Fate/Dark order   作:ハナネット

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 不死の呪い。それはある世界の人々だけに発現、刺されても切られても焼かれてももぎ取られようとも生き、落下死、出血死、溺死、打撲死などあらゆる死を迎えようともたちどころに生き返る体を所有者にもたらすもの。死を繰り返すうちに理性を失いいつかは周囲の人間を襲う亡者となるバケモノ。人々はそれらを「不死人」と呼び忌避し嫌悪した。



炎上汚染都市 冬木編
プロローグ


サイド:熊沢 多美香

「遅れてすみませんでしたー!」

 人理継続保障機関カルデア、その施設のカルデアスがある管制室への集合に遅れた私こと熊沢 多美香(くまざわ たみか)は、通路で倒れていた私を介抱してくれた少女、マシュ・キリエライトやカルデアの関係者のレフ・ライノール教授を伴って説明会の会場へと駆け込んだ。私たちを見たオルガマリー所長はイライラした様子でこちらをじろりと睨み付ける。なんだか神経質そうな人だなあ。ただでさえ霊子シミュレートとやらのせいで眠たいのに。このまま視線を受け続けるのも精神衛生上悪いので、マシュと一緒にそそくさと前列の席に座ることにした。えっと、一般公募のマスター候補が座る席はあの子の辺りかな。隣で先に座っていた人に断りを入れる。

「あの、座らせてもらっていいですか?」

 彼女が下げていた顔を上げる。整った顔をした、多分わたしと同年代の黒髪をセミロングにした少女だった。

「構わないですよ、お好きにどうぞ」

 そっけない態度で無表情に彼女は言った。妙に達観したような目をしているなあ。マシュと席に座り、最後に自己紹介しておこうと隣の少女に声を掛けた。

「私、熊沢多美香って言います!貴女も一般公募で参加されたんですか?」

 少女は明らかに干渉されるのを面倒臭そうに顔を僅かにしかめながら答えた。

焔間 夜見(ほむらま よみ)。今あなたが言った通り一般からの参加」

焔間さんの言葉が終わったところで所長からの説明が始まった。

 

「管制室で説明を聞いていたと思ったらいつの間にか災害真っ只中の街に放り出されて、コスプレした自称後輩とガイコツに襲われていた。何を言ってるんだと思われるかも知れないけど私にも分からないし訳が分からないよ!」

「先輩、落ち着いて。いくら突拍子もない事態の連続で混乱するのも仕方ないんですが、これは現実です」

 マシュに諭されてとりあえず気持ちを落ち着かせた。 あの後、私は説明中に居眠りをしてしまい、所長の逆鱗に触れてしまいそれはもう見事な平手打ちを受けマシュに付き添われて部屋から退場した。(その時隣の焔間さんが呆れた表情で私を見送っていたとマシュに聞かされた。恥ずかしい)

 ミッションに参加するマシュと別れ自分に宛がわれた自室へと向かったのだが、そこで仕事をサボっていたロマン氏と遭遇。途中割り込んできたカルデアの謎のリス擬き、フォウも交え二人と一匹で雑談に講じていたのだが、突然施設内が激しく振動したかと思うと管制室で爆発があったとアナウンスが流れ出した。ロマニさんからは早くシェルターに逃げるよう指示された私だが、爆発のあった場所にいたマシュや焔間さんのことを放っておけなかった私はフォウと共に管制室へと向かった。

 電力を回復させに行ったロマンと別れた私は炎上するカルデアスの中で瀕死の重傷を負ったマシュを発見、助けようと動き出そうとした直後に不吉なアナウンスと共に入口が閉鎖され、カルデアスが稼働しだしマシュと共に光りに包まれたて思ったら冒頭の状況にいたわけだ。

 ちなみにこの街はカルデアが人理修復の為にマスター達を送る予定だった2004年の冬木市であり、どういうわけか炎や大規模な破壊が広がり滅びかけている。

 マシュは冗談でコスプレしているわけではなく、瀕死だったところを謎の英霊と合体融合することでサーヴァントの力を手にした人間、デミサーヴァントとして力に目覚めた姿だそうで、背丈を越えた大盾を軽々と扱っていた。(しかし鎧なのになぜお腹を曝したり肩を出しているのか。解せぬ) 正体不明のガイコツはこの時代を歪めている原因から生まれた存在だそうで、自分たちを見るなり襲ってくるのをマシュが応戦、大盾で殴る打つ押し潰すとなかなかえげつない攻撃で倒している。

