走り出す響達。すでにシンフォギアを纏っている。
走る彼女たちとともにいるのは、丸腰のセレナ。カノンノは未来と共に、避難誘導ぐらいの手伝いしかしていない。
「大丈夫なのか、丸腰で」
クリスの問いかけに、ほほえむセレナ。
「うん平気、来て、『輝く光器・レイディアント・騎士』」
そう言った途端、セレナの姿が光包まれて変わる。
青を基調にした、剣と盾を持つ、ドレスの騎士姿。セレナはそれを纏いながら、
「それって」
「輝く光器レイディアントっていう、ディセンダーだけの鎧と武器。これは私がよく使うスタイルに特化した姿かな」
「聖遺物みたいデスっ」
そしてたどり着いた先は、地獄だった。
「・・・そんな・・・」
響は絶句して、みんな青ざめる。人が上半身、綺麗な吹き飛ばされている。
いまは港の倉庫、コンテナもなにも粉々であり、火の手が上がりながら、それはいた。
「テメェかこれをやったのはッ」
「アン?」
その姿に、セレナは戦慄する。
「バルバトス・・・」
構えて睨む相手は、片腕で巨大な戦斧を肩に担ぎ、辺りを見渡す。
他に人がいないのを確認して、今度はセレナを見た。
「ふむ、お前ぇがぁ、ディセンダーかぁ・・・」
肩をならして、いつでも戦える、そんな素振りを見せている。
「どうしてこんなひどいことするのっ」
「そうデス、なにが目的デスっ!?」
調と切歌に言われ、それは少し考え込む。
「目的か? あいにくと、俺にはそんなものは、ない・・・」
「・・・ない?」
クリスの言葉に、それはセレナしか見ずに、静かにつぶやく。
「俺は奴らに敗北して死に、なにかによってぇ、この身体、鉱物の人形を与えられたぁ。それは理解できる」
「誰かって・・・それに、やっぱりあなたは、私のことを知らない・・・」
「アアァ・・・そいつが言っていたな、別の俺ぇがぁ、お前と戦い、敗北したらしいな・・・」
響達は喉が渇きだし、構えを解こうとしない。
(ただ目の前にいるってだけで、なんてぇプレッシャーだこいつ・・・)
(少しでも気を抜けば)
(殺される・・・デス・・・)
そんな三人に相手、バルバトスは続ける。
「なにをしているかだったな。暇ぁ、潰しだ」
「・・・ひまつぶし・・・」
響が信じられないと言わんばかりに言葉を振り絞る。それにああと頷く。
「ただそこにいた、今日の俺はぁ紳士的だぁ。苦しまずに全員、殺して、やったぁ・・・」
「そんな、理由で・・・この人達を殺したって言うんですかっ!?」
激昂する響に、セレナが前に出る。
「冷静になって響ッ、この人は私の知っているバルバトスと同じッ。ただ殺し合いをしたいだけみたいっ」
「そんな、殺し合いたいなんて・・・」
「事実だよ、この人は力を示したいとか、憎いとかじゃなく、ただ殺し合いたい。それだけしか考えていないッ。リュウが言っていたの、バルバトスから悪意はないってッ」
「!!?」
いまだ驚愕する響に対して、バルバトスはせてと呟く。
「あいにくと、奴は俺を御しれないと判断してか、この世界のことや目的はぁぁ、まるっっっきりィ、わからんッ。だが、俺のすることは一つ・・・英雄と戦い、殺すこと」
そしてセレナを見ながら、
「異世界の救世主、お前を殺して、まずは手始めに、この世界の英雄を皆ァァ、殺そう・・・」
「そんなことッ」
「させるかデスッ」
そして装者と救世主、凶戦士との戦いが始まった。
二人のデュエットが響き、みなが動き出す中、バルバトスは静かにたたずんでいた。
調はローラーで攪乱しようと動いているが、まるで見向きもせず、彼女の技の一つ、鋸を放つ『α式・百輪廻』を放つが、
「・・・」
防御もなにもせず、それが身体を切るはずだった。
「!?」
歌いながらも驚愕する。本来は攪乱や牽制を目的とした技だが、それが命中しても威力無く、身体にめり込み、回転が止まった。
だが切歌は裏に回っており、いつの間にか二つ持つ鎌を合わせて使用する技『双斬・死uデRぇら』で切り刻もうと、はさみのように使うが、
(デッ、デスッ!?)
