第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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混乱時空/時空の結合より3年1カ月

 遠い時空での、仲間の奮戦によりついに、

(心を読まれているので、最善手で犠牲を出さないのが精いっぱい、攻められない……)

 ストレスのたまる戦いは終わった。

 圧倒的な数と強さの敵。

 バーゲンホルムなどの技術はすでに持っている、どれほどの数か見当もつかぬボスコーン艦隊。

『反それ』がつくった、悪の独裁者ペリー・ローダンに支配された、暗黒の太陽系帝国艦隊。

 玄偉の、艦隊ともいえぬ〈混沌〉怪物の群れ。

 バルトールが何かにとりこまれ姿を変えた、人型の器用さと心なき集合体の従順さを兼ね備えた機怪。

 星の数より多く見える敵。

 

 

 エンダー・ウィッギンは、敵の中にある数少ない「人間」をしらべた。

 竜我雷の新五丈、その母体となった比紀弾正の四天王、玄偉。その軍師、華玉。周辺に目撃される、新五丈などから裏切った何人か。

 

 華玉の師である李張に、華玉について聞いた。李張からは玄偉の、妖魔としての正体も聞き出せた。旧五丈からの臣、玄偉の部下だった人たちにも話を聞いた。

 敵であった智の紅玉からも話を聞いた。

 

 かつ、膨大な紙束があった。

『書を争う』あるいは『三軍師、書を競う』と、のちの世に故事成語ともなったできごと。

 弾正の死後、簒奪した骸羅の暴政を竜我雷が倒した……最後に割りこんだ玄偉と、一応は共に。競争しつつ。

 首都陥落の混乱の中、骸羅の弟で軍師であったが、師真の反間の策により投獄されていた骸延が正気を取り戻し、立て直しのために行動を始めた。

 まず書庫に向かったのだ。旧五丈、さらにそれ以前銀河帝国からの、膨大な公文書・資料。

 金銀宝玉などだれにでもくれてやればよい、書さえあれば……

 だが、同じことを考えた者は二人いた。

 玄偉の軍師、華玉が書庫を襲っていた。

 そして書庫の前、大覚屋師真の名を受けた林則嘉が、筒先をそろえ先んじて制圧していた。

 玄偉は弾正の親族を連れてきて陰謀をたくらみ、華玉もろとも妖術で逃げうせて今〈混沌〉の軍勢を率いているようだ。

 骸延はみずから名を選んで処刑された。反間を用い書を守った軍師の存在に負けを認め、

(満足したもの……)

 であろうか。

 

 その貴重な書。玄偉が弾正に従い戦った、百戦がなす書類の山。

 エンダーは玄偉を知るため、それを読んだ。許した竜我雷と大覚屋師真の度量も大である。

 

 相手を理解し、愛し、かつ殺す……それがエンダーである。

 バガーを滅ぼした時も。

『死者の代弁者』として多くの死者の、良きことも悪しきこともありのままに語った時も。

 パルパティーン帝国から惑星連邦を守るため、帝国の大提督を陥れた時も。

 愛する者を殺すのだ、本人の痛みこそ大きい。

 

 話を聞き、報告書を読む……それは、まさに『死者の代弁者』であった。一人の人間をよみがえらせる、良きことも悪しきこともありのままに……

 そして、理解していれば操り、はめ、滅ぼすこともできる……

 それだけではない。戦っているからこそ、〈混沌〉軍、ダークブレインなどの人ならぬ部分も、そのまま理解することができる。

 バガーやペケニーノなど、知性のあり方が異なり相互理解が極度に困難な異星知的生物とも、交渉共存の先鞭をつけたのはエンダーだったのだ。

 

 敵の圧倒的な数と、ありえない変化。

 生物と非生物。動物と植物。個体と個体。気体と液体。情報と実体。フィロティック思考と15次元情報処理。魔法界と現実。悪夢と超空間レーダー。

 そのすべてがまさに混沌、入り混じっている。渾沌、あるべき器官も、機関もなく暴れている。

 さらにそれは、人の……悪霊の智謀で操られている。人の弱みを突くように。恐怖と嫌悪を引き出し、それを力とするように。

 それは強みであり、弱みでもある。

 

「うぬぼれが強い。自分の賢さを自慢するふしがあった。確かに兵法をよく知り、よく使う強敵ではあったが、それも弾正に使われていればこそだし、狼刃や骸羅といった、理屈抜きに兵を鼓舞する猛将がいたからこそだ」

