虚空……ガルマン・ガミラス帝国の中では、かつてテレザート星域と呼ばれた星跡。
そこには、伝説の都タネローンがあった。
静かだった。安らぎがあった。虚空に〈天秤〉が輝いていた。
様々な敵を撃退したその都市は、宇宙戦艦の戦士たち、宇宙を駆けつつ刀を振るう戦士たち、そして宇宙など知らず奇妙な船に導かれた戦士たちをもてなし、そして消えた。
夢のように。
戦士たちに、酒の味と歌を思い出に残して。
滅んだメルニボネから逃れた戦士がふるまった、故郷の銘酒……その空き瓶は回収され、残存微生物から再現された酒がのちにエル・ファシル自治政府の名産となった。そのようなことはいくつもあったが、重要ではない。
ただ、勝利という至上の美酒の味に浸っていた。
第一次タネローン防衛戦は、各国に多くの変化をもたらした。
エンダー・ウィッギン総司令官の智謀と指揮こそ、勝利をもたらしたと誰もが知っている。
ラインハルトもデスラーも、智の正宗も竜我雷も、タクト・マイヤーズもアッテンボローもまさに心服させるものだった。
多元宇宙の皇帝となることもできたろう。
だが、エンダーはあっさりと、
「今回限りだ。〔UPW〕も辞める」
と、故郷時空のルシタニアに戻った。
そしてすぐに、修道院の奥に隠れた妻ノビーニャを迎えに行った。
「さらいに来た。遠い彼方に行こう。二人だけで」
「え、でも修道会や、子供たち」
腹を痛めた子が何人もいる。また彼女は、修道会の責任ある幹部であり、惑星の教育や科学研究でも重要な役割を果たしている。
「関係ない。きみだけをさらっていく。きみはぼくだけのものだ。ぼくは、きみだけのものだ。ずっと。ずっと」
彼女が求めるもの……全存在を、自分だけに捧げてくれる絶対の愛。
「子供たちは、自分の道を行く。そこでキンのように死ぬかもしれないし、生きるかもしれない。自分の人生を生きさせてやろう。いや、もしきみが同意せず、ずっと恨まれても、ぼくはきみをさらっていく」
エンダーの断固とした意志に、ノビーニャは呆然とその手を取った。
そして、一隻の宇宙船が旅立った。遠い遠い、遠い遠い、ずっと遠いところに。
そこでふたりが何を見つけ、何を研究し、何と戦うのか……そしてついに幸せになることができたのか、誰が知ろう……
残された人たち……エンダーが超光速航行の実験をしたときに生じてしまった、若きピーターとヴァル。天才ぞろいの、エンダーの継子たち。エンダーの姉ヴァレンタインとその夫の一族。〈百世界〉の賢者たち。
彼らはルシタニアを中心に、あるものは〔UPW〕で戦争の経験を活かして出世し、あるものはレンズマンと協力してデスコラーダ・ウィルスの母星に交渉に向かい、あるものはスターウェイズ議会との暗闘に身を投じた。
スターウェイズ議会、エンダーの同胞たちは、常に恐れに支配され、非常・非情のことばかりする。
バガー襲来までは、カトリックを禁教にするほど激しい産児制限をした。
バガーに人口のかなりが滅ぼされるほどの被害をこうむり、
「人類が生存することがすべてだ……」
と凝り固まった。
戦うために、児童の徴兵も、生来徴兵された第三子(サード)をつくることもした。サードであるエンダーは生まれながらに徴兵契約によって出産を許可された、体制の道具、兵器でしかなかった。一切の人権がなかった……だからこそ人類を客観的に見て、人類を裏切ることもできた。
半面、人類たちは『人類以上』に、突然変異優位種(ミュータント)に支配され滅ぼされることも恐れた。遺伝子実験によって知能を増強されたエンダーの腹心、ビーンについて、
(人類以上の種が生じぬよう抹殺すべきか、だが優れた将ともなるビーンを殺せば人類が滅ぶかもしれぬ……)
と冷酷非道な葛藤をしたものだ。
