考えるな、もう考えずに物語を打ちます。いや撃ちます。
ではどうぞ。
現れた男は手当たり次第に暴れ出す。
その男は凶戦士バルバトス、かの者はありとあらゆる次元と時空、可能性の中で英雄を殺し続けた実績を持つ、邪悪な人間だ。
そう考えていた精霊達は、驚愕している。
『バカな、ただの人間が、どうしてあれほどの力をッ!?』
大量の瘴気を全身からはき出し、斧を振るう。
この場所は人気の無い砂浜だが、海水が汚染され毒水へかわり、魚が次々と浮かぶ。
木々は枯れていき、空気を吸う装者達は立っているのでやっとであり、いまバルバトスと戦うのは、ルドガーとセレナ、ノワールの3人。奏とミラはみんなを守るために、参戦できない。
「くっ・・・」
顔を歪める翼だが、ミラ・マスクウェルを始めとした精霊達が結界を張る。
『どうなっている異世界のオリジン、なぜ人が、これほどまでの負を自在に操るッ!?』
『彼がそういうものだからだよ』
オリジンが困惑する精霊達に、装者達を始め、この光景を見るもの達に説明する。
『彼は君達がつなぎ合わせた負のたまり場に幽閉されていた、その場は原初とも言える自然発生させる、ゲーデやディセンダー製作所と言っていい場所だ』
『ああ、その場所で純白のディセンダーは、ジルディアの民、装者のゲーデを己の力で作り出した』
その言葉に、彼女は目の前の光景に驚いていた。
精霊は間髪入れずに、オリジンに聞く。
『だがどれも彼女には逆らえないし、彼女以上の存在に昇華することはない。負や宿命を越えた者以外、彼女に危害を加えられる存在はいないぞ』
『いや違うよ』
オリジンはそれを否定して、純白のディセンダーを悲しそうに見つめる。
『彼はたまり場に放置されながらも意志保っていた。もう一度英雄と戦いたいと言う、願望だけでね』
「そんなこと、できるはずがない・・・」
彼女は驚きながら聞き返すが、それに首を振る少年オリジン。
『事実だよ、彼は君の力を越えて、原初のゲーデのように器を得てた』
白の世界が閉じ、一瞬、その一瞬負を抑える力が消えた瞬間を、彼は見逃さず、この世界に顕現した。オリジンの言葉に、彼女は青ざめる。
「なら私が彼を倒します」
『君は無理だ、彼はディセンダーにより生まれたゲーデ、だから』
戦いの中、セレナの一撃、ノワールの連撃はまるで意味が無く、ルドガーの隙を作るのでやっと。そこに連携が取れない彼女が入るのは悪手でしかない。
『いや、純白のディセンダーならば、人間の負なぞ簡単に』
『いい加減にするんだッ』
オリジンの言葉に、精霊達は黙り込む。
ミラ・マスクウェルもまた、それに同意する。
「まだわからないようだな、この事態はそもそも人から生まれた負がいくらあろうと問題ない、そう判断したお前達が引き起こした異変だぞ」
『それは・・・』
言葉を失う精霊と彼女。
『・・・なぜだ』
精霊の一人がその状況下で、静かに戦いを見る。
『なぜ一人の人間風情の負が、世界をかえられる・・・』
そう呟く中、オリジンは静かに答える。
『負に大小なんか関係ないんだよ』
誰かを見下す、誰かの思いを無視する。
身勝手な者一人居るだけで、世界はこうもかわる。そうオリジンは告げる。
『僕はかつてオリジンの審判なる試練を、人類に与えた。答えとなるものが存在しないという、理不尽なものだ』
「オリジンの審判・・・」
ミラはかすかにオリジンを見る。その目には少しばかり殺気がある。
『僕の試練は多くの人の人生を狂わせた、人から見れば僕は悪だろう』
「どうしてそんなことをしたんですか」
響が苦しみの中で、オリジンに問うたとき、オリジンはすぐに、
『必要だから』
「えっ」
『僕の世界では精霊と人の間に深い溝があった。そしてその溝をほおっておけば世界はどっちに傾こうと、最後には破滅しかないことを知り、それを防ぐための試練だった』
オリジンは語る。たとえ争う関係になったとして、精霊が勝とうと、人が勝とうと待つのは破滅だと断言する。
