言霊によって紡がれる魔術。か弱き魔術師はカードを媒体とし、自らの技術を磨いていく。

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【短編】魔術訓練

 世界は「文字」により管理され、そして支配されている。

 契約書という、何の変哲もない紙に書かれた百文字にも満たない腑抜けた文書の一つですら、絶大な効果を持ち、人はそれを利用し、またはそれに苦悩し。

 時には命よりも重くのしかかり、人類はそれに縛られてきた。

 ただ、文字は人を苦しませる悪魔の使いではない。時に、楽しませることだってある。

 例えば、闘技場の中、とか。

 

「……月光の浴場で、体力を2回復。残体力11まで伸ばしたい。反応は?」

「当然、ある。氷撃連鎖を撃って、月光の浴場の効果を無効に。更に水の戦場を無効にしたので、1ダメージ。水をコントロールしてるから、さらに1ダメージ」

「うぐぐ……体力7だよー……」

 

 TCG(トレーディング・カード・ゲーム)はそもそも何をイメージされて作られたか?世界最古を誇るカードゲームは、「魔術師」を元に作られたものらしい。

 彼女らは、そのモチーフになった魔術師であり、そして、繰り広げられてる闘いはそのカードゲームを使った模擬戦闘訓練だ。

 水をテーマとしたデッキ構成。海や川で戦うことを想定し、それを利用した戦術、そしてそれに抗うための魔術……魔術師が戦うための基本・基礎が、練りこまれている。

 

「私のターン。ガルド式スライムを召喚して、このターン攻撃を放棄。魔方陣を書きます。魔力サイズは5を指定……ターンエンーー」

 彼女が終了を宣言しようとしたところに、氷の粒が降り注ぐ。

「……反応で、氷撃連鎖!ダメージを与えたから、魔方陣は書けないよ!」

「?! ……ぬかりましまたね……」

 時には、相手を翻弄する、言霊。ただ冷徹に切り刻むだけではない。

「月光の浴場の氷が溶けた、さあ一気に!」

 そう言って、彼女はカード二枚を相手に見せる。

 1枚目のカードから水で構成された無数の人の手が相手を捕らえ、2枚目のカードは不気味な脈動を見せている。

「……不用意にマナを使い過ぎたな」

 勝負を諦めたような、静かな笑みで、そう呟く。

波動大砲(ビッグ・ウェーブ)!!」

 

 威勢のいいコールと同時に水飛沫がそこら中に飛び散る。巨大な魚が跳ねたかのような勢いで、飛び散った後も霧と虹ができて二人の姿をすぐには確認できない。

 トドメを刺した彼女の勝ちを周りが確信し始めた、その時だった。スピーカーから、意外な知らせが飛び交う。

 

「両者体力0のため、引き分け!各チームに1ポイントずつの加算となります!」

 

 その知らせに、会場はザワついた。一方的なマウントを取っていた彼女が体力を抉り取られるはずがない……会場の大方の人間がそう思っていた。

 しかし、それは単なる勘違いであったことが、霧が明けて判明する。

 雁字搦めにされていた彼女は、ただ一つの魔力の盾を編んで、ダメージを軽減していた。しかし、それだけでは足りず、彼女は膝をつく羽目となった。

 もう一方の、一転攻勢と立った彼女はその魔力の盾からくる反射ダメージと、大砲を撃った時の反動で丁度体力が尽き、相討ちとなってしまったのだ。

 

 誰からともなく沸いた拍手が、段々と大きくなり、彼女らを讃えるものとなる。尻餅をついて互いにボロボロとなっていたが、彼女らは笑顔を浮かべていた。




息抜きです。
没落モノクローム、書きたいんですけどまとまった時間がなかなか取れず……

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