セレナからの言葉に、マリアは、世界が止まったように思った。
セレナは真剣にこちらを見ていて、ただまっすぐに見つめてくる。
「私はあなたを知っている、そんな気がします」
そう、始めて見たときから、知っていると思っている自分がいた。
あるはずもない、龍達はなにも言わないが、なにかあると思う。
だってこの人はいつも、私を見て悲しそうに、うれしそうにしているんだから。
「教えてください、あなたも、私を知ってますか?」
壊れそうになる。もうだめだ。
「セレナ・・・」
涙が流れ出る。間違いない、間違いであっても止められない。
もう自分は、この子のことを妹、セレナとしか見られない。
そう言い、だきしめようとしたとき、その身体を、
セレナに拒絶された。
なぜ? そう思った瞬間、鮮血が舞った。
「せれ・・・な・・・」
何者かに斬られた少女。その後ろにいるのは、
【私は貴方をセレナとは認めない】
同じ姿の、黒い自分だった。
「!?」
エルフナインを盾にして持ち上げ、響とノワールから逃れている龍は、すぐに負に気づいた。とてつもないほど巨大な負であり、恥ずかしそうにしているエルフナインを置いた瞬間、サイレンもまた鳴り響く。
「なにっ!?」
「爆発的な負を感じたっ、これはマリアのだッ」
そう言って飛び出す龍。それを追うように響とノワールは外へ走り出し、エルフナインもそれに気づき、3人の行動を伝えるために司令室へ走り出す。
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
【本物だというのに、私以上に負をまき散らすのね】
「黙りなさいッ」
すでにマム達から離れた位置で、イグナイトモジュールを使用して戦うマリアとアガートラーム。
瞳の色が違うだけの二人の戦いだが、それを捌くアガートラームが一枚上手だ。
なにより、我を失って、暴走状態になりかかっているマリアなど、敵ではない。
【貴方を殺して、セレナを奪ったこの世界を壊す。だいたいゲーデより、元である貴方から負を取り込んだ方が、確実に強くなる】
蛇腹の剣が交差する中、マリアは暴走すれすれでアガートラームを睨む。
「ならなぜセレナを斬ったのッ!? 貴方は私なら、あの子を斬れないはずよッ」
【あれはセレナではないわ。妄言に囚われないで本物。あの子は殺された、この世界に、マムも同じ。いい加減に目を覚ましなさい】
「違う・・・あの子は、あの子はセレナよっ」
【それはそう思いたいだけよっ】
ぶつかり合う中で、アガートラームは内心微笑んでいる。
それに気づかず、マリアは負をまき散らしながら、暴れていた。
「まずいっ、マリアの奴、負の力をまき散らしてるッ。この距離でわかるっていうか、徒歩きついっ」
「なにも考えずに出ましたからねっ、走るしかないですよっ」
「いつものこと」
響とノワールはそう言いながら、龍も焦る。
元々装者ゲーデは装者の負でできているのなら、装者達からも負を取り込むことは可能だろう。
この状況はまずい、マリアは相手に力を貸しながら戦っている。
「仕方ない、響はイグナイトモジュールでいち早くいけっ」
「わっかりましたっ」
そう言い、人気がないことを確認したとき、ノワールは盗賊の姿になり、響への攻撃を防いだ。
「!?」
【新しいディセンダーですっ!?】
いつの間にか現れたイガリマの鎌を防ぐノワールは、次に海賊にかわり、銃を乱射しながら、イガリマは後ろに下がる。
「イガリマだとっ!? 響に下半身砕かれたんじゃないのかっ!?」
【シュルシャガナが貴方を分け分けしてくれたから、早く回復したんですよゲーデ】
【だからいっぱい切り刻むよゲーデ】
そう言って現れたシュルシャガナに、イガリマもうれしそうに頷く。
【私、切り傷から血を直接飲んでみたいですっ、いいですよねゲーデっ】
「いいわけあるかっ」
【私は少しずつ削りたいな・・・えっへへ、楽しみ♪】
