第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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宇宙軍士官学校/時空の結合より3年10カ月

「恵一は一人しかいない」

 ことが問題となった。

 銀河文明評議会が、アンドロメダ銀河への超長距離転移を伴う反撃、強攻偵察の方針を決め、それをケイローンとその麾下の途上種族に下命した。

〔魂の試練〕、モルダー防衛戦、そして太陽系防衛戦で有坂恵一を高く評価するケイローンのデグル大将は、その作戦の中核として恵一を頼りにしている。他にも多くの、恵一より経験豊富で地位も高い将官はいるが、その中でも特に。

 

 だが、

(恵一にいてほしい……)

 という仕事は他にも多くある。

 モルダー星系に比べればわずかといえ大きい被害を出した太陽系の地球人。地球人の軍の中では、異星人の側で大きく出世した恵一は異物であり嫌う者も多い。が、最大級を通り越して評価している人も多くいる。

 巨大な名声もあり、崇拝する人も多い。恵一は、

(場末で軍警官をやっていた自分が本来の自分で、今の名声や功績は全部偽物の薄皮、いつ戻ってもいい……)

 と思っているが。だからこそ地位や外聞に拘泥せず大胆なことができる。

 銀河、アロイスの基準で選抜され訓練される、銀河標準の能力を学ばせる士官学校。その大幅な拡充と訓練も必要とされており、恵一こそがその校長にふさわしいと言われる。

 また、恵一という最も優れた人材を前線で失うより、

(子を作らせなければ……)

 と思う人たちもいる。

 士官学校の同期で恵一の重要な部下であるオルガとライラは、単純な理由でも子を作りたがっているが。

 

 さらに、ユリアン・ミンツをはじめ〔UPW〕使節にとっても恵一が最初に接した窓口であり、信頼関係がある。

 そして〔UPW〕の技術援助もあり、多くの途上種族をまとめた新しいライフスタイルの探求プロジェクトも、

(恵一がいればいい……)

 と誰もが思っている。

 

 ユリアンたちに同行しているブレクcの故郷に解決策があった。

 憎き皇帝アナーンダ・ミアナーイがやっているのと同じ。多数のクローンをサイボーグ化し、全員同じ権限、近くにいればすべて同期する。

 まあ今は多数の皇帝の中で最低二つの人格が分裂し内戦状態だが。

 さらに、アナーンダ・ミアナーイが持たなかったアンシブルを入れればいつでも、同じ時空で銀河間距離を隔てていても同期できる。

 ついでにアンシブル技術は、ブレクcの故郷時空も混乱させているらしい。それがなかったことがその時空の体制の核心にあったのだから。

 

(オリジナルを傷つけてはならない……)

 それはむろんである。

 だから、ユリアンが制御できるズフィルード・クリスタル複合技術も用いて数時間で30体以上のクローンを作り、それぞれにブレクcが乗ってきた複製母艦の設備を使ってインプラント手術をして、今の時点の恵一の人格を突っ込む。

 オリジナルが近くにいれば常にオリジナルと同期し、バラバラで活動して集まったらそれぞれの記憶を持ち寄って、オリジナルとは別の統合体を作る。

 また、恵一自身もアバターシステムという故郷時空・評議会の技術で、記憶を同期したクローンを複数準備している。だからアバターを失ったときなどの記憶統合で、離れた〔UPW〕産属躰の記憶も追加できる。

 

 地球人はあきれ返ったが、数十億から数十万まで減ったアロイスなどは普通に納得した。

 恵一にとっても、何度も死ぬアバターシステムに慣れるよりは楽な話だった。

 

 

 その一体が、地球人、故郷を破壊されたモルダー人、モルダー防衛戦などで恵一と縁ができた途上種族、アロイスらと力を合わせ、〔UPW〕使節主導で新しいライフスタイルの探究を始めた。

 破壊され、今も地下シェルターで死にかけている……何十億も死んだ……生き残りを救出しているモルダー星系を舞台として。

 第二段階レンズマンであるユリアンが制御できる、ズフィルード・クリスタルやウィル技術を複合した超技術を用いて、金星のように扱いにくい惑星の巨大質量を直接物資に転換して、当座の生活と救助を始める。

