Fate/Dark order   作:ハナネット

5 / 10
「ああ、これで希望を持って死ねるよ…」
  まともな人間がいなくなった不死院の一角で、そう言って彼が事切れる二回目の姿を、僕は見届けた。
  どうして、こんなふうになってしまったんだろう。後悔と自分の馬鹿さ加減、羞恥で立っていられなくなった。あんなに大切にしたかった願いだったのに、あんなに彼への恩を返すためにこの命を使おうと願ったのに、何でそんな大事な記憶を忘れていたんだろう。強くなりたい?お前がしていたのは始まりの誓いも忘れて、自分の弱さを否定したくて連中を虐げて悦に浸っていただけだ。自分で自分の願いを穢して台無しにして、今の僕は自分の意思でソウルを求め、強くなる自分に悦楽を覚えるバケモノじゃないか。亡者なんかよりも悍ましいじゃないか・・・  
  彼の剣を体が傷つくことも構わず掻き抱きながら、僕は静かに泣いた。
  ただ、彼の剣の握り手に刻まれた文字を指摘した時、彼が喜びを滲ませた声でいつまでもその言葉を口に出していたことが頭に焼き付いて離れなかった。



望郷 ―名前―

サイド:焔間夜見

「この先が大聖杯に繋がる洞窟だ。そして、セイバーもその先にいる」  

  短髪青髪のサーヴァント、キャスターの先導により、僕たちは柳洞寺のある円蔵山の参道を逸れた山道を行き、幻術によって隠された洞窟の入り口まで来た。キャスターも入り方については知らかったそうだが、習得している探索のルーンとやらを刻んだ石に道案内させていた為迷うことはなかった。この先に、ここ冬木の聖杯戦争の根源であり、キャスター曰くこの時代の特異点である大聖杯に繋がっている。僕はここまで辿り着くまでの慌ただしかった道のりを思い出し一息ついた。

 

 

  今から数時間前、調査の道中でオルガマリー所長やマシュ、ロマニさんが多美香に足りない今回の調査の目的やサーヴァントについての知識を律儀に説明しながら街を廻っていった。

話に加わらなかったものの、その会話の中で出て来たオルガマリー所長の生い立ちや所長になるまでの背景は、施設内での彼女しか知らなかった僕には意外なものだった。冬木で見た彼女の素直な反応を見ていると、冷徹な態度は周りの軋轢から自分を守る為の仮面であり、本来は臆病で些細な優しさ洩らしてしまう普通の少女なのだろう。そんな重責を背負いながらもカルデアを守ろうとしたのは、家族のことを本当に大切に思っていたからじゃないかと思わされた。彼女の問題と自分は関係ない話なので干渉はしないけど、今回の調査の成果が彼女の体面を保つ価値があることを密かに祈った。

  しかし、調査を進めていた僕たちに突然の襲撃が起こった。この冬木で行われていた大聖杯を起動させるための魔術師たちの儀式、聖杯戦争。そのために今回召喚されたサーヴァントたちがマスターがいないにも関わらず黒い影を纏って同時に二体が襲い掛かってきたのだ。

  ライダーと思われるサーヴァントは羽のある馬、天馬に股がり空中から音速の突撃を繰出してきた。アルトリウスが僕たちに危害が及ばないよう距離をとって引き付けてくれていたが、空中への攻撃手段を持たない彼は攻撃に当たりはしていないものの音速で襲い掛かる天馬に決定打を出せずにいた。

  小次郎も騒ぎを聞きつけて集まってきた骸骨兵たちを引き付けており、こちらのの護衛に回ずにいる。白兵戦に特化している彼では負けはしないもののあの数を一気に倒せる手段はないのが仇となった。僕と多美香のサーヴァントの配置ミスだといえる。