その後、指導部の助言者として遺伝子改良された知能の高い集団を生み出したが、彼らに遺伝子的に特異な強迫神経症を植えつけ、さらに人工的な宗教・俗信で縛って議会に対する忠誠を強要した。その病気はエンダーの子供たちが人工的なウィルスで解除し、多くはルシタニア側に立っているが……呪縛に囚われて破滅した者もいる。
人類はペケニーノも恐れ、技術を教えることを禁じた。反乱の情報だけで、惑星ごと、人類の住民ごと分子破壊砲で皆殺しにしようとした。コンピュータに生じた知的存在であるジェインも問答無用で抹殺しようとした。
人類が滅ぼされず、最上であること、スターウェイズ議会の絶対的な支配に、強迫的にこだわるのだ。
可能ならば時空の門も閉ざすか、その向こうの多数の文明を滅ぼしつくすことも、
(あえてなしたろう……)
と思われる。
ツツミ家が察知した情報に、別のゲートを極秘にし、それを通じて何かたくらんでいる、というものがあるが、彼らもエンダー派とみなされ襲われ、ルシタニアに亡命した。
去ったのはエンダーのみではない。
大功をあげたオスカー・フォン・ロイエンタールはラインハルト皇帝に、
「なんなりと、のぞみの褒美を」
と言われ、
「息子を探したく存じます。なにとぞ、長期の休暇を」
と申し出た。
ラインハルトは怒りを見せそうになったが、アンネローゼに目顔で叱られ受け入れた。
そのときに、ラインハルトは自らつくった、黒い光を放つライトセイバーを下賜したという。
ほかにもラインハルトは、前線・後方問わず多くの者を賞した。
後方の評価が高かったことも、ラインハルト・フォン・ローエングラムの有能さであり、特にそれが大きかったのが、
(この第一次タネローン防衛戦におけるローエングラム帝国軍の論功行賞の特色……)
と、後世評される。
帝国内の物流網を運営したアイゼナッハ。〈ABSOLUTE〉から新五丈・バラヤー帝国を通ってダイアスパーを結ぶ大道を整備したオーベルシュタイン。エル・ファシル自治政府より出向し、同盟官僚のみならず帝国兵站部もゼントラーディも使いこなしたアレックス・キャゼルヌ。
未熟さが目立った若い将校を再訓練し、ゼントラーディ将校とともに新技術の扱いを磨き上げたメルカッツ士官学校校長とフィッシャー。
帝国内の治安維持に奔走したケスラー、メックリンガー、ルッツ。
そして帝国全体の下層を抱きぬくめたアンネローゼと、キャゼルヌ夫人・ビュコック夫人を中心とし、世に隠れた能史たちを集めたスタッフ。
功労者をあつく賞するのは、戦後の社会の変化をも視野に入れた、有能な政治そのものだった。
戦前と戦後では、生産量も輸送量も、生活範囲も食文化も、何もかもが一変していた。
さらにともに戦った連帯感と別時空の他国の存在は、帝国・同盟・ゼントラーディの垣根をとりはらい、ローエングラム帝国という一つの国民国家を形成するに十分だった。
次々と有能な人材も発掘され、無能な人材が取り除かれた。
社会の構造そのものが、泥濘地にできた堤防を踏み固めるように突き固められた。
軍人も、そのようなとき通例起きる嫉妬や抗争をするひまもなかった。あまりにも多くの新技術があった。別時空の仮想敵と戦えるちからをもつため、学ばなければならなかった。
「以前の功績がどれほどであろうと、向上できぬ者は去るべし。年金と名誉は与えるであろう。余も向上できなくなれば即座に退位する……」
という皇帝の厳しい仰せもあった。
公開されたシャルバート技術とダイアスパー技術、さらにボスコーン・バルマーなど敵から奪った技術を消化し、新技術を載せた艦隊を編成し運用を学ぶのに、精いっぱいであった。
治安面で問題とされているのは、いまだに所在がつかめないアドリアン・ルビンスキーや地球教幹部である。先の争乱でも、さまざまな動きをしていたことがわかっている。
レンズマンの協力を得た捜査で、ルビンスキーが脳に重病を抱えていることも分かったが、それからの足取りがつかめない。ボスコーンや、別の何かの形跡もある。
