ストライクウィッチーズ対ミステリアン   作:サイレント・レイ

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 今回の投稿前に第3話で上げた、アリゾナ級戦艦のオラーシャ輸出仕様の艦級名をイワノフ級としました。
 此れは“ルパン三世 ルパン暗殺指令”に登場する原潜『イワノフ』から取りました。





 それでは本編をどうぞ!


第8話 追撃、台南空(後編)

――― 台湾 ―――

 

 

 ペリーヌ、サーニャ、エイラの3人とまさかの合流を果たした美緒達4人のウィッチ達は、台南空のF8F群がペリーヌ達3人が散布したウィンドウで混乱した一瞬の隙を突いて霧を伴った雨が降っている台湾中央部の山間部への突入に成功した。

 

「少佐、此れはヤバいぞ!!」

 

 だがシャーリーが思わず叫んだ通り、山間部の霧は明きらからに危険域での濃さであった。

 

「大丈夫だ!!

此の辺りの地形はまだ頭にあるし、『魔眼』でなんとか見える!」

 

 美緒は先頭に位置して強気な事を言ってはいたが、高速飛行中の雨天では長時間目を開けるのは困難であり、現に美緒のストライカーユニットに何度か樹木が軽く接触していた。

 

「少佐、援護します」

 

「皆、少々危なく飛ぶが、しっかり着いてこいよ!!!」

 

 此の為、エイラが美緒の直ぐ後ろについて『全方位広域探知』で支援して、更に続くはルッキーニ、エイラ、ペリーヌ、シャーリー、最後尾に芳佳と言う単縦陣での低空飛行での強行が始まった。

 勿論、美緒は説明しなかったが、此の行為には理由があり、霧と言う極悪な視界を利用してF8F群だけでなく、低空飛行でレーダー航空管制を行う九六陸功を振り切るつもりであった。

 美緒は此の行為の成功を信じて疑ってはいなかったが、唯一の不安要素なのは目に見えてブランクが感じられる芳佳、更にそんな芳佳と同様らしいペリーヌが危険な飛び方をしていたが、そんな2人に対してペリーヌにはエイラが、芳佳にはシャーリーがしっかりバックアップをしていた。

 

「…っ、うおっと!!」

 

「…っ!?」

 

 だがそれでも危険な飛行行為である事に変わりがなく、現に美緒は見落としかけた巨木を軽く上昇して回避するも、後続のエイラがストライカーユニットを巨木の頂天の枝に軽く擦って葉を何枚か切り落としていた。

 更に美緒は山肌との距離感を間違えて激突しそうになるもギリギリの処で回避をしてエネルギープロペラで山肌を軽く削っていた。

 

「ひゃ~…少佐は危なく飛ぶなぁ~…」

 

 まぁ先頭の美緒とサーニャが苦労しながら飛び、更にそんな2人の飛行で霧が若干吹き飛んでいるお陰で後続5人は、気は決して抜けないが、比較的安全に飛ぶ事が出来ていて、何故か3番手のルッキーニは歓声を上げて楽しんでいたが、そんな彼女の後ろのエイラは冷や冷やしていた。

 

「少佐、前方に谷間、幅はギリギリ2m」

 

「このまま行くぞ!!!」

 

 そして山間部飛行の山場と言える危険箇所に突入しようとし、サーニャは美緒に間接的に高度上昇を具申したようだったが、美緒は知ってか知らずかそれを拒否して逆に加速したので、サーニャは後続に注意を促し出した。

 拒否権が無いエイラ以下の後続4人が各々の形で顔を引き釣らせていたが、これも全員が怪我や問題なく通り抜けに成功した。

 

「そう言えば、台南空の戦闘機隊はどうなってる!?」

 

「それが、さっきから追ってきません!」

 

 谷間を抜けた処で、シャーリーが忘れていた台南空の追撃を気にしたが、最後尾の芳佳はF8Fが1機もこない事を戸惑いながら伝えた。

 

「高度を上げろ!!!」

 

「駄目だ、ぶつかる!!!」

 

「こんな所を飛べるか!!!」

 

 その頃のF8F群はと言うと、美緒達を追撃しに低空飛行をした何機かが山肌や樹木に激突して墜落していて、残った者達は上昇等で霧から脱出して退避していた。

 

「九六陸功、電探で探索出来ないか!!?」

 

「駄目だ!

