第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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混乱時空/時空の結合より2年11カ月

 そこは、まさに〈混沌〉であった。

 ローエングラム朝銀河帝国、ガルマン・ガミラス、新五丈、新西暦(スーパーロボット大戦OG)などの時空が、まるで溶け合うように混じっていた。

 共通の、テレザート星域。

 その混乱範囲を測定するのは不可能であった。

 

 連合軍総司令官となったエンダー・ウィッギンは、情報を得ることを最優先した。

 無数の無人機がジェイン航法で放たれアンシブルを通じて情報を返し、あるいは瞬間物質移送機でデストロイヤー駆逐艦が跳ぶ。

 

 情報を総合すると、非現実的であった。

 要塞が包囲されている。

 包囲している〈混沌〉の、不気味な艦隊は、要塞を攻めることができていない。

 どことも知れぬ場から、さらに次々と膨大な数の〈混沌〉艦隊が押し寄せている。

 そして、要塞には奇妙な二重性がある。地表といえる場があり、そこでは勇士たちが石積みの壁によって、不気味な怪物と鋼の剣で戦っているのがわかる。

 そこに送った無人偵察機は、ある領域に触れた瞬間崩壊した。

「だめだ!そこには、技術は一切入れない」

 リュウセイ・ダテの言葉、大量の無人機で確かめる。

(火薬以上の技術を持つものは、その範囲には入れない)

 と確認され、諸王諸将が苦虫をかみ殺す。

 

 竜我雷が立つのに、エンダーがうなずきかける。

「竜我雷陛下、技術武器を持たぬ兵力をあの要塞に送ってください。そのための援護と輸送艦を、バラヤー・智・メガロード連合にお願いします」

「応」

 今のところ技術水準が低い新五丈は、あまり役に立てないことはわかっていた。

 だからこそ、もっとも危険な肉弾戦に送ってもらえるのは温情と言える。

 

 ラインハルト・フォン・ローエングラム皇帝の美しい眉宇にかすかな嫉妬さえ浮かぶ。自軍の装甲擲弾兵にも自信はあるのだ。

 だが、

(連合軍の、味方同士の足の引っ張り合いは、敵より恐ろしい……)

 このことは、よくわかっていた。

 エンダーという総司令官の恐ろしさも。

 治療から戻って間もなく、別の仕事で帝国を訪れた彼に会った時、

(底の底まで、理解され、受け入れられた……)

 と、圧倒的な安心感を抱いてしまったことを思い出す。

 軍務について以来、無能な上官に悩みながら戦ってきた彼にとって、司令官も僚友も有能であることはたまらない喜びだった。

 ヤン・ウェンリーと共に戦った時のような、ときめきと喜びがあふれてくる。

「ラインハルト陛下。あなたがたの時空における敵と、あの要塞に出現する敵援軍の合流を阻止してください。

 また、艦隊を指揮して戦うと同時に、敵の立場から作戦を立ててください。われわれが、驚きながら壊滅していくような」

 ラインハルトは深い笑みを浮かべた。

 困難を極めることである。

 無能な、彼を厄介者扱いする上官ではなく、深い信頼から困難を預けてくる上官のもとで戦ったことはなかった。

 ラインハルトの天才を心から認めている、それがはっきりわかる無茶な要求であった。

「諾(ヤー)」

 うなずくラインハルトの目は、満足に輝いていた。

(みずからを食い尽くしかねぬ……)

 戦いを求める内なる獣が、破裂しかねぬほどの満腹の予感に震えている。

 

「デスラー閣下。テレザート星周辺の地理を知り尽くし、最高の駆逐艦隊を擁するあなたには情報収集と航路保護を」

「承知」

 デスラーの目に誇りが輝く。

 ガミラス帝国の時代から、デスラーがもっとも力を入れてきたのは駆逐艦(デストロイヤー)だ。

 華々しいデスラー砲、戦闘空母、次元潜航艇やさまざまな超兵器が目立つが、広い星間国家を守り維持するのは多数の駆逐艦にほかならない。

 一番努力してきたことをほめられた、それ以上の喜びはない。

 

 

