第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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ギャラクシーエンジェル/時空の結合より4年2カ月

 指数関数の脅威に直面し、諦めず生き延びると誓う〈コーデリア盟約〉各時空。同時に、パルパティーン帝国との戦いも目の前だった。ユリアンからは遠い遠い別時空の脅威も伝わる。

 かなり前からその苦闘があるのが、超時空〈ABSOLUTE〉だった。

 元々、トランスバールの近くにとどまる〈白き月〉以外の五色の月とその変形複製を、あちこちから運んできた大量の巨大小惑星の資源で作り続けている。それに、ダイアスパーの技術と、プロトカルチャーの自動工廠技術が加わっているのだ。

 かなり前からいくつかの指数関数増大を見ている。それがやるべきことの多さの前で小さく見えていただけで。

 指数関数は、本当に爆発する前に長い、ほとんど変わらない下積みの時がある。それが恐ろしさを過小評価させたり、赤ん坊を産湯ごと流させたりするのだ。

 

 多数の無人時空の、最後にウィルの攻撃で広範囲に破壊されたが、だからこそ無数に散らばる溶けた破片がある。

 最後の攻撃が届かず、あるいはその後にゲートに加わった、無事な無人時空も多くある。

 その膨大な資源を大量に回収してある。惑星サイズも何百、氷を引き寄せ固めることができる木星の四大衛星にも近いサイズの星も何十万と。

 その回収作業はゼントラーディ、またあちこちの時空の難民たちや貧困層がバガーと組んで行う仕事だった。

 

 その生活の多くを支えているのが、ある程度標準化されつつある船家。

〈ABSOLUTE〉内で、本格的に自己増殖が動き出した工場の産物。

 ダイアスパーの技術と、ゼントラーディの全自動工廠技術、さらに〈黒き月〉〈緑の月〉の複合から生じた自己増殖工場を、そのままだと単位時間ごとに2,4,8,16...と増えていくのを、4になったときに2・2に分けて一方の2を自己増殖、もう一方の2を生産に回す。そうすれば二倍時間で自己増殖し続けつつ、生産された工場も指数関数的に増えて溜まっていく。指数関数の合計と指数関数は事実上差がない……

 それがかなり優先して作るのが、「生活」そのものをパックにして供給することだ。

〈コーデリア盟約〉の根本をなすのが、全員の最低限の生活。だがローエングラム帝国や新五丈などには、超極貧の農民、虐殺でかろうじて生き延び全財産を失った難民などが無数にいるのだ。

 これまでも、各国は膨大な軍事力を利用してそれに対処する努力をしてきた。

 物質的な余裕が大きい銀河パトロール隊の時空の貢献が特に大きかった。だが、どうしても彼らのやり方は軍事的に過ぎ、人を安心させない。文化的な異質さも大きい。

 だからこそ、多様な文化の、多くの人に最短時間で、生活し、さらに貢献できる状態に持っていくことが必要だった。

 特に熱心だったのが、〔UPW〕に移籍した、あるいはローエングラム帝国で生き続けている旧自由惑星同盟軍だ。

 焦土戦術。わずかな人数の飢えた人々を受け入れられず、食わせられなかったことから、民間人との相互の暴力と大敗北による壊滅に結びついた。

(あのときにこの技術があれば……)

 そのための工夫は、全力を通り越して注ぎ込まれるものだった。

 

 多くの人が居住可能惑星を離れ、宇宙空間で生活する。膨大な資材を惑星を回る衛星軌道に固定し、その状態で加工する。

 無理に惑星をテラフォーミングして居住可能にするより、衛星軌道に回転で疑似重力がある巨大設備を作る方がいろいろ便利だ。

 あるいは、地球とあまり変わらず地球人系の生活に向いた重力の惑星なら、あちこちの時空の地球やそうでなくても生命があれば砂漠地帯の地下に、ほぼ埋まった巨大スペースコロニーをつくる。

