第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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混乱時空/時空の結合より3年1カ月

「どうした!」

 戦場で、次々と叫びが上がる。

「要塞が、消える」

「いや、何かが要塞を食っているんだ」

 星系サイズの巨大要塞、時空がねじ曲がりあり得ないものがうごめく悪夢。

 そこに見えない極微の流星雨が降り注いだかと思うと、無数のウジ虫かセンチュウ、それとも大きなつるまきバネのようなものがうごめいている。食べている。

 そのウジは食べながら分裂し短い数本が食べながら元の大きさになり、猛烈な勢いで繁殖している。変化し、進化している。

 もちろんその食欲は、戦艦や機動兵器にも襲いかかる……

「退避!」

「シールド最大!」

「撃て、撃てえっ!」

 悲鳴と絶叫が上がる。

 さらに、ウジは虚空の中でさなぎになる。サナギの背中が割れる……

 そして出現した、太った何か。

 ハエだったらまだよかった。

 流れ星のような、黒い光の塊が多数、飛んで集合する。超能力者たちの耳に哄笑が響く。

「あ、あれは」

 コンパチブルカイザーからの通信。コウタの中にいる戦士ロアは、数多の戦いの中で経験があった。

「ダークブレインがはるか昔に創った手下の一つ……すべてを食う者。やつの影の一つが人間世界では悪魔ベルゼブルとも呼ばれていた。倒したはずだが」

 形のない、渦のような影。それが、ダークブレインに膨大なエネルギーを与える。

「おおおおおおおお」

 叫びが空間をきしませる。

「そうか、この要塞は、ダークブレインが創ったものではない。ずっと昔からあった、別の何か……それにダークブレインがとりつき、乗っ取ったんだ」

「そして、食いつくした……」

「くるっ!」

 リュウセイ・ダテが、優美な戦闘爆撃機から波動砲をぶっ放した。改良が進んでおり、準備から発砲までが早い。機体を制御するライディース、それを助ける超コンピュータの能力も大きい。

 発射と同時に、

「みんな逃げろおっ!ライ、バリアを最大!アヤ、マイ、力をふりしぼってくれ!」

 リュウセイはそう絶叫した。

「了解!」

「ええ」

「わかったわ」

 応答とともに、SRX隊が新たな愛機で力を振り絞る。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

 リュウセイが力を振り絞って抵抗する……

「だめ、遅らせるのがせいいっぱい」

「みんな、みんな、逃げてえっ!」

 アヤが激しい苦痛を訴える頭を押さえ、絶叫した。

 ダークブレインの周囲の虚空から、何千体と知れぬ怪物が出現する。鉱石でできたドラゴンのような。

「クリスタルドラグーン」

 戦士ロアの声。

 

 

 全体の戦局も、大きく変わりつつある。散らばっていたのが集まっていく〈混沌〉軍から、ロイエンタール艦隊が逃げ回りながら反撃を繰り返している。

 釣り野伏せを狙っているように見える。だが客観的に計算すればわかる、もしかなり強い伏兵があっても、この勢いでは食い破られてしまい逆効果だと。

 確実に追い詰められつつある。ダークブレインとの挟み撃ちに。

 親友を助けようとミッターマイヤー艦隊が別方向から襲うが、しっかりと読まれ受け止められる。わずかなタイミングのずれが、両方を受け止め切るだけの力の余裕につながってしまう。それは事実上ある種の各個撃破でさえある。

 自由惑星同盟の、また門閥貴族の、そしてゼントラーディのいくつもの艦隊に勝利した、最高のコンビネーションをうたわれた双璧が。

 かろうじてわずかに残る人の心で、華玉が警告の叫びをあげ続けていることが、通信に混じる。その警告も、もはや逆効果なのだが。

 どう見ても、双璧の壊滅は間違いないところだ。

 

 

 第二段階ダークブレインが、星系サイズの巨大な腕を振るう。

 無限の智識が動きを読む。それに対し、多くの古代超文明の英知を集めた超々コンピュータ……その内部で生きるジェイン、アンシブルで統合された窩巣女王がありったけの知恵比べをする。