  対して僕たちにもランサーのサーヴァントが襲い掛かり、僕とマシュが多美香や所長を守る為に戦った。しかし、まだサーヴァントとしての戦闘に慣れていないマシュは相手の動きに翻弄され、僕もアルトリウスを除けば初めてのサーヴァントとの戦いで強化はされていてもベースが人間であることと人間の上位存在に格上げされた英霊の地力の差のために苦戦を強いられた。

  そして、三体目のサーヴァントの奇襲によって状況は悪化した。始めに僕を狙ったアサシンのサーヴァントは気配遮断のスキルによって僕たちの近くまで接近、僕の両膝の関節を狙い膝裏を投げナイフで破壊、動けなくなったところをどうやったのか心臓を長く伸ばした腕によって触れずに潰された。(自分も静かに眠る竜印の指輪や魔術「音無し」をもっているというのに完全に油断していた) 

  既に不死に覚醒していたおかげで致命傷に僅かながら抵抗出来た僕は、意識が消える前にエスト瓶で心臓を再生させた。瞬間的な血液の不足からふらつく足で多美香たちの下へ駆け出そうとした時には、既に多美香と所長に止めを指そうとナイフを振り上げ、所長の顔は恐怖で青ざめ、多美香は短剣をへっぴり腰で構えながらも目だけは相手から逸らさず震えながら立ち向かっていた。マシュはランサーを抑えるのにやっとの状態で身動きが取れない。マシュの叫びが響き、僕が毒を塗った投げナイフでアサシンを狙おうとした瞬間、事態はさらに一転した。

  突如表れたキャスターのサーヴァントがこちらの加勢に入り、アサシンを撃退、更には上空のライダーをルーン魔術の炎で天馬の羽を焼き尽くし地に落とした。空へと逃げられなくなったライダーをアルトリウスが叩き潰し、雑兵を殲滅した小次郎とアルトリウスのタッグによりランサーも倒された。取り逃がしてしまったアサシンのことは気がかりだったが、連中と違ってまともに話せるキャスターへの対応を優先させた僕たちは、彼からここ冬木で起こった異常について事情を聴いた。

  彼によると、前触れもなく一夜にして地獄と化した冬木に聖杯戦争に参加していたサーヴァントたちは放り出され、キャスターを除く五体のサーヴァントはセイバーによって倒された。その後あの黒い泥を纏って倒されたサーヴァントたちは蘇り、あの骸骨兵たちが街に溢れ出したそうだ。狙いは彼の抹殺による聖杯戦争の完遂。

  そこで彼はセイバーを倒すために僕たちに協力を持ち掛け、僕たちも利害の一致からそれに同意、彼曰くこの異変の特異点である大聖杯へと向かうこととなった。

  多美香を一時のマスターにしたキャスターはかなり強力な英霊のであるものの付き合いのいい性格らしくすぐに皆に溶け込み・・・いや溶け込み過ぎており協調性は高そうだ。僕に対しては何か感じ入るものがあるのか懐かしいものを見るような目で見られている気がする。曰く「オレの知っている女と違って青臭い感じがまだあるが、諦めちまったような目が似ている」だそうだ。(「あ!あといい年こいて若作りしてるとこも似てるな。あいつと違って肉付きはよくないがな」とかも付け加えた。許さない)

  小次郎とも相性は悪くなさそうだ。同じ女好き同士どの女がいいかなどと会話を花咲かせていた。さすがにアルトリウスは混ざれないが、あの彼がそんな会話する姿は想像できない。懸想されているのならまだ分かる気がするが。

  その後、キャスターの先導で先を急いだ僕たちだったが、途中宝具が使えず落ち込むマシュに突如キャスターが特訓を始め、なし崩しに僕やアルトリウスも巻き込まれた。

  キャスターの本気の宝具解放を前に、ついにマシュの宝具が発動。僕を含めた全員をその大盾の力で守りきった。多美香も荒療治な特訓に疲弊しているようだったが、精神的により打たれ強くなったような気がする。僕を見る目に恐れのようなものも見え隠れするが、いつものことだ。遅かれ早かれ誰だっていつかはそうやって見るようになると諦めた。