今回の経験で、想像を絶する怪物を含めたテロに対する対策……ジェダイや魔法使いを増やすこと、機敏な小艦隊を多数作っておくこと、強力なパワードスーツ・個人戦闘ポッドとその携行火器などができつつある。
(キャゼルヌ一家の出向はこの上ない援軍……)
誰もがそう認めたエル・ファシル自治政府。
仕事を終えて帰ったキャゼルヌだが、困ったことに単身赴任だ。妻のオルタンスはアンネローゼ・フォン・グリューネワルト皇帝直属聴聞卿の主要スタッフの一人、娘たちもそちらにいる。
結婚には問題なく、アンシブルで常に話せるとはいえ……
「一本釣りされた……」
「あの姉君、弟やヤンが可愛く見える……」
「フリードリヒ四世の趣味が違ってたら、もっとあっさり銀河は統一されてたろうな、同盟軍はもっと徹底的に全滅してたろうが……」
などとキャゼルヌは、ローエングラム帝国でもさすがに不敬罪なぼやきをこぼしている。
だがこちらも仕事は多い。多数のキロメートル級艦船、そして武力には転用できないように調整されているとはいえ巨大な潜在力を持つ自己増殖性全自動工廠が多数生み出す巨大船と、新技術で開発された豊かな技術がある。
ローエングラム帝国の流通網と密接につながって稼いだ。
新航行技術でイゼルローン回廊の価値は下がったとはいえ、交通の要衝でもある。
膨大な軍需は、エル・ファシルにも空前の好景気をもたらしていた。ゼントラーディと同盟のヤン派共和主義者が、ともに大工場となったゼントラーディの巨大艦にぶつ切りにした小惑星を運び込み、軍需物資を作っては売り出す。
いかほどにも儲かった。
さらに、エル・ファシルにはユリアンが残したコンテンツ企業もあった。バラヤーやデビルーク・アースからフレデリカ・G・ヤンが送ってくる情報は、特に文化に飢えたゼントラーディは無限に金を出す。
ガルマン・ガミラス帝国は、自らの時空内での外交と交易を整備していた。
自己増殖性の全自動工場が、膨大な巨大船を作っている。戦中はそれは巨大戦艦・機動要塞として戦いに回されたが、平時には輸送艦や居住都市として膨大な人口を支えることができる。
ガルマン・ガミラス本星の破壊で疎開した首都民や、崩壊していくボラー連邦から帰順した民が次々と巨大船で暮らしをつくり、資源星を開拓して全自動工場で働いている。
バーゲンホルム・ハイブリッド超光速航行をはじめとした圧倒的な速度は、アンドロメダ星雲にすら短期間で往復できるほどである。
ボラー連邦から独立した勢力、ディンギルのような孤立文明、アンドロメダにある白色彗星帝国の母体、シャルバート星、そしてイスカンダル……
バラヤーにつながる門を持つヤマト地球、パルパティーン帝国への門、そしてローエングラム帝国への門。
多くの国とかかわり、軍事を背景に外交と交易をして豊かになる。
新五丈を通る大道が主になると言っても、人工も生産力も高いガルマン・ガミラスやエスコバール、ベータに通じる、ヤマト地球経由の道も交通量は多い。
それをささえるのは、エンダー・ウィッギンが激賞した駆逐艦艦隊である。
銀河外にまで至るところの宇宙地形を調べ、航路をひらき、海賊を潰し、輸送船を護衛し、敵国の通商を破壊し、反乱を鎮圧する。
濃密にして有能な駆逐艦網は、ラインハルト・フォン・ローエングラムすらうらやみ部下にはっぱをかけたほどである。
ヤマト地球も、何の変化もないわけではなかった。
エスコバールとのゲートを通した、ガルマン・ガミラス経由でローエングラム帝国に向かう大交易路の、一つでもあるのだ。
莫大な富が流れこむ。
また、銀河衝突で、ガルマン・ガミラスとの折衝で地球領と認められていた近距離に三つ、豊富な惑星を持つ恒星が出現した。
せっかくの軍備と工業力を台無しにしてきた、防衛軍と政治家の愚劣無能……
それにも、変化の兆しがあった。
