やんでれ×ユウナっ!   作:れろれーろ

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第二話

やんでれ×ユウナっ!

 

そのに。

 

 

 

 

 

 

 

俺はあの時、人一人の命の価値をもっと軽視すべきだったのだ。

 

ぼーっと焚き火を見詰めながら俺は自分の愚行を責めた。自分の生来の人の良さが憎い。

 

 

____

 

ドガンッ!

 

でかい化け物を鮮やかに倒した後、突然ザナルカンドの地面が揺れた。上空に突然怪物が現れて、竜巻みたいに周囲の物を巻き上げだした。

 

 

俺は地面に伏せる。しかし、アーロンは格好をつけてスカして立った状態のままだった。

 

 

いやな。もちろん俺も「危ないぞ」とか注意しようと思ったんだよ。格好付けるのと命を大事にするの、どっちが大事なのって。

 

それでもさ。あのオッサン俺の前でスカして人を見下した様な笑いを浮かべてたのよ。あの目は腹立ったよなあ。

 

そりゃあTPOもわきまえずそんな事してたら、いきなり大きな石の塊が飛んできて、あのオッサンが横殴りにされるのも「ぐはっ!」必然の出来事だったんだよな。

 

しかも…その後はもうひどかった。

 

あの一際大きな怪物が街の瓦礫諸共、人間を吸い込んでるみたいだから、早く逃げないといけないのに。アーロンは這いあがって来るのが遅いどころか「先に行くぞ!」って俺が走り出すと「待て!ティーダ!」と来たもんだ。

 

「俺の屍を越えていけ」位の事言えないのかね。俺別に最初から置いて行こうなんて考えて無かったじゃん。

 

状況はこうだ。あまりの哀れさからつい俺はアーロンに手を差し伸べてしまったんだよ。隣人に手を差し伸べよ。とか言うけど博愛主義者でもここまで出来ないだろう。

 

それなのに「…自分で立ち上がれる」って言って手取らなかったんすよ?

 

素直じゃなさすぎる。将来場末の老人ホームにぶちこんでやろうと思ってたけど、あのコミュニケーション能力じゃ孤老になりかねない。将棋の輪にすら入れてもらえないだろう。やはり俺が一生保護するしかないのか。くそっ!世間体さえ無かったら!

 

 

「はぁ…」

 

パチッ。パチッ。

 

俺はため息と共に焚き火を憂いた瞳で見つめる。ちなみに今は半裸だ。濡れた服を乾かしている。セクシーな裸体と定評のある俺の体も見せる女がいなければ意味がない。

 

ちょっと寂しかった。

 

「くそぅ…アーロンめ…」

 

あの時。化け物の腹に巨大な眼球の様なものが現れた後、俺の意識は途切れた。その一瞬の間、アーロンが何かを俺に言っていた気がするけど無視したから覚えていない。夢の中では自分はお魚さんになるような夢を見た気がする。どうせなるなら深海魚より熱帯魚になりたかった。イルカさんと超音波でお喋りしたい。

 

「……。」

 

暇だ。今更だけど一体どこだよ、此処。

 

何かの古い遺跡みたいだし、人のいる気配が全くしない。

 

「まさか一生このままなんて事無いよな」

 

そう呟いた瞬間に背筋に寒気が走った。自分がいわゆる漂流者になってしまったのを実感してしまった。いかん。正直弱気になる。

 

やっぱりこれからSOSサインを出したり、狩りや釣りをする技術を学んだり、石板に漂流日数を彫ったりしなくてはいけないんだろうか。キャンプはともかくサバイバルとかやった事が無い。できる自信もない。ありえない。そんなの___

 

「ありえないっすよ…」

 

さすがに悪い想像しか浮かばなくて、思わず上を仰ぎみた瞬間だった。

 

「ホヨシミウオマガエガ!」

 

「うおっ!」

 

突然背後で知らないイントネーションの声がした。

 

慌てて振り返る。状況は分からない。分からないけど、きっと誰かが助けに来てくれたに違いない。そう都合良く思った。だから期待を込めて俺は自然と満面の笑顔を作っていた。

 

けど駄目だった。コンマ二秒で顔が崩れた。

 

「ハンベヨンハソヨノシミウ!ワタキミタユレ!」

 

だってその先にはガスマスク。見慣れないガスマスク集団がいたんだよ。しかも全身タイツ…変態さんかよクソが!お呼びじゃねえよ!

 

「フゾルハ!!」

 

「なんだこらぁ!ざけんじゃねえぞ!…ざけんじゃねえぞ!」

 

何故か二回言ってしまった。ポキャブラリーが枯渇している。俺の頭も大概オーバーヒートしているみたいだ。

 

いかん!COOLになれ俺!これはチャンスだ、この機を逃すな!人類を発展させてきたコミュニケーションの文化を信じるんだ!