 それによって膨大な人口を吸収し、さらにそこから莫大な軍事力や、教育を受けた大人口とコンピュータの組み合わせによるアイデアを生み出す。

 特に居住可能惑星でそれをやると、機械が故障したときに強力なバックアップがある状態になる。何かあった時外で呼吸できるようになる。呼吸に適さない大気でもあるとないとでは大違いだ。

 とりあえずは、指数関数増大と、〈混沌〉〈法〉や他の侵略的時空の攻撃と戦うために、際限なく知恵と軍事力を高める方法として選ばれていることだ。

 r戦略繁殖、全ての卵を一つの籠に入れるな。

 何が正しいかわからない、どの子が天才かわからない、だから虐殺せず餓死させず本を禁じず学ばせ、学んだ者に報酬を出す。

 

 そのための「生活」のパック……

 ある時期から、20人ほど、詰め込めば100人ぐらいが暮らせる中規模の集合住宅に、手足がついたものとなった。

 一人一人が身体を清潔にし、清潔なトイレ、そして水と食料、酸素と適切な温度と湿度の空気。安価であれば回転による疑似重力、高価であれば人口重力。

 宇宙放射線からの防護。

 そして、多数の手。

 ちょうどアンモナイトのように、頑丈な装甲に覆われた居住部と、柔軟な多数の手足が出ている。

 それが小惑星などに取りつき、資源を回収し、大型バーゲンホルムを取り付けて決まった方向に投げる。

 中の人々が生活を続けながら。

 そのためには寝て食べて洗うだけでなく、運動やある程度の娯楽も必要だった。

 集団で歌い踊ること、劇や映画も必須と言えることがわかってきた。

 核家族の集合住宅とは少し異なり、核家族のスペースを小さめにして、運動などの共用スペースを作り、その清掃は機械化した。

 

 そして一人一人が、バガーに守られる。バガーはエンダーの故郷時空出身の、体内に器官としてアンシブルを持ち時空ごとに集合精神を作る、蜂を大型化したような異星人。

 だがその不気味な姿を直接見る者などいない。バガーより一回り大きい、実際には四本の足と尾と頭よりはるかに多くの機能を持つ、人類が嫌悪感を持たない動物の姿に、そのバガー自体が徹底した機械化改造・コンピュータとの統合・生命維持装置との一体化を受けて統合されているのだ。

 人間や犬でもそれをやるとしたら相当な残虐行為となるだろう。だが、バガーの個体は個の精神も生殖能力もない、人の毛髪や爪同様に扱っていい存在だ。

 さらに以前から一人一人に配ってきた、反乱同盟軍から供与さえたドローン技術の応用で作られた動物型小型機械もいる。

 その二体が、人を教え、守っている。警察のかわりとなっている。特にバガー入りのほうはかなりの生命維持装置にもなる……本当の緊急時には、体内に畳まれているフィルム袋を出して主人を包み、空気の浄化・温度維持・糞尿から水と食料への転換を行い続けることができる。

 

 家船での食料生産技術も大きく進歩し続けている。

 その工夫には各国が大きな報奨金を出し、多くの人が工夫し続けている。

 もっとも高価で誰もが望むシステムは〈惑星連邦〉のレプリケーター。イスカンダル王国などでは複製が成功しているが、まだまだ高価だ。

 人口密度が高い地域では、大規模で高価な機械を用いて鉱物・水・空気・エネルギーからブドウ糖・アミノ酸などを直接合成し、細胞を培養してブラインドテストに耐える肉や穀物を作るシステムはできている。

 だが、少ない費用で生かさねばならない人たちも多い。必要な技術水準が高いと、それを維持するための技師の水準も高くなる。

 そうなると、汚水汚物を生物的に循環させ、毒素の濃縮を避けながら食物化する設備がどうしても必要になる。それも極力味がよく、嫌悪感が少ないように。いくら珍味で安全でもゴキブリの卵や、ゴキブリを食べた鶏はだいたいの人には辛いのだ。ラインハルトは自分では率先して平然と食べるが姉が食べることは暴れて止める、というようなことがある。