ディンギル帝国との戦いで、波動砲艦マルチ隊形の愚劣が、はっきりと示された。しかも生き残った将兵も多く、特に下級のものは、もしヤマトが新技術を持ってきていなかったら全滅あるのみだったと、同僚たちにも言いまわった。その口を封じるのは不可能だった。
(自分たち、地球の政府・防衛軍は無能なのではないか……)
いまさらだが、疑うものが出てきた。
そしてその声を集める、一人の退役軍人も出てきた。
沖田十三。最初のヤマトの旅の艦長である。
致命的な宇宙放射線病だったが、帰途に別時空を旅したおかげで別時空の先進的医療の恩恵を受け、生命はあった。だが長いこと重態で、活動はできなかった。
政治的な思惑があり、そのことは公表されていなかった。
それが、暗黒星団帝国の技術を入手したり、エスコバールとのゲートができたりしたことで、ついに病状が好転し健康体となって復帰したのだ。
軍は退役し、政界に転出した彼は、圧倒的な支持を集めた。
「二度と地球は、滅亡の危機にさらされてはならない」
という英雄の声は、歓呼を持って迎えられた。
イスカンダルも人口は急増していた。
この数年打ち続くいくさ……崩壊していくボラー連邦、ガトランティスの蹂躙から逃げた人たちなど、難民は何百億人もいる。
スターシヤと大山は、技術力を活用して難民たちを受け入れた。
イスカンダルのダイヤモンドの都市だけでも、一千億人がゆとりをもって暮らせる余裕はあった。
〔UPW〕では、息子を探しに一人旅立ったロイエンタールが率いていた艦隊も含めほぼすべてをタクト・マイヤーズが受け継ぎ……丸投げした。
ふさわしい者がいた。智の独眼竜正宗こと紅玉が、すべてを弟王に委譲して移ってきた。
戦争で、初陣の敗北で成長し、のちの戦いで意思を見せた弟王に、
「すべてお前次第……」
と、すべて譲った。
女の身で若くから国を支え、一時は天下にも手をかけた英傑。病に倒れても乾坤一擲の賭けから不死鳥のように復活し、超技術を受け止めて自らを書き換え、容赦なく旧臣を粛清し人材を育て、今や押しも押されもせぬ強国と認められるにいたった女傑。
彼女は、その頭脳を求めてくれたトランスバール皇国のシヴァ女皇の助けとなるべく、〔UPW〕に赴いた。
誰もが、
(弟王を殺すか傀儡として君臨するのだろう……)
と思っていたのを、まさに友の夫アラール・ヴォルコシガンのように幼王を育て、譲ってみせた。
智王の教育にも不安はない。弟として劣等感にまみれて生き人となったマーク・ピエール・ヴォルコシガンが体を鍛え経済を叩きこみ、甘えを叩き出した。戦争も経験した。
そして幼王の教育と権力移譲は嫌というほど経験しているアラールとコーデリアの夫妻もいる。
グレゴール帝も一条未沙も、しっかりと、
(うしろだて……)
となっている。
幼い雷丸は、セルギアール総督のアラール・ヴォルコシガンがしっかり秘密を守り預かっている。
紅玉がダイアスパーのある銀河から離れたことで、コーデリアも人質から解放され久々にアラールと夫婦水入らずの生活ができるようになった。息子たちは、マイルズは〔UPW〕で、マークはバラヤーでの事業や智王の教育・相談役として忙しく働いているが。
嫁たちや、多数の孫とアンシブルを通じて話すのも楽しみである。
タクトは女傑に、大喜びで軍事を全投げした。
彼女は多くの部下を智に置いて行ったが、新しい有能な部下にも事欠かない。飛竜はどうしてもついてきたし、彼女は智の他の将や貴族には嫌われているので、
(むしろ害になった……)
可能性が高い。
〔UPW〕軍にはほかにも、タクトの昔からの副官であるレスター・クールダラス、戦いのたびに成長するココ・ナッツミルク、ロイエンタールとオーベルシュタインから学び大器を開花させたダスティ・アッテンボロー、ゼントラーディの名将たちがいる。エリ・クィンやエレーナ・ボサリ・ジェセックがいる。