エコー波が乱反射して全く感じ取れない!!」

 

 更に頼みにしていた航空レーダーも、美緒達が低空飛行をしている為に完全に役立たずと化していた。

 此の為、美緒が霧を抜け出して、上空の二式大艇を見つけ、その二式大艇も美緒達に合流しようと高度をゆっくり落としていた時、F8F群は全て彼女達全員を見失って各々の形でトンチンカンな空域で捜索にあたっていた。

 

「……よし、追ってこない!」

 

「助かりました…」

 

 美緒とサーニャは念の為の確認をして、追撃が無いと判断した事で彼女達は順に二式大艇の上部に着地、ペリーヌに見られる通りに各々に息を抜いていた。

 

「気を抜くな!

もうすぐ台南空の基地の近くを過ぎるぞ!」

 

 だが美緒はF8F群の相次いだ醜態から玄人がいなかったと断定、更に小園の性格から玄人だらけの次派が来ると予想して警戒を続けようとした。

 

「あ~…その心配は無いよ」

 

「台南空はこれ以上は仕掛けてきません」

 

 だが、それをエイラとペリーヌが否定、特にくそ真面目な後者ので美緒が頓狂な声を思わず出してしまった。

 美緒は2人の意見通り、小園なら自分の性格を読んで待ち伏せを仕込んでいておかしくないのに、それが存在しなかった事を疑問に感じ出していた。

 しかも機先の方から台南空の基地が見えてきて、戦闘機等の発進が全く行われていない事で疑問が益々大きくなっていた。

 

「そうそう少佐、伝言を預かってます」

 

「伝言?」

 

 美緒はサーニャが言おうとする伝言の主をミーナたと予想し、更になんで此の時期に言うのかを疑問視していたので、彼女の言った内容に驚くしかなかった。

 

「“俺は自分の決断を途中で投げ出す様な軟弱に鍛えた覚えはない”、小園大佐はそう言ってました」

 

「……え?」

 

「私達はミーナさんの命令で少佐を迎えに行こうとして、その途中で台南空の基地に立ち寄ってお世話になったんです」

 

「そん時に少佐達の捕縛命令が来たんだけと、小園大佐は(ザル)体制で私達を見逃してくれたりしてくれたんだ」

 

 美緒はサーニャの伝言だけでなく、ペリーヌとエイラの各々からの報告にハッとして、直ぐに右側から過ぎようする台南空の基地に振り向いたら、台南空の基地の手空き要員全員が自分(達)に向かって敬礼しているのに気付き、更に司令部がある建物の中で小園もまた敬礼しているのが見えた気がした。

 

「……小園、さん…」

 

 美緒は小園は元から自分達を迎撃する気が無く、わざと穴だらけの体勢で迎え撃ったのを察した。

 更に言うと小園は自分(達)が“悪”を背負ってでもやろうとする信念を、彼らしい手荒い試験をしたが、それが合格と判断したと思い、思わず泣きそうになった。

 まぁ上官である以上、部下に涙を見せる訳にはいかなかったが、美緒は小園達に答礼し、シャーリー達6人も微笑しながら彼女に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 台南空基地 ―――

 

 

 美緒の予想通り、小園は窓越しに脇を過ぎていく二式大艇に敬礼していたが、部下から自分宛ての電話が入った事が伝えられ、敬礼を止めて相手と内容を予想しながら電話に向かった。

 

『小園、貴様耄碌(モウロク)したか!!?』

 

 小園の予想通り、相手は南西艦隊司令部からで内容は自分の指揮に対する抗議の怒鳴りであった。

 

「クソッタレ、俺は正気でまだ若いわ!!!」

 

 まぁ“売り言葉に買い言葉”があると言え、小園も小園で怒鳴り返していた。

 

『小園、今直ぐに坂本少佐を一派共々攻撃しろ!!!』

 

「ふざけんな!!!