 エンダー・ウィッギンは高い知能に、深い共感力と容赦ない暴力を併せ持つ。

 同じく優秀だった姉のヴァレンタインは思いやりと天才的知能はあったが、暴力性に欠けると不合格になった。

 兄のピーターも知能は劣らず、暴力性はあったが思いやりに欠けると外された。

 高い知能、思いやり、幼くしていじめっ子を殺害するほどの暴力性を兼ね備えた第三子(サード)であるエンダーが選ばれたのだ。

 彼は部下に共感することで体の一部のように使いこなし、人間ではない敵すら理解して人類に勝利をもたらした。その戦いの中で、バガーとも深いつながりを持っている。長年の放浪で、ジェインとも家族同然に親しんでいる。

 そして自ら滅ぼした敵バガーと、兄ピーターを文章でよみがえらせ、『死者の代弁者』という宗教の元ともなった。

 共感性は『死者の代弁者』としての放浪で磨き上げられ、わずかな情報から出来事を自分の体験のように理解し、相手を深く知り、良きことも悪しきこともありのままに語る能力となった。

 どんな極悪人でも、〈異類皆殺し(ゼノサイド)〉の汚名を持つ自分自身ほどではない……彼は誰でも許し、愛することができる。

 彼を死から救うため、彼のDNAと超高度なナノマシンを合わせた肉体を与えられ、さらにアリシアでレンズも与えられている。

 その後、レンズを自らの心に向け高度コンピュータの性能を用い、第二段階相当の力も持っている。

 指揮官としての能力の高さは、ラインハルトさえも一目で認めた。

「方針は、戦況が変わるまで各時空の有人領域とあの要塞を守ること。敵には読心能力があります。情報収集も続けます」

 

 

 ローエングラム朝銀河帝国では、奇妙な麻薬によって人が変貌し怪物化する乱は収まってきたが、今度は今まで人類が行こうともしなかった方向から新しい敵が出現した。

 オーディンとバーラトを結ぶ線の、バーラト方面の延長。航行不能領域が壁のようにふさがり、自由惑星同盟の開拓を阻んでいた。

 新しい技術により開拓が始まっていた。その先遣隊に、宇宙の真空に耐え超光速で動く生物じみた怪物が襲いかかってきたのだ。

 生物と言っても、地球人が知る生物とは異なる。見た目の質感もまったく違う。

 ハガネの者が見れば、

(バルトールの変形……)

 と指摘するだろう。

 だが、大きく変貌している。

 両の腕はムカデのように見え、とんでもなく長くもなる。胴体は奇妙なフィールドで輝いている。

 光速を超え、高い機動性で艦に肉薄し、腕先の毒牙をシールドに食いこませる。すると装甲材が、カビに侵されたパンを早送りするように数分で腐り果てる。乗員も宇宙の真空で助からない。

 何より、圧倒的に数が多い。

 

 新五丈、ガルマン・ガミラス帝国、新西暦の地球連邦(スーパーロボット大戦OG)の時空も奇妙な敵に攻撃されている。

 戦域が広く、敵が多様だ。

 

 銀河パトロール隊は、以前から戦っていたペリー・ローダンの艦隊が変貌した。

 直径2500メートルの、赤道部が膨らんだ球形のギャラクシス級超戦艦。メガトンの百万倍に及ぶ水爆を、たいていのバリアを貫通する転送波で送るトランスフォーム砲を装備しており、パトロール隊の超戦艦にとっても恐ろしい相手だ。

 それが、奇妙な兵器を随伴しはじめたのだ。ドランと呼ばれる、生物によって構成される戦艦。

 どんな攻撃も受け流し、こちらが触れたら消滅する無敵のパラトロン・バリアで守られている。どうやらすべてを別時空に流してしまうようだ。

 本来、テラナーとは敵であるはずのドランを率いているのは、戦っているローダンが「反それ」に創造されたネガティブ存在であり、ドランも〈混沌〉に汚染されているからとも言われている。

 ほかにも葉巻型の艦など、奇妙な艦がいくつも加わり、恐るべき戦力となっている。

 その艦隊にさらにどこからとも知れず現れたボスコーン艦隊が加わり、パトロール隊艦隊とも激しく戦っている。

 

 新五丈を攻める玄偉の戦力が、もっとも〈混沌〉の名にふさわしい。

 動物・植物・機械・鉱物の区別がない、グロテスクな大艦隊が次々と斉王都・武王都両方に押し寄せている。

 しかも、人間的な軍略も使ってくることがあるのだ。

 

 

