奇・・ドラゴンクエスト1の続き   作:ケット

16 / 54
〈ロトの子孫〉の祖

 大灯台の島の、座礁させた客船の近くの荒れた海岸には、次々と建物ができている。

 病院や学校も船から出てちゃんとした設備が整ってきているし、瓜生が〈上の世界〉から持ってきた家畜や作物の試験農牧場もできている。

 学校には、多様な気候に分散しているロト一族の子供たちが、まちまちな農閑期に呼ばれては集中的な勉強もしている。

 ジジにモシャスの特訓を受け、それからミュージカルの特訓と続いていたケエラが、久々にダンカと同じ教室に入って、

「うひゃあっ!」と大声を出し、激しく息をついた。

「ひ、久しぶり」と、ダンカ。

「ひっさし、ケエラ!」と、前からのクラスメートたちも押し寄せてくる。

 ダンカは、ネクタイのように首に下がった木の棒をいじっている。これがあるとケンカ禁止なので、逆にみんな軽く頭をはたいたり色々する。

 ジニが珍しく教室に入ってくるのを見て、男子が色めき立つ。ケエラが怒って、何も持っていない銃を乱射するふりをする。

「今日は循環系の解剖学と基礎水力学、同時にやるぞ。数学的準備の宿題はやってきたか?」と、瓜生。

 みながわらわらと、宿題のレポートを渡す。

 ジニが渡したのは、前の課題である。八進法、ゼロから7までの数字を、二進法で図案化したものだ。要するに、小文字の「m」の山を三つにして、山を上に出っ張らせるか普通に低くするかで表現する。それなら素早い筆記が可能で、OCRで間違えることもない。

「さて、まず。液体で一番大切なことは、液体は圧力をかけても変形はするが、気体のように体積を変えたりしないとみなせる、ってことだ。要するに合計体積は常に等しい。そしてパスカルの原理、というかそれはなんだ?」

「ええと、内部のどこにも、同じ圧力がかかります」ケエラが答える。

「圧力とは?」瓜生の一言。

 それに口ごもるのを、ダンカが「面積あたりの力、だろ」とフォローする。

「自分で言うんだな、女の子をかばうのはいいが。その面積といっても、ミクロではどんなことがおきている?言っておくが、固体も液体も原子でできてるんだぞ」瓜生の言葉に、皆が笑う。

「パスカルの原理を拡張すると、液体内部も、任意の微小面に、圧力はあるとみなせる。それを足し合わせることでその場の圧力を出せる。

 また、流れも同様に微小流の集まりとして扱える。後で流体力学やるときには重要だ。

 さて、人体に行こう。人体も、ご存知の通りどこを切っても血が出る。液体が詰まってる。そしてその液体も、要するに減らないんだ。静脈から体組織に流れこんだ血は、どこに行くのか……おれの故郷の昔の人は、なくなるって思ってた人もいる。

 だが、単純に『なわけねーだろ、流れた液はどっかから出てきてるはずだ』って思った人がいた。それをやってみた人もいた。というわけで、やってみるか。家畜処理見学して、ちょっと実害のない実験をさせてもらおう」

 その言葉に、全員やっほー、と喜びの絶叫が上がった。

「私は」ジニが何か言いたがる。

「そんな暇があったら工場行きたい、か。でもこっちを見るのも何かの役に立つかもしれない。ついでにこれでもやってろ」と、瓜生はジニに流体力学の教科書を渡す。

 教室移動も、集団組織作りの教育はしっかりできている。まず十人集まり、四人ずつの小班が二班、それを班長と副長が率いて、副長が主に連絡を担当する。〈ロトの子孫〉の四人一組と〈ロトの民〉の騎馬十騎編成の複合と言うべきか。

 一度班が集まって公と宣言されれば、全員気持ちを切り替える。実戦を覚えている〈ロトの子孫〉が、真剣に取り組むことを伝えてしまう。

「全員騎乗!」

〈ロトの民〉の号令で、全員が竜馬に飛び乗る。〈ロトの子孫〉の子供たちは、竜王に封じられている数年間は乗馬を学べなかったので、少しおっかなびっくりだ。でもアロンドが竜王を倒してから、一年以上でもうみんな大分慣れている。

 ケエラがまだ、馬を怖がっているのを、軽くダンカが馬の首筋を叩いた。

 馬と言っても、前近代文明にありがちな小型馬ではない。角があり、瓜生の故郷の最大種ぐらい、肩高さ2mは軽くある。

「だ、だいじょ」

「馬の上では素直になれ」ダンカの言葉に、ケエラが真っ赤になって、馬のたてがみに顔をうずめた。

「バカ」

 それだけ言って駆け出そうとするのを、班長がしっかり手綱をつかんだ。

「馬の力を借りるんだ。馬は感情を抑えてくれるから。馬と一緒に息をしてみろ、足から呼吸を感じるだろう?」

 それで、ケエラが落ち着いてダンカの顔を見て、彼がジニを見ているのに気がついてまた腹が立つ悪循環。

 

