第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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特級厄物、リンダの予約と疫病、ネーヴェはどうしましょうか……まあどうせ分岐してますし。

あとこの作品は基本的には極甘です。ご都合主義なまでに。


宇宙兵志願/時空の結合より7カ月

 東奔西走。

 まさに怒涛のような時間だった。

 

 グレイスンが母と婚約者を助けたい、と求めを口にした、その直後。

「じゃあ、行くか」

 ヒロが言い、メイがうなずいて口を開いた。

「対宙賊独立艦隊のデータベースから、ハイパーレーンの情報を得ました。この時空の太陽系まで短時間で直行できます」

「よし、乗れ」

 と、ヒロがグレイスンに目を向けて立ち上がった。

「ご主人様は、あなたが助けたい人の顔を知りません」

 メイが補足する。

(今すぐ?)

 セレナもファロンも、カイも息をのむ。政治的なもろもろがどれだけ多いか。

 だが、助けたいなら一秒でも早く、それも正解なのだ。

「一分で出るぞ!」

 ヒロの声、メイが運動能力が常人であるミミを抱え上げ、それでも常人が走るより早く歩き出す。

「わかった!」

 ファロンがグレイスンを助け起こし、小走りに〈ブラックロータス〉に向かうヒロを追う。椅子代わりの通信機だけを背負い、ほかは何一つ取りに行かず。

 カイラーラ・ヴァッタも、副官や現地の士官とわずかに話して全速で走り出した……外交交渉の全権委任、誰に権利があるかを明確にして。

 何も持たない。余計なことを考えない。

 百戦錬磨の前線兵士だからこそできる決断だ。宇宙すべてより隣の戦友と、目の前のトーチカを優先する。

 大型母艦のドアが閉まりはじめ、隙間に美少女を抱えたメイ、そしてヒロ、ファロン、グレイスン、カイが飛び込んで閉まる。

 閉まる数秒前には遠隔操作で浮き始めている。そのまま最大出力で氷惑星の重力圏を離脱。

 

 セレナが必死で命令し、二隻の巡洋艦と、二隻の高速輸送艦だけが追随してハイパーレーンに飛び込んだ。

 すぐグレイスンと同じ時空の、地球から逃げて惑星に向かっている艦とすれ違いつつ、グレイスンができる限りの情報を得る。

 その後の、この現地の勢力とはセレナと、カイの副官が主に交渉するだろう。侯爵家令嬢であるセレナは高度な身体改造を受けており、脳の能力も常人とはかけ離れている。

〈ブラックロータス〉率いる艦隊は全速……セレナ艦隊の艦は息絶え絶えになる速度……で地球に向かう。

 

 ヒロは常にとんでもないトラブルを呼ぶが、逆にご都合主義なまでの幸運もある。

 そのおかげで一日もせずに急行できた。

 

 地球は死にかけていた。人間であれば、腹を45口径で撃たれた状態だろう。

 ランキーと言われる、乗員が恐竜サイズの異星人の巨大播種船がついに人類の中心に到達し、艦隊を粉砕していた。

 太陽系に到達したヒロたちが、グレイスンが受信した情報を得ると、一気にランキー播種船に向かった。

 見たところ、地球はまだ二酸化炭素地獄にはなっていない……月基地からも通信は入る。

 だが、

「いつも通り・全部・クソッタレ(situation normal all fucked up)ですね」

 としか言いようがない混乱。

 

 星系内の超光速飛行から離脱したヒロが、奇妙な痕跡をつかむ。メイが分析した。

「この時空の、人類の宇宙戦闘機です。一度月から大きく離れ、播種船に激突する軌道で加速を続けています……増槽を切り離しました」

「グレイスンたちと同じ、核兵器が効かないなら高速激突を、有人でやろうとしているのか……だが」

「速度が足りないでしょう。有効な攻撃にはなりません」

「ヒロ様」

「ああ」

 と、〈クリシュナ〉は軌道をわずかに変え、ひたすら加速している戦闘機に桁の違う速度で追いついた。

 通信を封鎖している機体だが、メイの補佐で強引に割り開き……グレイスンが衝撃に目を見開いた。

「ハリー!」

 月基地で飛行関係の教官をしていたはず、グレイスンの、また軍の評価では、

(戦争が順調だったら星二つ三つ……)