 一部が膨らんだ球形艦が、のろいパトロール隊の鉄槌を襲う。

 鉄槌の、使い捨ての主砲が過剰なエネルギーに自壊、ひきかえにすさまじいエネルギーの奔流が吐き出される。

 だが、惑星すら破壊する砲撃も、立ちふさがったドランが広げるパラトロン・バリアの前には無力。さらにバリアを広げて襲いかかってくる。

 しのげたのは、鉄槌に平行時空から手に入れたハイブリッドエンジンがあったからだ。

 空間をねじ曲げるワープは時空振を産み、射程こそ短いが接近していたドランをひるませる。

 そこに、次々と中型艦がワープで出現、即座にフォールドで消える。

 中央に出現した別の艦が、時空振で作られた五芒星と円に魔力を加え、激しい光が虚空を照らす。〔UPW〕所属のマジークで学んだ魔法使いだ。魔法による攻撃は五次元バリアも無視してギャラクシス級戦艦を揺るがし、ドランを狂わせて球形艦に向かわせる。

 

 パトロール隊の時空も、別時空との接触で大きく変貌した。

 同盟以前からスパイ光線で多くの技術を盗んでいたし、正式に同盟してからはより緊密に多くの技術を受け取った。圧倒的な人口は天才の多さでもあり、新技術にも素早く適応した。

 クロノ・ストリング・エンジン、イスカンダル式波動エンジン、フォールド、ハイパードライブ……バーゲンホルムとは別の超光速移動。それらは時空振という副産物があり、それは従来の防御が通用しない攻撃ともなる。

〔UPW〕のロストテクノロジー、特にウィルの超技術、クリス・ロングナイフがもたらしたネリーと三種族の技術、ダイアスパーの技術、シャルバートの技術などを統合した、超絶なコンピュータ。

 きわめて扱いやすい携帯コンピュータ、量産の利くドロイド。

 強力な波動カートリッジ弾。波動エンジンやクロノ・ストリング・エンジンは自爆させれば反物質以上に強力な爆薬ともなる。

 扱いやすい即時通信、アンシブル。それは智がもたらした『電話』やローエングラム朝の超光速通信、イスカンダルの超空間通信との技術交流で、大幅に安価かつ広帯域幅となった。

 敵である太陽系帝国からも、破壊された艦のリバースエンジニアリングを通じていくつかの技術を得ている。

 ただでさえパトロール隊による清潔で有能な統治のおかげで莫大な余剰生産力を持つ二つの銀河に、一年少しで猛烈な経済成長が始まっている。

 まず無数の戦艦に新しいエンジンをつけ、兵士には携帯。

 パトロール隊の時空は、攻撃・防御・移動どれもきわめてすぐれていたが、計算力だけは大きく劣っていた。それが一気に取り返されたのだ。

 

 

 

 多方面で戦う連合軍にとって、最も重要なのは補給である。

 補給は主に、バラヤー・智・メガロード連合、銀河パトロール隊、〔UPW〕、〔UPW〕の母体となったトランスバール皇国、ローエングラム帝国などが引き受けている。

 超技術による莫大な生産がある。バラヤーには、遺伝子技術を求めるセタガンダの莫大な国債引受……信用がある。その信用はベータなど技術水準の高い国の工業力を動かし、多くの物資を生産させた。

 ダイアスパーの絶大な生産力も、そのまま補給となっている。ダイアスパー技術で改良されたゼントラーディ自動工廠も、大量の食料や衣類を生産している。

 ローエングラム帝国は、補給の最終兵器を手に入れた。エル・ファシル自治政府は、最高の援軍を送ったのだ。

 アレックス・キャゼルヌ財務次官の一家。

 士官学校校長で、新技術を用いる艦隊行動の研究にもかかわるメルカッツとも、キャゼルヌはともに戦い息が合っている。フィッシャーはすでに同盟式の兵站管理も教えていたが、キャゼルヌの存在はそれに血を通わせた。

 新帝国全体の兵站・運輸・地理を総覧するアイゼナッハ元帥とも多くの仕事を共にしており、深い信頼関係がある。

 そしてキャゼルヌの指揮でこそ、旧同盟の軍官僚はしごく円滑に動く。

 キャゼルヌ夫人も、国境の壁もあり非公式ではあるが、アンネローゼ・フォン・グリューネワルト皇帝直属聴聞卿の重要なスタッフでもあり、帝国でも知る人は知っている。

(十万艦隊にもまさる……)