 大小便は遺伝子操作ウツボカズラで繊維にするほうが好まれる。

 肉類は逆に設備が肥大化することがある。アメリカザリガニやカタツムリやカキは小さい設備でいい。

 無数の世界、膨大な種類の動植物から、比較的小さくて、容易に遺伝子操作で無毒化でき、美味な食材が次々と作られ供給されている。

 そのためには、どの星の、どんな小動物も、どんな土壌微生物や海洋微生物も植物も、すべてが貴重な資料だった。それを集めることも一攫千金、多くの人が人生を投じている。

 もっとも求められ、成功したのは、ガラスに入れた汚水・汚泥・肥料水に光を当てて短期間でアオコ状態になる何十種類かのプランクトンの集まりと、その緑のペンキのような水を強い消化液で除菌しつつ栄養にできる殻が薄い濾過食貝、さらにその貝を短時間で食べて良質な食料となる小型家畜・家禽だった。その組み合わせが膨大にできる。別ルートとして強いアルカリ塩水に日光を当てて繁殖させて濾過し、それを直接食べられる微生物も普及した。

 食べられるアゾラ、浮草、水上に広がるつる植物、塩生植物なども多数発見されたり遺伝子操作で作られたりする。特にアゾラは有用だ、淡水で育つ小さくて浮くシダ植物で、共生する微生物である藍藻が空中窒素を固定し、強力にタンパク質を作りながらすさまじいペースで増える。美味にするだけでも大きいし、耐病、耐塩などを付与すればもっと有用だ。

 

 服、清潔、娯楽なども重要だ。

 特に文化水準は、あちこちで非常に重要な立場になっている帰順ゼントラーディの要求でもあり、政治的に死活的に重要とも言える。

 リング状シャワーで短時間で体を洗う、さらに老人介護も含むシステムもあると同時に、多くの設備では、プールや大浴場の満足度の高さも注目されている。ただしそういう設備は、文明水準が低い者を入れるとすぐに大小便で不潔になるので、そうならないように小型ドローンをつけたりする配慮も必要になる。

 運動も人間には必須であり、あらゆるシステムで考慮される。ペットもかなり増えている。ペットに向いた生物もあちこちで採取研究されるし、機械ペットで満足する人も多い。

 また、端末を身に着け、あるいは脳と直結させて娯楽を楽しみ、学ぶことも重要になる。

 技術がいつ消えるかわからない前提……それにヤンが特に警告する、いつルドルフのような焚書者が勝つかもわからない……で、あちこちに紙に似た素材の本も用意される。

 服は主に不織布出力・リサイクルだが、ちゃんとした服はそれ自体贅沢として人気がある。だからこそ低水準文明の、繊維を紡ぎ染め織って縫える職人がしばしば高収入の芸術家となってしまう。

 砂鉄刀が新五丈、そして南蛮や智も、重要な産業になっていったように。

 

 かなり長いこと、レトルトカレーなど地球人が好む料理は、デビルーク・アースや西暦2000年前後だった地球が圧倒的な優位を持っていた。だがそれもあちこちの時空が再現を始める。家畜を飼うことから始めることもあるし、家畜を殺さない培養肉での再現研究も多い。

 

 映画や絵画、音楽などを仕事にする人もいる。さらにエンダーらの研究から、それらを人間操作法として一般化していく研究も行われ始める。

 おぞましいと言われるが、アンネローゼが築いた慈悲の組織こそが、

(真の弱者……)

 が自他を苦しめるのをやめさせるために、人を操るような技術を丁寧に研究し利用しているのだ。

 

 

 それら、多くの人々の工夫と努力で、文明中心から遠く離れた無人時空のオールト雲でも、生活水準はかなり向上しつつある。

 

