ルドガーと言う青年の説明を始める瞬間、空が割れた。
「・・・」
龍は驚かず、全員が空を見た。
そして一人の女性を睨む。
「どうして・・・」
一人の女性、髪は長く、透明と言っていいほど綺麗な白、瞳も銀色であり、ただ空に浮く。その存在に、苛立ちを持っている龍が前に出る。
「やって表舞台に出てきたか」
「ゲーデ、なんで彼は君側にいるの? 貴方は光、正義であるこちら側なのに?」
15~6くらい、ワンピースにマントを羽織った少女は無表情に聞く。
ルドガーが首を振りながら、その槍を構える。
「君は間違っているんだよ、だからもうやめるんだ」
「やめる? 私は正しいよ、だって私なんだから」
「・・・そういう性質か」
龍、ミラ、ルドガー達だけは相手がなんなのか知り、全員が集まり、武器を構える。
「誰なんですか」
「あれは」
響の言葉に、龍は少し間をおく。その間も空が割れ、白い世界、白い惑星が現れながら、空の様子を睨みながら言う。
「自然に、偶然に生まれた純粋のディセンダーだ」
その言葉に全員が黙り、翼は剣を構えながら首を傾げる。
「自然にとは」
「言葉通り、偶然生まれた。ただ害悪を倒すための存在、それが彼奴」
精霊でもなく、救世主でもない。
精霊でもあり、救世主である。
それが目の前にいる、救世の精霊とも言える存在。
「救世だとっ、こいつがしていることがんなこと言えるかよっ」
クリスが叫び睨み、団員が構えるが、彼女はなにも言わず、ルドガーを見る。
「なぜ黒い世界を選んだの? 貴方はまた傷付け、傷付き合うの?」
「・・・俺はミラを、エルを守る」
「なら私が正しい、守るためにいる、救うためにいる、助け出すためにいる」
歌うように空の星、白い世界を見る。
空中でくるくる舞うが、なぜかみんな攻撃しない。まるで攻撃してはいけないと心の底で思うほど、龍だけはなにか違う。
「・・・いい加減にしろ」
それはゲーデ故なのか、龍だけは違う。
「お前の正義は正義であって正義じゃないッ」
「私は正義から生まれた、私は正義、救い、奇跡。だから私は貴方を、全ての負を消さなくてはいけない。ルドガーの力を借りたかったけど、それでも私は諦めない。必ず貴方達を滅ぼし、全てを救う。それが私」
それを聞きながら、なに言っているのかと思う面々だが、全員が黙り込む。
「ゲーデ、これ以上貴方は存在してはいけない。白の世界、全ての負を集め、滅ぼす私の空間に招待する。準備は整った、あとは貴方を消せば、世界の負を消せる」
「どういうことだっ!?」
その問いかけには答えず、彼女は姿を消す。
空の異変に町はパニックになる故、彼らはまずそれを止めるために行動する。
「状況の確認よ」
リタの言葉に、司令室に緊張が走る。
町の方は世界中規模であり、いまオペレーターおよび、多くの機関が押さえ込んでいる。弦十郎もその話しに耳を傾けながら、ルドガーは頷く。
「彼女は言ったとおり、たまたま生まれたディセンダーなんだ」
「たまたま生まれたディセンダー?」
首を傾げたノワール。ミラは続けて答えた。
「彼女は、世界の外から生まれた感情、誰かを思い、誰かを救い、誰かを助けたいと思う純粋な思いから生まれた、純粋なディセンダーというより、精霊に近いものよ」
「そんな奴が、どうして敵になるんだよ」
「世界から負を消すためだよ」
ルドガーの言葉に、意味が分からない装者達だが、ジュード達はなんとなくわかる。
「完璧な世界なんて存在しない。負もまた人の心、それを消すことはできない」
「ああ、だけど彼女は本能でそれを成そうとしているんだ。たとえ世界がとんでもないことになろうとも」
「はあ?」
全員に疑問が浮かぶが、龍だけはなんとなくわかる。
「全ての負をまとめて消すんだ、世界もなにもかも巻き込んで、どんな結果が起こるか分からない」
「その通り、彼女は結果だけをなそうとしている。過程もその後も何もない。負だけ消そうとしているんだ。その結果、君が邪魔なんだ。同じ理由で生まれたゲーデが」
それに全員が龍を見る。龍は分かっていた。
「俺の生前、純粋、世界の悪意から偶然条件が整って生まれたゲーデ。向こうもか」
それら二人は頷く。
「二つの黒と白の純粋な存在か」
「ですけど、片方は黒から人へと変わりました。白は白のまま、黒を全て消すため、全てにあの世界、空間につなぎ合わせようとしてます」
ルドガーの言葉に、エルフナインは手を挙げる。
「全てと言うと?」
