ケーリュケイオンは高価なドレスの代わりに、1日だけのごっこ遊びを提案してくる。
そのごっこ遊びとはお嫁さんごっこで、マスターの花嫁になると言うものであった。
マスターはその提案を受け入れて、彼女と1日を一緒に過ごす事になる。
食事に、お風呂に、就寝、マスターは彼女に色々と振り回される事になるのであった。
終始マスターとケーリュケイオンがイチャイチャしてます(笑)。
多少長い(10000文字)ですが、お付き合い下さい。
では。
ケーリュケイオンが自分の口を少し開けながら、マスターのほうにフォークを差し出してきた。
「はい、アーン♪」
マスターは、ステーキの肉片が刺さったフォークが近寄ってきたので、素直に口を大きく開けてそれを頬張った。
ぱくり。……もぐもぐ。
「ふふ♪……おいしい?」
真横に座る彼女が小首を傾げて訊ねてきた。 青いリボンが彼女の頭の上で楽しげに揺れている。
マスターは口を動かしている最中だったので、頷くだけで返事を返した。
……もぐもぐ、ごっくん。
彼女は、相手が飲み込んだのを確認すると、今度はクリームスープをスプーンですくった。
そしてまだ少し湯気がたっていて熱そうなスープに、ふーふーと息を吹き掛けて冷ましている。
そして彼女はそのスープに自分の舌を一瞬付けて、温度を確めると、そのスプーンをマスターに向けて差し出してきた。
「はい、アーン♪」
……ぱくり。ごっくん。
マスターは周囲の視線を気にして口数も少なく、そして彼女のされるがままに、口に入れられる料理を咀嚼し飲み込んでいた。
そんなマスターの隣でも、彼女はとても嬉しそうな表情をして、甲斐甲斐しくマスターの世話をやき続けている。
マスターとケーリュケイオンの二人は、お嫁さんごっこの約束をした後、街での食事はせずに、彼女の住むファンキル学園寮の食堂へとやって来たのだった。
何故か分からないが、ケーリュケイオンが街の中のレストランでのディナーの提案を断わってきて、寮の食堂での食事をしたがったのである。
マスターは口を動かしながら、その事についてずっと考えていた。
まあ、彼女が気心の知れた場所でゆったりと食事がしたいと言うのは分かる。
それに、この寮の食堂は値段が安いから、旦那の懐具合を心配する嫁さんってのも、ごっこ遊びとしてはなかなか現実味がある気配りだろう。
あとは、確かにこうやって、相手に食べさせてもらう行為は、日常では滅多に見ないことなので、街のレストランだと凄い恥ずかしいと言えば恥ずかしい。
だがしかしと、マスターは隣に座るケーリュケイオンを見ながら思った。
確かに、カップル達がこうやって、相手に食べさせてもらいながら、一緒に食事をすると言う話は聞いたことがある。
この作法がカップル達の有名な「いちゃつき方」の1つであるのは間違いないだろう。
だけど、実際にカップル達がこれをやっている光景は、今までにまだ1度も見たことがない。
それ故に、これの正確なやり方は知らないのだが、果たしてこの『はい、アーン♪』は、こんなにぴったりと、お互いの体を寄せあってやるものなのだろうか。
密着しすぎて彼女との間に、すきま風が通るほどの隙間もないのだ。
その為に、彼女が少しでも動くと、彼女の柔らかい胸がぷにぷにと何度も体に当たるので、何かもの凄く気恥ずかしく感じるのである。
それで、その事を一度彼女に注意したのだが、これは当たるのではなく、当てているのよと言われてしまい、何も反論出来なかったので、もうその事で何かを言うのはやめておいたのだった。
それからはもう、マスターは無心で食べ続けた。
雛鳥が親鳥に餌を食べさせて貰うがごとくに、素直に口を開けながら、そしてあとは、なるべく周囲の視線から目を背けて、周囲の様子を見ないようにしてである。
マスターは自分の分の食事を全て食べさせてもらってから、真横に寄り添う彼女に注意を向けた。
彼女も一緒に食事をしつつ、とても楽しそうにしている。
……しかし彼女は、この自分達を取り巻くの周囲の様子が、何も気にならないのだろうか?