 の優秀な士官だった彼女が。

「え、グレイスン……」

「失礼します。その速度では播種船を破壊できません、自己満足にしかなりません」

「だとしても……もう減速する燃料もないわ」

「移乗します」

 と、メイ。〈クリシュナ〉が神業じみた加減速で相対速度をゼロにし、4本のレーザー武器腕で戦闘機をはさみ捕まえる。そのまま着艦シークエンスを利用して〈ブラックロータス〉とランデブー。

 その間にメイは救急ポッドを抱えてエアロックから飛び出す。

 メイドロイド、真空は平気だが、光景は衝撃的だった。

 ほんの一瞬、ハリーが抵抗して制圧され、〈ブラックロータス〉に引きずり込まれた。

 

 その間も、ものすごい速度で〈ブラックロータス〉はじめ3隻とセレナの艦隊の4隻は播種船に近づきつつある。

「あと29秒で接敵、メイ!」

「はい」

「対地反応弾、発射します!」

 巡洋艦から巨大ミサイルが発射され、一気に加速する。

 もともと相対速度が大きかったこともある。

 ミサイルにかぶさるように、その至近距離を〈クリシュナ〉が走る。播種船から放たれる大型質量弾、それを次々に〈クリシュナ〉のレーザーが打ちそらす……表面の一部を蒸発爆発させ、その反動で軌道をそらせる、精密な狙撃。ヒロが呼吸を止めることで時間の流れを操っているから、高速戦闘中に短時間で膨大な情報量を処理できるのでもある。

〈クリシュナ〉が体当たりするようにすら見えるほどの速度で衝突軌道。わずかに曲線を描くような軌道変更、慣性補正装置の限界を超える機動……

 後ろから、〈ブラックロータス〉の電磁亜光速実体弾が飛ぶ。

 実体弾、〈クリシュナ〉船首の散弾砲、そして対地反応弾が同時に着弾、播種船の核兵器が効かないシールドを破る……そこに、〈ブラックロータス〉から別の高速ミサイルが放たれた。

「苦労させてくれたわ~」

「効いてください」

 ドワーフ姉妹が疲労困憊した表情で座り込む。

「大丈夫だよ」

 白衣の女医が自信満々に豊満な胸をそらす。

 イナガワテクノロジーの女医、ショーコが、別の時空でランキーのサンプルを手に入れて以来研究していた。

 そしてヒロたちについてこちらの時空に同行したい、サンプルが欲しい、と〈ブラックロータス〉に運べる限りの研究設備を持って移乗していた。

 母艦内で研究を続けていた生物兵器を、貫通力を強め内部のペイロードをある程度補助する徹甲弾頭ミサイルに詰める、その突貫工事をティーナとウィスカが瀕死になるペースで続けていた。

 数分後、播種船は機能を停止する。

「中に突入したい、情報を」

「地球に向かうのが優先だ!急げ!」

 ヒロが叫び、〈クリシュナ〉を〈ブラックロータス〉に収納する暇も惜しんで地球に向かう。

 グレイスンとハリーの再会劇すら、やる暇がないほどのめまぐるしさ。

 

 まさに間一髪だった。

 神経ガスの散布は始まっていた……散布に当たっていたランキー艦を生物兵器ミサイルで排除した〈クリシュナ〉は全速で大気圏降下。

 ヒロは重装甲・重火力・大出力の、ゲーム時代から愛用していたパワーアーマー〈RIKISHI〉でニューヨークの福祉都市に飛び降りる。本当に相撲取りのイメージの機体であり、ゲームのPvPイベントは「**場所」など相撲関係のパロディ言葉が支配するほど。造形も悪役で、ダサい。だが性能は確かだ。

 ヒロにとっては懐かしの地球、だがそこは、もはや絶望と暴動の地獄……

 グレイスンとファロンが、パワーで人々を排除しながら突き進むヒロに、心を殺して追随する。

 降下中の〈ブラックロータス〉が、グレイスンが叫んで指さしたところに急ぐ。

「どけええっ!」

 ヒロも、グレイスンもわかっている。苦しみ、暴れる人たちは同じ人なのだと。だが、ただ一人を救いに来たのだ。

 別に特別な人ではない。ただ、グレイスンにとって大切なだけ。

 これ以上ない不公平。

 だが、ヒロはいつも、

(目についてしまった……)