 そう、智の紅玉は嗤った。

「わしに正統な兵法を教わった華玉と、恨みが本質にある玄偉が、どこまで息を合わせ続けられるか……華玉が潰れる時が必ず来る」

 李張は痛ましげに言い、師真もそれをがえんじた。

 

 エンダーは実戦の作戦の多くは、しっかりと諸将に任せた。

 戦争の天才、ラインハルト・フォン・ローエングラム皇帝。

 豪放な新兵器と精緻な駆逐艦網を使いこなすデスラー。

 英雄タクト・マイヤーズと、その丸投げを受けて全力を発揮しているオスカー・フォン・ロイエンタール。全力で補佐しているレスター・クールダラス。

 次々に入ってくる超技術を解析し、少しでも使える追加装備を全軍に供給する努力を続け、多数の無人艦生産を続けているノア。

 ダイアスパーの無尽蔵な技術と物資を持つ紅玉・コーデリア・未沙の三女桀。

 兵站の神々とさえいわれるようになり、長期的視野で軍民問わず生活すら向上させているパウル・フォン・オーベルシュタイン、エルンスト・フォン・アイゼナッハ、アレックス・キャゼルヌ。

 連合軍相互の外交・利害調整を円滑に行うマイルズ・ヴォルコシガン夫妻。

 まさに綺羅星……

 

 まず押される。わざとミスをする、兵法の原則からいえば間違ったことをする。

 実際にありえるミス、新技術を扱いそこなうふりをする。

 そして、兵法巧者が最も好む状況を餌とする……包囲殲滅。

 そのための強引な機動や防御しつつの後退は、逆に〈混沌〉の戦力を半減させもする。

「敵としては、まっすぐ何も考えずに突撃すれば勝てる……そのことを忘れさせ、華麗な戦術的勝利を餌にする」

 ラインハルトはエンダーの言葉に、なぜ自分がヤン・ウェンリーに勝てなかったのかはっきりと悟った。

 華麗で完璧な勝利を求める性格を見透かされ、それ自体を餌にされたのだ。

 それで、ヒルダと双璧の先手、トリューニヒトの臆病さがなければ今一歩で自分は死んでいたのだから、

(エサに食いつく魚と同じではないか……)

 と嗤うほかはない。

 さらにいえば、ずっと前から魚同然の自分を築き上げてしまい変わることができなくなっていた、そのことまで見透かされていた……今はそれも理解している。

 そして敵をその愚か者にしてやるのだ、これほど楽しいこともない。

 人を超えたフォースによる、未来予知を含む情報を拡大された力で処理し、巨大な艦隊を操って踊り始める。一見勝っているが、高みから見ればカンネーにならう包囲殲滅に向かっている愚か者の演技だ。

 将兵の中に、中途半端に広い範囲を見てこのままでは負ける、と思ってしまう者が出る、という問題もある。作戦全体を全員に言うわけにもいかない。

 そこでも、ラインハルトは巧妙に、人を超えたフォースを用いた。操られたと意識もさせず、自分への信頼感を強めたのだ。

 

 作戦の隅々に、駆逐艦網があった。

 大幅に射程を長くした瞬間物質移送機で、ほんの百分の一秒出現し、あらゆる情報を収集したり微小無人機を多数放出したりして、即座に消える。

 旧式のワープからディンギル式のワープ、さらにハイパードライブまで併用。

 魔法を用いて空間から痕跡を消す。

 そして帰投して報告、整備の上、また動き出す。

 また、コンテナを外付けした即席輸送艦として、物資が不足しそうな味方艦に当座必要な物資を送る。

 規模の大きい輸送艦隊を護衛する。

 次元戦闘艇と協力して、敵の奇襲を感知し先制で叩く。誰にも理解できない虚空の一点に、時空そのものを破壊する微小カプセルをばらまく。

 その奮戦は目立たないが、実に大きなものだった。

 その駆逐艦の生活面も、大きく向上していた。

 うまいガトランティスコーラとガミラスサンド、イスカンダルジェラートが、小型駆逐艦や大型爆撃機でも出る。メニューもきわめて多くなっている。

 完全な閉鎖環境システム、人間が出す衣類や皿も含む汚れ全部を回収再利用するシステムが、レプリケーターの技術も応用され、小型化されて大量生産され、駆逐艦にも規格モジュール交換の形で組み込まれた。

 将兵の艦内生活の向上もこの戦役による、大きな変化だ。それはローエングラム帝国軍も同じだ。

 