 援軍の価値は、すぐに誰もが知ることになった。

 莫大な食料と船があっても、ロジスティックス(兵站)のノウハウがなければ腐るだけだ。キャゼルヌと、〈ABSOLUTE〉とダイアスパーを結ぶ道を構築しているオーベルシュタインは、見事に巨大兵站を運営した。

 

 膨大な補給需要は、各国に高度成長をもたらしはじめた。

 自己増殖工場が増え始める前。指数関数が、一見なだらかに見えている間。

 人間と、ドロイドやバガーが手を携え、たくさんの工場を作った。

 

 ローエングラム帝国の貧しく文盲の農奴たちはバガーに指導され、携帯コンピュータの扱いを表示される動画で覚えながらネジの油を落とした。

 鞭はなく、腹いっぱい食べ、夕には読み書き算数の勉強もさせてもらった。どんなに働いても借金が増え搾取がひどくなるのではなく、まじめに働けば豊かになれることを初めて体験した。新しい携帯コンピュータを与えられ、膨大な娯楽と音読本を得た。さまざまな星、さまざまな宇宙を知った。工夫はルドルフ大帝の遺訓に叛く、家族ごとなぶり殺しにされる罪ではなく、賞賛と金に、よりよい仕事の誇りとなった。携帯コンピュータに映る美しき皇帝の戦いに、参加している実感を得ることができた。

 ひどく貧しく病んだ者には、皇帝直属聴聞卿であるアンネローゼ大公妃の手が細かく届いた。能吏を信頼し権限と資金を与え、不空羂索観音のように女網を操る大公妃の目は十一面観音のようにどこの片隅のみじめな人も見逃さず、千手観音のように多くの手が届いた。人を残虐に支配する構造に安住する者は馬頭観音のように厳しく裁き、如意輪観音のように操り正道に導き、犠牲者を聖観音のようにぬくめ癒し、よい労働力とした。エンダーと同じく底なしの罪悪感を持っているアンネローゼは、同じようにどんな人でも理解し許し操ることができた。

 主にヒルダ父娘やリヒターら開明派官僚たちは、働きが報われることがどれほど人を働かせるか、あらためてわかった。机上の空論ではなく実際に人々を動かし、多くを学んだ。先進的な社会があったフェザーンや、キャゼルヌなど同盟の官僚たちとの交流でも多くを学べた。別の時空から、ゴールデンバウム朝が焚書した多くの経済学・経営学の書物ももたらされた。ゼントラーディなど極端な世界からの情報、『覇者(ヘゲモン)』『窩巣(ハイブ)女王』『ヒューマンの一生』など別時空のエイリアンについての名著、エイリアンそのものとの接触も、自らを客観的に振り返り、現実に有効な政策を考える師となった。なによりも、学ぶことを学んだのだ。

 希望と熱意がこもった高精度のネジは、艦用バーゲンホルムやバラヤー式シールドの部品となった。

 大戦後の、帝国・同盟・ゼントラーディあわせて百万単位の艦船にそれが取りつけられていく。

 

 トランスバール皇国の、エオニア戦歴で難民となった人たちは、無人時空で発見された、無人の巨大工場惑星を掃除し磨き上げ、大量の衣類を作り始めた。

 その原料を作ったのは、新しく開拓された惑星の農場で働くバガーたちであった。

 恒星から深い次元の宇宙線でエネルギーを受け取り、それで照らされた氷惑星の巨大ドームでドロイドを使いこなすEDENの技師たちであった。

 それを運んだのは、リン・ミンメイの新曲やマジカルキョーコの特番を夢中で楽しみ、練由来の餃子を味わい、文化の楽しみのために働くゼントラーディ船員だった。

 

 技術も、圧倒的な物資生産を支えた。

 特にバター虫やその応用、〈ワームホール・ネクサス〉に以前からある大桶と呼ばれる人造たんぱく質製造技術。ローエングラム朝に伝わる、イゼルローン要塞で五百万の胃を支えた水耕農場技術。

 それは〈緑の月〉やダイアスパーの技術、五丈や智、さまざまな星に残された遺伝子資源とつがい、多くの美食を大量に作りだす基となった。

 ルーク・スカイウォーカーが連れてきたR2-D2、C-3POをもととしたドロイド、工業用ロボットの大量生産も、生産力を爆発させるものだった。

 