 

「ゴフキセヨンハソヨノシミウ!ミネ!」

 

「え?何言ってんの!?分かんないって!」

 

「フゾルハ!」

 

どうやら外人らしい。言葉がチンプンカンプンだ。大声を出して身振り手振りで俺は、抵抗の意志が無い民間人だと何とか伝えようとしてみた。

 

「フゾルハソミセミウ!」

 

駄目だ。何故か怒ってるっぽいっすよ!この遺跡が謎のウホウホ部族の聖地で一歩入ったら怒られて、生け贄の皿に裸体盛り直行コースとかのアレな流れも想像している内に

 

「ヤコオガ!」

 

男達の中の一人が突然倒れた。何が起こったか確認する瞬間には既に____ガスマスク集団の背後から飛び上がったモンスターが俺の目の前に現れた。

 

 

キシャゥ!!

 

耳の痛くなる程の高い奇声。甲殻類を思わせるハサミを振り上げて俺に飛びかかる_____!「っ!」

 

 

ガイン!と俺の剣が鳴った。急に襲ってきたもんだから綺麗に受けきれなくて足がふらつく。

 

「この野郎っ!」

 

攻撃をしかけ、また攻撃を受ける。周りの男達も直ぐ火炎放射機っぽいのを構える。でも魔物の動きが素早くて狙いが定まらない様に見えた。ちくしょう!掛け声上げて一斉に打てよ!数打ちゃ当たるって偉い人が言ってたよ!

 

 

「調子乗んなよ!化け物!」

 

 

魔物の動きに合わせて、振るった剣はガチンと関節部の急所に入った。カタルシスの崩壊を下半身のジョイスティックでビクンと感じながら、虫の化け物を追う。斬る。突く。目を突き刺して蹴り飛ばした所で、化け物は動きを止めて倒れた。

 

天に召されたようだ。思ったより雑魚で、ちょっと欲求不満だ。この熱くイキり立ったモノをどうしてくれると言うんだ。オラ、舐めろよ。そのイヤラシイ触覚は飾りか?

 

「こんにちは!私の名前はティーダです!」

 

俺はテンションそのまま男達の方は振り返った。

 

今宵は血に飢えるぜと言わんばかりに脅してやろうかとも思ったけど、すぐさま剣を捨てて抵抗の意志が無い事を見せた。

 

文明の利器に立ち向かう気が無い以前に、争いは憎しみを産み憎しみは連鎖するからだ。俺はあやうく過ちを犯してしまう所だった。

 

「ホヨヤベ!(そこまで!)」

 

男達が火炎放射機っぽいのを俺に構えなおした瞬間、若い女の声がした。何を言ってるかサッパリだったけど、男達が銃を下ろした事で状況は好転したと悟った。助かった…。

 

カツカツ…

 

若いボディスーツ女がグイグイと近づいてきて、俺の周りをぐるっと一周回る。その間ハンズアップしたまま娘を見つめる。安産型だね。

 

「ふーん」

 

じろじろと遠慮無しに見られる状況に興奮しそうになりながら

 

「あんたの…名前は?」

 

と逆に俺は質問をした。

 

「え?」

 

金髪の女は口を半開きにして怪訝な表情を浮かべて、俺に視線を送る。そそる。

 

質問をした理由は、要するに名前を交換する事で俺の存在を認めてもらう為だ。

 

相手の事を日常的なプロセスを持って知る事で、相手を無碍にし辛くなる。この技術は違法駐車をめぐる家主の騒動の話から来ている。警官みたいに一方的に注意するより、顔見知りになって駐車場所を変える様に「お願い」をする方が効果があると聞く。

 

こんな状況でロマンスを求めるほど俺は馬鹿じゃない。悪ふざけももってのほかだ。ああ、教えてくれた近所のおばさん、ありがとう。今度の井戸端会議ではそのちぢれたパンチパーマを優しく撫でてやるよ。

 

…あ、言葉通じないんだっけ。

 

「リュッーク!」

 

「ワシチマガヤッセセ!(兄貴は黙ってて!)」

 

「リュック?」

 

モヒカンの男の叫んだ女の名前らしい単語を反復してみた。

 

「そう。リュック」

 

金髪の女は「絶対絶命のピーンッチから君を助けてあげちゃう…」ゴーグルをスチャッと勢いよく上げると

 

「良い女の名前だよっ!」と綺麗に笑った。

 

 

 

 

 

_________テンション上がってきたよ。俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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