 そして、技術水準が低い途上種族でも可能な生産方法で、大規模な惑星軌道コロニーを多数作る。

 他にも候補として、別時空へのゲートが発見された閃光星や、その他居住可能惑星もないしテラフォーミングできそうな惑星もない星系で準備している。

 指数関数増殖がありそれを制御できる高度技術なら、小さな種をまいておけば、しばらくしたらとんでもない設備ができているのだ。

 

 だが、〔UPW〕の技術、特にわずかしかいない第二段階レンズマンに依存するのは間違いだ、とも皆わかっている。

 必要なのは、途上種族が使える技術だ。

 モルダー星系では、多人数を短期間居住させるために超技術を使いつつ、地球やサーチー星系の途上種族、ケイローンの首都シュリシュクで不安におびえるロストゲイアーたちの有志も含めた人々に、比較的低い技術で多人数が十分な生活、研究、ケイローン軍にも納入できる兵器や兵站の生産が可能な設備の生産に向けたプロジェクトが始まっている。

 梯子になる技術、という表現をされた。

「子供には大人の技術はわからない、という銀河文明評議会の態度こそが、大半のロストゲイアーを絶望させダメにしているのです。

 ジェネシス景気前、アロイスが降臨しマインドリセットを受けて銀河文明に入る前、地球だけが世界だった地球も、万能の完璧超人以外はいらない、と言わんばかりの社会でした。

 現実的な努力、有坂恵一のような超天才でなくてもできることが必要です。

 頑張れば手が届く、学んで成長できる、梯子になる技術こそが」

 と中島などは主張した。彼も以前はコミュ障で多くの企業にお祈りメールをもらう側だったのだ。

「軍は高度な兵器だけではなく、銃剣やテント、靴下だって必要とします。確かにわれわれは靴下さえも高い技術で作られていることが多いですが、予備として低い技術の靴下を持っていてもいいはず。それが途上種族の仕事になりえます」

 という意見もあった。

 

 そのプロジェクトは恵一の分身、また中島や、セルゲイ、カーリーなども加わった。

 ユリアンが多くの地球の情報を集めて抜擢したメンバーである。

 セルゲイは太陽系防衛戦の生き残り徴兵パイロット。空気を読まない性格で、ほぼ確実な死に直面した仲間たちの士気を上げるために何度も訓練方法を改善するよう上官に申し入れた。

 多くの仲間は最後の飽和攻撃で体当たりに散ったが、婚約者に生きて帰ると約束したためそれに加わらなかった……それがどれほど、法は許しても苦しいことになるか承知で。

 カーリーは若い、というより子供である。宇宙に巨大なブロック壁を作って太陽爆発を少しでも遮蔽する、その設計に抜擢された。学問などはないが、パズルを直感的に解くことに優れ、それはアロイスの計算力を上回るものがあった。

 

 まず、モルダー星系の使いにくい惑星を確保する。

 ユリアンは、先に地球を救う時太陽系の金星をズフィルード・クリスタルを中心とした高度技術で改造していた……その半分を持ってモルダー星系に行く。

 残りは自分の艦を作ったり、地球の近くや、より安全な海王星近く、多くのエネルギーを安く得られる太陽至近などに置いて、様々な施設に変形させている。

 そこで月や水星の、岩石マントルのように安価な資源を採掘しては加工し、あるいは酸化ケイ素系岩石の酸素を取り出している。

 モルダー星系でも同じようにする。

 

 高度技術の素材は、むしろプレス機の金型とする。それで安い資源を加工して、安い製品を作る……日本の九州ぐらいある超巨大な居住空間を。

 プレスだと、薄いものしか作れない。だがズフィルード・クリスタルをはじめとする超高技術の産物は、三次元の泡のようなものも作れる。さらに大陸級の巨大さから数ナノ集積回路級の微細構造に至るまで一気に型押しして、自分自身は抜けて消えることすら可能だ。

 また角度をつけて溶けた惑星マントル岩石を押し出すことで、巨大つるまきバネを作ることもできる。

 

 他にも、こういう手もある……

 作りたいものを薄切りにする。

 多数の薄切りそれぞれの形を記録し、一つにつき多数、プレスで打ち抜く。

 無重力空間で順番に重ね、わずかに隙間があるようにして、全体に超高熱ガスを噴きつけてすべての薄切りの表面全体を溶かし、重ねて押しつける。

 それによってかなり巨大な構造物を、莫大な大量生産ができる。

 しかも、複数の素材ごとに薄切りにして正確に組み合わせてから重ねれば、かなり複雑な内部構造があるものでも超大量生産できる。

 