  ちなみに、僕もキャスターとの戦闘でアルトリウスの宝具の試運転も兼ねて彼の宝具を発動させて見たのだが、キャスターの宝具である巨大な炎の人形との相性の悪さから効果はイマイチ、発動30秒程度で僕の魔力貯蔵量が半分を超え行動不能を恐れた僕は解放を中断した。しかし、これでサーヴァントの能力、宝具の運用とその限界が分かった。失った魔力は聖晶石を試しに人間性と同じように割砕いてみたところ吸収し補填出来た。(貴重なアーティファクトらしく所長がその扱い方に一言言いたそうにしていた)

  そうした道中を越え、現在に至る。

 

 

 

「夜見ちゃんはさ、怪我とかして平気なの?」

洞窟を進む道中、唐突に多美香が僕に尋ねてきた。いきなりそんなことを聞いてきたりなんかして、どうしたのだろうか?いつもの彼女と違い神妙な顔をしている。

「慣れた。痛みはあるけどつらいとは思わない」

  もう不死になったばかりの頃の記憶はほとんど覚えていない。残っているのは拷問部屋の一室で白教徒から与えられた文字通り死ぬ拷問の痛みと苦しみの記憶ばかりで、皮肉にもそのおかげで痛みはあるものの感覚を無視する術を我流で磨かされた気がする。むしろ死んで体が霧散した瞬間の意識が霞んで次に復活するまで思考が働かなくなる感覚の方が恐ろしかったくらいだ。だが、多美香が聞きたかったことはそんなことではなかったようだ。

「そうじゃなくて、死んじゃったりするかもしれない傷を負ったりしてるじゃない。いつもいつもあの不思議な瓶で治るからって平気なわけないよ!それで万が一死んじゃったらどうするの!」

  多美香が怒っていた。その様に何故なのかと疑問に感じたが、かつて両親から怒られた理由を思い出して気づいた。どうやら、他から見て自分はかなり自分の体のことに無頓着過ぎるらしい。僕がさらに死ぬことも前提に戦ってきたのは想像出来ていないだろうが、どうやら多美香から見て自分は傷が治ることをいいことに命知らずの蛮勇で戦っているように見えたわけだ。。

「先輩に便乗するわけではないですが、確かに夜見さんは自分の体を軽く扱い過ぎています。今は私はともかくサーヴァントがキャスターさんも含めて三体も揃っています。もう少し自分の体を大事に扱った方がいいと思います」

  マシュも僕の戦い方に思うところがあったのか多美香と同じ意見のようだ。

  この子たちは、優しいんだな。自分を迎えてくれた両親や街の人たちの温かさを、彼女たちから感じた。だから、それを無下にして答えないわけにはいかないだろう。僕の気の迷いかもしれないが、彼女たちは信用できる人間だと思えたから。

「心配してくれてありがとう。だけど、僕はきっとそうする必要があると判断したならそれをする」

  二人はそんな僕の言葉に諭そうとするが、僕はさらに言葉を連ねてそれを遮った。

「分かってる。人の厚意を無下にしているってことは。でも僕はこの異変を解決する為だったらどんなことだってするつもりだ。この力が戻ったのは偶然だったけど、それがなくても僕はやると決めたんだ」

  まさかレイシフトする前に死んでダークソウルが復活するなんて展開は想像していなかったけど、もし爆発がなく順調にレイシフトしていたとしても、きっと無茶をしていただろう。

「正直なところ、人間の歴史が終わるとか世界を救うとか興味はない。ただ、そんないきなり訳の分からない現象なんかで僕の生活が終わらせられるのが許せなかったというかなんというか・・・」

  うまく言葉に表せられないけど、どういえばいいのかな。とにかく・・・

「結局、僕は両親とか学校のみんなとか近所の人たちとか、僕が生きている毎日にいる人たちが大事で、勝手に消されてしまうのが許せないと思っただけなんだ。今ここにいる僕は、その無茶でみんなが守れるのならそれでいい」