 波動エンジンのパワーを持つ機械馬が、バーゲンホルムをかけてすさまじい加速をし、突然有慣性化して巨大すぎる腕の上を駆ける。

 もはや、鋼龍戦隊の機人たちは人を超えていた。巨大な機械すら、より大きな存在の一部でしかなかった。

 強大な念動力者、サイコドライバーたち。

 百戦錬磨の戦士たち。

 ルーンエンジェル隊の、白い翼を広げた紋章機。宇宙そのもののエネルギーより大きいともされる、ロストテクノロジーの精髄を解放する。

 ヤマトも、その秘めた力を自然に扱っていた。どのように、と説明などできない。ただヤマトが戦っているだけで、味方は無限に強くなる。物質も精神も超える。

 それを、高度技術で作られた艦隊が的確にアシストする。

 必死で抵抗する鋼の竜騎士たち……

 そして双璧の大艦隊が、追い詰められ挟み撃ちに押しつぶされそうになった。

 

 そのとき。

 その形に至るまで、総司令官エンダー・ウィッギンが、敵の性格を見事に把握していたからこそだった。

 ラインハルトの大胆にして緻密な作戦計画あってのことだった。

 デスラーの駆逐艦網が、精密に宇宙地形を調べていたからこそだった。

 キャゼルヌとオーベルシュタイン、アイゼナッハの緊密な兵站あってのものだった。

 突然、壊乱状態から完全に統制を取り戻したロイエンタール艦隊とミッターマイヤー艦隊は、すさまじい速度で反撃しつつ逃げ去った。さっぱりと、一隻も残さず。

 あとには完全な目くらましの、煙幕の闇が残った。

〈混沌〉の理性のない攻撃がダークブレインに突き刺さり、ダークブレインが使役する食欲だけの蟲怪が〈混沌〉に、さらに追随してきたボスコーン艦隊にも食らいつく……

 激しい同士討ちが始まってしまった。

 

「まったく、名人芸だな」

「ああ。俺も励まねば」

 ロイエンタールとミッターマイヤーが息をつく。

 ふたりの手は、指揮コンソールに載っていない。指揮そのものを遠隔操作に任せていたのだ……ダスティ・アッテンボローに。

 双璧も幾度もしてやられた、嘘逃げの達人に。

「……俺も、卿の息子のためならなんでもする」

「それは、戦いが終わってからだ」

 ミッターマイヤーが口にしたのは、敵にさらわれたロイエンタールの息子のことだ。

 画面では冷徹にきらめく金銀妖瞳、だがその激しさは、親友だからこそわかる。

 

 まさに順調だった。同士討ちで食い合う敵、それを包囲しようとする陣形……

「え」

 何人も、呆然とする。

「ひいいいっ」

 レンズに、人が出すものとは思えない絶叫が走る。それはフォースの即時衝撃ともなり、ジェダイたちも叩く。

 突然の暗転。

 虚空の奥の奥に隠れ、戦争など無視して陰で自分の目的を追うことに徹していたナドレックの船……それが、レジナルド・ブルの艦隊に奇襲され姿を見せてしまい、転移したダークブレインがひとのみにしたのだ。

 キムボール・キニスンの娘の一人が乗っている。

「あ、ああ……カレン」

「ケイーっ!」

 父母の、悲痛を極める絶叫が、レンズを通して耳をつんざく。

 瞬時に、ダークブレインは変貌した。測定不能の超次元力で。

 無数のウジを飛ばし、急速に〈混沌〉を食い尽くしながら分厚い繭をまとう。

 繭の奥で、急速に変貌していく。〈混沌〉を、第二・第三段階のレンズマンも消化して。

「レンズごと……完全に消化されてしまった」

 それでも冷静さを失わないトレゴンシー。腕の中の幼いカミラが、火が付いたように泣きわめいた。

 もっとも近くにいた、ロイエンタールが瞬時に決断、艦隊を編成する。それを見たミッターマイヤーも素早く追随した。

 波動砲やクロノ・ブレイク・キャノンを含む巨砲の、ヤンゆずりの一点集中。メルカッツとフィッシャーによる再訓練を受けた将官佐官たち、ゼントラーディ将校たちが、しっかりと基本通りに双璧の手足に徹し、艦隊を制御する。ヤン艦隊にも劣らぬほど。

 最新のチャージャーは、ほぼ瞬時に発砲可能にする。

 自らも息子をさらわれたロイエンタールが、冷徹に人の愛娘に発砲する……ミッターマイヤーこそ、その辛さを知っている。

 ロイエンタールの近くにいるジェダイたちも、フォースを通じてすさまじい苦悩とすさまじい意思を感じていた。

「う」

「まて、撃つな、吸われるっ!」

 リュウセイの絶叫。

「発砲中止、全力退避!」

「中止、逃げろ!プログラム21!」

 ロイエンタールとミッターマイヤーが素早く叫ぶ。

 発射されてしまった百発近く……それは、繭に一点集中するとともに奇妙な、黒い虹の輝きとともに吸収されていく。

 繭の中身の力が倍増するのがわかる。砲撃のエネルギーそのものを吸収し、自分の力にしたのだ。

 発砲したため逃げ遅れた艦にウジの群れが襲いかかり、食い尽くされる。

 もごり。もごり。

 繭が鼓動する。うごめく。

 ぴしり。

 わずかな割れ目が、時空に生じる。

「くる」

 リュウセイがうめく。

「第三段階……見たことがないぞ」

 戦士ロアもおびえた声をあげた。

 