それは身体に食い込むが、それ以上深く切らず、離れようとしても、食い込んで離れない。
「・・・はあぁぁ」
長いため息の中、ちらっと響を見る。
響の全体重を乗せた蹴りが、顔に命中する。バルバトスの足場がめり込むが、バルバトス自体は、微動だにしない。
「そんなっ」
響が驚くが、バルバトスはやっとなにかに反応する。
「『瞬迅剣』」
槍のような鋭い突きが放たれ、セレナの攻撃だけは、斧を使い防ぐ。その瞬間、切歌や響はその場から離れ、セレナもまた離れた。
「むっ」
そう言えば歌が変わっている。それはいつの間にか、全砲門を展開するクリスの存在に気づいた。
「くらえ、威力マシマシだッ」
放たれたあとの叫び『BILLION MAIDEN』が放たれるが、
「・・・」
それを静かに見ているバルバトスに、全弾命中した。
煙が立つ中で、全員が一カ所に集まりながら、その中心を見る。
「やったデスか?」
「切ちゃん、それはやってない時の台詞だよ」
「そうだね、きっとまだだよ」
セレナの言葉に、煙が離れていく中で、無傷のバルバトスがそこにいる。
「マジかよ・・・」
「人間の身体じゃないからって、シンフォギアの攻撃が効いてない・・・」
セレナの分析だが、それは違うと呟く。
事実、刃は食い込み、僅かに傷らしい傷はある。
ただ、
「威力が足りない・・・この姿じゃ、彼奴に致命傷を与えられない・・・」
調が悔しそうに言い、それは装者全員の気持ちだ。
唯一バルバトスが警戒した攻撃は、セレナの攻撃だけであり、その攻撃も、
「軽い、な・・・これぇが、救世主・・・ディセンダーの、力かあぁぁ・・・」
「・・・」
セレナは考えながら、しばらく沈黙後、
「ごめん、ここは私に任せて」
「セレナッ」
「なに言ってるデスッ」
「そんなことさせないよッ」
「テメェ一人に任せられるかよッ」
響、切歌、調、クリスの順に叫ぶが、セレナは首を振る。
「翼さん達と同じ、私はあなた達の攻撃方を知らないし、その逆も・・・それに、私の武器なら、あの身体には有効みたい」
「どうやら、そのようだな・・・」
攻撃を防いだ斧に、少しの亀裂が入っていた。バルバトスもまた、それを肯定する。
「このォ身体ァ、どうやら、お前の力には、相性は悪いよう、だっ」
少し楽しくなったと言わんばかりに、肩を振るわせ笑うバルバトス。
セレナは静かに構え、そして言う。
「大丈夫、私は負けない。この世界も、みんなを守る。たとえディセンダーじゃなくても・・・」
光がより輝き、いつの間にか、双剣士の姿にかわるセレナ。
「私は、みんなの笑顔を守る。自由の灯火、ギルドアドリビトムのメンバーッ」
そう言った途端、彼女はバルバトスへと立ち向かう。
「ヌオォォォォォォォォォォォォォオ」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
セレナは二振りの剣で、巧みに攻撃を交わしながら、手数で攻撃していた。
「『散沙雨』『秋沙雨』ッ」
確実にバルバトスに切り傷を与え、身体に亀裂を走らせるセレナ。これに、
「『灼熱の、バァァァァァァァァァァンッ、ストッライクゥゥゥゥゥゥゥゥ』」
炎の火球、地面にクレーターができあがり、溶岩のように地面を溶かすが、その火のこの中に、セレナはいない。
「むっ?」
「『風刃縛封』」
風の刃がバルバトスをそこに足止めする。いつの間にかセレナの姿は忍者を思わせる姿へとかわり、動きの止まったバルバトスに、
「オッリャアァァァァァァァァァァァ」
赤い鎧に巨大な剣を持つ、大剣士にかわり、その大剣でバルバトスを叩く。
「『烈空刃』」
たたきつけられた攻撃に、肩で受け止めるバルバトス。
その顔がさすがにゆがむ。
「チッ『デモンランス』」
暗闇の槍がセレナへと放たれるが、それが命中するも、木の葉へとかわり、別の場所に忍者のセレナがいる。
「これは」
「これでも、仲間に色々な人がいるから、色々な職業の技が使えるの」
『苦無閃』と言う技を放ち、バルバトスはそれをよけながら、セレナは叫ぶ。
「あとは時間稼ぎや隙作る技とか、小技や卑怯な技とか、教わった」