 ここで生じたのが別の物差し、技術水準が突然落ちても維持できる閉鎖生態系技術、というものだ。

 特にネガティブ・クロノ・フィールドという突然すべてのエネルギーが切れるケースがある。

〈虚憶〉持ちは、以前の旅でメーテルから、サイレンの魔女という高度機械エネルギーを食う自然現象レベルの敵の可能性を聞いている。

 そんな時でも生きられるよう、火薬など単純な技術でできた緊急移動手段と、それで避難できる低技術閉鎖生態系システムがかなり必須となった。

 

 これらの情報は時空の壁をへだてた、評議会の有坂恵一のところに滞在しているユリアンにもレンズ通信で伝わり、金星の質量をそのままズフィルード・クリスタル化した状態から膨大な人が生きられる環境を作り出している。

 

 

〈黒き月〉とその周辺は、自己複製しながら膨大な無人艦・無人機を生み出し続けている。

 それを受け取るアッテンボローらも猛訓練を続けている。

 実戦の場もある。新五丈の同盟という名のほぼ従属国、西羌を攻め続ける膨大な戦力を持つベア=カウ族。ほとんど心がないのに巨大艦隊を延々と送ってくる愚かな種族は、訓練や試験と言っていい戦いに適してしまっている。

 その頑強な防衛を切り抜けて、その向こう側との連絡を取ろうとする試みも行われている。

 アッテンボローと西羌の王族、秦横車が強く志願した速度とステルス重視の艦による突破戦。西羌も新しい時代に何か貢献したいと皆が焦っている。多元宇宙の技術格差はわかっている……だからこそ正気とは思えない保守伝統・反抗に走る有力者も多いが。

〈影の月〉はパルパティーン帝国を横切って惑星連邦と交易できるほどステルス性は高いが、なぜベア=カウ族のセンサーには発見されてしまったので、さらにステルス性を研究しなければならなかった。

 

 ベア=カウ族がやってきたゲートを超えた向こうの超光速航法はかなり研究されている。恒星が作り出す、星系中枢からやや離れたジャンプ点からのジャンプ航法と、人工的で巨大なハイパーネット・ゲートを用いる高速の航法を使い分ける。

 ジャンプ航法は亜空間に入り、その中を数日からそれ以上移動して別のところから出る。それは、

(知的生命には長時間耐えられないが、無人艦なら長時間耐えて超遠距離航行が可能)

 とも判明している。

〔UPW〕から見れば、速度や便利さはもっと良い航法もあるが、使い道はある技術だ。

 特にハイパーネット・ゲートは比較的気軽に、超新星爆発規模の爆弾となる。

 

 航法が違う時空に侵入した場合、ある航法にとって隣の星は、宇宙での星図とはまったく別になることがある。存在としては隣の星がある航法では永遠に行けず、はるか遠くの星にが航法によっては隣だったりする。特に〈ワームホール・ネクサス〉や、連絡はまだないが平面航法宇宙ではそれが顕著だ。

 それにより、ベア=カウ族が強く支配している星々から、星と星の間の虚空をバーゲンホルムで抜けて別の文明を探し始めた。

 

 最初に接触した文明は、蜘蛛と狼を合わさったような外観の悪い種族だったが、レンズマンにはわかった。

 高度な工学を発達させ、蜘蛛の網を組織とするので幾何学・図形・全体図のネットワークで思考する。また言語なら、韻を踏んだ詩や和歌・漢詩のようなパターンがある文章のほうがよりよく意思疎通できる。

 

 その意思疎通より、どうしても人類の姿を持つ彼らにとっては重要な出会いがあった。

 そのスパイダー・ウルフ……優美な艦隊機動でダンサーとも呼ばれる……族の惑星の近くに、その美しい艦とは異質、魚のような印象の艦隊があった。

 そのクルーは、地球人と同じ姿をしていた。同じ〈共通歴史〉から来る言語を話した。〈共通歴史〉の多くは忘れ、宗教も忘れていたようだが。

 艦隊司令はジョン・ギアリーという男性、旗艦艦長はターニャ・デシャーニという女性だった。

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