第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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基本的に『スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION THE ANIMATION』の続きです。原作とはかなり違う闇鍋展開になっています。原作や前作「MW」との整合性はこだわらないでください。
「MW」を踏まえているので、『火星航路SOS/惑星連合の戦士』などの技術が登場します。


スーパーロボット大戦OG/時空の結合より2年半

 新西暦188年、インスペクター事件が終わった直後のことだった。

 鋼龍戦隊のメンバーが、多元宇宙の戦いの「虚憶」を「思い出した」。すぐ昨日のことのように。「虚憶」ではガンダムなどの仲間がいたが、今はそれがいない。

 その混乱より、重要なこと……技術。艦のコンピュータに隠されていた設計図が、再発見された。

 イスカンダル式の波動エンジン。より手軽なワープドライブ。推進剤がいらないローザー線推進。

 超光速で移動しつつ、針路上の敵を一方的に粉砕し、こちらにはダメージがない攻撃航法。

 あらゆる攻撃を吸収し蓄電池に流す緑のシールド。強力な牽引・切断ビーム。

 サイズが大きく射程が短いが、バリア類の貫通に優れた重力内破槍。

 普及すればカネが古語辞典送りになる、レプリケーター・ホロデッキ・トリコーダー。

 拳銃サイズでビルを破壊でき、艦載ならば地殻を撃ち抜けるフェイザー。ワープ可能な光子魚雷。

 その技術そのものが、大問題となる。

 技術を奪おうとするDC残党。

 技術を接収しようと、奇妙な動きをする大統領直属特殊部隊、ガイアセイバーズ。

 技術を危険視し、地球ごと封印しようとするゲスト。

 地球圏は、多元宇宙の戦乱をよそに、相も変らぬ混迷に浸りきっていた。

 

 ちなみに、はるかバルマー帝国に〔UPW〕へのクロノゲートが開いたのは2年半前。〔UPW〕の人たちから見れば、鋼龍戦隊と共闘したエオニア戦役はその何年も前。

 経過時間は一致しない。だが、ヤマトの時空でも、時間経過はずれている。

 そう、並行時空の時間は、同じ時計に従って経つのではない。

 船で再会したコルムが覚えていた戦いの記憶が、エルリックにはなかった。エルリックにとって、それは未来であったのだ。

 

 クロノゲートでつながってから、バルマー帝国はずっと〔UPW〕の服属を求めて攻撃を続けていた。帝国にとって、自らがすべての上に立ち、すべての他者を踏みにじり征服するのは当然のことだった。

〔UPW〕はゲートの利を活かして最低限の戦力で撃退しつつ、交渉しようと努力を続けていた。

 おぼろな記憶から、その時空のどこかに戦友がいることを希望として。

 

 

 新西暦188年夏。

 暴走した、ユルゲン博士が開発したODEシステムと次期人型機動兵器バルトールは、鋼龍戦隊の攻撃で殲滅された……かに見えた。

 だが、一機だけ生き残っていたバルトールは、すべての情報を受け継いで宇宙を漂い、予備基地にたどりついた。そして自らの量産を再開し、基地ごと空間転移した。どこへともなく。

 その空間転移の兆候を、何人かの念動力者が探知した。

 

 間もなく地球に、恐ろしい知らせが入った。

 ゼ・バルマリィ帝国からの宣戦布告。その理由は、どう見ても地球産である、バルトールによる領土侵犯。

 大艦隊の接近を知った地球圏は、相変わらず内戦で機能不全があった。だが、続いた戦いによって、有能な人間も育っていた。

 ブライアン・ミッドグリッド元大統領の派閥から、鋼龍戦隊にどうとでも解釈できる命令がきた。

 ヤン・ウェンリーが、

「持つべきものは話の分かる上司だな。」

 と、言ったときのように。

 鋼龍戦隊が地球から離れるのは、

(超技術の情報を、悪に渡さない……)

 という真の目的の、大義名分にもなる。

 そのハガネとヒリュウ改は、波動エンジン搭載など大幅な強化が短期間で施されていた。

 比較的小型のパーソナルトルーパーも大きく戦力が向上している。

 