 そして、私たちは現在カルデアから通信してきたロマンの指示を受け、ベースキャンプ確立の為に住宅地の廃墟を進んでいるところだ。

「先輩、こんな状況では無理もないと思いますが、疲れてはいませんか?なんだか元気がないように見えます」

マシュから心配そうな声をかけられる。疲れてはいないけど、落ち込んでるのは確かだ。だって……

「さっきロマンさん、私たち2名だけ(・・)は無事レイシフト出来たって言ってたよね。ていうことは他のマスター候補の皆はどうなっちゃったのかなって考えちゃって…」

「あっ…」

 分かっている。あんな爆発でマシュが生きていたことが奇跡だったのだ。そうじゃなかった人達が、助からなかった人達がいるのが当たり前なのだ。説明会の時に偶々隣り合った少女、焔間夜見もそれに巻き込まれてしまったと思うとどうしようもなく悲しくなった。

「…酷なことを言いますが、それを考えるのは後にしましょう。現状では私たちの身を守ることが優先です。まず目的地に辿り着くことだけを考えましょう、先輩」

 口ではそう言いながらも、マシュの表情にも悲しげな感情が見えた。何だかんだで根が素直で優しい子なんだ。マシュの言葉に勇気付けられ再び足を進める。なんにしてもまずは自分がやれることを一つ一つこなしていこう。私に出来ることは、前向きに進むことなんだから。

 

 

 

・サイド:焔間夜見

 頭が痛い。何か硬いものやら尖ったものやらの破片が当たる感触で、僕は目が覚めた。ぼんやりとした意識が徐々に浮かび上がるように冴えてくるが、それと同時に嫌な感覚も思い出す。突然意識が途絶え、覚醒する感覚。まるでそれは不意打ちで背中から串刺しにされた後篝火の前で目が覚めた時のものに思えて・・・

「ひっ!?」

 言いようのない恐怖にかられ倒れ込んでいた姿勢から急に立ち上がった。嘘だ死んだはずない体は乾いてない大丈夫だでもあの灰の不死人は死んでもそのままだったしもしかしたら自分もそうかもしれないそうだダークリング瞳を見なきゃ瞳をみなきゃ瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳っ!

 混乱した頭でとにかく瞳を確認したいと辺りを見回す。ボロボロに崩れてしまっているがどこかの住居にいるらしい。狂ったように鏡を探そうとし、割れた窓ガラスの向こうの異様な光景に寝惚けて混乱していた頭がやっと正気に戻った。

 街が、燃えている。建物は崩れ落ち、火の手があちこちに広がって一面炎に巻かれている。自分の寝ていた場所は幸い焼け落ちたマンションの五階の一室だったためか火に巻き込まれることはないが、それもいつまで続くかは分からない。自分がいたのは標高6000メートルの雪山の施設だったはずだ。なのに、それがどうして災害発生中の街中にいるんだ?

 まずは状況を確認しないと。まだふらつく頭を何とか動かし、僕はとりあえず今いる場所が安全であることを確認すると地べたに座り込み、今の状況以前の記憶を整理することにした。

 

 僕の名前は焔間夜見。あるきっかけでカルデアの一般公募を知る機会を得てよく考えもせず応募し、審査を通ってカルデアの行うレイシフトのミッションに参加することになった。僕なりにカルデアの掲げた人理修復に思うところがあり一般人の身でありながら参加を決めたのだが、大切にしたい日常を守りたいと身の程をしらない義勇心を建前に、自分の今の日常を崩されたくないというエゴに満ちた心情があったことは否定できない。ともかく数日前から施設で基本的な知識や礼装の使用方法、サーバントとマスターの戦術について座学や訓練を重ねた。当日の中央管制室での説明会後にレイシフトする為に自分用に調整されたコフィンに入りミッションの開始を待っていたが、強烈な熱と衝撃、それから何かが体を貫くのを感じたと思ったら、ここにいた。

 

 なんとか現状の把握は出来た。まずは周りの状況を把握しようと腰を上げようとして、咄嗟に体を投げ出した。

 その直後、自分の頭と背中があった場所に銀色の線が走るのを視界の端に見届け、立ち上がった僕は今の襲撃した相手を見た。骨だ。全身の肉が削げ落ち骨格だけになった死体が剣を降り下ろした姿勢でこちらを見つめている。僕にとっては馴染み深い、この世界の人間にとっては有り得ない幻想の存在、スケルトンの兵士が自分を殺そうとした相手だった。混乱した頭で先ずは逃げ出そうとこの部屋唯一の出口を確認するが、扉の残骸を踏み越えてさらに槍やら弓やらを装備したスケルトンが中に浸入してきたのを視界に捉えた。詰んだ。自分がいるのは部屋の隅、五階の高さでは窓からの脱出は不可能、唯一の自分のいる場所の対角線上にある出入口には弓を構えたスケルトンが陣取り、正面からは先ほど攻撃してきた剣のスケルトンが迫りさらにその後ろを槍のスケルトンが突進してきた。懐かしい命の危機に体が震え出す。嫌だ、死ぬのは嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