それは、
『それはお互いの中に、自分とは違うものを否定する、心があるからだ』
『だからこそ負が害悪だろうッ、それがなければ』
『だが、負を害悪と言うのも、負だろう?』
それに精霊達は衝撃を受ける。
響達を静かに見つめながら、彼らに示す。
『彼女達は原初のゲーデと、自らの負を受け入れ、その力を守るために使っている。この力は世界にとって害悪かい?』
『そ、それは・・・』
『君達は負を利用しているように見えていたようだけど、ここからは彼女達の言葉がいいか。頼めるかい?』
オリジンの問いかけに、響達装者は、静かに精霊達と、彼女を見る。
「私は最初、パパとママが大切にした世界を否定した彼奴が嫌いだった」
クリスはそう言い、切歌と調も静かに頷く。
「デスが、あの人にも、あの人なりの理由があるとわかったデスし、嫌いだからと言って、嫌いのままじゃないデス」
「まだちゃんとお話ししたい、少なくても、ゲーデなんてことは、私たちには関係ない」
そう言われた後、マリアは少しだけ複雑そうに、
「私の妹、セレナの大切な人よ。嫌いだけど、あの子が大好きな人なんだから、邪悪ではない。それ抜きにしても、私は彼の存在が悪と思えないわ」
「ああ、仲間のために血を流す、防人の一人だ」
そして響は胸に手を置きながら、静かに、
「私は、あの人を嫌いにはなれません・・・私がゲーデを、あの人を傷付けたのなら、ちゃんと話がしたいです」
精霊達は愕然とする。なぜだと呟くことすら無意識に。
『なぜゲーデが受け入れられるッ!?』
『ゲーデを受け入れてるんじゃないよ』
オリジンは、軽く微笑む。
『剣崎龍という、人間が受け入れられている。こんな風にね』
『戦迅狼破』
戦いの中、真横から現れたユーリに、バルバトスがムッと顔を変える。
「貴様か剣士ィィィィィィィィィィィィィィィ」
「僕もいるし、どうやら、もの凄いことになったみたいだよ」
「!?」
空間がひび割れ、一隻の船が現れる。
空を飛び、何名かが飛び降りて、剣を振り下ろす。
「でっやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
バルバトスはルークの剣を防ぎ、続けざまに入る剣撃をさばきながら、アッシュは叫ぶ。
「一番に出てるんじゃねぇッ」
「うるっせぇよっ」
「ケンカしている場合か」
セネルが拳を振るいながら、猛攻する。
船からビビと音が鳴り、すぐにジェイドの声が響く。
『敵は瘴気をまき散らしてますから、回復されながら戦ってくださいっ』
『ユーリっ、援護は任せてッ』
『熱々おでんがあるのじゃから、早めに終わらせるぞっ』
「こりゃまた・・・カロル大先生達か」
ユーリが呆れながら、攻撃を休めず、シングが輝く剣を振るう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ輝けッ、俺のスピリアッ」
「でばってんじゃねぇッ」
紅い目のエミルが叫びながらラッシュが続く。それにバルバトスは叫ぶ。
「図に乗るなアァァァァァァァァァァァァアッ」
闇の槍が地面に放たれ、その余波だけでダメージを受けそうになるが、全員が回復魔法など飛ばしながら、援護射撃する。
「レイモーンの民の力、見せてやるッ」
「凍えろッ」
海上はすでに干上がり、戦える。岩場で数多の魔法と剣、武が混じり合う。
「バルバトスッ」
「カイルかッ」
バルバトスは嬉々としてカイルを見たとき、スタンも駆けながら戦う。
矢も入るのだが、バルバトスに変化が起きる。
「アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
体中が鉱石にかわる、元々怪物のような男が、よりそれを増す。
『バカな、己の負だけで、世界の理を凌駕するかッ!?』
『それもまた人の可能性だよ』
オリジンの言葉に、全員が戦慄するが、
「キュッキュ~エネルギーチャージ完了っキュ」