 ただ、圧倒された。歴戦の名将たちが。

 神を見たヨブもそのような衝撃を受けたのだろうか。

 クラリッサ・キニスンによく似た、完璧な美女の裸の上半身。男は全員、情欲を通り越して圧倒されて、文字通り魂が消えるほどだった。

 その額には、巨大すぎる純黒のレンズが黒い輝きを放っている。黒ダイヤにも、黒鉛にも、何にもまさる完全な黒。唯一の装身具であるそれが、とてつもなくまた美しい。

 下半身は虚空とつながっている。

 巨大。人間であれば身長7000メートルには及ぼうか。

 巨大な脳が、巨大な頭にバランスよく収納され、巨大な体と調和してつながっている。

「ダークブレイン……絶対の脳が、ふさわしい身体を手に入れたか」

 その手が振られると、〈混沌〉もボスコーンも、ネガティブローダンやそれに協力するドラン・スプリンガー・超重族たちも、空間を破って整然とした艦隊を作る。

 艦隊は、巨大な超美女の下半身から伸びる何かを通じて、それと一体化しているものか。

 クリスタルドラグーンやスカルナイトが多数、その艦隊を率いている。

 滅びた文明の亡霊艦隊が、黒い衣をまとって従っている。砲光もミサイルも機動兵器も艦もすべて食い尽くす蟲王が貪欲な卵を放っている。

 はっきりとわかる。絶望だと。

 それでも、戦い抜く。指揮官の声が響いた。

「全艦、隊形を組め。全砲斉射用意」

 自分たちを深く理解する最高指揮官、エンダー・ウィッギンの命令。

 それが皇帝や提督たちを立ち直らせ、その叱咤が将兵全員にくまなく闘志をよみがえらせる。

 ラインハルトが事前に作っていた、完璧な艦隊編成図……極超光速の艦隊が、即座に指定されたルートを走り、艦隊の形を成す。

 

 護衛傭兵のクロと話しつつ戦局を楽しんでいるデスラーは、静かに微笑した。

「そういうことか。完全なものは脆い」

「ああ、覚えがある。パワーアップ欲に溺れて自滅した敵を何度か見た」

 クロもうなずく。

 巧みに敵の、騎兵隊に当たる戦力を引きずり回している智の正宗は静かに笑って、マーク・ピエール・ヴォルコシガンと弟王に聞いた。

「アンドルー司令が何を考えているか、わかるか?」

「わからない……」

 苦悩する少年の目を、姉の隻眼がしっかりと見る。

「よし、そこからだ。自分の弱さを知って、それから歩き出すんだ。私も昔はそうしたんだ。一条提督」

 正宗とコーデリアのうなずきを受けた一条未沙が夫である輝のエスコートを受け、別の艦に移乗する。

「亢龍(こうりゅう)悔いあり」

 そう正宗がつぶやく。

「見ておくんだな。おれも、軍事的才能では兄に絶対勝てない……グレゴールも。でもできることをしているつもりだ」

 マークが少年王を励まし、それをコーデリアが優しく見つめた。

 

 巨大な艦隊の先端にいるのは、美しき紅白の姉弟艦。

 ブリュンヒルトと、アンネローゼのブルートローゼ。

 その二隻は実に美しく似合った。在りし日の、バルバロッサとブリュンヒルトがなした紅白のごとく。士気も限りなく高めた。

 ラインハルトの胸に激しい喜びと痛みが走る。自分の野望は、こうして最愛の姉を死の前に引き出すに至ったのだと……

 そして、はっきりとわかっている。もし姉に死ねと命じるべき時にできなければ、この姉は、

(決して許さないであろう……)