また、この絶対領域だけでも数百万人の人口……バガーを含めれば十億を超える……があり、ローエングラム帝国の四割以上の艦船数・生産力ができている。
タクトはその運営だけで精一杯だ、という。といっても紅玉は政治にも優れ、政治と外交はマイルズ・ヴォルコシガンがきわめて有能、科学関係はノアに、ジェダイ学校はアイラ・カラメルとリリィ・C・シャーベットに投げている。
見事なまでに、ヤン・ウェンリー式の丸投げである。
今、主な課題はバルマー帝国対策であり、傷をいやし、新型機の調整と訓練にいそしむ鋼龍戦隊の準備ができ次第、できるだけ外交を通じて内部から交渉をするつもりでいる。
パルパティーン帝国も様々な策謀があるようで、油断できない。
バラヤー帝国に変装して隠れていた練の羅候一家は、六つ子のうち四人をあちこちに預け、二人の子を連れて武者修行の旅を続けることにした。
一人はイスカンダルのスターシヤ女王に。一人はアラール・ヴォルコシガンに。一人はダイアスパーのヒルヴァーに。一人は正宗を通じ、今は〔UPW〕に滞在しているマザー・シャルバートのもとに。
人質ではない。
いつか、男として自信がつけば故国に帰り、練を率いて竜我雷と戦う……負ければ、子も斬られよう。それでも一人でもどこかで生きていれば、と。
まずは、銀河パトロール隊の銀河、ヴァレリア星へ。
技術に頼らず、剣でタネローンを守り抜いた竜我雷とその勇将たちも評価は高かった。
かれらはあえて、正宗のように技術を全面的に受け入れて急成長するのではなく、ゆっくりと学んでいくことを選んだ。
それがなくても、〈ABSOLUTE〉とダイアスパーを結ぶ大道がある五丈には、金が落ちる。
相変わらず西羌国を攻めているベア・カウ族との戦いで、進歩に合わせて訓練を積み、必要なだけの軍需をつくって経済を成長させている。
軍需がなければ景気が悪くなり、税収も落ちる。軍事は国庫に負担をかけ、増税から苛斂誅求につながり、民が飢えれば反乱になる。この二つの地獄のはざま、二河白道を大覚屋師真や三楽斎、林則嘉や晏石は学びながら歩いていた。
戦いの終わりに救出された華玉は師真の戦利品とされてから正夫人となり、ともに智謀をもって雷を助けることとなった。
各国を大きく変えたものに、人工子宮技術の普及もある。
性欲に乏しいという噂のあるラインハルト、正室の紫紋が不妊であった竜我雷ら、問題を抱える君主が次々に子を得る見通しが出た。
雷はあくまで、側室の麗羅が産んだ梵天丸を嫡子とし、紫紋もそのことを強く後押ししている。
後宮の乱れを、誰もが何よりも恐れている。前身である五丈では、天下に手をかけた比紀弾正も、後宮の争いがひどすぎて公式に生きて育った子は女の麗羅ひとりである。
「妊娠が確定したときに認知された、または認知の上で人工子宮に着床した子のうち、最も早く生まれた者が後継となる」
を法として公に知らしめた。
それによって雷丸も、認知がないため継承順から外れることとなっている。アラール・ヴォルコシガンとわずかな腹心しか知らないことだが。
いくつかの不安や敵はあっても、固い団結と有能な政治家や軍人、圧倒的な技術、そしてこれから加わる自己増殖性全自動工廠による、将棋盤に置かれる米粒のように指数関数で増える生産量……『コーデリア盟約』諸国にはすさまじい力がある。
それでも、誰も油断はしていない。
また恐ろしい敵があるのではないか……それを前提に、民を豊かにして教育し、優れた軍人や技師を一人でも増やして国力を高めるため、力をふりしぼっている。
結果として、戦乱圧政に苦しむ人々の生活水準は向上が見込まれる。
だが、人はパンのみにて生きるにあらず。それだけでは満足できぬ者もいるのだ。
永遠の戦士
エンダー四部作
銀河英雄伝説
宇宙戦艦ヤマト
ギャラクシーエンジェル2
超時空要塞マクロス
銀河戦国群雄伝ライ
ヴォルコシガン・サガ