 ダイアスパーやその技術を最初に入れたダイアスパー銀河を領域とする智・バラヤー・メガロード連合でも、ローエングラム帝国でも、〔UPW〕やその加盟時空でも、最優先で量産されていたのがキルトラ・ケルエールの改装艦である。

 全長3000メートルの重装甲輸送艦・強襲揚陸艦。大量の自走コンテナを積み、時には小艦隊をまとめて、時には輸送艦隊を組んで大艦隊を、緻密に補給し続ける。

 その場に至れば、本を100ページずつまとめて開くように四枚の厚板になり、表裏両面から無数のコンテナが噴き出し、無人で自走して目的地に向かう。

 圧倒的な装甲は敵襲にも耐え、逃げ切れるだけの足もある。

 強襲揚陸艦は、それだけでは価値はない。ヘリコプター、垂直離着陸機、揚陸艇などがあってはじめて力を発揮する。

 それも、各時空は従来あった艦艇を用いて作り上げていた。

 貴族連合艦隊から接収された、惑星鎮圧を重視する巡洋艦がヘリコプターのように運用される。

 旧同盟の戦艦が、主砲のかわりに強力なシールドを載せられて牽引ビームカタパルトで射出される。

 壮大な艦船が小虫たちのように、激しく動き回る。

 

 ローエングラム帝国で輸送艦網を統括するアイゼナッハは事実上艦隊司令官から、兵站・運輸全体の尚書とされ、

(ミッターマイヤーをもしのぐ権勢……)

 という者もいる。

 また、パウル・フォン・オーベルシュタインは〈ABSOLUTE〉とダイアスパーを結ぶ道、〔UPW〕全体の生産と兵站にも高い力を発揮している。その力もまた、見方によってはラインハルトすらしのぐものがある。

 

 

 中央にラインハルト・ファーレンハイト・ミュラー・ルッツ艦隊からなるローエングラム帝国艦隊、右翼のロイエンタール率いる〔UPW〕無人艦隊が、ボスコーン艦隊を中心とした敵の、ファランクスのように堅固な艦隊を押しこんでいる。

 時空すら荒らす、ブラックホール砲とクロノ・ブレイク・キャノンの複合攻撃で。

 その全体を見れば、まるでラインハルトとロイエンタールが仲が悪く、協力どころか競争しているように見える。出向先で本国より巨大な艦隊を得た功臣と、若く健康不安も露呈した皇帝、互いに流れ弾を狙うのは歴史の必然とだれもが言うだろう。

 そして戦場全体を見る目があれば、そこに起きていることははるか昔、ハンニバルとローマ帝国の戦いと同じだ。

 ひたすら押しこむ。突破できない。敵はU字ならぬコンドームのようなへこみとなり、艦隊を包みこむ。

 離れたところでは、紅玉率いる智の巨大高速機動要塞を、20キロメートルもの巨大な騎馬が追いやっている。騎兵というにはあまりにも不気味で邪悪な存在だ……ジャガイモのような小惑星が寄り集まり、無数の触手を持つ怪物が絡み合い、全体がケンタウルスと両生類を合わせたような存在になっている。いや、それはある種のレーダーに映った陰であり、近くでその姿を直接見た者などない。観測者が何人も発狂した。第三段階レンズマンでもなければ直視はできない。

 銀河パトロール隊の高速艦隊も、同様に追い払われている。

 敵の騎兵隊が蓋として走り戻り、……

 玄偉の哄笑が、華玉の警告が聞こえる気がするほど見事な包囲殲滅のはじまり。

 ヤンも、マイルズもよく知る、ハンニバルが描いた戦史上最も美しい芸術品。地球とは別の歴史を経たデスラーも紅玉も、戦史で似たものを学んでいる。これほど美味なエサはない……

 

 

 そのころ、タネローンの一面である技術が禁じられた要塞では、竜我雷をはじめとする将兵が激しい戦いを続けていた。

 異形の怪物たちを相手に、極端に硬く頑丈だがそれ以上何もない、刀や槍、弓矢だけの戦いを。

 雷の、実戦で鍛え抜かれた剣。

 項武のすさまじい力で振るわれる大斧。

 竜巻のように、近づく敵はすべて切り伏せられる。

 際限のない時間稼ぎの戦いでも、覇王の気迫がある限り何度でも気力は甦る。

 まして、飯がうまい。補給はきっちりとなされている。

 むしろそれは、マラソンに近かった。ひたすら体力と気力の勝負。それは外で戦う宇宙艦隊に、劣るものではない。

 

 

