第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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ヒロたちをWeb2024/12/#542状態にアップデートします…ネーヴェはいませんが。


若き女船長カイの挑戦/時空の結合より8カ月

 カイラーラ・ヴァッタの頭内のインプラントに、強烈な悪臭とともに救援を求める声が入った。

 インプラント同士を接続させることで、持っていない側のインプラントに複製されるインプラント・アンシブル。複製される側も、かなり水準が高いインプラントでなければ複製は起きない。

 星間通信局(ISC)幹部の息子であるラフェが、ある事件で疑われ検査を求められたことがある。自殺を決意するほど拒むラフェ。カイが自分がラフェのインプラントの通信ログを見る、と引き受けた結果、インプラント・アンシブルの複製が起きた。ラフェの疑いは晴れたが、巨大すぎる秘密を共有することになった。

 それから宙賊と戦うため、私掠船組織を作るためカイが動いたとき、ラフェは星間通信局が機能していない理由を探るためにと旅立った。

 

 今起きていることには、星間通信局が支配するアンシブル網の分断が大きい。

 本来のアンシブルは、星系ごとなどに大規模な中央設備があり、そこに集約された星系の通信がアンシブル網に送られる。

 かなり以前に、ある星でアンシブルが不通となり、その間にカイが狙われたことがあった。

 その後、ヴァッタ家が襲撃されるのと同時に、とても多くの星でアンシブルが不通になった。

 カイのいとこで同じように殺し屋に襲われながら逃げ延びたステラが頼ったラフェが調べたところ、星によっては星系にある支局の幹部が犯罪者に買収され、壊れていないアンシブルが壊れたと言ったり、来ている情報を握りつぶしたりしていたこともあった。

 その局員は、ラフェとカイの雇用契約もあり、ラフェ自身が殺して支局を復旧させた。それほど重大なことだった。

 

 カイとラフェが知るだけでも、星間通信局、スロッター・キー星政府、有力なボディーガード企業、有力な武器企業、ヴァッタ航宙の船長だがヴァッタ家ではない者、有力な私掠船に、宙賊の……ガミス・トゥレックのスパイがいた。

 カイの船の荷物にタグをつけようとした者を尋問しようとしたら、インプラントに入っていたプログラムのせいで死んだ、ということもある。

 恐ろしい組織だ。

 多元宇宙のゲートが開き、シウダッド星の異星人を撃破して、救援を口実に大規模な交易を始めている組織も、何度も攻撃されている。

 

 ラフェの忠誠は星間通信局にある。この時空の人類領域ほぼすべてを、広く薄く支配している星間通信局の腐敗を除くための戦い……楽なものではない。

 その彼からの救援要請は、カイの挑戦のためにもすぐ応えなければならぬことだ。

 ヒロたち、グラッカン帝国も隣の時空が宙賊に支配されることは容認できない。

 

 幸い、発信源である惑星デリアンまで、別時空のアルクビエレ航法を使えば短時間で行けることがわかった。それで改造済みの大きい艦隊は行ける。

 また、ヴェルザルス神聖帝国でサイオニック系の能力を開発したヒロと〈クリシュナ〉はそれ以上の能力もある……事実上どこへでもほぼ即時に行ける、というぐらい。

 問題がある。ラフェからの連絡は、言葉になっていないことも多く支離滅裂とも言えた。まだインプラント・アンシブルの技術が成熟していないからでもあるが。

 急ぐ、ということでカイと、ついでに状況を見るためにとファロンが〈クリシュナ〉に移乗し、そのままデリアンへ瞬時に。

 

 六つの光翼をひらめかせた、かえしの多い矢尻のような姿となった〈クリシュナ〉が安全なぐらい恒星から離れたところにサイオニックジャンプ……星間距離の即時移動をした。

(すぐ、星系を観測し、安全な航路で惑星にアクセス……)

 という予定だったが、それは吹き飛んだ。

「恒星が……ない?」

「時空間ゲートがあります!」

 ミミの叫びがむなしく響く。

「あっちゃあ……」

 何か上位存在の依り代にされてしまい、尻尾も増えたクギが頭を抱えた。その上位存在は安直にタマモと名付けている。

 

 

 恒星があったはずのところに、マイクロブラックホール。恒星はそれに吸収されている。

 普通ならそんなことをしたら降着円盤放射などでえらいことになるが、そんなものがない。

 凍りつこうとしている惑星やその設備がいくつか。

「ゲートを出入りしている宇宙船多数……拡大しええう、ます」

 ミミの声がうわずった。

 グラッカン帝国とも、最近見たヴェルザルス神聖帝国とも、このカイの時空とも違う、

(ウニか何かのような……)

 艦船。

 ヒロはともかく、ミミのようなスペースコロニー生活者はホロ以外ではまず見ない、が最近のリゾートでそういう生き物も見た。また珍しい食材を試すのが楽しみのミミは、そういうのも食べたことがある。