 難民を受け入れる場ではあるが、あえて生活水準を高め、大規模な公園コロニーを付属させる。そこには、デジタル情報は残っているロストゲイアーの故郷星の生物も復活させる……最初はズフィルード・クリスタルだが、二代目からは自然と変わらなくなる。

 水に肥料・酸素・二酸化炭素を混ぜて詰めた巨大な透明筒を太陽の近くの惑星軌道に置き、それで藻類を爆発繁殖させて遠心分離、虫に食わせて飼料にする、という方法での食糧の大増産も本格的に始まった。

 そうして生活し、今より一段上の科学を必死で勉強して、一つ上の技術水準に。それで少しでも銀河文明評議会に貢献し、

「成功体験……」

 を持たせる。

 失敗もして、成功体験を重ねる。仕事を任される。それがなければ人間は成長できないのだ。

 それも、これまでの銀河文明評議会の方針の間違いだと言われていた。

 

 問題になるのは、親衛義勇軍として活躍してきたロストゲイアー。

 特にシュリシュクの居住期限が迫って尻に火がつき、必死に戦ってきたのが裏目に出ることも多かった。

 だから急に台頭してきた地球人、恵一に憎悪をぶつけることも多くなっていた。

 それは、その背後のロストゲイアーたちが、地球人を中心とした、

(うさんくさい……)

 プロジェクトに協力しにくくなる結果にもなる。

 また、親衛義勇軍として多くの犠牲を出し、膨大なコストを払ってきた……サンクコストの問題もある。

 それまで、

(手柄を立てて居住可能惑星を下賜される……)

 希望のために戦ってきたし、戦士を応援してきたのだ。

 いくらよりよい生活ができると言っても、これまでの生き方を否定するのは簡単ではない。

 地球でも、戦争が終わったと思って恵一たちを応援しなくなる人たちは多いのだ。

 だが、そちら側も一枚岩ではない。時間さえあれば、変わることもあるだろう。

 

 

 

 時間を少し戻す。ユリアンたちがこの時空を訪れた直後だ。

 

 さらに上の上位種族とも、ユリアンや001は連絡を取っている。

 だがあまり下にはかかわらない上位種族は、ユリアンたちの扱いの多くを、ケイローンに任せてしまった。001と超上位種族は常に膨大な情報のやり取りをしているようだが、それは、

(雲の上の話……)

 であり、下の人類たちにはさしてかかわりがない。

 

 そんなケイローンは、想像さえしたことがなかった並行時空からの、それもかなり大きな戦力を持つ使者との折衝、という難題に直面した。さらに大きい功績をあげ、誓約しこちらも苦しいのに戦力を注いで、なお守り切れなかった地球人とも縁があるようでもある。

 ケイローンにとって、誰かを扱う方法は、〔魂の試練〕しかなかった。

 そして、まさに必要もあった。

 太陽系だけでなく、守り切れなかった戦線はこの大攻勢の中、いくつもあるのだ。

 中級・上級種族の星系にも恒星反応弾を注がれているのだから、余裕がないのはどうしようもないが、言い訳はない。

〔魂の試練〕は基本的には、同じように粛清者の偵察を察知し、同じように救援を求める下級種族どうしを、どちらも死人が出ないよう、怨恨にならないよう遠隔操作で戦わせる。

 だが、いきなり実戦に放り込むこともないではない。

 

「移動ゲートすらないが……」

「780光年程度なら2時間かかりません」

 そういったユリアンは、〈ミレニアム・ファルコン〉に00メンバーを残し、二星系共和国艦隊と〈クロガネ〉で消えうせた。

 星系内のショートジャンプ、星系をつなぐゲートなど複雑な超光速移動を用いる銀河文明評議会にとっては呆然とするものだった。

 001に制御された超技術、金星だった巨大な幕がスライムに戻り次々と巨大設備を吐き出す光景は、ケイローンも呆然とさせるものがあった。

 

 バーゲンホルムで一気に加速、そこからワープとハイパードライブを複合させ、きわめて短時間で戦場に飛び込んだ〈クロガネ〉とブレクc率いる艦隊。

 ユリアンがレンズを通じてもたらす仲間たちの知識と001の超頭脳を用い、〈クロガネ〉やラドチ艦の中身もかなり別物になっている。艦内工場、それも惑星連邦直輸入のレプリケーターと、ズフィルード・クリスタルの複製能力があるのだ。