 まずバルマーの先遣隊相手に、その力が発揮された。

 桁外れに巨大なヘルモーズ級母艦とも、波動エンジンを二つずつ装備したハガネ・ヒリュウ改は正面から撃ち合えた。

 ショックカノンの口径こそ小さいが、ヤマトの倍以上の大きさから砲門数が多い。光子魚雷と艦載フェイザーもすさまじい火力となる。

 そして絶対の防御、圧倒的な速力。

 波動エンジンも、トロニウム・エンジンに比べても70倍以上の出力となり、通常空間航行でも光速の95%が出せる。手漕ぎと大型ディーゼル・スクリューの差がある。

 

 また、機動兵器の火力・速度も向上しており、多くの敵機動兵器を先制で破壊できた。

 フェイザー・重力内破槍・緑のシールドの三つをまとめた、PTより少し小さいぐらいの兼用兵器を量産し、全機に持たせた。コスモタイガーと同様の、波動エネルギーを用いるジェネレーターが内蔵されており、機動兵器にエネルギーを供給することもできる。

 そして大型拳銃のようなパルスレーザーサブマシンガンも全機配備。

 推進剤不要のローザー線推進で大幅に速度・機動性も向上している。

 緑のシールドで攻撃を吸収しつつ、敵を牽引ビームで引っ張って加速し接近、重力内破槍でぶち抜く。

 さらに通信で正確な位置を示せば、母艦から光子魚雷がワープしてくるし、40サンチショックカノンが正確に着弾する。

 全機が、ヴァルシオンと同等かそれ以上の攻・防、アルテリオン以上の走となった。

 

 先遣隊を撃退した鋼龍戦隊だが、敵の物量は無限に近い。地球圏は人口・生産力ともに限られ、短期間で波動エンジン搭載艦を多数作るなど夢のまた夢。

 バルマー帝国の本拠を確かめ、強襲するよりほかにない、と判断されていた。

 その、帝国の本拠の鍵となるかもしれない存在が二人いた。

 イルイ・ガンエデンと、アルマナ・ティクヴァーが奇妙な形で鋼龍戦隊にかかわった。

 イルイは記憶喪失の少女としてアイビス・ダグラスに助けられた。

 アルマナは、クスハ・ミズハと仲良くなった。

 だが、その二人を追う組織も多い。バルマーの部隊、ゾヴォークの思惑、地球に古くから暗躍する者、そしてガイアセイバーズ……

 

 

 そのころクロガネは単独で、バルトールが消えたという、小惑星帯にある基地跡に向かっていた。

 そこで奇妙な遺跡が発見された。

「これは?」

「シュウ・シラカワ博士が管理していたものだな」

 元DC幹部のレーツェルは知っていた。

 高度なステルス技術で探知から逃れていた、20キロメートルほどもある工場兼要塞。それは後方の、かなりの規模の空間に奇妙なフィールドを発し、人の探知から隠し封印していた。