 ことも。

 姉を死なせるより、軽蔑されるほうが、ずっと怖いのである。

「ファイエル!」

 それでも、闘神の魂がワイヤーの心でラインハルトの肉体を駆り、すさまじい咆哮をあげさせた。

 翼を広げた真紅の巨大紋章機が、転送されていたとてつもない数のミサイルを同時発射する。

 ブリュンヒルト改の、連装デスラー砲が咆哮する。

 そして何十万もの波動砲が、デスラー砲が、クロノ・ブレイク・キャノンが一斉に光の渦を放った。すべてが精密な一点集中。

「効いていないぞ」

「再生が早い、泡のようなシールドを出し続けているんだ!」

「撃ち続けろ!エンジンが焼けついてもいい!」

「ミサイルの増産と転送を続けろ!」

 特にブルートローゼは、一秒に3回以上のサイクルで膨大な数のミサイルの転送を受け入れ、全弾発射する。

 はるか遠くの星で、貧しかった民が作ったミサイルが基地に運ばれ、届けられた転送魔法陣に運び込まれて消失する。

 その報酬だけで、老母の病をいやし娘を売らずに学校にやることができるのだ。

「押し続けろ!」

 まったく無効な、敵に吸われて強めるだけの攻撃が続く。愚直なまでに。

 高速で襲ってくるスカルナイトなどの機動兵器を相手に、ワルキューレや機動兵器、パワードスーツをまとったゼントラーディが必死で艦隊を守る。

 全力で押しながら、高機動の艦隊戦も同時に行われる。

 そしてそれは、完璧に美しく巨大な第三段階ダークブレインに、かすかな苛立ちを産んだ。

(より完全な体)

(もっともっと完全。不滅)

(人間の姿など、どれほど美しくとも)

 巨大な超絶美女が、静かに姿を変えていく。再び繭をまとって。部下たちさえも吸収して。

「撃て!次に変身されたら終わりだ!」

 指揮官たちが恐怖にかられる。

 静かにエンダーが、そしてラインハルトが、デスラーが笑った。

 

 第四段階……繭が破れたそこにあったのは、球だった。半径2光年に及ぶ。

 完全な球だった。原子の大きさのずれもない。原子でできていないのだ。量子力学は本来完全な形を許さないが、その制約すら破壊している。

 完全な球。

 超高次元までの、完全な超球。

 絶対に不滅。絶対に不変。

「終わった。あとは残敵を掃討せよ」

 エンダーが告げた。

 

 全艦隊が呆然とした。

「あ……完全な球。不変。もう何もできない、死んだも同然……」

 拍子抜けすぎる結末だった。

「エンダーは、こうなるように何十手も前から、思考を誘導していたんだ。欲張らなければこちらは勝てなかったのにな」

 クロがデスラーと苦笑を交わし、デスラーは美酒を勧めた。

「腐った〈法〉、完全を求める……だが完全な秩序と、生命や意志、心はあいいれぬもの。戦うことなどできないのです」

 アンネローゼが静かにつぶやく。とんでもない数のミサイルを全弾精密に誘導して撃ち続け、疲労困憊していながら。

「食われそうになった木こりが力ある妖魔をおだてあおって、黄金像に変身させる、そうなればもうだいじょうぶ、というおとぎばなしがあったな」

 正宗が微笑した。

 

 巨大な完全球から、何かがすっと飛び出した。

「ケイ!」

 クラリッサ・キニスンの喜びの絶叫。ドーントレスがすさまじい速度で急ぎ、船を拾う。

 生きる環境が違いすぎるナドレックを、人間が抱きしめることはできない。だからレンズを通じて感情を伝える。

 そして幼く美しい少女を、母が固く固く抱きしめた。

(この子が大きくなれば、あれほど美しくなるのか……)

 そう思う不届き者もいた。

 第三段階レンズマンでも最強の耐久を誇るカレン・キニスン。その絶対の意志は、ダークブレインに力と魂のすべてを吸い上げられながら、ナドレックともどもまた自分を再生できるだけの最小の種だけは守り通していたのだ。

 無論、すべてを吸収したという幻想を、上位存在を含めた敵味方すべてに確信させるべくほかの第三段階レンズマンも暗躍していた。

 

 

 戦いは終わったかに見えたが、逆にダークブレインの圧力から解放されたボスコーン艦隊と〈混沌〉の残存艦隊が恐ろしい勢いで襲ってきた。

 膨大な数の艦隊……飽和攻撃。

 対処しきれない……その時に背後から、猛烈な援護射撃。

 別時空から戻ってきたアッテンボロー艦隊。見た目はともかく、ゼントラーディ艦をもとにしているだけにサイズが大きいのを〔UPW〕の最先端技術で改装している。

 