「言葉通り、異次元、可能性、過去の歴史、全ての世界、その負を消すんです」
ですがと言葉を止め、龍を見る。
「その全てを防ぎ、それと繋がる負がいます」
「俺か」
原初の負がそれらを止めている。だが逆に原初の負を消せば、世界の負を消せるらしく、その話を聞きながら、もう一つの疑問を聞く。
「あの人の言っていることがわかりません。ミラさんの記憶を都合良くしたり、ジルディアの人達の偽物を作り出したり」
「それは簡単だよ」
ルドガーは静かに、
「彼女は負を感じることはない。自分のしていることを悪とわからず、行動して居るんだ・・・」
全員が戦慄する。ミラは静かに、
「本当よ、それ以外の感情はない。あるのは人々の心の光、それだけ」
「なんじゃそりゃッ」
これ以上の話は無駄だと、叫ぶクリス達に告げてから、龍は宣言する。
「明日、あの空間に挑む。俺達がしなきゃいけないのは、間違いを認識できないバカを叩いて止めるだけだ」
それに全員が頷き、
龍を投獄させた。
「いいんですか?」
「リュウはああいって、準備中に出向いたの」
「前科持ちだから、マリア姉さん、逃がさないように一緒に見張ってね」
「ええわかったわ」
「んぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
口元まで塞がれた龍は、渋々大人しくなる。
さすがに一度は拘束されたが、もう出し抜かないと言わせて、装者達と最終決戦前のひとときを過ごす。
決戦は、ゲーデ、装者達、ディセンダー達、そしてルドガーしか出向けない。
エルフナインやリタ曰く、空間が特殊なため、もどきであるミラと奏ぐらいしか行けないらしい。
ちなみにゲーデである龍からは、二人は精霊に近い人らしい。新たな命を得たと、ルドガーにもそう言う。
全員が各々と楽しく会話などするが、龍だけは居心地悪そうな顔で輪から外れているが、このメンバーからは逃れられない。
「龍さんっ」
「・・・響か」
最近名前呼ぶしないと面倒ということで、響と呼ぶようになる。未来と言う友人も近づき、どうあっても一人になれないらしい。
「最後の戦い、私たちはどうすればいいんでしょうか。どう思います?」
「殴れ、以上」
そう即答する。響はえ~と言うが、龍は、
「何度でも止めてやればいい、彼奴の善意は間違っているだけで正しい。それを直してやればいいだけだ」
「できると思うの? そんなこと」
マリアが真剣な顔をして聞くが、それにセレナが答える。
「できるじゃなくってするんだよ姉さんっ」
「アドリビトムは、敵を倒すんじゃないっ。間違いを正してあげるんだっ」
「うんっ、あとはそのためにがんばるだけだねノワールっ」
「おー」
アドリビトムメンバーはそう宣言して、ユーリもフレンも苦笑する。
「まあバックアップは任せな、俺らがいる」
「君達は君達の戦いを、後ろを任せてくれ」
「やってもらわないとなユーリ先生」
「わかってら~リュウ大先生」
お互い笑い合う中で、響はその様子を見守る。
未来だけは何かに気づき、アドリビトムはディセンダーを正すために、明日に挑む。装者達はそれを見ながら、明日を見る。
響は少し黄昏れていた。
「ひ~びきっ」
「未来・・・」
後ろから現れた親友に、少しだけ難しい顔をする。
「なに考えてるの響?」
「ん~とね・・・」
未来に全て話す。
龍と自分の関係。龍はこの世界、人間に見切りをつけた理由は、自分だと知った。
それを静かに聞きながら、それでと思う。
「もう龍さんはそのことを気にしてないんだけど、私がね・・・」
「引きずってるんだね響・・・」
「・・・うん」
彼女は知らない、彼の戦う理由。
もう聞きたくない声がある。それを知る者は少ない。
「響はどうしたいの?」
「・・・もうできることはないんだよね」
苦笑しながら、あの光景を思い出す。楽しそうにしている龍。
もうやることはない。ないのだ。
「・・・あれ?」
少しだけほほに暖かいものが流れた。未来はハンカチで拭きながら、微笑む。
「悲しいな・・・」
本当はこの世界でしなければいけないことを、異世界に任せてしまった。
彼は失った、見失ったものを全て異世界で見つけた。傷付けたのはこの世界、自分なのにと思う。思ってしまう。
「私・・・もうなにもできないんだよね」
「響・・・」
「だいじょうぶ・・・へいき、へっちゃら・・・いまだけだから、未来・・・」
未来へとだきつく響。その思いを未来が受け止めながら、優しく微笑む。
