インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~ 作:ガーネイル
一夏との特訓が終わった後、エミルは使い終えてしまった食材の買い出しに出ていた。一通り買い出しを終え、部屋に戻る最中、突然後ろから突進を喰らう。
「いてて、あれ鈴さん?」
喰らった部分を擦りながらその方向を見ると、頭を押さえている鈴の姿があった。
「ちゃんと避けなさいよ!」
正面から喰らったわけでもないのに理不尽なことを言われるエミル。
「えぇ。そんな無茶な……」
鈴の顔を見たを見た時に少しだけ見えた鈴の涙を見逃せなかったエミルは一つ提案をした。
「ねぇ、鈴さん。さっき何かあった? よかったら話でも愚痴でも何でも聞くよ」
「……じゃあ、一つだけいい?」
鈴は少し悩んだ後、エミルに話を聞いてもらうことにした。
「うん。ここだと一夏も出てくるかもしれないし僕の部屋でいいかな? この荷物も置きたいしね」
「分かったわ」
エミルは鈴を連れて部屋に戻っていく。間もなくして部屋に着いたので鈴を中に案内する。
「鈴さん、好きなところに座ってくれていいよ。お茶を持ってくるから楽にしてていいよ」
お茶を取りに冷蔵庫の方に行くエミル。鈴はその間部屋を見回していた。途中から何を想像したのか鈴の顔は真っ赤になっている。そんな時にエミルが戻ってきた。
「おまたせ。……鈴さんが話すタイミングまで待つから自分のタイミングでいいよ」
「……うん」
数分後、鈴はようやく口を開く。
「ねぇ。もし、エミルが女の子から毎日私の味噌汁を飲んでほしいみたいな約束をしたらどう?」
「どうっていうのは?」
「それを正しい意味で覚えていられるかって意味よ」
「うん。覚えていられると思うけど。それがどうかしたの?」
約束こそしなかったが、エミルはマルタと結婚までたどり着いたのでその意味は正しく理解できるし、その意味も分かる。
「小学校の頃にね一夏に約束したの。もしまた会えたたら毎日私の酢豚を食べて欲しいって言ったのよ。そしたらあいつ毎日酢豚を奢るっていうのと勘違いして覚えていたのよ」
「一夏……」
エミルは溜息をつく。何となくだがエミルはその先の展開が予想出来てしまった。
「それで一夏を叩いてから飛び出してあんたにぶつかったのよ」
もはやエミルの顔は苦笑で彩られていた。そこでエミルは鈴に一つ提案をする。
「鈴さん。来週のクラス代表選で負けた方が勝った方の言うことを聞くっていうのを一夏に提案してみたらどうかな?」
「そうね。明日早速言ってくるわ」
この時の鈴はもう廊下で会った時のような印象はなく、午前中にあった宣戦布告した鈴とあまり変わらない。
「よかった。もう元気は出たみたいだね」
「えぇ。エミルがいい案を出してくれたおかげよ。ありがとう」
「ははは……」
「それじゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
元気が出た鈴は自分の部屋に戻っていく。それから間もなくしてセシリアが部屋に来た。
「エミルさん。この前約束したことなんですが、次の日曜日でよろしいでしょうか?」
「うん、大丈夫だよ」
「それでは、10時にゲート前に集合ということで」
「了解。どこに行く?」
「それはわたくしに任せてください!」
元気に言い切るセシリア。
「うん。分かった。楽しみにしてるよ」
笑顔で言うエミルに見惚れるセシリア。少しラグが発生した後にトリップした意識が戻ってくる。
「は、はい! それではまた」
「じゃあ、またね」
少しよぼついた足取りで戻っていくセシリア。少し不安になるエミルだったが、しっかり前に進んでいるので大丈夫だと思い、その場に残って見送る。
日曜日。
エミルは相手を待たせるのは忍びないと思い予定時間より十五分ほど早くゲート前に向かう。ゲート前に着いたのは十分前。そして着いた時にはもうセシリアが待っていた。
「おはよう、オルコットさん。もしかして待たせちゃったかな?」
セシリアは首がちぎれそうな勢いで首を横に振る。慌て様が半端ではない。
「そ、そんなことありませんわ。ついさっき着きましたの(言えませんわ。楽しみで一時間も前から居たなんて)」
「そう? ならよかったよ」
「はい。それでエミルさん。その……わたくしの服装は似合っていますでしょうか?」
この日のセシリアは上が白のブラウスに薄いピンク色のカーディガンで下が薄い水色のロングスカートという格好だった。
「うん。とてもよく似合ってるよ。その……可愛いと思う」
最後はどもりながらも言い切るエミル。まるでマルタに押されていた当時のオドオドしていたエミルが再び出てきたような感じだった。それでも最後は照れ笑いをしている笑顔をするのはさすがの一言。最後まで辿り着いたものはやはり一味違う。
「ありがとうございます……」
まさか可愛いと言われるとは思っていなかったセシリアは顔を真っ赤にしてフリーズしていた。頭から煙が出ているのでは? と疑いたくなるくらいである。フリーズも起こしているのだからむしろオーバーヒートしていてもおかしくはない。
「オルコットさん。大丈夫?」
「え、あ、あぁ。大丈夫ですわ。エミルさんはあまり見ない服を着ているのですね」
「そ、そんなことないよ」
今度はエミルが慌てる番だった。もっともセシリアがそう感じるのも無理ないだろう。何せエミルの服装はルインの元で叔父と叔母と共に生活していた時のものでありセシリア達からすれば異世界のものであるのだから。
「僕はこれとISの時に来ている服しかしか持ってないしね」
ラタトスクの騎士は別にIS専用ではないのだが、話がややこしくなってしまうので伏せる。ただ、セシリアは服をあまり持っていないという点に反応を示し、その時はまるで獲物に狙いを定めた飢えた獣のような目つきをしていた。
「それでは今日はエミルさんのお洋服も買いましょう。さて、お時間がもったいないですし早速向かいましょうか」
そう言ってセシリアはエミルの手を引っ張っていく。エミルもまんざらでもなさそうなのだがその顔にはどこか感傷的な物が少し漂っていたがセシリアがそれに気付くことはなかった。行く先々、店先の人に冷やかされ紅くなる二人は初々しいカップルのようだった。
途中、公園のベンチで休憩を挟んだのだがその時にセシリアは再び勇気を出す。
「あ、あのエミルさん」
「何かな?」
「もし、よかったらなのですが、これからはわたくしのことをセシリアと呼んでくださいませんか?」
「うん。それくらいならお安い御用だよ」
エミルはセシリアの勇気を意に介せず了承する。まさかとは思うが一夏の凡骨(ぼくねんじん)っぷりが移ったのではないだろうか。セシリアはマルタとはタイプが全く違うのでそこまでたどり着かないのも無理ないと言えばそうなのだがそれでもやはり鈍すぎる気もしなくはない。
一方、セシリアはエミルから見えない位置でガッツポーズを取る。それに気付かないエミルは一度伸びをしてから立ち上がり、手を差し出す。
「それじゃあ、行こうか……セシリア」
「はいっ!」
セシリアはエミルの手を取り立ち上がる。
この後、バカップルにも負けないくらいピンク色のオーラを出した金髪の二人組が街中に出現したらしい。
この日のことを目撃してた生徒がいた為、後日、クラスで噂になったとか……。