特に、向かいの席に座っている面々の、このまとわりつくような視線とか、当て付けのような感じの大きな咳払いの音などは……。
マスターは、彼女が口元を甲斐甲斐しく紙ナプキンで拭いてきた時に少し訊ねてみる事にした。
「……なあ、ケーリュ」
「何?マス……、んんっ、なーに?アナタ♪」
ケーリュケイオンは、言い直しながら上目使いにマスターを見上げて聞き返してきた。
マスターはひそひそ話をするように囁いた。
「これでもう6人になったぞ、正面のギャラリー達が」
ケーリュケイオンはきょとんとした様子でマスターを見返してから、改めて前を確認していた。
マスター達の座る食堂の長テーブルの席の真正面に、6人のキル姫が間隔を詰めて、ずらりと並んで座っていた。
それはシェキナーとロンギヌスとカドケウス、更にシタとレーヴァテインとパラシュと言った面々であった。
彼女らは、このマスターに従うキル姫達であり、彼女達はマスターとケーリュケイオンの様子をじっとりとした目つきでずっと眺めていたのだ。
彼女達のそんな様子を見たケーリュケイオンは、うっすらと不敵に笑って、甘えるように更にマスターにすり寄った。
正面の方角からの咳払いの音がますます大きくなる。
彼女達は、始めマスターとケーリュケイオンの、このいちゃつきを見た時は色々と抗議の声をあげたが、マスターからじきじきに説明を受けて、渋々この行為を承諾をしたのであった。
でも心のうちではまるで面白くないので、この2人の仲を邪魔するような感じで、ずっと近くで見張っていたのである。
だが、それはケーリュケイオンにはあまり効果がなさそうに感じられた。
彼女は皆から見られるのを楽しんでいるような素振りがあるのだ。
そう、マスターと自分との、この特別な関係性を皆に見せつけていると言っても良いだろう。
マスターにとっては、消化不良になりそうな夕飯が終わった。
ケーリュケイオンは手際よく食器を片付けて、またすぐにマスターの元に戻ってきた。
そしてまたぐいぐいとマスターに身を寄せてくる。
二人は他愛ないお喋りをして、しばらくその場に居続けた。
正面からは咳払いに混じって歯ぎしりの音までするように感じる。
目の前に座るじっとりとした視線のキル姫達は、ついに10人にまでなっていた。
マスターは背中に嫌な汗がにじんで来るのを感じた。
ケーリュケイオンが壁に掛けてある時計を見て言い出した。
「それじゃあ、そろそろお風呂に行きましょうか。アナタ♪」
それを聞いた周囲のキル姫が一斉にざわつき始めた。
ホントに?一緒に?レアリィ?入ってくれるの?ふぇぇ……。嘘でしょ?はわわ……。いいなあ。風紀が乱れてない?