ルドガーはミラと共にキッチン室を占拠していて、リタは呆れながら、アルヴィンを見る。
「なぁにしてるのよ」
「まあ、決着つけるんだよ。二人ともエルコンだから」
「そうなの」
エルは楽しそうに二人を見ながら、おいしい料理を作っている。いいにおいにエルフナインもはっふぅ~と言いながら休憩と共にやってくる。
「エルフナイン、異世界の方は?」
「他の世界でも同じ現象が起きてるようです。ですがアドリビトムや他の世界の方々ががんばってるようです」
「ハロルド達、私たちは異世界の混乱を収めるしかできない。なら、がんばるしかないわね」
料理はスープ対決であり、ミラはルドガーを睨む。
「お互いブランクがあるからって手を抜いたら斬るわよ」
「お手柔らかに頼む・・・」
苦笑するルドガーに、エルはスープを楽しそうに食べてる。ミラは得意げに腕を組み、ルドガーは苦笑する。
「二人ともおいし~」
「二人ともっ!? 私の方がおいしいわよっ」
「まあまあ」
「ミラさん落ち着いて」
そんなやりとりを見ながら、エルフナインは微笑む。
「はあ、色々あったデスね」
「そうだね切ちゃん」
切歌と調はお互い身体を休ませながら、気になることがある。
「・・・」
『あの叫びを聞くよりかはマシだ』
その言葉はなんなのかわからないが、なぜか重く、なぜか心に刺さる。
「・・・死ぬことよりも聞きたくない叫び・・・」
「・・・あの人にはあの人なりの重みがあるんデスね」
「なんの話だ」
クリス達、響以外の装者の登場にデデースと驚きながらも、調が説明する。
その話を聞き、翼とマリアはなんとなく頷く。
「最初はともかく、結局彼なりの世界を見て、世界を歩いたってことね」
「私も最初の言葉には含むところはあるが、龍は龍なりの正義があるんだということだな」
いつも世界の悪を見る龍。それでも、
「それでも、私は完全に悪と彼を見ることはできないな」
翼の言葉に、クリスはけっと言いながらも、同意する。他の二人もまた同意する。
「ま、まあ、私は助けられた恩があるデスから」
そう言いながら、少しだけ頬が赤いことに、むっと調は気づく。
「どうしたの切ちゃん?」
「デス? どうしたんデス調」
「少しあの人の肩持つから」
「べ、別にっ、なんもないデスよっ」
そのやりとりを見ながら、マリアはだけどと、
「だけどセレナのことだけは許さないわ」
「ま、マリア・・・」
「お前、目がマジだぞ・・・」
クリス達も若干引きながら、マリアは鋭い怒気を放つ。
「セレナを泣かしたら、次元を引き裂いてでも彼を討つわ・・・」
「ん?」
セレナはカノンノ達と共に、龍を見張る。龍は剣の整備しながら、
「どうしたセレナ?(あとはなにこの殺気)・・・」
「ん~少し、姉さんが少しね」
そう言いながら、カノンノ達、アドリビトムメンバーと共に、明日を見る。
白い世界が広がる世界で、龍ははあとため息を吐く。
「一人で行くのはダメだよ」
「・・・」
龍の考えを見透かされ、龍は黙り込みながら、
「ったく、もういやになる」
そう思いながら、龍はゲーデの力で世界を見る。
白い世界に怯え、不安がる悲鳴。
それでも、
(響の声に比べれば届かねぇ)
その言葉に怒気が、殺意が、全てが込められている。
いまだ許せない悲鳴。あの声が全てを、否、本当の自分を知らせてくれた。
壊す、滅ぼす、殺す、倒す。
絶望、嘆き、憎しみ、殺意。
それが己であり、根本である。
それらが血であり、肉体であり、魂であり、心である。
かわらない、変えられない。それこそ自分、それこそ剣崎龍、原初のゲーデだ。
やっとわかった。あの瞬間、悲鳴を聞いて、己がなんなのか知り、そして、
「・・・?」
カノンノは首を傾げ、龍はははっと苦笑する。
受け入れた仲間達、世界に笑う。
「ねじ曲がった害悪と、純粋すぎる正義。どっちか勝つか・・・」
そう空を獣のような顔で睨みながら、
「決着つけようぜ、希望」
白い世界、白しかない世界。
空間の中、無表情に少女は願う。
「全ての世界に、平和を・・・」
こうして静かに、全てが始まり、終わる。
次回最終決戦、戦うのはディセンダーセレナ、ノワール、ミラ、奏。
装者、ガングニール響、天羽々斬翼、イチイバルクリス、イガリマ切歌、シュルシャガナ調、アガートラームマリア。
異例、宿命を越えた者ルドガーと、原初のゲーデ龍。
敵は偶然生まれた精霊とも、救世主とも言える者。
お読みいただきありがとうございます。