 人を、寝覚めが悪いと思えば助けた。

 他の多数の人のことは気にしない。敵を何万人殺しても気にしない。そのあたりは割り切っている。

 ファロンやグレイスンもカイも、そのことでは文句は言わなかった。

 グレイスンが、カイが、ミミが望んだのだ。

 助けられる人が限られる事態は、軍人にとっては常だった。

 

 風で薄まっていた神経ガス、それでも激しくせき込む初老の女性を、グレイスンが指さす。ヒロが、彼女を襲おうとしていた近くの人間を電撃弾で排除し、大ジャンプでそのすぐそばに行って抱える。暴徒に顔を切りつけられ、ガスがなくても死ぬ直前だった。

 そこに〈ブラックロータス〉が無茶な地上通過飛行、そのわずかなエアロックの隙間に重パワーアーマーが飛び込んだ。

 さらにファロンとグレイスンを回収し、そのまま飛び立つ。

 まるで土産のように、〈ブラックロータス〉は多数のマイクロミサイルをばらまいた。

 害ではなく、助けるために。

 多数のマイクロミサイルが広い範囲で炸裂し、一瞬小さな霧を出してその霧も消える。

 ショーコが作っていた、ナノマシン兵器。地球人に感染し、情報を得ていた神経ガスを極めて急速に分解するある種の機械を体内に作ってしまい、同時に体内で増殖して胞子を散布、他の地球人にも感染する。

「何のテストもしてないよ、後先の事なんて知らないよ……こんなこと、まともな医者がやることじゃないねえ……ヒロ君の遺伝子を買って研究してなかったらとても無理だったさ……」

 というほどの超緊急措置。

 それで、この近くの数百万人の、数%が助かるかもしれない……

 

 同様の無茶苦茶で、グレイスンの母親の緊急治療も始まる。

「助けるからには面倒を見ろよ?」

 ヒロがグレイスンに言った。

「あの、私はコロニーで暮らしていて、両親が変な事故で亡くなって、なぜかその賠償責任が私になってしまって……三層に送られ、襲われそうになったところを、ヒロ様に救われたんです」

 ミミが表情に陰りを見せ、思い出したのかヒロの腕に触れた。ヒロは彼女を強めに抱き寄せる。

 市民権にも常に金が必要なコロニー。完全に金がなくなれば、居住地自体を変えられ、無法のスラムに落とされる。何も知らない美少女の運命は知れたこと……ちょうどヒロがいなければ。

「私は、独立の傭兵だったんだけど……艦が暴走して、味方の旗艦に突き刺さって……賠償で詰んだところを……」

 エルマも苦笑ぎみに言った。

「あれは見た目が良くて性能も高いけど、クソ高いうえにゲロビ浴びたら暴走する、って知らなかったのか」

「知らなかったわよっ!」

 エルマは思い出したくないことだったのか、少し怒っている。

「どちらも財産のかなり大きい割りを投げたのよ」

 エルマの言葉に、ヒロが軽く肩をすくめる。カイが目を見開いた。

「助けてくれと言った、……どんな重荷でも負います」

 美しい婚約者の肩を抱いたグレイスンが決意の目で言う。ファロンがその背を叩いた。

 下を見ると、治療カプセルの中の、年齢よりも老い、顔に深い傷ができたばかりの女性が、確かに息をしている。グレイスンの手がカプセルの表面をなでた。

 グレイスンは絶望しかない福祉団地の中、母親もわずかな娯楽と配給にしか興味がないゴミだと軽蔑していた……落伍した父親と同じく。だが戦い抜き、休暇で帰った時に、その別の姿も見た。

 

 

 ヒロたちは、グレイスンの故郷、またその敵国だった国々も、事実上交渉相手と考えていない。

 グレイスンの故郷の地球はいくつもの国家に分かれ、戦争を続けていた。ただし地球をこれ以上破壊しないよう、植民地である星々を争う形で。

 ランキーが出現しても、それを利用して国家間戦争を有利にしようとしていた。

 だが、軍の大半がやられ、ついに本拠の地球が攻められたときはじめて、

(もう国どころではない……)

 と特権階級だけが逃げ出し、大半は残された。

 ランキーの脅威がなくとも、このままでは膨大な地球の人々は死ぬだろう。

 

 ここで動いたのが、カイとセレナだ。

 