 様々な時空で、多くの工場もサルベージされた。

 ダイアスパーの銀河は、人類もそうでない異星人も、すべて何らかの呼び出しに応じて別時空に去っていた。

 その無数の故郷の、惑星大の艦を多数を作り上げた工業基盤の多くを残したまま。

 遺棄されていた旧式船も多数あった。

 また、〔UPW〕……〈ABSOLUTE〉につながる、多くの無人時空。その過半は同じ過去を共有している。ウィルに創造され、ロストテクノロジーの時代に発展していた。それがヴァル・ファスクのクロノ・クエイク・ボムにより超光速航行が不可能になり、衰退した。〈EDEN〉〈NEUE〉は星間技術を維持していたが、他の四つは衰退していた。さらにそれ以外の何百もの時空は、人類が滅亡していた。

 人類が滅亡していれば、多くの船や工場が……末期の暴動で破壊されたにしても、残されている。

 そのサルベージは、自己増殖の指数関数がまだなだらかな間、巨大な生産力となった。

 巨大バーゲンホルムによる惑星ごとの移動は、廃墟となった工業惑星のサルベージをとても簡単にした。

 人手もあった。特にローエングラム帝国には、逃げたい人が多くいた。たとえばエル・ファシル守備隊の者は、エル・ファシル自治政府はもちろん新帝国にも居場所がなかった。

 バガーもとてつもない繁殖力で多くの宇宙に植民地を作った。

 パルパティーン帝国に迫害されたエイリアンたちも逃げてきた。

 

 

 智がサルベージし、ダイアスパーの協力で再起動された直径23キロメートルの球形輸送艦二隻、3000メートル級のゼントラーディ艦をベースとした強襲揚陸艦五隻が、新五丈の勇士たちを乗せて敵陣に突進する。

 雷王自ら率いる兵士たちは、以前と変わらぬ甲冑と刀槍を手にしている。だが、その素材は同じに見えてまったく違う。甲冑は半分の重量で、戦艦の装甲より頑丈だ。

 刀もカミソリより鋭いのに鉄塊に斬りつけてもほとんど鈍らず、全体重をかけても折れも曲がりもせぬ。

 ヴァリリア人や装甲擲弾兵の志願者たちも、宇宙服機能のない甲冑に戸惑いながら腕を撫し、新たな戦友と拳で語り合っている。

 勇士たちを送るため、正宗に率いられたダイアスパー技術の艦隊が巨大な破城槌となり、敵艦隊を切り裂く。

 空間を転移するミサイルで時空構造そのものを食い荒らす、量子レベルの極微宇宙生命を大量に送り込み、一定範囲に疑似的な時空崩壊を起こす。

 エンダーの命令を受けたロイエンタール艦隊が援護に回る。

 何百もの、無人の波動エンジン搭載艦がワープで飛びこみ、多数の波動カートリッジ弾を放出して暴走ワープで自爆、時空構造そのものを崩壊させる。

 その相乗効果は、〈混沌〉のこの世ならぬ艦隊すら崩壊させるものだった。

 小型の可変機が、瞬時に超光速に加速して虚空から伸びる触手をかわし、重力の刃を叩きつけ、小さな弾丸を打ちこむ。弾丸の中の自己増殖ナノマシンと細菌の複合体が、周囲の怪物にも感染してすべてを高熱と共に崩壊させる。