皆でひそひそと話あっている。
ケーリュケイオンは騒ぎ出した周囲の仲間のほうに目を向けると、誰にともなく言い出した。
「出来ればマスターと二人っきりの入浴を楽しみたいのだけど、みんな少し入る時間をずらしたりして、ちょっと遠慮してもらえないかしら?」
キル姫達は皆、即座に腕でバッテンを作って答えた。
ケーリュケイオンは、別にその答えは予想していた様子で、笑顔でまた皆に向かって言った。
「そう。それなら、見ているのは構わないけど、直接邪魔はしないでね。これは一応、マスターが私にくれたご褒美なのだから♪」
ケーリュケイオンはマスターの腕を引っ張って言った。
「それじゃあ、行こう。アナタ♪」
マスターはケーリュケイオンに連れられて風呂場に向かう事になった。
マスターは、彼女に腕を引かれながら、これは果たして良いのだろうかと、ずっと考えていた。
一応寮の風呂場は女湯だと決められているものではない。
だから男が入っても別にこの風呂の倫理的には、特に問題はないのだが……。
それに、臨時教師のマスターとしての強権発動で、この風呂場を今、強制的に占有する事も可能なのだが、それをすると自分の身(貞操)が何か危ない気がする。
皆の目という抑制がないと、今度はケーリュケイオンに何をされるか分からないと言う怖さがある。
マスターがそんな事をえんえん考えていると、いつの間にか風呂の脱衣所の中に連れ込まれていた。
マスターがハッと我に返ると、隣にいるケーリュケイオンはもうすでに服を脱ぎ出しているではないか。
彼女は、あっという間に下着姿になっていた。
彼女は薄紫色でレースが可愛い、上下揃ったデザインの下着を身につけていた。
そして彼女はその下着も躊躇なく脱ぎ始めた。
マスターは慌てて彼女から目を反らしたが、マスターは周りを見てギョッとなった。
自分達の周りには、監視に付いて来ていた自分に従うキル姫達が何人もいて、彼女達もまた入浴の為に服を脱いでいたのだ。
マスターは、近距離で見る大勢の彼女達の生着替えと言う、この壮観な光景に暫しぼーっと目を奪われていた。
ケーリュケイオンがマスターの、そのよそ見に気が付き、少し面白くないような顔になった。
そこで彼女は手拭いを手に取ると、それでいきなりマスターに目隠しをした。
マスターは驚いて一度はそれを取ろうとしたが、視界が塞がれたこのほうが良いのかもしれんと思い直した。
そして、マスターはケーリュケイオンに手伝ってもらいながら服を脱いでいった。
だが、最後の1枚でぴたりと動きが止まってしまった。
そう、パンツである。
パンツに手をかけた瞬間に、何やら色んなとこからの大勢の熱い視線を感じた気がしたのだ。
これを脱ぐのが異様に恥ずかしく感じる。
そこで、ケーリュケイオンに頼んで腰にタオルを巻いてもらってから、その下着を脱ぐ事にした。
その姿は、まるでプールの授業で着替える小学生のような感じであった。
マスターは全部の服を脱いだが、目隠しをされているので前がまるで見えずに、少し慌ててしまった。
とりあえず、手を前に出して何かに掴まろうすると、その手が何かに触れた。
柔らかいものだ。
これは何だろうと手で探り始めた。
温かくて柔らかいものでとても弾力がある。それでいて全体がすべすべしていて何とも良い手触りだ。
そしてマスターの手がある高さの場所でピタリと止まった。
一度それに触れてしまうと、どうしてもその場所を探らずにはいられなかったのだ。
マスターは手に神経を集中させて触り始めた。
これは……このふたつの膨らみは何だ?吸い付くような感触で他の場所に比べても段違いに柔らかい。
まるで、粘つかないつきたてのお餅を触っているかのようだ。
あと、この中心の少し固い物は……?