うれしそうにシュルシャガナがほっぺを両手で押さえ、赤らめている。イガリマも楽しそうに頬を赤く染めている。
さすがの響もうわっと言う顔になり、ノワールはむうと頬をふくらます。
「痛いのめっ、リュウは、ノワールのッ」
「いつからだディセンダーッ」
そして腰に下げていた(よく考えれば置いていかなければいけない)剣を取り出す龍であり、響はイグナイトモジュールをすぐに発動しながら、シンフォギアを纏う。
その姿はすでに、ゲーデシンフォギアだった。
「力加減間違えるな、サポートするぞノワールっ」
「うん、ガンマンッ」
「行きますッ」
【オリジナルとディセンダーは邪魔ですっ】
【私たちはゲーデと楽しみたいだけなのっ】
そしてぶつかり合う、急いでマリアのもとに出向くためにも、
「くっ」
イグナイトモジュールを纏いながらも、剣と剣がぶつかり合う。
【貴方は所詮逃げてるだけよ。あれはセレナじゃない、もしかすればそれを元に作られた別の者よ】
「そんなの」
【わからないわね、だって、なにか確証はあるの?】
「黙れッ」
その大きな仕草に、アガートラームは邪悪に笑う。
【バカなオリジナル】
そう言った途端、刃にまるで龍が使った、負を剣に纏わせて斬りつけるように、刀身に負が集まり、蛇腹の刃が自分を切り刻む。
「がっ」
その場に倒れ、シンフォギアが解かれる。
アガートラームは遠くの林に飛び、マリアはしまったと自分を呪った。
【所詮貴方は弱いのよ】
そう言いながら剣を構え、アガートラームは近づいてくる。身体を動かしたくても、動かない。
【だからセレナは死んだ】
そう言いながら、同じ顔が近づいてくる。
【だからマムは死んだ】
そして剣を構えながら、静かに見下ろす。
【セレナかもしれないと思ったときもそう、あなたは結局、怖くて真実に近づこうとしなかった。そうよね、あの子がいなくなってから私は、人を殺しているのだから】
「!?」
それに言葉を無くす。そう、自分は敵兵を殺した。多くの人の人生を壊した。
【ねえオリジナル、それであれがセレナだったらどうする? 話す?】
「黙りなさい・・・」
震える声、考えたくない。セレナがいまの自分、過去の自分を知られることが怖い。マムを救えず、なにもできなかった自分の罪を、知られることが怖い。
【わかったでしょ、あれがセレナであることが不幸の始まりよ】
その言葉に折れそうになる。そうだ、あの子がセレナでなければいい。そうすれば苦しまなくてすむ。
いつの間にか、自分から黒いもやが出ていることに、マリアは気づかない。
【ねえオリジナル、もういいでしょ? いい加減にしましょ。甘い幻想なんて見ず、現実を見ましょう】
その様子に口をつり上げて笑う。アガートラーム。
これでオリジナルを食らえば、ゲーデを食える。そう確証したら、身体が求める。あの男の全てを、自分のモノにできることへ。
【さあ、貴方の心の底の言葉を見せなさい。妹やマムを奪った世界に、その姿を象った偽物に、刃を突き向けなさいッ】
そう言われ、手を差しのばされた。
それを手に取れば、いま楽になる。そう思えてしまう。
そう思ったとき、セレナとセレナが顔を見せた。
「ふざけないで」
その瞬間、黒いもやは消えた。
「確かに私が弱いから、あの子が本物かどうか受け入れない、いまだってそうよ」
そうはっきりと睨みながら、だが、彼女から負はもうない。
「だけど、それでもその手を取る理由にはならない。二人のセレナにも、マムのためにもならないわっ」
少なくとも、あのセレナは自分に向かい合おうとした。それを思えば別の怒りが燃え上がる。もしも邪魔されなければ、ちゃんと話し合えていたはずなのだ。
【・・・そう】
そして無表情な顔になり、剣を振り上げた。
【なら、切り刻んで取り込むわね。メインディッシュがあるの、あまり体力を使わせないでね】