「いくでも撃てますっ、ジェイドさん船長命令です」
「はい撃ちます♪」
仲間がいるのもお構いなく、敵へ一斉砲撃する船。
仲間達が一番驚いた。
『マダダ、マダオワラヌハッ』
煙の中、黒いもやを出すバルバトスに、無数の影が現れた。
『冥空斬翔剣ッ』
『皇王天翔翼ッ』
『極ッ光ッ剣ッ』
『斬ッ空ッ、天翔剣ッ』
『天翔ッ、蒼破斬ッ』
『セルシウスキャリバーッ』
『殺撃ッ幻竜陣ッ』
『レイディアント・ハウルッ』
『ビーストブロウッ』
『魔王灼滅刃ッ』
『天翔光翼剣ッ』
『アイン・ソフ・アウルッ』
『翔旺神影斬ッ』
『獣破轟衝斬ッ』
弾幕の中と共に、彼らは全員、各々の技をたたき込む。
「あのっ、馬鹿者どもがッ」
魔術師組が術式を完成させて、どうするか思案するが、
「お仕置きもかねてだッ、覚悟しろッ」
躊躇いもなく、
「ウチらもやるよッ」
「オッサン前衛じゃなくってよかった~」
矢弓もまた、放たれる。
「って、仲間ごとかよっ」
「ど派手だね~」
奏も苦笑する、容赦ない攻撃の中、それでも前衛は駆ける。
「どうして」
彼女は困惑する。
それにアルヴィン達、ジュードも現れ、ミラ・マスクウェルは微笑む。
「どうやら、彼らは信頼しあっているようだな」
「しんらい?」
彼女はそうつぶやき、アルヴィンは苦笑する。
「攻撃はたから見れば、敵味方問わずだけど、不思議だな・・・絶対に当たらないって確証できるな」
「相手と相手、すっごく信じ合ってますっ」
「うんっ、凄いよアドリビトムっ」
全員が信じている。不思議とそう感じる戦いに、オリジンは問う。
『君達の目から見て、彼らはどう映る?』
『・・・信頼しあっている、少なくとも、彼らから負は感じない、むしろ』
『むしろ、希望の、救世の輝きを感じるだろ?』
それに精霊達が頷く。彼女もまた、
『そして彼らは信じている』
そう、信じている。
『立花響』
「え、は、はいっ」
突然話しかけられた響に、オリジンは伝える。
『君に原初のゲーデがどんな存在か、教えてあげるよ』
それは暗闇の中で生まれた。
暗闇の中、顔を上げれば光り輝く星々があった。
それは自分を呪った。自分と言う存在を呪う。
それは自分を食い始めた。何度も食った、自分自身を。
上を見上げれば星々の輝きが見えた。それがまぶしく、それから逃げるように暗闇の中で、自分を食べ続けた。
自分を憎んだ、自分を嘆いた、自分に絶望し、自分で苦しんだ。
憎しみを憎み、嘆きに嘆き、絶望に絶望し、苦しみに苦しみ続けた。
そして、それは負を食べ続けた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
セレナは戦う、自分の攻撃が意味もないのを感じながらも、それでも戦う。
『ジャマダコムスメぇぇぇぇ、オレハタタカウ、エイユウぅヲコロスぅぅ』
「邪魔するよ、彼が来るまで」
「うんっ、諦めないッ」
カノンノと共に剣を構え、クロスさせて斬りかかる。
光の斬撃を片手で止めるが、それども仲間達の援護は尽きない。
『ナゼオキラメナイぃぃぃ』
「それは」
「彼が来る前に終わらせたいからッ」
その真っ直ぐに告げて、彼らは駆けた。
『ありえんッ、永劫と化した空間から抜け出すことなぞできぬッ』
『それでも信じている、彼が来ると』
「・・・」
響がそれを聞きながら、オリジンは訪ねる。
『君はこのまま止まるかい?』
「えっ・・・」
響は白い精霊、オリジンに見つめられながら、考える。
「わた、しは・・・」
瞬間、翼達、装者のゲーデ装甲が外れた。
「時間切れかッ!?」
響のも外れたが、響は動じずに考える。
「私は」
立ち上がった瞬間、黒い闇が吹き出す。
赤い目となり、響は獣のようにバルバトスを睨む。
『コチラガワニキタカ、コブシノ』
その言葉に、
「違うッ」
装甲が闇の中に入り込み、獣と化した響は叫ぶ。
「私は立花響だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
