそれに気付かず、紹介を続ける。
「こっちがクラスメイトのエミルとイギリスの代表候補生のセシリア」
「あれ? 男は一夏だけじゃなかったの?」
「公にしてないだけで、エミルは二人目なんだ」
「よろしくね、鈴さん」
「鈴でいいわ。よろしくね、エミル。それで一夏、一組の代表なんだって?」
鈴は一夏に確認する。
「あぁ。まぁな」
「よかったらあたしが練習みてあげようか? ISの操縦の」
「あぁ、ありがたいんだけどエミルに見てもらうことにしてんだ」
「何よ。そこの弱気そうなやつがあたしより強いっての?」
「もしかしたら千冬姉にいい勝負すると思うぜ。な? エミル」
「千冬さんの実力を知らないからやってみないことには分からないよ」
「お前はどうなんだ?」
「……」
鈴はそれに答えられなかった。どんなに強がってもやってみないと分からないなんて言えない。そんなことを言えるIS操縦者はそれこそ世界レベルで数人居るか怪しいくらいなのだから。
「というわけだ。ごめんな」
「後で後悔しても知らないんだから!」
丁度五分前のチャイムが鳴ったので話もそこまでにして一夏たちはトレーを片付け教室に戻っていった。
放課後。エミルは一夏、箒、セシリアの四人で第3アリーナに集まり特訓を始めようとしていた。
「じゃあ、一夏。正直言って君の攻撃は分かり易いんだ。僕以上に大振りだからね。何となくオルコットさんなら分かるよね。一夏と戦ったんだし」
「はい。正直なところ織斑さんは大振りなのでどんな攻撃を仕掛けようとするのか分かり易いです」
「マジか……」
エミルとセシリアの言葉が一夏の胸に突き刺さる。エミルはそれを気にする様子もなく話を続ける。
「ね? だから大振りを直して倒すことじゃなくて攻撃を当てることを目的とした特訓にしようと思う。だから一夏は僕たち三人を同時に相手してもらうよ」
「む、無理だって!」
「無理でもそれくらいやらないと直らないよ。癖になる前に直さないと弱いままだよ」
エミルは心を鬼にして一夏に言う。「弱いまま」この言葉が一夏のやる気に火をつけた。
「……分かった」
「じゃあ行くよ」
エミルと箒が剣を構え、セシリアがライフルとBT兵器を展開する
「はじめ!」
この後一夏は徹底的なまで打ちのめされた。特訓が終わる頃にはすでに陽が落ち夜になっていた。なお、この時一夏はアリーナの真ん中で息を切らして倒れている。
「さて、今日はここまでだよ。お疲れ様、一夏。また明日ね」
「織斑さん、ごきげんよう」
エミルとセシリアは自室に戻っていく。
「あぁ……、また明日な」
ぜぇぜぇと息を切らせながら返事をする。それからしてすぐに箒も一夏に先に部屋に戻ってシャワーを浴びる旨を伝えて部屋に戻っていく。それから一夏が部屋に戻っていくのはもうしばらくしてのことだった。
今回はここまでです。次回も早めにあげられるよう頑張ります。