 波動エンジン、多ストリング型のクロノ・ストリング・エンジン、ハイパードライブ、フォールド、さらに罠があって制御が困難だったブラックホール・エンジンも改良されて搭載され、TEエンジン……ターミナス・エナジー・エンジンも加わっている。

 その膨大な出力は移動のみならず、主砲の火力も大幅に強化している。

 白色彗星帝国と戦っていたころの、ヤマト地球の巡洋艦級の拡散/収束波動砲を、砲塔であらゆる方向に2分に1発は発射できる。

 同じように砲塔で、ブラックホール・キャノンを1分に20発。

 ヴァルシオンのメガ・グラビトン・ウェーブさえ、1分20秒程度で連射できる。

 大口径のショックカノンもある。

 もちろん、波動砲とメガ・グラビトン・ウェーブを複合したらとんでもない威力になる。

 波動砲やブラックホール・キャノンの弾、ミサイルを瞬間物質移送で敵に直送する、火炎直撃砲の強化版もある。

 対空機銃さえ、シャルバート式のCIWSや高連射のクロスマッシャーが当然になっている。

〔UPW〕で標準となった、波動エネルギーを用いる光速に限りなく近い実体弾はまだ再現できていない。

 

 奇妙な援軍を伝えられた、ほぼ壊滅し絶望にとらわれたケイローン艦隊と親衛義勇軍、いくつかの途上種族艦隊の連合。

 いぶかる間もない。

 耐ビームコーティングつきの新型艦と、どれがおそるべき高質量散弾かわからぬ恒星反応弾を相手に、恒星がやられるのも艦隊が全滅するのももう間もなく、という状態だった。

 そこに、突然巨大な、異形の艦が数隻出現した。

 半減しているとはいえ数千の艦隊が、同じような数の転移してくる粛清者艦と撃ちあっている……そんな中、どれほど巨大でも、

(わずかな数で何ができるものか……)

 とさして関心もない指揮官も多い。

 

 まして地下シェルターに急ぎ、死を待つ惑星の住民は……その移動自体が多くの犠牲を出してさえいるのだ。

 20億人を10日生かすか、2億人を100日生かすか、という地獄の選択すら迫られている。モルダー星系がまさにそうなったように。

 

 普通とは違うことに、何人かのオペレーターが気付いた。普通の転移にある、重力波などが違う。

 オブザーバーとして、銀河文明評議会側の通信装置を持って同乗したケイローン・アロイス・地球の将官からの連絡……それすら待たず、〈クロガネ〉の翼下から二隻の小型艦が、また大型の個人戦闘艇が飛び立った。

 

 ポプランとユリアンは、それぞれ110メートル級、駆逐艦サイズの大型個人戦闘艇を建造している。

 双発の波動エンジンとクロノ・ストリングエンジン、ブラックホール・エンジン、ウィル技術を加えた巨大出力をスピードと機動性に振り切った機体だ。

 カリンの紋章機も白い翼を広げ、すさまじい速度で突撃した。

 蹂躙。

 シールド艦に守られた艦隊にブラックホール・キャノンが直撃、シールドをなす濃密な粒子もろともすべてを吸収する。

 スペースコロニーサイズの巨大ミサイルに向かったユリアン機に、ミサイルが爆発し一発一発が巨大タンカーの質量、それを中性子星に近い高密度に圧縮し、さらにかなり光速に近い速度でばらまく高質量散弾が向かう……だがそのすべてが、歪曲フィールドで軌道をねじ曲げられる。

 ユリアンの操縦自体も、それが楽なように精妙に弾幕が薄い、しかも最短距離になる場をえぐっていた。

 その後を通って突進したカリン機が、すさまじい攻撃力を開放する。

 ユリアン機が連射する小口径ガスト式ショックカノンとフェイザーが、巨大な恒星反応弾を次々と破壊する。耐ビームコーティングもまるで存在しないように。

 恐ろしいのが、この時空の常識では、たしかに光速の50%以上から瞬時に停止し、また別方向にそんな超高速に加速することは可能だが、その慣性補正装置は熱飽和してしまう。だが援軍の機体は、慣性補正装置の飽和がないように超高機動をいつまでも続けているのだ。

 

