たった一つの感情を求めて、少年は彼女を召喚した……………。

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Fate/Don't know the Love

 

 窓も扉も、すべてが固く閉ざされ、唯一の光源である灯火以外が暗闇に飲まれている部屋の中、一人の男が立っていた。

 

 静かに呼吸を整えるその姿は、暗闇も相まって呼吸音さえなければ精巧な人形と勘違いしてしまうほどに身動ぎ一つ無い。

 

 男―――否、少年が佇む目の前には、幾何学的な模様の描かれた円陣――――――魔方陣が怪しく魔力を漂わせていた。

 

 

 そして少年は口を開く。

 

 

「『素に銀と鉄――――』」

 

 

 

 ――ようやくだ。ようやくここまで来た。

 

 

 呪文を唱えながら、少年は己の過去を思い出す。

 

 

 

 十年前のあの日、僕は大災害で家族を失った。

 奇跡的に生き残った僕は、病院で一命を取り止めたものの引き取り手もなく施設に預けられた。

 

 

 そこからが地獄だった。

 

 

 節電と称して空調どころか電気すら付けられない部屋。

 節水のために、二週間に一度しか入れないお風呂。

 節約してるから、食べるものはいつも最低限で、育ち盛りの僕らには苦しかった。

 

 家事は僕らの仕事だった。

 掃除、洗濯、料理、買い出し。

 

 失敗すれば怒鳴られて、殴られて、泣けばもっと殴られた。

 

 たまに、朝起きない子がいた。

 時間通りに起きなければ、その子が殴られると思って揺り動かすと、その肌はとっても冷たくて、息をしていなかった。

 

 死体の処理はバラバラにして大きい部分は埋めて、捨てられるところは生ゴミに出した。

 無論、それも僕らの仕事。

 

 

 そんな事を続けていたら、気がつけば『僕ら』は、僕一人になっていた。

 

 

 

「『閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)――――――』」

 

 

 それは、僕が中学まで続いた。

 お金が勿体ないと言われて、高校受験など考えてなかった。

 

 僕は学校では忌避されていた。

 体臭は臭く、服は髪はボサボサ、口数も少なく常にボロボロ。そして人間不信。

 

 

 中学のクラスメイトからは臭いからと濡れた雑巾で拭かれたり、泥の上に投げ込まれたりもした。

 そして、そんな汚れた姿で施設に帰ると、また殴られる。

 

 

「『ただ満たされる刻を破却する―――――』」

 

 

 

 でも、そんな日々も唐突に終わりを迎えた。

 

 

 ある日、何時ものようにボロボロになって帰ると、施設が燃えていた。

 

 燃やしたのは一人の老人。

 白い髭を蓄えた壮年の男性。しかしながら、その立ち振舞いや雰囲気は物々しく荘厳で、その時僕は初めて『威圧感』と言うものを感じた。

 

『全く、こう言う輩を見ると本当に腹が立つ』

 

 この人は、このあと色々あって僕の師匠となる人だった。

 

 師匠に拾われたあとの僕の生活は一転した。

 綺麗な服。暖かいご飯。毎日入れるお風呂。

 そして鍛練。

 

 まるで天国のような日々だった。

 体の鍛練や、『魔術』と呼ばれる神秘の鍛練は血反吐を吐くような苦しい物だったし、学校には行けなかったけど、ちゃんと僕を人間として扱ってくれた。勉強も教えてくれた。

 

 とっても厳しかったけど、それでも嬉しかった

 

 

 僕は恵まれているのかいないのか、よくわからない体質だった。

 運動神経は良いのに筋肉が付きにくくて、魔術は一つに特化して抜きん出ているのに、回路が少なくて。

 

 

 そして何より、感情を……………『愛』という感情を理解できなかった。

 

 

 

 物や人の美醜はわかる。性欲も一応ある。

 

 けれど、誰か一人を想い続ける『愛』だけは、師匠が日本を発つその日まで、理解することができなかった。

 

 

 

 

 ――――愛を知らない。

 

 

「『Stand Up―――』」

 

 

 ――――愛し方を知らない。

 

 

「『―――告げる。

  ―――――告げる』」

 

 

 ――――けれども、人の暖かさを知っている。

 

 

「『汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』」

 

 

 ――――だから、知りたい。

 ――――故に、欲しい。

 

 

「『誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者』」

 

 

 

 ――――僕を愛してくれる人が。

 ――――僕が愛せる人が。

 

 

「『汝三大の言霊を纏う七天――――』」

 

 

 だから願ったんだ、聖杯(希望)に。

 

 だから手を伸ばすんだ、万能の願望器(最後の希望)に!

 

 

「『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!』」

 

 

 淡い山吹色の光を放っていた魔方陣から、強烈な光が炸裂する。

 

 その正体は、人間では到底届くことのない圧倒的な魔力の奔流。

 

 その魔力は、世界へと接続され、僕の呼び掛けに答えてくれる英霊―――サーヴァントを呼び出した。

 

 

 

 光が眩しくて目を瞑っていた僕は、それが落ち着いたのを見計らってゆっくりと目を開ける。

 先程の魔力の奔流で蝋燭の火は消えていたけれど、風圧で開かれたカーテンから、満月の光が差し込んでくる。

 

 魔力を知覚した数日後に胸に刻まれた、九芒星を模した紋様――令呪が赤く輝き、少し痛みを感じる。

 

「――うふふ、あなたね? 私を喚んだのは」

 

 一人。

 月明かりに照らされた魔方陣の中に一人、女が立っていた。

 

 先程の魔力と同じ山吹色の踊り子装束を身に纏う、妖艶な美女。

 

 素直に美しいと感じた。

 僕だって男だ。性欲ぐらい抱く。

 

「聞こえたわ、あなたの声、あなたの叫び」

 

 耳に心地よい、魅惑に満ちた甘い声。

 けれどもそれは、慈愛に満ちていて。

 

「あなたの願いと私の願いは、とっても良く似てるわ」

 

 その笑顔は、とても優しくて。

 

 

 見とれて何も返せない僕に微笑んだ彼女は、スカートの端をつまんで礼をすると、名乗りを上げた。

 

 

 

「私はサーヴァント、アサシン。名をマタ・ハリ。

 よろしくね? 可愛い私のマスター」

 

 

 

 それが、僕の喚んだ相棒(サーヴァント)

 

 そしてこれからが、僕の望みを叶える聖杯戦争。

 

 

 

 |『愛』を知らない僕が『愛』を知るための物語《Fate/Don't know the Love》……―――。

 

 

 

 




多分きっと続かない。 

だって思い付きだもん! プロットどころか決着方法すら考えてないもん!

 いや、あの、連載抱えてて何してんだって話ですね。はい、すんません。




 ……………マタ・ハリちゃん、可愛いよね?

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