 フィールドを止めると、奇妙な輪が惑星軌道をとっているのが発見された。

「これは、ゲートではないか」

 同行していたギリアム・イェーガーが畏れる。

 彼の背には、ひとふりの剣があった。身長より長い、両手持ちの剣。最近になって、なぜか身につけるようになった。

 ゼンガーやリシュウは鞘に入ったままの剣を見ただけで、凍りついていた。

 戯れにも、人に刃を見せることはなかった。柄に手をかけることすらなかった。

 ミオ・サスガやトウマ・カノウが見たがった時には厳しく拒絶した。こっそり触ろうとしたのをつかまえたゼンガーとリシュウが二人を、半死半生になるまで特訓した。

「人には触れてはならぬ、求めることすらならぬ、畏れるべきものがある」

「間違った力を求めるな。おぞましい宿命を負っていない、生きて死ぬ人であることの幸せを知れ」

 と。

「夜にあの剣から、変な声がする」

 といううわさもあった。

 ギリアムはその剣を呪いながら、手離せないようだった。

「む」

 遺跡の、『天秤の支柱に巻きつく竜』が描かれたレリーフにリルカーラ・ボーグナインが触れた時。

「うあああっ!」

 常人がほとんどであるクロガネのクルーすら、苦痛にうめいた。

 誰でも感じられるほど強い力。

「悪か?」

「いや、神なのか?」

「どちらでもないぞ、これは。ただただ、圧倒的な……力だ」

「〈混沌〉か?それとも〈法〉か?」

「いや、それより」

「いたい、いたいよっ!」

「うぬうっ!」

 そのとき、輪が輝いた。

「ゲートが反応しています」

「何かが出てくるぞ!」

「総員艦に戻れ、戦闘配置!」

 戦闘準備を整えたクロガネが待ち受ける。

 光の中に、白いドクロマークが見えた。

 そしてそのドクロはゲートからせり出し、緑の艦首があらわになる。

 美しい砲塔と翼。そして、艦尾の美しい楼。

 はためく、ドクロにぶっちかいの海賊旗。

「アルカディア」

 虚憶があるゼンガーがつぶやく。

『クロガネ、クロガネ、応答せよ。こちらアルカディア号、キャプテン・ハーロック』

 片目の男。肩には奇妙な黒い鳥が乗っている。腰には奇妙なサーベルと大型拳銃。

「こちらクロガネ、レーツェル・ファインシュメッカー」

『クロガネ。貴艦に果たしてもらわねばならない任務がある。この波長を発信しつつ、このゲートに侵入せよ』

「……承知した」

 レーツェルはハーロックの風貌に触れ、即座に信頼を決断した。

 宇宙の男どうし、目と目だけで十分であった。

 そしてハーロックとギリアムが、奇妙な視線を漂わせた視線を交わす。

『そちらに移乗しなければならない者がいる』

「どなたでしょう?」

『別時空の出身の、サイボーグ戦士たちだ』

 赤い服に黄色い長マフラーをたなびかせ、腰に奇妙な拳銃をつけた九人。

 赤ん坊を抱いた美女。

 三人の白人男性。

 ネイティブアメリカン・中国人・黒人・日本人の男。

 すでに、80メートルほどの中型宇宙艇に乗っている。

 レーツェルがギリアムとうなずき合う。

「許可する。第二ハッチを開け」

『ありがとうございます』

 と、日本人の青年がうなずきかけ、宇宙艇を発進させた。

「見事な操縦だな」

 ユウキ・ジェグナンがうなずくとおり、鮮やかな軌道修正でふわりとハッチにすべりこむ。

「着艦完了」

「よし。ハッチを閉めよ。クロガネ発進、以後しばらく操縦を任せる」

 命じたレーツェルはゼンガーとアクセルを伴い、新たな仲間を迎えに行った。

〈介添人〉を受け入れたクロガネは、静かにゲートを潜って消える。

 入れ替わるようにアルカディアは、誰何し攻撃するガイアセイバーズとゾヴォーク艦隊をやすやすと粉砕して、地球の南極へと向かった。

 

 

 鋼龍戦隊は様々な組織との戦いを通じ、アルマナを殺そうとしたハザル・ゴッツォからバルトールのことを聞いた。

 また連れ去られたイルイを追う、と何人もが強く主張した。

 問題は、バルマー本星の位置……だが、本国から刺客を送られたアルマナは、何が起きているのか知りたいと本星の位置を教えた。

 そして二隻は、ワープのテストを兼ねてバルマー本星に急行することにした。

 

 

 複数の超光速航行技術を使い分けて遠い遠い距離を飛び越え、バルマー本星に到着したとき。

 膨大な数のバルトールが、強大なガンエデンと激しい戦いを繰り広げていた。

 

 本来は、バルトールはある程度の数の生体コア……生きた人間を部品として必要とする。

 だが、奇妙な技術によって改良されたバルトールは、すでに助け出されたエースたちの思考パターンも特殊な電子頭脳におさめ、疑似的な生体コアを自力で作っている。

 億どころか兆に達しそうな、とてつもない数。

 

 ヒリュウ改にも向かってくる、柔軟な手足の不気味な人型機の群れを、艦首超重力衝撃砲と拡散波動砲の連打がぶち抜いた。

 飛び出した機動兵器たちが、次々とめぼしい敵をフェイザーで破壊し、高速高機動で動き回りつつ重力内破槍で貫く。

 何人かにとってバルトールは恨み重なる敵でもある……自らをさらって生体コアとし、あるいは恋人を拉致して自分に敵対させたのだ。

 同時にレフィーナ艦長はバルマー帝国とも話そうとした。が、彼らは頑として話し合いを拒絶し、地球を滅ぼすと主張するのみ。

 イルイについての交渉にも応じようとしない。

 

 その時、クスハ・ミズハとリュウセイ・ダテの心を、奇妙な言葉が打った。

「誰?」

「この声は、誰だ!」

 