 敵はこちらの心を読み、砲撃はよける。なら、よけようがないほどの飽和攻撃。コンピュータに任せた、心のない徹底攻撃。

 敵陣をぶち抜いた輸送艦から降り、技術が入れぬ結界に走った甲冑刀槍の将兵が見たのは、魔物たち相手に奮闘する勇者たちだった。

 様々な時空から謎めいた船で集められた、生命ある者もない者も含めた勇者たち。

 かれらが戦っていたのは、人に似て人ならぬ怪物だった。

 ねじくれた角、青い皮膚の巨人。

 やせ細った肉体、毛むくじゃらの顔に、鳥のような脚をしたこびと。

 下半身が巨大トカゲのようなケンタウルス。

 胸から上が無数の蛇、胸から下が人である何か。

 汚い槍を持つ者もいる。刀より長い爪で岩をかき崩す怪物もある。鋭い牙で血を吸うものもある。

 恐怖と怒号の中、竜我雷王と項武に率いられた勇士たちが殴りこむ。

 銃の援護もない。飛び道具は、滑車によって強化された強弓、レバーを用いデッドリフトの力で引く強弩のみ。

 ヴァリリア人の筋力が常人には引けぬ強弓を次々と放ち、泥巨人の膝を粉砕する。

 倒れつつ、岩をも砕く力で暴れる腕を巨大斧で受け流した項武が飛びこみ、首をはねる。

 後方には病院と食堂ができ、傷ついた兵を治療し、熱い食事を配る。

 敵艦隊と戦いながら、何度となく巨大輸送艦が往復し、水や食料、医薬を運ぶ。

 すさまじい戦いが続く。

 

 

 ローエングラム朝の銀河でも、膨大な艦隊が動き出した。改造されきっていない旧式艦も引き出される。

 だが、完全に元のままの艦はない。わずかな年月ではあるが、約四百億の大人口を武器に生産力の限りを尽くして最低限の改造はしたのだ。

 ミッターマイヤーは、バーゲンホルムとシールドを優先した。どちらも比較的低い技術水準で大量生産できた。

(攻防走、兵が望むのは沈まぬ丈夫な艦、次に速い艦だ……)

 実戦で何百度も死線を潜った帝国の上級大将たちにとって、それは自明であった。

 同盟やゼントラーディから帰順した将兵も、それで深い信頼感を抱いた。

 さらに生産性が高いガミラス式波動エンジン、威力が高い波動カートリッジ弾頭ミサイル、先進コンピュータを量産し積んでいったことで、攻も底上げされていった。

 波動エンジンを積んだ艦は、従来の中性子ビーム・誘導収束ビーム砲の連射速度も大幅に増した。要するに、以前の核融合炉では充電して三連射で使い切り、また充電の時間がかかっていたのが、波動エンジンならコンセントにつないだまま連射できる……むしろ冷却が問題になるほどになった。

 さらに、新技術で強化された艦艇による艦隊機動も、厳しい訓練と将校の再教育で水準は高まっていた。メルカッツとフィッシャーの士官学校に、大中小准将が戻って厳しい訓練と教育を受け、ともに次々と加わる新技術に適応した艦隊機動を研究したのだ。

 重い荷を背負っての長距離行軍で、十年ぶりに足の血豆を潰した。

 何千回もの戦斧とナイフの素振りで、手も血まみれになった。

 行軍で集団運動と正しい歩き方を身につけ、その土台に素振りで正しい剣を乗せた。正剣と正しい集団白兵戦ができたら、新技術の艦船を油にまみれて整備し、信じられない性能の小艦隊で激しい訓練を積んだ。

 血と汗と涙でつづったマニュアルには、血が通っていた。しかもアンシブルなどの複合で、通信も格段によくなっているのだ。

 ガミラス式波動エンジン、デスラー砲が普及していって外されたビーム砲も、要塞の対空砲や大規模工作機器として使われた。かつて戦艦の主砲だったものが、金属塊を切断溶接するのに使われている。

 外された古いエンジンも、即席で作った氷・岩などの急造船に積まれた。

 

 ある意味寄せ集めにすら見える艦隊、だが常勝の天才ラインハルト皇帝、そしてミッターマイヤーと有能な上級大将たち、メルカッツ校長に鍛え直された将官たちは見事な戦いぶりを見せた。

 キャゼルヌの兵站。メルカッツの教育。さまざまな技術。そしてエンダーの指揮。

 それはラインハルトの天才を、何倍にも輝かせた。

 ラインハルトの性格の変化も、多くの人が気づいた。かつてよりずっと柔軟に、より鋭く的確に。

(まるで、キルヒアイス提督が隣にいたころのような……)

 ミッターマイヤーなどは、そう思ったものだ。

 ラインハルトは病を癒すためにエスコバールの病院にいた間、ヤン・ウェンリーから多くを学んだ。ヤンは父となり兄となり師となって、ずっと世話をした。

 長い時間語り合い、調子がいい時にはシミュレーターで無数の対戦をし、多くの戦いを様々な立場で見直した。

 そして快癒し戻ってからは、なにより幸せなひとときがある。アンネローゼと、毎日三十分はともに過ごせるのだ。

 その多くは、報告を聞くだけなのだが。

 ヒルダという妻、そして息子の存在も変化のきっかけとなっている。

 また、快癒後のラインハルトは毎日一時間半ほど、レンズマン通信課程の勉強とすさまじい運動もやっていた。

 そのためには、旧同盟の引退した薔薇の騎士(ローゼンリッター)たちすら招いた。かれらは老い義手義足の身と断るが、皇帝は宮廷費を割いてヤマト地球まで治療にやり、暗黒性団帝国技術の機械体を買って全盛期を取り戻させるほど熱心だった。