 そんな宇宙船が多数活動し、かなり大きい設備をゲート近くに組み立てている。

 クギ/タマモが、乾いた笑顔。

「人とは全く違う、かなり高い次元の存在〈粛清者〉の先兵じゃな。人間には感じられぬ法力声で怒鳴り散らしておる……」

「聞きたくないんですけど。聞こえてるのがすごく嫌なんですけど」

 ヒロに構わず、タマモは続ける。

「人類という汚らわしい、違法な存在を徹底的に滅ぼせ、とな」

「ああ……困ったことに聞こえてるんだよなあ。ここまでの悪意は初めて感じる……人間の感情とはかなり違って機械的なのがまた……うっぷ」

 ヒロと、クギ/タマモが吐き気をこらえる。

 しばらく沈黙。

「まあ、今度のゲートからいらっしゃった連中が、恒星を吸い取った……そうなれば、人々は凍え死ぬ、と。

 ただ、惑星の設備とかは攻撃されてないな?ミミ」

「はい。ただ、いくつか内部から破壊された施設とかもあるようです」

「そりゃそうよね、絶望で暴れる人もいるわよ」

 エルマがため息。

「カイ、ラフェとかいう人は?」

「生きてるけど……うっぷ」

 カイの脳内の悪臭が強まっている。インプラント・アンシブルを通じて強烈な危機。

「この星のアンシブルはほとんど死んでるわ」

「カイ、船載アンシブルでグラッカンへのゲート近くの艦隊に連絡してくれ……あたうかぎりの何でも、物資持ってきてくれ、と」

「わかったわ」

「とりあえず……あの艦隊と戦うのは戦力が集まってからにするか。ラフェというやつを助けるのを優先する」

 ヒロが決断し、アルクビエレ航法に関するビーコンを〈クリシュナ〉から放出した。

 

 惑星デリアンに行ってみると、そこでは数日前に恒星が失われた衝撃でかなりの混乱があった。

 徐々に冷えようとしている、絶望の惑星。

 だが、それがまるでなかったかのように、激しい銃撃戦が続いている区域がある。

 かなり贅沢な市街地の一角の、大規模設備。

「ラフェから、何とか断片的な言葉。大災害に乗じて敵側が、調べようとした星間通信局幹部を皆殺しにしようとした、って」

「さあて……」

 グラッカン帝国製の最新パワードスーツに習熟し、義足も交換したファロン。

 ヒロは最近手に入れたオーダーメイドのパワードスーツ、サイオニック能力が開花した今はもう必要ないとも言われたが。

 カイもグラッカン帝国製パワードスーツをつけ、大量の兵器を背負い、緊張している。ファロンほどの超優秀兵士に率いられるのは、いくら成績トップとはいえ士官学校退学の身では緊張する。

〈クリシュナ〉が、短いサイオニックジャンプで一気に安全と思える場に出現、惑星の間を亜光速で駆け回っていた膨大な相対速度を瞬時に殺す。

 パワードスーツが三体飛び降り、カイがまず一方を見る。

「こっち……いえ、こちらに変更します。情報を送信します」

 ラフェからの指示が入ったのか、地下に大きい設備がある、一見平凡な雑居ビルの地図がパワードスーツ間で共有される。

 ファロンが無駄のない動きで接近し、ヒロが拳を握るとやや離れたところで狙っていた狙撃兵の首が折れる。それを信じきっていた動きでファロンはカイから受け取ったピストルグレネードを発射、プラズマグレネードが扉とは違う壁を蒸発させた。

 

 ファロンの総合的な、陸軍兵士としての最高峰の技量。

 ヒロの正確な射撃と、必要に応じて念力の腕で敵を潰す、息を止めて時間の流れを遅くする、などなど発揮されるけた外れのサイオニック。

 二人に必死で追随し、ミスはせずシミュレーション訓練通りに必要な予備弾薬を渡すカイ。

 また、ヒロが敵の弾を空中でそらしながら無謀に飛び出し、プラズマグレネードで空けた穴からショックグレネードが敵の集団を襲う。ファロンが天井の照明器具を利用して天井を高速移動し飛び込み、最も確実な武器である長さ50センチ・太さ3センチほどの鋼棒で敵を無駄なく殴り殺していく。

 

 激しい銃撃戦の中、無人の野を行くように走り……初老の男を必死で守っていたラフェを見つけた。

 直後彼の左腕が吹き飛んだが、ヒロがすさまじい速度でかばい個人シールドで追撃を防ぎ、ファロンがとてつもない速さ正確さで止血する。

 カイが敵を一掃し、顔は知っている星間通信局の重役、ガーストン・ダンバーガーの顔を認めた。

 それで一気に戦いの局面が変わる。

 

「並行時空?」

 簡易治療されたラフェが呆然とする。

 これ以上の証拠があるだろうか……星系の、恒星が、ない。

 そしてゲートから出入りしている、あまりにも知らない艦船。

 