 カイの時空では。

 惑星のひとつを別時空からの侵略者、ランキーと言われる恐竜型巨大異星人に破壊されたシウダッド星系の、膨大な混乱と被害の復興。

 そのための周辺星との交易に、別時空からの船をうまく割り込ませて、名を売り利益を上げる。この時空で知り合いを増やし、経済に少しでも食い込む。

 何よりも多くの船を出すように言った。報酬は船載インプラントと、けた外れに速くなる別時空のエンジンを追加する改修、別時空との交易権、宙族からの護衛。

 

 セレナとクリスも動いている。

 クリスの、ダレインワルド家の動かせるあらゆる船、食糧生産設備がフル稼働した。ついでに衣服、家のかわりになる物、水を浄化できる物、なんであれ。

 まずダレインワルド家、そして帝国量全体も動き出す。皇帝も全面的に前進を命じた。

 二つの時空ゲートをくぐり、大量の食糧の運搬が始まった。

 食糧は大規模な破壊を受けたシウダッド星も求めている。

 

 

 さらに、ヒロたちが来た時空で、ヒロを訪ねて遠いヴェルザルス神聖帝国から、クギという銀髪キツネ耳美少女巫女ついでにモフモフしっぽ3本がやってきた。

 コーマット星系に駐留しているダレインワルド艦隊に、本国の力まである程度使って連絡を取り、そのままゲートを通る使節船団に混じって。

 どうやらある程度人を操る超能力があるらしいが、それはできるだけ使わないようにしている。

 彼女は、ヒロが別時空からの存在だと知っていた。ヴェルザルス神聖帝国自体が過去に、世界の間に穴を開けてしまったせいでもある、と。そんな存在が持つ強すぎる超能力を制御できるよう来たという。無論実質愛人の一人とされることも承知、一生を賭しての訪問である。

 とても重い。

 帝国貴族でもあるエルマや、情報面でほぼ全知のメイに聞くと、ヴェルザルス神聖帝国は強大な精神文明で、攻撃的ではなく利他的、だが圧倒的な力で畏れられてもいるという。

 

 ついでに、イナガワテクノロジーの女医ショーコがヒロの船に移籍し、男女の関係になった。

 セレナが大佐になった。

 

 ランキー船との戦闘は、ヒロの進言もありダレインワルド家がプラズマキャノンを持つ傭兵を集めたことでかなり有利に運ぶようになった。

 プラチナランカー、〔沈黙のバンクス〕、サイレント、マスクドなどの異名を持つキャプテン・バンクスをはじめとする、グラッカン帝国のかなりの戦力が集まる。

 プラズマキャノンは真正面にしか撃てないがシールド貫通能力が高い、色物兵器のひとつである。

 

 崩壊状態となった、グレイスンの故郷時空も、クリス・エルマ・メイの様々な策略もあり、ある程度形を取り始めた。

「食わせた者が勝ちです……」

 が基本である。

 さらに機械知性も利用し、何らかの仕事をさせ、

(働き学べばよりよい生活……)

 という希望を持たせる。

 それとともに、シウダッド星系をネットワークの中心として、カイも時空間貿易を増やし始めた。

 そうなると、カイ自身も別行動をとっている親族と連絡をつけたくなる。ちょうど別時空のエンジンの入手で、速度は大幅に上がっているのだ。

 ヒロの世界、またグレイスンの時空の航行方法も研究を始めている。

 

 カイは、無人時空で私掠船連合の訓練を始める前、カスカディア星にいた。そこで裁判騒ぎに巻き込まれ、別の船で行動している従姉妹のステラと合流したのだ。

 それで普通の商売と船の一隻を正式にステラにゆだねている。ほかにも生き残った親戚がいる。

 また、カイは故郷スロッター・キー星にも一度は帰りたい。両親や兄、大半は死んでいるが、グレーシーおばさんを始め何人かは生きている。

 そしてカイに私掠船免状を送った真意も聞きたい。有効かどうかも。

 

 だが、カイは今はまだ動けない。シウダッド星系の商人たちや私掠船を中心として、シウダッド星の被害救援、また別時空の救援のための物資や船の調達などで膨大な仕事がある。

 それを通じて、近隣の星に宙族団の脅威と、別時空の脅威を伝えることも。

 地獄を見たシウダッド星の人たちが証人となるのだからある程度楽だが、若すぎるカイは外ではあまり信用されない。

 いや、カイそのものに信用されない何かがあるようだ……官憲の類に頭から疑われることが、これまで妙に多かった。

 