その瞬間、赤い目の響が闇から現れる。その全身が、ゲーデ装者の鎧に身を包み、髪の毛も伸びて、背丈も少し大きく成長していた。
その目はゲーデと同じ、金と紅の瞳に変えて、
「彼が来る前に、貴方を倒しますッ」
そして黒い閃光が、凶戦士へと迫った。
「・・・もう無理かよ」
ユーリ一同、全員が歯がゆくその光景を見る。
二人して空を飛びながら、戦っていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
『フンッヌウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ』
大気が揺れ動く中、響は真っ直ぐにバルバトスを見る。
『ドコカラソンナチカラヲダスっ!?』
「私、わかりましたっ。ゲーデの、原初のゲーデが人間になったのがッ」
そう叫びながら、蹴りが巨斧の一撃を塞ぐ。
「あの人は怒りに怒り、憎しみを憎み、悲しいことを悲しんでくれた。他人の、もして関係ないことでも」
拳と闇の槍が交差するが、拳が闇を粉々にする。
「あの人は、誰かのために怒り、憎み、苦しみ、悲しんでくれる・・・だから人になったんだっ、間違いないッ」
そうはっきり、満面の笑みで答え、拳を構える。
「だから私は、彼とまたお話ししたいッ。その前に、貴方を倒さないと」
その一撃に、全てを込めて、
「あの人が貴方と戦うからッ」
放つ拳、だがバルバトスが巨斧を折り下ろす。
激突する中、響の顔が歪む。
その瞬間、
『だから、勝手に美化するなッ』
そう言い、空間から巨大なドラゴンが現れ、バルバトスへブレスを吐く。
現れたそれに、精霊達は驚く。
空間を無理矢理壊して、それは現れた。
禍々しいのに、その背中を見たとき、装者達は安心する。
「龍さん」
『ったく、出るのに苦労した』
現れたのはもはやドラゴン。どっから見ても悪しきドラゴンなのだが、怖いとかそんなことはなかった。
『んじゃま、歌い手なんだから歌え、アドリビトム面々、俺を足場ってッ、誰かすでに背中上ってるなッ!?』
巨大なドラゴンを足場に、第二ラウンドと言わんばかりに戦う準備する面々に、龍は文句を言うが、まあいいと呟く。
「みなさん、力貸してくださいッ」
「おおっ、異世界のかわい子ちゃんに頼まれちゃ、お兄さんがんばるしかないねぇ」
「あんたはいつもがんなっ」
「がんばろうねっ」
全員が乗り、セレナが剣を構える。ゲーデに乗りながら、セレナが、
「・・・ちなみに、スカートの中見えてないよね?」
『見えるかッ』
そんなことをいいながら、そして、
『全力で飛翔するッ、その瞬間全部の力で殺れッ』
『おうッ』
「わかりましたッ」
原初の負が闇を、セレナが光り、響は歌を纏いながら飛翔する。
バルバトスはそれを真っ向から砕くと、武器を構える。
そして、
一人の凶戦士と、仲間を持つ闇がぶつかり合う光景を見ながら、
「・・・私は・・・」
静かに涙を流しながら、
「ただ世界を、救いたかっただけなのに・・・」
間違いに気づき、膝をつく。
砕けた上半身がまだ動くが、闇のドラゴンが姿を化し、人の姿になる。
その姿はまるで、
『闇のディセンダー・・・』
オリジンはそうつぶやき、バルバトスを砕く。
その後何名か海に見捨て、何名かを髪の毛で守るゲーデであった。
こうして、異世界の希望と絶望の争いは、希望の絶望が勝利を収めた。
暗闇の中、それは自分を食べていた。
なぜ? だって、自分がいれば、あれを壊すのだから仕方ない。
星々を見上げては、自分を食べ続けた。
そして静かに、それから遠ざかる。
触れたかった、側にいて欲しかった。
だけどだめだ。壊してしまうから、だから背を向けた。
そしていつからか、いつの頃かわからない。
黒はいつの間にか、人になった。
誰にも分からない、奇跡か絶望か。
オリジンを始めとした、世界の意志は、その判断は人に任せた。
次回完結、お読みいただきありがとうございます。