  

 

  不死になって、名前を無くした。自分が誰かも分からないまま、恩人の騎士の願いを果たすこと、不死でなくなるという目的にすがって、生きている振りをしようと足掻いた。自分の生きる目的が思いつかず無価値であると思ってしまうことが怖かった。

  その気持ちも、死を繰り返し、強大なソウルを吸収する日々を繰り返す内に忘れ、強さを求めソウルを喰らう亡者よりも醜悪なナニカになりかけた。二度目(・・・)の世界の不死院で始まりの騎士に再会した僕は、バケモノになっていた自分を自覚し絶望し、自分から漏れ出た本当の思いがそんなものであることに耐えられなくなって自殺するかのように自らを最初の火の炉の薪としてくべた。

  終わる世界の果てで、篝火に宿る守護者、薪の王の化身の一部に変貌し、灰の英雄に倒された。自分が存在する理由を火継ぎをした時点に失っていた僕は、そのまま英雄に吸収されるのを受け入れようとした。

  けど、最後の瞬間に恩人の最後に見た小さな憧れを思い出した。

  名前が欲しい。誰も知らない名もなき不死じゃない。まだ人間としてあったころ、いたかもしれない両親や隣人たちからきっと呼ばれたように、あの恩人の騎士、アストラのオスカー(・・・・・・・・・)が自分の名前を思い出し嬉しそうに事切れたように、自分もそれが欲しいと思ってしまった。それがないまま消えたくないと、思ってしまった。

  そのあと、言葉で表現できない何かの問いかけが頭に響き、当たり前にあった日常を求めた僕は暗くどこまでも深い全てがあるようでなにもないような空間を漂った後、気づいたら赤ん坊の姿となり、母親の手に抱かれていた。

                

           『ヨミ』

 

  僕の目の前で両親たちは親族たちにそう発表した。以前の世界とは違う言語であり、その後も覚えるのに苦労したが、それでも僕にはそれが意味するものが分かった。それを聞いて、僕は泣き出し両親は慌てあやしていたのを覚えている。『ヨミ』、自分の名。不死人として括られていた僕が、再び個として呼ばれた名。なんでもないそれが嬉しくて、何百年何千年過ごしてきた体面などかなぐり捨てて心の底から泣いた。

  その後も僕の人生は続いた。

     「夜見ちゃん」「焔間さん」「夜見」「よっちゃん」

  いろんな人たちがいろんな呼び方で僕の名を呼んだ。優しい人ばかりではなく目障りなものを見る目で呼ぶ人もいたけど、それでも気にならなかった。人間の邪な感情は僕自身が既に知っていたし、僕の醜悪さに比べたらどれも気にするほどじゃあないと思った。ただ名前で呼ばれ、ただの人間として毎日が続く。それだけで満たされていた。

  あるきっかけで人理継続保障機関フィニス・カルデアの一般枠参加の募集を知った。許せなかった。世界が滅びることなんかじゃなく、僕が大切にしてきた日常が原因不明な何かに奪われることが。だからきっとこの気持ちは僕の独りよがりな感情で、間違っても正義感から来るものなんかじゃない。どす黒い独占欲による感情だ。

 

  僕は魂喰いのバケモノだ。不死となった今、いつかはあの日常から離れる日が来るだろう。けど構わない。それでも、僕を『夜見』にしてくれた日々を守りたいんだ。

 

「多美香やマシュには申し訳ないと思う。でも僕は僕自身の願いの為に動くことをやめられない」

  二人から呆れられただろうなと思い二人の顔を見ると、なぜか二人は何生温い笑顔を浮かべて優しく僕を見ていた。何だろう、そんなに変なことを言っただろうか?