 本来なら、宇宙全体に名を知られ信用もあるヴァッタ航宙の社長令嬢、これ以上なく信用がある身のはずだ。

 だが、星間アンシブル網の謎の破壊から、宇宙全体でヴァッタ航宙の船が破壊され、ヴァッタ家の人間が殺された。どれほど多くの巻き添えが出ても構わず。それこそ宇宙ステーションごと爆破してでも。

 さらに、スロッター・キー星政府からの最後の通信で、ヴァッタ家は、

(好ましくない、かかわるな、見捨てろ……)

 という命令が宇宙中の領事館などに入ってもいる。

 何より、どんな事情があろうと、

(荷物を約束通り届けられなかった……)

 ことは、商人にとっては絶対の罪、信用を失うことなのだ。

 

 ガミス・トゥレックは、スロッター・キー星政府大統領を脅したとき、

(罪がない者を叩きのめすからこそ、効果がある)

 と言った。

 罪がない者をすさまじい残虐さで殺す。

 そうすれば、すべての人は、

(次は自分かもしれない……)

 と震えあがる。

 何をすれば見逃してもらえるかわからないのだから。何が禁じられているかわからないのだから。

 特殊な、極端な暴君のやり方だ。

 歴史上も、極端な暴力的独裁政府がそのような手を使う。何が禁じられているのかわからないがとにかく多くの人が激しい罰を受ける、それを見せつける。

 それによって恐怖と狂気が広く心を支配する。

 とにかく別の犠牲者を作り、魔女狩りじみて攻撃する。人と人の団結がなくなり、疑心暗鬼になり、分断統治される。

 

 その効果は、この時空全体に広がっている。

 理由もなく罰されたヴァッタ家が、

(あれほどやられるからには何か悪いことをしたのだろう……)

 と、あらゆる星で思われている。

 穢れ、という根本的な感情。それが被害者にも石を投げさせるのだ。

 それだけでなく、ただ近くにいただけで死んだ人も膨大にいるのだ。

 その恨みも、宙賊よりむしろヴァッタ家に集まってしまう。

 

 それがカイを苦しめていた。

 それこそガミスの狙いなのだと、メイやエルマは分析し、カイに伝えた。

 

 そして、活動が広がりつつある今。

 訓練を始めていた無人時空のゲートでグラッカン帝国につながる。そのゲートの両側に、クリスとルシアーダ皇女を中心とした大規模移動要塞・艦隊が集まり、物資を動かす拠点にもなっている。

 そこと太い交通でシウダッド星がつながり、そこのゲートからグレイスンの時空のフォーマルハウト星に交通がつながる。

 シウダッド星にも、かなり大型の戦闘・流通ステーションが運ばれてきている。

 そのような情報・交通・運送の網を見ながら、メイがヒロとカイに話し始めた。

 ヒロが、

「敵が勝つシナリオを考えてくれるか」

 と言ったからだ。

「ガミス・トゥレックにできることを考えてみましょう。

 短い期間でできるのは、ルシアーダ皇女殿下の移動宮廷を襲って制圧、人質にすることです。

 長い期間が必要でより有効なのは、グラッカン帝国中枢を腐敗させ支配していくことです。

 彼はこの時空で、星間通信局に何かをし、また栄えた政府を脅して事実上支配し、複数の星系の、信頼される企業にも手先がいる濃密な情報・暗殺網を構築しました。長期的な暗闘の能力は極めて高いでしょう」

 それを聞いたヒロは、むしろ護衛を中心に動くようになる。

 新しくクルーに加わったクギが、かなり人の悪意を読むことができるのも助かった。

 そして彼女の指導で、ヒロの超能力も高まっている。

 

 実際にまもなく、クリスを表敬訪問したある星の商人団の自爆テロ未遂があった。

(スキャンの技術に差がなければ危うかった……)

 し、その一人が最後に放った武器は、ヒロが息を止め時間の流れを遅らせて打ち落とさなければ危うかった。

 

 そしてそれだけでなく、カイの頭内インプラントに生じたインプラントアンシブルに、星間通信局(ISC)のラフェから救援要請が入った。

 極端に短い知らせ。だがそのすさまじい悪臭は、

(とんでもない危機……)

 を告げている。

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