 

 

             ふとこんな考えが浮かんだ。

 ここに、自分を取り繕ろわなければいけない家族やクラスメート、周りのの人間はいない。今さら現代の普通の女子高生を装う必要はないのではないか、と。

 

 

 スケルトンの右からの剣の降り下ろしを、左手に取り出した(・・・・・)竜の紋章の盾で反らし、右足で正面から蹴り飛ばす。意外にも軽かった相手の体は後ろにいた槍のスケルトンを巻き込み縺れ合った。その隙にロングソードを右手に取り出し、片手で(・・・)構えながら弓のスケルトン目掛け駆け出す。弓のスケルトンが機械的にこちらへと矢を放つのを捉え前転し回避、起き上がり際に下からかち上げるように弓を持っていた右腕を切り飛ばした。倒れ込んだ相手を何度も突き刺し動かないことを確認した直後、横にローリングし槍のスケルトンの一撃を回避する。体勢を立て直し再び迫ってきた二撃目の刺突を相手の右脇飛び込むようにローリング回避、振り向くと同時に無防備な背中へと剣を突き上げ捩じ込む。ガクガクと小刻みに震え活動を停止した相手から剣を抜き、最後に後ろから迫ってきた無手のスケルトンの首を振り向き様に切り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 ちょっと待て。半ば自動的に対応したが、どこから盾や剣など取り出した?そもそも僕は運動部にすら所属せず体育でもそこまで突出した成績を出しているわけでもないのに、何でこんな重い剣を片手で振るっているんだ?理性は既に答えを出しているが、感情が受け入れたくないとばかりに解答の出ている疑問を並べていく。そうして、ロングソードの握り部分に刻まれた、ナイフか何かで忘れないように削りつけたのだろう文字を見た。

 

「Oscar of Astora」と、刻まれていた。

 

 

 手から剣がこぼれ落ち、全身から力が抜け気力が抜けていくような錯覚を覚えた。結局、全部無駄だったのだ。両親との生活、クラスメートたちとの学生生活、今まで自分が積み上げてきた日常は、色づいていたはずなのに今は全て灰色になったように感じられた。

 しばらくの間そうして呆けた後、身動き一つ出来なかった体を持ち上げ、部屋の洗面台の前の鏡を見た。鏡を見る自分の左目に、虹彩を囲むようにくっきりと、赤黒い輪があった。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅっ」

  途端あらゆる感情が爆発し表に出ようとするのを必死で我慢した。何の意味もない。吐き出したところで何も解決しないし何も戻ってこない。希望なんて持ったところで全部無駄になるなんて今更だろう?なら早く次にどうするかを考えなきゃ。無表情をなんとか取り繕い、心を平静に戻そうと建前を並べ続ける。それでも、抑えきれなかったものが左目から一滴流れた。

 

 




・熊沢 多美香
 FGO女主人公。武内氏のイメージ通りの一般的元気主人公。ただし多数のサーヴァントを従えるメンタル最硬の救世主タイプ。王道を行くもの。

・焔間 夜見
 DS世界から転生した不幸型報われない系主人公。影の中で足掻く王道を外れたもの。イメージは名前を見れば察せられるとおりまどかマギカの暁美ほむらの闇落ちバージョン。不死。やることなすこと全て報われず、諦めととも火継ぎの薪となり薪の王の化身の一部となっていたが、それでも普通の生活への未練が捨てきれずあるきっかけから転生。ご覧のありさまとなった。本人が認識して取り出せる武器防具類はDS1時に所有していたものに準拠。ただしなぜか取得した覚えのないものや魔法もある模様。ステータスはバランスはいいが大型武器は両手装備でやっと持てる、魔法は低燃費のものなら一通り使用できるが、高火力魔法は使用できない器用貧乏。
 

 


 一発ネタだったものを連載で投稿することにしました。
 なお、多美香の方には自分が召喚できたサバに従って登場、夜見の方はオリサバ、敵サバだった連中をメインで出そうかなと計画中。
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