『聞くのだ、声を増幅しよう』

 真・龍虎王が戦いをやめ、奇妙な舞を踊り続ける。

『ATX隊、援護しなさい!』

「子供のお守は大変ねぇ」

「舌をかむぞ」

 レフィーナの命令を受け、とぼけたエクセレンをキョウスケが牽引ビームで引っ張って、普通には不可能な機動をさせた。

 動いたところに多数の弾幕、

「あーらあら、ダンスのお誘い?」

「ゆっくり踊ってこい」

 軽口をたたき合いながら、ハウリング・ランチャーの連打と、アルトアイゼン・リーゼの高速突進からの凶悪なリボルビング・バンカーが次々とバルトールを屠る。

 名コンビの芸術的なコンビプレイに驚きつつ、ガイアセイバーズから鋼龍戦隊に移ったアリエイル・オーグが戦い続ける。迫る寿命に苦しみ、クスハのドリンクでかろうじて命をつなぎながら……

 

「リュウセイが、奇妙な声を受けています!」

『何っ?念動力制御に専念させろ。教導隊、SRXを援護!』

 命令を受けた新教導隊が、動きを止めたSRXに迫る敵の足止めをする。

「新兵器の威力……試させてもらう!」

 カイ・キタムラ隊長がフェイザーライフルを連射モードに切り替え、弾幕を張る。

「スピードは三倍どころじゃないわよ、ローザ―線の制御はできる?」

「あったりめえよっ、ってとと……これじゃアルトのほうがましじゃねえか」

「もうばかっ!」

 桁外れの出力でバランスを崩したアラドのビルトビルガーを、ゼオラのビルトファルケンが牽引ビームで支える。

 アラドはその力を利用して自らを大きく振り回し、同時にとんでもない方向に急加速。

 ペアでのフィギュアスケートで、転びかけたのをパートナーが手を握ってくれた、そのまま体を完全に投げ出して振り回しあい、離れざまに無茶なダブルアクセルをかけるようなものだ。

「ちょっと!」

 ゼオラは抗議しつつ体がアラドの意図を悟ったのか、めちゃくちゃな動きの背中を守ってアラドが誘導した敵の動きを先回りし、精密な射撃を続ける。

 フィギュアスケートで、何とか着地したパートナーの腕に飛びこんでリフトされ、そのまま鮮やかな曲線を描くように。

 息ぴったりの高速の舞に敵はついていけず、いいように翻弄される。

「リュウセイに、手は出させない」

 ラトゥーニが機械のような正確さでパルスレーザーを放ち続け、二人を援護する。

 それを、ラミア・ラブレスが正確無比に助けている。

 

 クスハとリュウセイは、仲間と機体の助けもあり、必死で耳を傾けていた。

『私は……』

「イルイ?イルイなの?」

『クロノゲートへ、〔UPW〕の援軍を……そうしなければ、〈混沌〉と結びついたバルトールと、腐敗した〈法〉であるバルマーは争って、多元宇宙全体の滅びにも結びついてしまう。地球も、バルマーも、すべてを守りたいのに』

「なら、守ってやる!」

 リュウセイの絶叫とともに、すさまじい念動力が多元宇宙にいきわたる。

 ほんの一瞬、彼は見た。

 上位存在たちが見る、人間の世界とははるかかけはなれたものを。

 無限の力を。

 永劫に回帰する歴史を。

〈天秤〉と剣、竜を。

「ぐわあああっ」

 激しい苦しみを、ライディースが計器で感知して調整を行い、アヤ・マイの姉妹が念動力で支えて苦しみを分かち合う。

「ほ、報告、します」

 息も絶え絶えなクスハが、かろうじて伝言を伝える。

「なら、ここは支える。レフィーナ艦長、行ってくれ!本艦は巌となって、背を守る!」

 テツヤ・オノデラ艦長の叫びに応え、ヒリュウ改が動き出す。

「波動エンジン出力上昇!テスラ・ドライブ最大!全速で、クロノゲートへ」

『やらせるかあっ!』

 バルトールと戦いながらも叫び妨害するバルマー帝国軍に、ハガネがショックカノンと艦載級フェイザーを連打する。

 そしてヒリュウ改はすさまじい速度でクロノゲートを抜け、懐かしい友の待つ〈ABSOLUTE〉に到達した。




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