 まもなく〈ブラックロータス〉、〈ヴァンガード改〉、そしてセレナの艦隊が到着し、粛清者艦隊と激しい戦いが始まった。

 機械知性であるメイが敵を分析する。粛清者艦船はどうやら、星系からかなり離れた重力場が安定したところからしか超光速航行に入れないらしい。

「そこに大きい基地を作り、そこからこの時空の星系を探査し、人がいる星系は滅ぼす、という予定のようです」

「なら、この星系から敵を一掃し、とりあえずそのゲートを封鎖するか……」

 聖遺物としての本領を思い出した〈クリシュナ〉の、グラッカン帝国の常識を吹き飛ばす数々の兵器が咆哮した。

 セレナ艦隊も全力で戦い始める。

 

 

 遠くにいるガミス・トゥレックにとって、今起きていることは悪夢を通り越していた。

 すべてを、全人類を手に入れる……長い時間をかけて組織を築き、あらゆる星系に浸透する。ついに星間通信局を麻痺させてアンシブル網を断ち、船載アンシブルを利用して宙賊連合艦隊で一つ一つ重要な星系を落としていく……ついでに、目についたヴァッタ航宙を皆殺しにして、意味のない恐怖を人類全体にばらまく……完璧にできていた。

 その前哨戦で目についた小娘の抵抗など、もはや相手でもなかった。その私掠船団には最初からスパイがいて、すぐに艦隊を差し向けて潰した……はずだった。

 シウダッド星系に、何かが起きて星系政府艦隊が全滅し、主要居住惑星が全滅した。艦隊にも、惑星にも多数いる自分のスパイは、信じられない報告を最後に飛ばしてきた。

 そしてデリアン星系では、奇妙な宇宙船が出没し、誰何した艦隊は瞬時に全滅し、恒星が消滅したという。

「何が起きているんだ!」

 怒鳴り散らし、無辜に対するすさまじい暴力で憂さを晴らすしかなかった。

 わからない。わかりたくない。

 シウダッド星系のスパイが中継した通信……ヴァッタ家の小娘の言葉。

 人類を手に入れたら、その人類を守る義務ができる、という考えたくもないこと。ただ支配し、富を奪い、楽しむだけではすまない。

 そしてスロッター・キー星のあの腐った豚のような大統領がおびえていた、頭のおかしい婆さん……

 

 

 ヒロたちは星系を軍事的には取り戻した、だがあまりにも膨大な被災者が死を待っている。

 宇宙空間にあるステーションなどの施設は、エネルギーさえ供給してやれば保温はできる。

 だが、惑星上の人々は……恒星が消えたことによる強風もすさまじくなっていくし、これからとんでもないことになると計算も出ている。

 

 クリスの活躍、ルシアーダ皇女の権威で、すでにグラッカン帝国の動ける船、あるいはエンジンをつけて動かせるコロニーは、ありったけ動いている。

 艦船の生産も加速している。その気になれば、特に機械知性が最大限に協力すれば、総力戦規模の生産力爆発は容易だ。それができる技術水準だ。

 食糧生産設備も。設備を積んだ船も。

 医薬品、衣類なども、あるものは買い集め、あるいは生産設備を作る。

 ゲートが開いて以来、ヒロが関係するあちこちで、何百億人単位の難民が次々と発生するのだ。シウダッド星、グレイスンの故郷時空の地球や、他の多くの星、そして今このデリアン星系。

 億単位のトロッコ問題・トリアージをしつつ、一人でも助ける……それがとても心すり減る日常と化している人たちがたくさんいる。

 

 

 ヒロには他にも妙な知らせが入った。グラッカン帝国の、割と帝都に近いウィンダス星系の近くの未開発星系で、何かとんでもないことが観測されたという。

 ゲートが出現し、何カ月もかけて監視していた。ヒロの報告を受けて出入り法をつかんでいた。だが調査は慎重に……していたらゲートの、向こうからこちらに来る側から、とんでもないエネルギーと超高温水素プラズマが吹き出した。

 それがずっと続いている。

 観測用の無人艦が最後に飛ばしたデータでは、別に爆発寸前でもない普通の恒星が、突然爆発したらしい。

 もっと詳しい情報がないのか聞いたヒロは、何かもっととんでもないことがある予感がしていた。

(人為的な恒星破壊兵器が使われたのでは)

 と。

 ヒロの悪い予感は、嫌と言うほど当たる。




こんなことでさえ『タイム・オデッセイ』『ギャラクシーエンジェル』『三体』『ガルフォース』、さらについ最近本作でもやった『反逆者の月』、本作内では数年後に粛清者が新兵器を投入した『宇宙軍士官学校』などなど多数の選択肢があるんですよねえ……『スターウォーズ』だってたくさんあるでしょう。
さてどれでしょう。
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