マスターがそれを指で摘まむと、その目の前のものがうっすら身じろぎして、小さく吐息を漏らしてきたような感じがした。
マスターはそれで、はっと気がついて、慌ててその手を引っ込めた。
だがその拍子に後ろによろけるようにして、少し体勢を崩してしまった。
その時マスターの手を掴んで引き戻してくれる者がいた。
「危ないよ、マスター」
ケーリュケイオンの声が耳に届いてきた。
「あ、ああ……。ありがとう、ケーリュ」
「ううん。行こうよ」
そのままケーリュケイオンが手を引いて歩き出し、マスターもそれに従って歩いた。
マスターが口ごもりながら言い出した
「なあ……ケーリュ。あー、すまなかった」
一呼吸遅れてケーリュケイオンが答えた。
「何が?」
「いや、何がって……。お前のおっぱ……いや、大切なところを触ってしまって」
「何の事?」
「え?だって、あれは……。まあいいかお前がそう言うなら……。うわっと!」
マスターは浴室の入り口で足を滑らしそうになった。
「……しょうがないわね。ホント私がいないと駄目なんだから」
ケーリュケイオンは楽しげにそう言うと繋いでいた手を離して、今度は寄り添ってきた。
まるで二人三脚をするような密着度だ。
彼女は自分の肩を抱かせるような感じにマスターの手を誘導し、自分はマスターの腰に手を這わせた。
マスターの体の片側に直に触れている彼女の柔肌が、視界を遮られた状態によって、更にその存在感を増幅させて伝えてくる。
そして、この遮る物が何もない、お互いの肌と肌が密着する感触がマスターを圧倒する。
そしてあろう事か、歩くたびに当たる彼女の胸とお尻の、柔らかく心地良い弾力の気持ち良さが、どんどんマスターの血をある一点に集中させてきてしまった。
マスターは慌てて姿勢を少し前屈みにしたが、タオル一枚ではそれを隠しようもないだろう。
その証拠に周りからヒソヒソ声が聞こえてくる。
「……見てよアレ……」
「……膨らんで来てない?……」
「……あれはどうなの?普通なのかしら……」
「……分からないな。直接見てみたいよ……」
「……はわわ……」
マスターは焦っていたが、こればっかりは自分でもどうしようもなかった。
その内に洗い場に着いたようで、マスターは椅子に座らされた。
そしてそのままの姿勢で待っていると、頭に丁度良い湯加減のお湯がかけられたのを感じた。
汗がお湯に洗い流されていくようで、とても気持ちが良い。
そして繊細な手が優しく髪を揉むようにして洗い始めた。
「かゆいところはない?」
ケーリュケイオンの声が面白がるような口調で訊いてきた。
「……いや、大丈夫」
「そう♪」
彼女は巧みな力加減で頭を洗ってくる。
とても気持ちが良く何だかとてもリラックス出来て、あの体の一部分に集まってきていた血液達も無事にどこかに散っていってくれた。
マスターは彼女に身を委ねるような心境になっていた。
そして、また頭にお湯が掛けられて、泡が洗い流されていく。もうかなりさっぱりした心地になっていた。
マスターは気持ち良く髪を洗ってもらった事で、これでもうお風呂でのイベントは終わりだと早とちりしてしまっていた。ケーリュケイオンが前に言った言葉を、すっかり失念していたのだ。
だが、ケーリュケイオンの夢の実現はまさに、これからが本番であった。
頭を洗い終えたケーリュケイオンは、今度は自分の胸の膨らみに石鹸の泡を手で丁寧に塗り、椅子に座っているマスターの背後に静かに立った。
いつも冷静な彼女も今は胸を高まらせていた。顔も耳も少し赤くなっている。
彼女のその立ち姿を見て、2人の様子をずっと窺っていたキル姫達の間に動揺が走った。
みんな、まさかアレを実際にやるのか?と言うような感じであった。
ケーリュケイオンはマスターの背にゆっくり近づき、そしてそのまま抱き付きような姿勢で、その胸の膨らみをマスターの広い背中にぎゅっと押し当てた。
2人の間で彼女の柔らかい胸の膨らみが押しつぶされる。