致命傷にならないが、いまは確実にセレナのペース。セレナはある人物の教えを思い出す。
「相手の方が強いときは、小技で力そいで、行こうぜ」
人のいやがる戦法をよく考え思いつく人。どうして自分はこんな人好きになったのか、わからない。
けどいまは、これがベスト。
(このまま、ダメージを乗せ続ければ)
双剣士、忍者、または狩人など、技を変え、スタイルを変え、バルバトスに切り傷を与え続けるセレナ。
いまある作戦の下準備、そのために戦っている。
そんな二人の様子を見るしかない装者達は、歯がゆい思いをしている。
「くっそ、見てることしかできないのかッ」
「落ち着くデスよ先輩っ」
「落ち着けるかッ、セレナだって致命傷を与えられねぇじゃなぇかッ」
ヒット・アンド・ウェイを繰り返すセレナに、どうすればいいか考える装者達。
「待って、エルフナインちゃんの話じゃ、龍さんがゲーデじゃなきゃ」
「チッ、そうだな。こいつを使うしかないッ」
「一気に逆転デスッ」
「行くよッ」
「・・・ん」
「!?」
バルバトスはこちらではなく、四人が立つ方を見た。
四人は胸元にあるブローチへと手を伸ばしている。
「あれは・・・なん」
疑問に思ったバルバトスが口にすると同時に、
「「「「イグナイトモジュール・抜剣ッ」」」」
四人が叫ぶと、イグナイトモジュールが展開する。セレナはそれを知っているため、好機と捉えたが、バルバトスの様子に、はっとなる。
「・・・まさか」
イグナイトモジュールの闇を纏い、向かってくる装者達。バルバトスは下を向く。
「もらったッ」
「畳みかけるデスッ」
「一気に」
「終わらすッ」
向かってくる装者達。だが、
「・・・それは」
彼女たちはすぐに、戦慄した。
「・・・アイテムか・・・」
顔を上げたバルバトスの目に、凍り付く。
「アイテムなんてッ」
バルバトスは地面に向かって、拳を振り下ろす。そして、
「・・・響・・・」
人気のない安全地帯で、カノンノと共に響達の帰りを待つ。
剣を持っていないため、カノンノはここにいるしかない。
「クイッキー・・・」
未来の肩に、心配そうにしているクイッキー。その頭を撫でる未来だが、
「!!?」
素人でも分かる、轟音が響き、次の瞬間、
「うそっ!!?」
コンクリート、大きさからしてグランドくらい、倉庫がある場所の地面が、
持ち上がった。
「!!?」
響達はなにがあったかわからない。
地面が急に、持ち上げられたのだ。
身体が宙につき、そして、地面だったものがたたきつけられる。
セレナを始めとした装者達の悲鳴が響く中、響だけはそれを粉々に砕いた。
そのおかげで致命傷にはならなかったが、
「!?」
亀裂の中から、バルバトスが現れた。
斧を振り、その一撃がめり込み、血を吐かせ、骨を砕きかけた。
次の瞬間、バルバトスの姿が消え、切歌、調、クリス、セレナが自分にぶつかり、地面へと落下した。
地面を削る中、なにが起きているか理解するため、空を見た瞬間、
バルバトスが巨大な戦斧を両腕で振り上げていた。
響は拳を握りしめた。
セレナは剣士になり、盾を構えた。
クリスはまだ目を開けていない後輩達をかばうように、背を向けた。
「アイテムなぞッ、使ってるんジャネェェェェェェェェェェェェェェェェェエッ」
次の瞬間、大地を砕き、振るわす振動が、放たれた。
「しゃがんでッ」
未来をかばうように、カノンノが前に出る。
地面にしゃがみ込んだ瞬間、轟音と振動がやってきて、近くにある建物の窓ガラスが吹き飛び、自然に生えている木がなぎ倒れ、悲鳴が聞こえ出す。
「いまの・・・」
「響ッ」
未来が起きあがったとき、荷物が飛び散るが無視して、駆け出す未来の手を掴む。
「落ち着いて」
「けど響がッ」
「クイッキーッ」
未来も分かっているが、カノンノを見てすぐに収まる。一番駆け出したいのは彼女だと、未来はすぐにわかるから。
「・・・みんな・・・」
祈るように、戦いの方角を見るカノンノ。
「・・・クイ?」
そのとき、クイッキーはあるものに気づいた。
爆音が響いた戦場、バルバトスは煙でも吐き出すように、息を吐く。
「くっ・・・」
セレナは片腕を押さえる。折れていると判断して、立ち上がる。
「セレナッ」