 重量挙げなら人間の最高記録の二十倍は軽く疲労も知らぬ、しかも千の死線を生き延びた老巧たち……複数・多数を相手であることも……相手に、毎日四十分の格闘戦を続けた。

 数学や物理の勉強も、時間を短くして詰め込んでいる。

 といっても、ラインハルトはレンズマンにはなるつもりはないが……間違いなく彼は天才であった。艦隊指揮と統治のみならず、勉強や運動でも。

 

 

〔UPW〕の、タクト・マイヤーズ、オスカー・フォン・ロイエンタールのはたらきも劣らぬ。

 六色の〈月〉が保存したロストテクノロジー、そしてウィルの技術。

 バーゲンホルム、ハイパードライブ、イスカンダル式波動エンジン。

 三種族やダイアスパー、シャルバートの超技術。

 まだまだ解析中ではあるが統合は相乗効果を生み、桁外れの技術となっている。

 優れた顕微鏡があれば、より深く別の技術を分析できるというものだ。それを使う者も、ジェインというアンシブル・コンピュータ内の電脳人格、窩巣女王や樹木化したペケニーノ、ネリーやドロイドの、人間を圧倒的に超えた知性が加わっている。

 その超技術で近代化改修された艦隊が、優れた将帥に率いられている。

 タクトの軍は無人艦が多いが、その分大胆な動きができる。

 そしてロイエンタールは、艦隊指揮では

(ラインハルト、ヤンとも同等……)

 と言われるほどに優れている。それが最高性能の数万隻を率いているのだ。

 タクトが率いる艦には、ヤマトが持ってきた地球の、戦没艦の部品を使った新造艦も含まれる。

 信濃。陸奥。フッド。ビスマルク。……何千もの英霊を抱いて沈んだ艦の一部が、〈白き月〉の祝福を受け、最新技術で武装してよみがえった。

 まだ、それがどう違うのかはわかっていない。だが、その艦の来歴を学び、乗った者には深い誇りと覚悟がある。

 それを実現したのは、古代守・進兄弟の、外交官・高級士官としてのちからも大きかった。神聖な財を渡すことをがえんじた、ヤマト地球政府の英断もあった。またラインハルト皇帝も、地球に埋もれた艦の残骸を渡した。

 

 

 激しく傷ついたハガネとヒリュウ改、その機動兵器も、〈白き月〉が生み出したダイアスパー技術を含む〈銀の月〉で修理と近代化改修を受けつつある。

 同時に鋼龍戦隊が携え、バラヤー帝国との交戦で手に入ったEOTも解析され、技術の

(かけあわせ……)

 による爆発的進歩が期待されている。

 

 

 的確な指揮、優れた将兵、強大な艦船、盤石の兵站。

 だが敵は強大で、しかも心を読んで攻撃をかわし、先の先を取る。

 ラインハルトなどはサトリの故事を知る剣聖が無心に刀を抜き投げるように、艦隊を思いがけぬ点に集中して敵を叩く。

 それは多人数に囲まれた剣士が、むしろやわらかな動きで切り抜けるような、神妙の域にすらあった。

 それができたのも、デスラーの駆逐艦隊が多くの情報をもたらし、テレザート星周辺の地理を知り尽くしていたからだった。

 ロイエンタールの精密な援護があったからだった。

 エンダーが、多くの名将を深く理解し、

(潰さんばかりに……)

 激しく使っているからであった。

 

 むしろ消耗は物質や兵力よりも、エンダーや諸将の心にこそあった。

 それに応えられるのは、別の彼方で戦い続ける、戦友たちだけである……




エンダー四部作
ギャラクシーエンジェル2
銀河英雄伝説
スーパーロボット大戦OG
宇宙戦艦ヤマト
銀河戦国群雄伝ライ
レンズマン
超時空要塞マクロス

宇宙英雄ローダン・シリーズ
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