「いやあ、なんとなく分かってはいたけど、夜見ちゃんって見た目と違って凄い熱いんだなあと思ってさ」

「そうですね、私にはよく分からない感情ですが、ご両親や周りの人達をとても大事に思っていることが伝わってきました」

  なんだか僕のことを勘違いをされている気がするが、まあいいだろう。なんと言われようが、僕はあの日常を守ってみせる。それだけだ。

「うん、でも夜見ちゃんが頑張る理由は分かったよ。それじゃあ夜見ちゃんがあんまり無茶しないように私たちも頑張ろうか、マシュ」

「そうですね。頑張りましょう!先輩!」

  僕について納得してもらえたようだが、何故だ?

「緊張感のない会話ばかりしているわね、あなたたち」

  もはや苛立つのも通り越して呆れている様子でオルガマリー所長が話し掛けてきた。

「あなたはその能力の特異性から魔術資料として管理されることになるわ。ミッションが終わった後も貴女の出身地にはすぐには帰れない。けど・・・」

  所長はらしくなく顔を照れた様子で反らせて口ごもり、

「カルデアの正式な所有物であることが確定すれば、ある程度の自由や身分の保証は私の権限で約束出来る。その後なら貴女は自由よ」

  そんな言葉を掛けてくれた。なんというか、自分が物扱いされているのは癪に障るけど、見返りもきっちり与えてくれる辺りが所長らしい。何にせよ、街に戻らせてもらえるのなら文句などない。

  帰るんだ。こんな終わってしまった街なんかさっさと脱出して、あの街に、みんなに、父さんと母さんにまた会うんだ。

 

 

 

 

 

 

      どうせ全部無駄になるのに。僕の声は、無視した。

 

 

 

 

サイド:多美香

 

  洞窟を進む道中で夜見ちゃんに対する蟠り(わだかま)も少し解けて、 歩く脚が軽くなったような気がした。キャスターさんとの特訓でマシュ共々苦労した甲斐があり、戦闘でも大分戦況毎に広い視点から指示を出せるようになってきたように思える。その分、普通の人と思っていた夜見ちゃんの異常も目につくようになってしまったのだけど。

  最初は怖い敵と戦える格好いい女の子だと思っていた。けど、その思いも実際に戦っている姿を見ている内に理解できないものに変わっていった。

  夜見ちゃんは自分が大怪我を負っても戦う。シャドウサーヴァントのアサシンとの戦闘で、隙を突かれ両足をナイフで刺された後、アサシンの長い腕で何かされたのか白目を向いて糸が切れたかのように倒れた。口から泡が噴き出し痙攣したまま動かない。思わず悲鳴を上げてしまった私や所長の目の前でアサシンがナイフを振り上げる。その背後で、夜見ちゃんの右腕がそれだけ違う生き物のように動き出しあの不思議な瓶を出し中身を口に含ませると、先ほどの様子がなかったかのように夜見ちゃんが立ち上がり距離があり間に合わないと気づくとナイフを投げようとしていた。その間痛みに耐える様子もなく、表情もいつもの無表情しか浮かべていなかった。

  それだけじゃない。相手がサーヴァントでも、平然と戦っていた。アルトリウスさんは無口なことや鎧姿や体格が異形過ぎて現実感がなかったからまだ受け入れられた。けど、ランサーは顔も見え言葉も話せる人間としての特徴がはっきりしていて私には人間にしか見えなかった。襲われているのは分かっていても、殺人が禁忌として根付いている私には相手を傷つける行為に抵抗がある。でも、夜見ちゃんは違った。シャドウランサーに容赦なく攻め相手を殺そうと動いていた。それが、手慣れていたように見えたのだ。

  難しいことは分かんないけど、それがすごく健全じゃないことは分かる。だからつい見ていられなくなって感情に任せて怒鳴ってしまった。本当は私が不安で仕方なかったからなんだけど。