マスターが反射的に逃げようとしたので、彼女はマスターのその体を抱きとめて、この感触をじっくりと楽しんだ。
石鹸の泡がぬるぬると滑るので、とても気持ちが良い。更には胸の敏感な部分がマスターの肌で擦れるので、えも言われぬ快感さえ感じる。
彼女は漏れそうになる吐息を我慢しながら、自分の胸の膨らみでマスターの背中をゆっくり洗い始めた。
マスターは何とか逃げ出さずに耐えていた。だがマスターは彼女が胸を擦り付けるたびに嬉しい悲鳴のようなつぶやきを漏らしている。
それを耳にした、ケーリュケイオンは何か嬉しくなって、もっと色んなところを洗ってあげようと、身を乗り出した時に、足元が石鹸の泡で滑ってしまった。
「きゃ……」
彼女は体勢を崩して前のめりになった。
その時、彼女の手がマスターの胴から離れて宙をさ迷い、マスターの腰付近のとある場所に辿り着いた。
そこはタオルの手触りの奥に、何か固いものがあるような感触を受ける場所だった。
身を震わせて驚いたマスターが、慌ててケーリュケイオンのその手をどかそうとしてきた。
だが一瞬早く、全てを察した彼女の手がその中の固いものをタオルごとグッと握る。
マスターがうめき声を上げた。
「おい!待て!ケーリュ……そこはいかん……」
「何が?マスター……ううん、アナタ♪」
マスターはケーリュケイオンの手からそれを何とか引き離そうとするが、へたをすると腰に巻いてあるタオルごと取ってしまいそうだったので強引には出来ずに困っていた。
やはり、その場所にすでに血液が集中していて、かなり握りやすい形状になっていたのも災いしているようだ。
だが、あんな事をされてずっと平常心を保てる奴などいる訳がない。
一方、ケーリュケイオンが偶然手に入れたこの大チャンスを逃すはずもなかった。
彼女はもう片方の手も持ってきて、タオルの下のものに直接触れようと手で探り始めた。
マスターはそれを何とか阻止すべく自分の手で彼女のその手を抑えようとする。
だが、お互いの手が泡だらけなので、どちらの試みもなかなか上手くいかなかった。
マスターの股間の上で4つの泡立つ手(+棒?)が、にゅるにゅると入り乱れて動き回った。
マスターはやばいと思った。
次に、このままではマジやばいと思い始めた。
そして、これはホントに……マジで……超やばいと思い至った。
そしてついに、ケーリュケイオンのしなやかな手が、タオルとマスターの手という障害を突破して、そのタオルの中身に直接触れてきた。
石鹸でぬるぬるした彼女の細く柔らかい手で握られて、マスターはついに我慢の限界がきた。
「おいっ!ストップストップ!待てって!ケーリュっ!!」
だが彼女の手はそれを優しく握って離さない。
マスターが逃れようと動くので、彼女の手の中でそれが良い感じにこすれてしまう。
マスターは必死に我慢して、まるで鬼のような形相で顔を上げた。
そしてまたギョッとなった。
いつの間にかキル姫達が輪になって、かなりの至近距離でこの自分達の事を食い入るように見ていたのだ。
マスターはもう恥も外聞も捨てさって、少し情けない声で自分に従うキル姫達に命令を下した。
「ケ、ケーリュを取り押さえて、く、くれっ……!……!!」
キル姫達は惚けるような顔でマスター達を見ていたが、その声でハッと正気に戻り忠実に命令に応えた。
すぐに何人かが駆け寄り、ケーリュケイオンの腕を掴んでマスターから引き離した。
ケーリュケイオンは抵抗もせずに、素直にそれに従っていた。
それと同時に、マスターはその場から猛ダッシュで走って逃げて、身体中泡だらけのまま一気に湯船に飛び込んでいった。
しばらくマスターは、はあはあと湯船の中で荒い息をついていた。
そして、マスターは元いた場所にチラリと目を向けた。
ケーリュケイオンを中心として、裸のキル姫達がこちらをずっと見つめている。
みんな呆気に取られたような顔をしていたが、ケーリュケイオンだけはとても満足そうな笑顔を見せてきた。