マリアはそれでも諦めない。剣をよけ、アガートラームを回収する。敵もそれはわかっているはずだと思考を巡らせているとき、
「!?」
歌が、聞こえた。
初めて見たとき、懐かしく思った。
初めて対面したとき、緊張した。
改めて話したとき、心からうれしかった。
わからない。私は違う世界の子、だけど、あの人とは仲良く、ううん。
私はあの人と、家族になりたい。
なぜそう思ったの? 自分でもわからない。
今日は知らない人の墓参りに、一緒に来て欲しいと言われた。名前を聞いたとき、行かなければいけないと思った。
そして、私は覚悟を決めた。変な子と思われてもいい。だから、
姉さんと呼んでいいか、私と貴方の関係はどんなものですかと聞こうとした。
だから、
私は傷を癒して、すぐに走った。
目の前には振り下ろされようとする剣を前にしても、抗おうとするあの人がいた。
そしてあの人の力が目の前に光る。私の武器は輝きはある。
なのに私は、それを手に取った。
その瞬間、口が勝手に動いた。
「!!?」
白銀の輝きがアガートラームを押しのけ、マリアの前に現れる。
マリアはそれを静かに見つめる。呼吸すら忘れ、それを見た。
その姿は覚えている。炎の中、血まみれの姿が最後だった。
だけど、目の前にいるのは、
「・・・セレナ」
そう呼んだとき、セレナは涙を流しながら、満面の笑みで、
「ただいま、姉さん・・・」
その言葉を聞いた瞬間、涙があふれ出した。
ああもう間違いない。
「セレナっ」
二人の姉妹はだきしめ合いながら、二人は名前を呼び合う。
「姉さんっ、姉さんっ」
「セレナ、あなたっ」
「うん覚えてるっ。ネフィリムのとき、絶唱を歌ったこと。マムのこと、施設のことっ。私は、私はディセンダーセレナ。だけど」
アガートラームを解き、それをマリアに渡しながら、優しく微笑む。
「セレナ・カデンツァヴナ・イブ、前アガートラームの聖遺物装者」
それに涙が止まらない。マリアは微笑みながら、セレナをだきしめていた。
【フザケルナァァァァァァァァァァァァァ】
突如、黒い闇をはき出しながら、アガートラームが現れ、辺りを睨む。
【くそッ、あと少しでオリジナルを取り込めたッ。ここにきて己を思い出すか忌々しいッ】
「あなた、この子がセレナだって」
【ああ知っていたさっ、だがそれがどうしたっ。私たちは偽物っ、どうでもいいことだッ】
それを聞き、聖遺物のアガートラームを力強く握りしめる。
つまりこれは、
「セレナと知りつつ、もう一人の私だというのに、セレナを斬ったのね・・・」
そしてシンフォギアを纏う、だが不思議と軽い気がする。いつもより、心が広い気がする。
その隣でセレナも、ディセンダーの力を纏う。
「姉さん、つもる話はあと、いまは」
「ええ、ともに戦いましょう」
セレナにそう言うが、それを笑うアガートラーム。
【忘れたのオリジナルっ、もしその子がセレナなら、その子がディセンダーになった理由をッ】
「・・・」
そうだ。この子がディセンダーになった理由、憶測の中にあるのは、龍を殺すと言う使命だ。それがいま確証に近くなった。
だが、
「もしそうだとしたら、また世界を敵に回して、龍を助けないといけないわね」
そう微笑みながら、セレナが生きるきっかけを作った龍を思い出し、ほんと嫌になると思いながら、叫ぶ。
「イグナイトモジュールッ、抜剣ッ」
その瞬間、美しい黒い輝きが、マリアから吹き出た。
【それはっ!?】
黒いドラゴンは周りを飛び、マリアへと纏われる。
黒い翼はマントのように、紫の炎をまき散らしながら、美しく白銀と黒曜石が鎧のようにマリアを包む。
その剣もまた、白銀の黒曜石でできた剣へとかわり、美しく髪をなびかせて現れた。
【バカなっ、貴方はゲーデのことを】
「妹が世話になっているのよ、それなりには信頼してるわ」
「いくよ、姉さんっ」
「ええっ」
騎士の姿のセレナがアガートラームを押し込み、その穴を縫うように、剣が舞う。