 艦隊戦では包囲が完成し、そして科学を入れぬ大地では竜王たちが力尽きる直前……

「見えた」

 酸素大気を呼吸せぬ第二段階レンズマンと、その傍らの幼女が嗤った。

 混濁した時空の、どの時空でも観測されていなかった巨大すぎる暗黒星雲。それ自体が数パーセク規模の巨大要塞。

 要塞と言うには違う、堅固な壁というよりも、繊細な海綿のような。だがそれは美しさとは真逆、誰もが嘔吐を免れぬ不気味さだった。

 何十万人もの第一段階レンズマン、その半数以上が魔法を学び、魔法をレンズとジーニアスメタルで強化し、『観想』に全能力を集中した。

 その結果あぶりだした敵の拠点。

 そこに、最精鋭が集中して突撃した。

 タクト・マイヤーズ率いるエンジェル隊。ビッテンフェルトの黒色槍騎兵。ヤマト。修理がなった鋼龍戦隊。帰還したアッテンボロー艦隊。

 

 さらに無防備に包囲されていた、ラインハルトとロイエンタールの艦隊は無人艦隊を先頭に、大きく曲がって突破を図った。

 それまでの、力を無駄に分散させる愚かな押し方とは違う。完全に一点集中、全艦隊を一槍と化す。集中の原則を誰よりも知っている。

 

 ミュラー艦隊がそれまでの「押す」艦隊に交代し、敵の反撃を支える側に回った。45キロメートルのガイエスブルク級機動要塞多数、装甲もバリア類も圧倒的に強力。どんな攻撃も別次元に流すシールドも含んでおり、いかなる攻撃でも崩れることはない。

 

 外から、要塞サイズの無人次元潜航艇が出現、同時に亜空間から浮上する力そのものを破壊エネルギーに変え、自爆しつつ叩きつけて包囲網にひびを入れている。

 いたるところに一瞬出現するデスラーの駆逐艦隊と無人潜航艇が、精密な情報をラインハルトとロイエンタールに届ける。

 

 無人艦隊がロイエンタールの芸術的な指揮で、消耗しつつも敵を計算通りに弱らせる……それを押し分けるように包囲網に立ち向かうのは、ファーレンハイト艦隊。

 大艦巨砲主義のきわみ。駆逐艦に至るまで全艦デスラー砲、三割ほどはクロノ・ブレイク・キャノンとイスカンダル式波動砲の複合砲を装備している。そして速度と機動性も重視……装甲は犠牲にして。

 撃たれる前に撃つに徹した艦隊だ。それは多数の、バガー入りの人工紋章機がかばう。強力なシールドと集団狙撃で、敵のミサイルや砲弾それ自体を濃密に迎撃する。

 

 その背後からルッツ艦隊が、精密にファーレンハイトの横腹に攻める敵を狙撃する。全艦が狙撃銃のように長射程高精度、さらに無数の、観測システム全振りに改造したスパルタニアンを入れている。情報を収集し、先手を取って正確な遠距離射撃。冷静そのものの指揮と狙い、一点集中射撃すら実現させている。

 

 ラインハルト艦隊も、以前とはまるで異なる。以前の華麗さと危なげがない。

 無駄に多数ではなく、小艦隊の指揮に本当に優れた提督を抜擢し、最高性能の艦を集めている。それを精密に手足のように操り、武術の達人のように戦っている。

 きちんと戦争全体に目を配り、エンダーやデスラー、紅玉とぴたり息を合わせて。

 入院中ヤンを師として学び、有能な別時空の支配者たちと知り合った天才は大きく変わり、貪欲に向上を続けている。

 

 だがそれでも、玄偉から見ればラインハルトはおろかだ。なぜなら、艦隊が突破しようとしている方向の先にたゆたっているのは、以前の戦いで時空が荒らされ、フォールド断層だらけで、バーゲンホルムの障害になる小惑星や微小ブラックホールが無数の暗礁となっている、地獄の泥沼なのだから……さらにそこには多数の艦隊も伏せてある。

 その泥沼が消え失せるまでは。

 膨大な指向性ゼッフル粒子が、ウィルスのように時空のはざまで、時空そのものの量子的なエネルギーを食べて増殖する生命とも機械ともいえぬ極微体によって作らればらまかれていた。かなり大きなガス星雲の規模で。

 その爆発エネルギーは小惑星も伏兵艦隊も、すべて拭い去る。

 微小ブラックホールの近くに浮上した巨大艦が、中からカエルのような生物を放出する。そいつは真空でも平気で、それが微小ブラックホールをぱくりと食べてしまい……直後に跳躍すると、そのまま別次元に失せる。そのあとには何も残らず、問題なく通れる。