 クロガネ、そしてラドチ艦も次々と波動砲を、そして大軍を蹂躙したヴァルシオンの必殺兵器であるメガ・グラビトン・ウェーブを放つ。それは粛清者艦隊の、これまで味方の膨大なビームを防いできたシールド艦も、耐ビームコーティングも存在しないかのように破壊していく。

 止めようと襲ってくる水雷艇や個人戦闘艇の、巨大な蚊柱のような恐ろしい数の群れ……

 それに、多数の人型機が立ち向かった。

 

 ユウキ・ジェグナンとリルカーラ・ボーグナインは、〔UPW〕のトップクラスに近い機体を〈クロガネ〉艦内で複製され与えられている。

 他にも、何百ものブレクcの属躰が、生身を通さず人型機の疑似人脳コンピュータに入り、アンシブルで統合されて人型機の体を制御して動いている。

 80メートル近い巨体、波動エンジンとクロノ・ストリング・エンジン搭載。バーゲンホルムの超高機動で動きながら、至近距離から小口径波動砲とブラックホール・キャノンをかわるがわる叩き込み、その間はショックカノンとリボルバー型波動グレネードランチャーでつなぐ。

 リューネ、アクセル、アルフィミィ、ブリットも、愛機に巨大な、補助エンジン・シールド・巨砲を兼ねる武器を持たせている。人がアフリカゾウに乗っているようにも見える。

 小型の波動エンジン、移動を大きく補助し、小口径高連射のショックカノンとフェイザーをばらまく。

 超高密度・光速にかなり近い実体弾も、重力剣が精密に粉砕する。

 そしてその恐るべき速度と機動性!

 ほぼ瞬時に、偏在しているように極超光速機動を繰り返して膨大な敵機を近距離から撃破していくのだ。

 さらに、個人戦闘艇が混戦状態になっている、そこにリューネのヴァルシオーネが瞬時に飛び込むと、粛清者の機体だけが粉砕される。サイバスターのサイフラッシュをリューネの亡父ビアンが真似た敵味方識別広域兵器。

 

 指導種族には気がつく者もいた。

(そうか、脳とコンピュータを直結できれば、技術水準が低い兵士を最も短い時間で戦力化でき、建設作業などもできる……)

 と。

 無論、前方投影面積、関節の部品点数など欠点は多いのだが。

 

 その恐るべき戦力で一星系の戦局を変えた並行時空の戦士たちは、ケイローンにも文句なしに認められた。

 

 

 いくつもの場に、戦いは分かれる。生産もまた戦いである……それが傭兵種族ケイローンの誇りでもある。

 そして現実を見る、まともな軍人は知っていることだ。あまりにもしばしば否定されるが。

 

 破壊されたモルダー星系で、不毛の惑星や表面の基地が全滅した月サイズ小惑星を用い、できるだけ低い技術で膨大な人が住める場、少しでもましな食糧、トイレを作る途上種族やロストゲイアー。

 被害を受けた地球で、地下シェルターで苦しむ地球人を救出し、金星をもとにした設備に移住させる人たち。

 そして、遠いアンドロメダ銀河、未知の粛清者の本拠地を襲い、ドアを叩いて注意を引きつける……その後、そのまま攻めるのか、ただ敵の注意を引きつけて後方の生産の余裕を作るのか、それら大きい戦略は、

(上位種族の仕事……)

 と見えないままに戦い続ける。

 さらに、発見された時空間ゲートから、別時空への冒険にも加わる〔恵一〕もいる。

 

 複数の体を持ってまで戦い続ける恵一、それは償いなのか、闘志なのか……

 彼を慕う女たち、そしてもっと近くにいる副官のバーツは、心配してやまない。

 まして地球で待つ家族、そしてロボ……士官学校からつき指揮官となっても秘書役をこなすパーソナルドローン。ほかにも多くの艦を一人で動かせるようダメージコントロールなどをするドローン、個人戦闘艇に随伴し自らも砕けるドローンも多数ある。

 それは、ほんのわずかしか生きられないとわかったアロイス人たちの、脳の一部をバイオチップとして用いている。

 他にも多くの星系の、膨大な犠牲者の脳が。

 以前、無人機をハッキングされて滅びかけたことがある銀河文明評議会は、人間の脳がない機体を動かせないのだ。

 

 あまりにも巨大な銀河文明評議会と、遠く離れた〔UPW〕、また他にもいくつもできつつある時空間連合国家。それがどう絡み合い、巨大な戦いになっていくものか……

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