「さっそく新兵器をテストしてやる」

 アッテンボローが楽しそうに悪童の笑みを浮かべた。

 無人のハイパードライブ機・無人のシングルクロノストリングエンジン機を同一の時空座標にドライブアウトさせ、同時にクロノストリング解放にセット。

 すると、合計質量の静止エネルギーより、何桁も上の威力が球状に発生する。

 大体木星ぐらいの大きさの球範囲内が、バリア無関係に破壊される。

 さらにその破壊球に、タイミングを合わせて波動砲をぶちこめば、もっと桁外れの破壊力が生じるのだ。

 その圧倒的な破壊力が敵を食い止めている、そのときにラインハルトは、両手を優雅に舞わした。

 槍と拳銃を。

 黒色槍騎兵と、ファーレンハイト艦隊がほとばしるように襲いかかる。

 何千発ものデスラー砲の弾幕、それを巻くように突撃する絶対破壊の楯を構える超高速艦隊。

 黄金王が放つ投槍の豪雨とともに、稲妻を吐き狂奔する天の牛に引かれ超加速する戦車(チャリオット)に、同乗した青き槍騎士(ランサー)が突撃するようだった。

 槍の一閃のように、ボスコーン艦隊の中央が貫かれる。

 

 さらに〈混沌〉残存艦隊から、巨大すぎるイモムシの下半身に人の上体をした怪物が出現した。

「さっきのをまねたのか?」

「玄偉か」

 智の正宗が隻眼をひらめかせ、超技術による巨大要塞を盾としてその攻撃を受け止める。

 背後に、マルガレータのゴルトシュヴェールローゼに捕まって転移したアンネローゼのブルートローゼが、大量のミサイルを至近距離から発砲してすぐまた空間転移で逃げうせる。

 そのミサイルは、全部がただのハイパー放射ミサイルだった。ガルマン・ガミラス帝国の在庫を一掃するほどの数の。

 ただ、それは巨大すぎる、機械・生物・悪霊の性を兼ね備えた怪物に刺さっただけだった。

 数秒後、絶叫が上がる。放射能ガスは猛毒であり、潤滑油やゴム管を腐食する。巨大な機械と生物の融合体……それにとってこそ、ハイパー放射ミサイルは天敵だったのだ。

 それで緩んだシールド、そこにアッテンボローの一点集中。

「ちょっとした個人的な頼みがある」

 と、大覚屋師真に頼まれたビッテンフェルトは、超高速の黒い槍を絶妙に操って敵を分断した。

 そこに侵入した、超高速の風。サイバスターと、新型機の速度を最大限に引き出したアイビス・ダグラス、スレイ・プレスティがすさまじい速度を保ったまま侵入し、心臓近くに囚われていた華玉……玄偉の軍師であり情婦の乗艦を切り離した。

 そこに、バランスに優れた紋章機ハイデンローズラインを護衛にゴルトシュヴェールローゼが瞬間転移、切り離された艦も捕まえて消え失せた。

 その切り破られた穴に、ワーレン艦隊の激しい攻撃が加わる。

「とどめだ」

 そこに出現したのは、SDF-1マクロスの同型艦。中身は完全にダイアスパー技術の別物だ。

 一条未沙の声とともに、輝が一機の可変機のように堅実に操作する。

 人型に変形した1200メートルの巨大艦、その左手に、1000メートルのブリュンヒルトが、右手にヤマトが装着される。かなり大きな凧型盾(カイトシールド)を手にしたノルマン戦士のように。

「波動砲ソード、展開10秒前!」

 真田がやらかした、とんでもない改造。波動砲そのものを巨大な光剣とし、ヤマトをその柄とする。

「行くぞ!」

 輝の操縦で、変形したバルキリーのようにマクロスが走る。

 敵の攻撃をすべて、ブリュンヒルトが楯として防ぎ、自らも対空砲を放って迎撃する。

 そして……放たれたすさまじい光の聖剣が、限られた長さの刀身をしっかりと保ち、敵の巨体の急所だけを切り裂いて跳び抜けた。

 

 

 そのとき。技術を許さぬ城砦を守り抜いた五丈の精鋭は、人の倍以上の体躯をもつ、鋼から削り出したような巨人たちと激しく打ち合い、竜我雷自らが急所を貫き、倒していた。

 

 そして時空の結合は変わっていく。奇妙に交差していたいくつもの時空が、再びゲートでつながれた別々の時空に戻っていく。

 いつしか、勝利の鬨の声が上がる。

 まだボスコーンの艦隊は残っているし、バルマー帝国との戦いもあるが……




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ギャラクシーエンジェル
超時空要塞マクロス

マクロス・ヤマト・アルカディアのいわゆるスーパーマクロス、どうしてもやってみたかったんです。アルカディアは出張中なので代理。

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