 さらに逃げていたはずの智の巨大要塞群が、行きがけに、戦列艦のように……縦に並んだ艦の、舷側に多数並んだ砲が、巨大な機関砲と化すように、通りがけに巨砲を放って行き過ぎた。

 時空そのものを削るブラックホール砲の嵐と強大な魔法が、時空に遍在するクロノ・ストリングをねじまげて力でブラックホールを吹き飛ばし引き延ばして、時空そのものを耕して道を作った。

 さらに智の巨大要塞に包囲を抜けたファーレンハイト艦隊が混じり、敵主力を背後から襲う……支えるミュラーをアンビルとした、完全な金床戦法。

 

 

 この戦闘全体を見る目があれば、もっと早く気づいているべきだったことがある。

 ローエングラム帝国の主力であるミッターマイヤーとワーレンの艦隊が、事実上行方不明なのだ。

 ミッターマイヤー艦隊はバランスと信頼性を重視して再編された。もともと、一つ一つの艦が極端に速いわけではない。遠足で、点呼休憩にものすごく時間がかかるのと同じく、艦隊の管理に時間がかかる、それを様々な工夫で解決したのが『疾風』の異名を持つ高速艦隊の本質。

 ならば走攻守に情報も高いバランスの良い艦を集めれば、情報管理によってより高速かつ高衝撃力の艦隊ともなる。

 それとバガー艦隊・ワーレン艦隊が共同し、ダークブレインと玄偉二つの頭脳の、すきまを奇襲した。

 ワーレン艦隊は、真っ先にデスラー砲・バーゲンホルム装備の試作艦で編成された艦隊を完成させており、扱いには習熟している。少数精鋭ではあるが、戦力は特に高い。

 

 ちなみにローエングラム帝国全体を守っているのが、本土守備に徹したメックリンガー艦隊。

 素早く事が起きた星系に飛び、確実に敵を駆逐して惑星に上陸、怪物やテロリストを掃討する、対ゲリラに特化したシステムになっている。

 それがケスラーの憲兵隊と密接に協力し、ラグナロク戦争でもゼントラーディ戦役でも本拠を守り抜いた。

 その戦力は、敵の索敵を阻むことにも活躍した。ゲリラ型の敵は、情報収集に特に優れる。そしてその情報を断てば、ゲリラはあっという間に立ち枯れる。

 

 

 新生黒色槍騎兵艦隊が、ついに解き放たれた。

 ローエングラム帝国の象徴というべき艦隊である。何度も壊滅し、敵にもそれ以上の打撃を与え、建て直されている。

 今の艦隊はすべて新造。全艦3.5キロメートルの黒いラグビーボール。

 正面にネガティブ・クロノ・フィールドを出したまま高速で直進する……それだけだ。

 当たったものを別時空に飛ばし消滅させる、パラトロン・バリアに似たシールドをつけての突撃は、文字通りランスを構えた騎士のように前方のすべてを破砕し、正面からの攻撃に対しては無敵だ。前方攻撃・突進・前方防御以外何一つ考えていない。横からつつかれれば瞬時に壊滅する。

 そして黒色槍騎兵にひどいめにあわされた旧同盟軍人もゼントラーディも、このバカ艦隊に争って応募する……競争率の高さは恐ろしいものがある。それまでの戦死率の高さも、誰も省みない。

(軍人ならば、もっとも名誉ある艦隊に志願せずどうする……)

 と、誰にも認めさせるものがあるのだ。

 ファーレンハイト艦隊とどちらが馬鹿でどちらが強いかは、常に酒場の話題となっている。

 ミッターマイヤーとロイエンタールは、

「両方消滅するだけだ」

 と呆れていた。だが、

「どちらも敵に回したくはない……」

 とも言っている。

 

 それを敵に回した超要塞が、一気に削れていく。

 大きく開いた穴、誰が見てもわかる弱点を突こうとした敵を、虚空から出現する艦隊が押しとどめる。

 銀河パトロール隊艦隊。絶対無敵の防御が、無敵の先端をきっちりと防護する。

 黒い槍が穿った穴に、ヤマトに護衛されたルクシオール・ヒリュウ改2・ハガネ改が突貫する。

 巨大要塞の中央、ダークブレインが待つ悪夢に……




宇宙戦艦ヤマト
ギャラクシーエンジェル2
銀河英雄伝説
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