彼女はマスターの、あの部分を掴んでいた片手の指を、意味ありげにぬるぬると弄んでいる。
マスターは苦笑いをしてそれを眺めていた。
マスターのその顔は何故か、やけに悟ったような、そしてやけにすっきりとしたような顔であった。
マスターは風呂場から逃げるように出て、一目散に宿直室へと向かおうとした。
だが、腕をがっちりと捕まえられてしまった。
目を向けると、やはりケーリュケイオンである。
彼女は可愛いネグリジェ姿に着替えていた。
「どこに行くの?アナタ♪」
ケーリュケイオンは自分の胸の谷間にマスターの腕を挟み込むようにして腕をかかえている。
抵抗する気力を奪う上手いやり方だ。
「私の部屋はこっちよ」
ケーリュケイオンはマスターを引っぱって、自分の部屋に連れていった。
そして彼女は、マスターを部屋に押し込んで、自分も部屋に入ると後ろ手に鍵をかけた。
マスターの耳に鍵をかける音が大きく響いた。
マスターは落ち着かない様子で部屋の様子を眺めている。
ケーリュケイオンは部屋を横切り、ベッドに腰をかけるとマスターをじっと見つめた。
そして、うっすらと笑みを浮かべてから、真顔になり、演技がかっている少しいじけた様な口調で言い出した。
「もう、アナタったら、せっかく体を洗ってあげてたのに逃げるんだもん。私の事を嫌いになったの?」
マスターはきょとんとした表情で答えた。
「え、何?……嫌いに?」
ケーリュケイオンは、手で目をおさえて、泣いているような仕草をしてきた。
「そうよ。他の女に助けを求めるんだもん……きっとそうよ。新婚早々こんなのってないわ。あんまりよ……」
マスターはすぐにピンときた。
そうだ、彼女は今また、ごっこ遊びを始めようとしているのだ。
新婚の妻が少しいじけるようにして悲しんでいる……、では、それに対する旦那の対応は……?
マスターはやられたと思った。
そんな状況になったら、もうあの流れに持っていくしかないではないか。
流石はケーリュケイオン……。まるで自分が彼女の意のままに操られているような気がする。
ケーリュケイオンは顔を手で隠してさめざめと泣いている。演技だと分かってはいるが、何だかとても胸が痛む。
マスターは覚悟を決めて、旦那役になりきって声をかけた。
「泣くなよ。ハニー。俺が悪かった。俺がお前を嫌っている訳ないじゃないか。…………愛してるよ」
ケーリュケイオンはそのままの姿勢で少し顔を覗かせて聞き返してきた。
「ほんとに?」
「ああ、ほんとだ」マスターは微笑んで力強く答えた。
「じゃあ証拠」ケーリュケイオンは顔を持ち上げると瞳を閉じた。
ぐっ!
やはりこの流れだ。予想通りと言えば予想通りだが……。
マスターはしばし躊躇った後、彼女のおでこに唇を押し当てた。さすがに演技でも唇には出来なかった。
彼女は瞳を開けてマスターを見た。
そして笑顔になって、マスターに抱き付いた。
ここまでがテンプレだろう。
だが、ケーリュケイオンは抱き付いたまま言い出した。
「さあ、もうお布団に入ろ。アナタ♪でも、今夜は寝かさないんだから」
マスターは少し疑問に思った。
果たして、そのセリフは新婚の妻としては正解なのだろうか?……まあ、ありと言えばありなのだろう。
ケーリュケイオンは部屋の電気を消して、ベッドサイドの明かりだけにしてから、ベッドに潜り込んだ。
そして少し甘えた声でマスターを呼んだ。
「ねえ、早くぅ」
マスターは苦笑しながらその声を聞いて、もう諦めの心境で彼女の布団に潜り込んだ。
彼女のごっこ遊びに付き合うと約束したのだから、きちんとそれは最後まで果たさなければならないだろう。
マスターが布団に入ると、ケーリュケイオンがそっと体をすり寄せてきた。彼女の柔らかい感触とともに甘い香りが強く感じられる。
マスターは形だけでも、それっぽくしようとして彼女の背中に手を回した。
……とてもすべすべしている。
え?何故?