歌が響く、二人の歌、同調して、身体の早さは二人とも早くなる。
【そんなっ、貴方はシンフォギアではないのにっ、なぜ力が増すっ!?】
驚愕するアガートラームは、銀の布を取り出し、逃げだそうとするが、それをセレナが矢で貫き、アガートラームは睨む。
その瞬間を見逃さない。
マリアの刀身が伸び、双頭龍のように、あまりの早さで二本あるように錯覚する。
黒と白のロンドが舞い上がり、アガートラームを砕いた。
【ぐっ】
「これでおしまいだよ」
【!?】
剣が光へとかわり、セレナは静かに告げる。セレナだけの技、世界を輝きへと染める剣撃であった。
『レイディアント』
振り下ろされた輝きは、アガートラームを包み込む。
その光を見て、イガリマとシュルシャガナはすぐに撤退し、彼らもまた走る。
「ばっかものッ!!!」
弦十郎に怒られた飛び出したもの達。
そしてセレナの方は、説教後話し合いが始まった。
彼女は、セレナ・カデンツァヴナ・イブとしての記憶を持っていた。
だから、彼女はマリアに言う。
「ただいま・・・」
それにマリアは静かにだきしめながら、
「お帰りなさい、セレナ・・・」
こうして姉妹は再会し、その様子を一人を除き、優しく見守った。
真夜中の港、龍は星空を見ていた。
「どうしていないの?」
セレナが後ろから話しかけながら現れ、座り込む龍を見つめる。
「・・・気に入らないからだ」
「私の、世界樹がしたこと?」
まだわからないが、やはり原因があるとすれば龍、ゲーデだろうと思う。
セレナを自分の防護策にするため、家族から引き離した。それが気に入らない。
「私は、少し感謝かな? 絶唱って、使うと肉体に負荷がかかるから、死んでたと思うよ」
「それでもだよ」
「そう」
隣に座り込むセレナに、龍はため息をつく。
「姉さんと再会したのに、いいのか?」
「いまはいつでもできるし、今日は思いっきり甘える気だよ。マムのことや、私がいなくなった話も、まだ少ししないといけないからね・・・」
育ての親のような人がもういない。セレナは顔を曇らせた。
それ以上はなにも言わず、龍は側にいるだけだった。それだけでうれしいセレナ。
「ねえ龍」
昔の記憶を取り戻したいま、セレナは龍に近づく。
「なん」
そのとき、やわらかいものが、唇にふれた。
「・・・・・・・・・・・・えっ・・・・・・」
なにが起きたか分からず、龍は黙り込む。目の前には頬を赤く染めながら、優しく見つめてくるセレナがいた。
「かわらないから、ディセンダーセレナも、セレナ・カデンツァヴナ・イブでも。この想いはかわらないからね」
そうほほえみ、肩に頭を乗せてうれしそうにするセレナ。
龍はさすがに面食らいながら、なにいっても自爆かと思い、星空を見つめるのであった・・・
響達はマリアを呼びに言った。
軽い晩餐会のようにお祝いしていた際、龍とセレナがいないためか、マリアもいなくなっていたのだ。
「あっ、いましたよ」
響がマリアを見つけた。物陰から何かを見ながら、
「ひぃっ」
「デデスっ!!?」
もうオーラのようなものを出し、コンクリートの建物を握りしめているマリアがそこにいて、全員がガタガタと怯え、翼が前に出る。
「ま、マリア、ど、どうした?」
その言葉に振り返るマリア。目の光りはなく、ただ一言。
「私、次あの姿になる自信はないわ」
そう呟くだけで、これ以上先にはいかせられないと足止めするマリアであった。
注意・この作者はどうやら諦めたようです。
セレナの秘奥義が、某アニメの聖剣です。服装も似てるよ剣士の服装。
イガリマ達もヤンデレで、オリ主はどうなることやら、覚悟しろオリ主。
っていうかセレナっ、カノンノよりフラグが立つよ、カノンノもそれなりにオリ主にアタックしてます。ただ作中するか不明です。
次はゲーデ装者は誰と戦い、誰がパワーアップするか楽しみに。
では、お読みいただきありがとうございます。