“元”が着いても、美緒は俺の部下で教え子だ!!

そんな子泣かせな行為が出来るか!!!」

 

『小園、此れが統帥権に違反しかねない行為になってもいいんだな!!?』

 

「だったら(天皇)陛下を此所に連れてくるんだな!!!

陛下に拝謁した事もない(虎の威を借りた)狐が、御心も分からん陛下の名を出すな!!!」

 

 電話相手がまだ怒鳴っていたが、小園はそれを無視して受話器を叩き付ける形で電話を切った。

 

「…美緒、俺が通した道は過酷だぞ」

 

 小園は窓際にまた行くと、見えなくなった二式大艇が向かった方角に微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 南シナ海 ―――

 

 

「台湾を抜けるぞ!」

 

 斯くして、美緒達一行は予想外のペリーヌ達3人との合流を果たし、台南空の封鎖線を突破しての台湾横断に成功、彼女達が搭乗する二式大艇はその身を南シナ海に乗り出した。

 

「はぁ~…ビックリしました…」

 

「宮藤さん、気を抜いてはいけません!!」

 

 此の為、芳佳が溜息を大きく吐いたが、そんな彼女にペリーヌからの檄が直ぐ飛んで、芳佳がゲンナリして、何故か関係ないルッキーニがペリーヌに歯を剥き出していた。

 

「そうだな、まだ東南アジアを抜けたわけではない。

ブリタニアの東洋艦隊も気になるが、次は南遣艦隊あたりが来そうだな………アイツ等の所在が全く分からないしな…」

 

 だが実際はペリーヌの言う通りであって、美緒がペリーヌに同意して、そのペリーヌが嬉しそうにしていたのをルッキーニ達4人から冷たい目線を向けられていたのは兎も角、美緒はその事に気付く事なく次に来そうな存在を予想すると共にその対策を考え始めた。

 

「いえ少佐、次に来るのは東洋艦隊や南遣艦隊でもありません」

 

 だがそんな美緒の考えを、サーニャが否定した。

 

「どう言う事だ?」

 

「小園大佐の話ですと、リベリオンのアジア艦隊が動います。

かの艦隊はボルネオ島近海を航行していて、扶桑の要請で北上しています」

 

 サーニャの報告にペリーヌとエイラが揃って頷いていたが、此れに美緒よりもシャーリーがギョッとした。

 

「ちょっとヤバいぞ。

アジア艦隊は最近ノースカロライナ級やサウスダコタ級の6隻以降のどれかが複数配備されてる!」

 

「でも、アジア艦隊には空母は配備されていないんだろ。

東南アジアにリベリオンの航空基地も無いんだから、そこまで気にしなくてもいいんじゃない?」

 

「だけど、ノースカロライナ級もサウスダコタ級も無視出来ない対空能力を持ってるし…」

 

 エイラの指摘にシャーリーは頷きはしたが、ルッキーニと共に楽観視しているエイラに反して、シャーリーは妙な不安を感じていた。

 

「……あのリベリオンが、航空戦力の無い艦隊を迎撃に向かわせるのか?」

 

 更に美緒も彼女なりに、違和感を感じていた。

 美緒やシャーリーは此の時はまだ気付いていなかったが、実は台南空にF8Fが彼女達気付かれる事なく配備されていた事から、此の後に起こる出来事をある程度は予想出来た筈だったのだ。

 そしてそれは台南空との交戦で忘れていた………美緒達が最も恐れていた存在が現れる事への前兆でもあったのだった…




 感想かご意見、はたまた両方でも宜しいのでお願いします。

 こうして台湾は突破となり、次回からは東南アジア突破の最終局面へと突入します。

 大体予想出来ているとは思いますが、次回か次々回からいよいよ508JFWが美緒達を迎撃しに現れます。

 何故現れる可能性が低いと予想された508JFWが現れたのか、それはストウィ原作でのワシントン条約の自分なりに解釈して書こうと思ってます。
 更に言いますと、508JFWでもそうなのに、此れとは別の厄介な存在も現れます。

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