  全部納得出来たわけではない。けど、さっき話してみて分かったことがあった。

  きっとあの子は、自分の守りたいものだけで手が塞がってしまって、それ以上手を広げる余裕が無いと思ってる。痛みが大丈夫なこととか平気で人を殺そうと出来るのは、大事なものを守るだけでいっぱいいっぱいで、そのために優先順位の低い余分なものを必要であれば切り捨ててるからなんだ。1つを守る為に自分も他のものも切り捨てられるその考え方は、ひどく機械的で冷淡なものだけど、彼女が守りたがっている日常に対する熱は暖かいものに思えた。

  どうしてそんなおかしな考え方をしてるのか理解できないし、夜見ちゃん自身も異常だけど、その思いには誰でも考え持っている温かいものだった。それだけが理解が出来て、ちょっとだけど安心したのだ。

だから、せめてあんまり異常に傾かないよう注意してあげないと。あんなこと続けてたらその守りたがっている日常からどんどん遠ざかっていっちゃうよ。それはとても、悲しいことだと思う。

 

 

  通路が終わり、大きな広間に出てきた。そこに、二体の黒いサーヴァントがこの先は通さないとばかりにその先の通路の前を塞ぎ、待ち構えていた。

「行けるかな、セイバー。相手はサーヴァント4体。こちらの戦力はいささか少ないようだが・・・」

「どれも雑兵に過ぎない。マスターを狙えというのならそんな真似をする必要もないでしょう。真正面から全て砕くがいい。それに、面白そうな者もいる。しばし戯れるとしよう」

「やれやれ、仰せのままに我が王様」

  軽口を叩いていてもその目はこちらから逸らしていない。先ほど戦ったシャドウサーヴァントとは格が違う。読み取れたステータスを見る限り、力では圧倒的に向こうの方が上だ。セイバーとアーチャー。その二人から漏れ出す圧力に私は圧倒された。

「多美香」

  肩を叩かれて我に帰った。

「通路で決めた通り、作戦Bで行こう。そちらがどれだけ早くアーチャーを仕留められるかが鍵だ」

  夜見ちゃんはそう言うと正面の二体を見据えた。作戦上仕方ないとはいえ、この方法には不満がある。だから守ってもらってばかりだった分、ここでしっかりやろうと自分を奮い起たせた。

「分かった。パパっとあんな人倒して助けに行くから。だから・・・」

  無茶は、しちゃやだよ。それを聞くと、夜見ちゃんは会ってから初めて口の端を少しだけ歪ませて、

「善処はする」

  そう言って笑って次の瞬間には鎧を纏っていた。

  マシュが汗を滲ませて盾を構える。

  アーチャーが黒塗りの弓を取り出した。

  キャスターさんが魔力を集中させルーン魔術の発動に備える。

  セイバーが焦った様子もなく自然体に黒の剣を構える。

  アルトリウスさんが闘志を滲ませて大剣を肩に乗せ突撃に備え力を籠める。

  姿を隠した何かが隙を狙いこちらを見る視線がある気がする。

  小次郎さんが焦る様子もなく無構えに戦意を滾らせる。

  そして、夜見ちゃんがフルフェイスの兜に青いコートのある甲冑姿を纏い、節くれだった古木の杖を左手に、右手に赤熱し捻じれた剣を構える。

  そうして、数瞬の静けさの後、誰かが足を踏みしめ砂利を鳴らせた瞬間、両陣営は激突した。

  私たちの、この特異点での最後の戦いが始まった。




  大聖杯(手前)到達。骸骨兵と無駄に戦闘させるのもだれるん1対多数のフルボッコはやめて複数サーヴァント入り乱れての展開で行くことにしました。果たして夜見は故郷に帰れるんでしょうか(どうせみんな死ぬ)

  三蔵ちゃんイベント後半戦で新規アイテム新規礼装投入するとは思いませんでした。前半のアイテム集めきってない側としてはかなりきついです。しかもイラストはいいけど新規礼装の効果は使いどころがイマイチ使いづらい・・・。
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