響は立ち上がるが、イグナイトモジュールが解除されている。あまりの攻撃に、解除されてしまった。
「先輩っ」
切歌の叫びに、シンフォギアが解除され、頭から血を流すクリスが視界に入る。切歌も調も、イグナイトモジュールが解除されている。
だが一番のダメージは、クリスだった。
「・・・」
セレナは盾を構え、剣士の姿のまま、響に、
「ヒビキはみんなをつれて、ここから離れて」
「セレナっ!?」
セレナの左腕がたれていることに、響も気づいている。もう片腕が使えないことに気づかれるが、いまは、
「だめ、このままじゃみんな死んじゃうっ。だからヒビキ」
「ならなおさら、セレナを置いていけないッ」
「俺はお前らを逃がす気はないぞ」
それに切歌も調も体を震わせ、バルバトスは斧を見る。
「ディセンダーはともかく、拳の女ぁぁ、お前はぁ、おもしろい・・・」
斧に亀裂が入っている。セレナの所為ですでに傷付いていたとはいえ、亀裂を大きくしたのは響の一撃だ。
「いまのうち、殺して、おくか・・・」
そして一歩、前に出る。
切歌達も立ち上がろうとするが、その瞬間激痛が走る。
「これって・・・」
「シンフォギアを保つので・・・限界・・・」
二人もまともに立ち上がることはできない。響は構え、セレナは盾を構えた。
斧を持つバルバトスは、静かに、
「ここで死ね」
その瞬間、前にいたはずのバルバトスは、
「先輩っ」
「セレナっ」
後ろにいた。
「ヌオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
振り払われる斧に、二人は防御できない。
「先輩ッ」
「セレナッ」
装者二人、切歌と調の叫びを聞きながら、振り返るがもう遅い。
響は一瞬、未来の顔を思い出した。
地面ごと削る一撃が放たれ、煙が立ち上る。
それを見て、切歌達は泣きそうな顔になるが、
「・・・ん?」
バルバトスは、疑問符を呟いた。
「これ・・・!!?」
光の槍が降り注ぎ、その場から離れた。
「えっ・・・」
「・・・あれ?」
響が気が付くと、切歌達の隣に、誰かに抱えられていた。それはセレナも一緒だった。
「みんなっ」
カノンノが駆けだしてやってきて、その現状に驚愕、するに治癒魔術をしようする。
「悪いな、少し後れた」
そう言って、長髪の男は響とセレナを下ろし、もう一人誰かが駆け寄る。
「カノンノ、この子を頼む。出血はひどいが、君の治癒術なら問題ない」
「うん、二人ともバルバトスをお願いっ」
「あいよ」
「了解した」
金髪の、白い甲冑。いかにも騎士と言った男は剣を握り、返答して歩き出す。
「・・・お前達は」
バルバトスはそれを見ながら、長髪の男はお土産の木箱を置いて、自分の愛刀を取り出す。
「あとはお願い・・・」
治癒術のため、僧侶の力を使うセレナに対して、
「まったく、うちの救世主様も無茶するぜ。リュウ大先生がいたら、やばいなこりゃ」
「ああ、彼が駆けつける前に終わらせないとね」
そして二人の仲間は、バルバトスに叫ぶ。
「ギルド・凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)メンバー兼、ギルド自由の灯火(アドリビトム)メンバーユーリ・ローウェル」
「同じく、ギルド自由の灯火メンバー兼、ガルバンゾ国騎士団隊長、フレン・シーフォッ」
二人は叫び、明らかな敵意をバルバトスを放ちながら、
「テメェは俺らの仲間を傷付けた」
「彼の世界でのこれ以上の悪事、見過ごす気はないッ」
その戦士の登場に、邪悪な笑みを浮かべるバルバトス。
「さあ、第2ランドを始めるかッ」
こうして彼ら、アドリビトムも戦いへと参加した。
燃え尽きた・・・だが戦いを終わらせないと、ついにアドリビトムメンバー登場。
イグナイトモジュールアイテムでいいよね? バルバトスさん出すとタグを18にしなきゃいけないと思うのは気のせいだよね?
そんなこんなで次回、アドリビトムとバルバトスです。
決着のあと、そのあとはなにが待ち受けるのか、お待ちください。
それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。