マスターはこの手の感触が信じられずに、手が動く範囲を少し探ってみた。
彼女の背中をなぞり、その下のくびれから、さらに下がった柔らかいお尻までを触っていったが、なんの障害物もない。
彼女は、いつの間にか一糸纏わぬ姿になっていた。
「おまっ……」
マスターが掛け布団を剥いで彼女を見た。やはり彼女は丸裸であった。布団に入ると同時に脱いだのだろう。
「いやん」
ケーリュケイオンはわざとらしく恥じらった。
マスターは急いで掛け布団を元に戻した。
「何してんだ、ケーリュ!」
「何?」
落ち着いた声でケーリュケイオンは答えた。
「服を着ろ服を!」
「あら、新婚なら裸で寝るのは常識よ」
「そんな常識は知らんっ」
「いいじゃない。裸で寝ても。別に何もしないんだし」
マスターはぐっと言葉に詰まった。確かにそれはその通りなのだが……。
いや、ここで言い負かされたら駄目だと、マスターは反論した。
「間違いが起きたらどうするんだ」
ケーリュケイオンはクスリと笑った。
「そういうのって、男の人がその気にならないと、絶対に間違いは起きないものなのよ」
むぅ……確かに。
マスターは黙るしかなかった。
ケーリュケイオンが説得してきた。
「ね。いいでしょう?私からは何もしないから。一緒に裸で寝て欲しいな」
「しかし……」
マスターは踏ん切りがつかないみたいに言う。
ケーリュケイオンは少し傷ついたような声を出した。
「私が信じられないんだ」
マスターはしょうがなく渋々その提案を受け入れる事にした。
「……分かったよ。でも、絶対にお触り禁止だからな」
「もちろん。あの部分には手も足も出さないから」
マスターはため息をついて、服を脱ぎ捨ててから、また横になった。
彼女がまた寄り添ってくる。
だが、彼女はその言葉の通りに何もしては来なかった。
ただすり寄って体をくっつけて来ただけだ。
しかし、裸と裸で体をつけて寝ているという状況は、やはりかなり興奮する。
彼女と触れている片側の感覚が鋭敏になり、彼女を強く意識せざるを得ない。
そしてまた、マスターの血液がある一点にゆっくりと集まり始めた。
マスターは静まれ、鎮まれ、沈まれと精神を落ち着かせようとしていた。
だが、マスターがそんな事をしている間に、隣に寝ている彼女は、健やかな寝息を立て始めた。
いつの間にか、彼女は寝てしまったようだった。
マスターは彼女に腕枕をしてあげて、その仰向けの姿勢のままでじっとしていた。
彼女の香りに包まれてまどろんでいると、次第に眠気をもよおしてきた。
体のあの部分にまだ血液が集まっているのが多少気になったが、そのまま眠りに落ちていった。
マスターは夢を見た。
これは夢だと頭の片隅で分かっているような不思議な夢だ。
それは隣に寝ている彼女を情熱的にかき抱いている夢だった。
とても背徳的で、いけない事だと分かってはいるが、とても気持ちがいい夢だった。
お互いが何度も求めあい、1つになって蕩けていってしまいそうになるような夢だった。
マスターは目を覚ました。
しばらくあの夢の余韻が続き、頭がまるで働かなかった。
そして仰向けの姿勢のままで隣を手で探ってみた。
ベッドの中にはケーリュケイオンの姿はないようだ。
目を閉じたまま、しばらくまどろんで寝そべっていると、誰かが上から覗き混んでくるような気配があった。
マスターは目を開けた。
ケーリュケイオンの顔がそこにはあった。
彼女は微笑みながら、こちらを見つめてくる。
「おはよう♪……いい夢見れた?」
彼女が楽しげな口調で訊ねてきた。
マスターは身を起こした。
彼女はシンプルな白いエプロンを身につけて、片手にコーヒーカップを持っていた。
「はい。モーニングコーヒー」
彼女は、楽しげにそう言ってカップを手渡してきた。
嬉しそうに微笑む彼女が、そのエプロンのしたに下着も何もつけてないのは間違いなかった。
{終わり}
夢なら何しても良いんだけど……、正確な描写は出来ないんだよなぁ(笑)。
これからもプチえろで頑張っていきます。