 殺して血抜きをした子セロの、動脈に色水を入れて静脈のほうから流れてくるのを見た。逆に水を入れようとしてうまくいかないことと、静脈の弁を確認した。また心臓を解剖して複雑な弁を確認して、それと人工物であるポンプの弁を比較したりもした。

「弁は液体関係では重要だからな。この構造をよく見ておけ」

 それから、無害だが色がついてしまった家畜の肉はそのまま買い上げて、生徒全員で食べることにする、と瓜生が宣言すると、生徒たちは大喜びで叫んでいた。

 だが、ジニだけはそれにもろくに関心を持っていない。

「ジニ、あんたは何が嬉しいの?」ケエラが聞く。

「工場を見ること」それだけ、美しすぎる天才は応えた。最初は彼女は、普通の受け答えはできていなかった。

「見たい」ケエラがじとっとジニを見る。

「おれも」というダンカを、ケエラがにらんだ。

「四時間目の自由選択授業、いいわね」ケエラの命令口調にダンカがうなずく。

「わかった」とだけ、ジニはいって流体力学の教科書を全部手書きで写し終わり、それから問題演習をハイペースで解いていき、今度は別の問題……似た方程式が出てくる分野の、式変形の流れ……を書き出して、自分で問題を作っては解いていた。

 ケエラはなんとかダンカとケンカしようとしていたが、なかなかリズムが合わず、じたばたしているのを抑えられていた。

 だが、家畜を解体して骨髄も全部取り出し、料理する大変な作業を始めていると、もううまそうな香りに夢中でそれどころではなくなった。

 おいしい肉をたっぷり食べて、次の授業が始まる。

 

 四時間目、ジニと、大人たちも含めて、かなり大きな工場に向かう。

 その隣では、大型のディーゼル発電所すら動き、激しい音がしている。

 若者たちが忙しく、本を片手に働いている。ジニはいそいそと着替えた。

 瓜生がすべての機械と材料を出してロト一族の若者たちが再構成している、AK-74の工場。

 プレス機。旋盤。木材加工機械。ベークライト工場。その全て、もちろん他のロト一族にとっても圧倒的だったが、特に工学の才に優れたジニにとってはそれはディズニーランドに他ならなかった。

 この世界でアレフガルドの人々、ムーンペタなど各地の人々が、また〈ロトの民〉が作っている鋼の剣の鋼材と、瓜生が出してきたロシアの銃身用鋼材の差を、さまざまな方法で比較している。

 合同な棒にして、曲げたり引っ張ったり、削ったり、薄く切って顕微鏡で見たり。加熱して分光してみたり。

 その段階から、鋼そのものの質を評価することから、ジニは夢中になっている。

 ケエラもダンカも、他のクラスメートも、その激しい音と鉄の機械の雰囲気に、ただただ圧倒された。

 ジニは彼らに目もくれず、フライス盤に飛びついて、何十種類も先端を交換してはさまざまな鋼材でいろいろな削り方を試し、背のAK-74を分解した部品と比較し、いくつかの計測器具で精密に測り始めている。

 

「ウリエル先生」ケエラが、ジニを迎えに来た瓜生に聞いた。

「質問は原則手紙だよ」と言うが、瓜生は椅子に座ってジニを待っている。過労に倒れそうになって。

「あなたは、勇者ロトことミカエラさまと共にゾーマを倒した、あのウリエル様なのですか?」ケエラが、勇気を振り絞るように言った。

「その噂は、聞いてる。同じ賢者で、同じ能力を持ってる」と、ダンカ。

 瓜生はしばし目を閉じた。

「その問いには答えない。かわりに、こう言おう。そうであってもなくても、問題ではない。あの世界の商品を出すことができても、賢者でも、ロトの掟を破ったらおれは君たちの敵だ。

 顔と遺伝子がアロンド様でも、ミカエラ女王さまでも、ロトの掟を破ったら偽勇者だ。全力で倒すべき相手だ。

 聞いているだろう?勇者ロト、ミカエラさまは、〈ロトの民〉の先祖である病人や、人を襲わない魔物も、姿形だけで判断し戦おうとはしなかった。何をするか、行動だけを見て、自分に敵対する相手、そして虐殺を命じた相手と戦った」

 ケエラとダンカは、その瓜生を見て、確信したようだった。

「あ、あと」しばらく、ケエラが口をつぐんで、言った。「ジジ先生と、結婚しているって噂は」

 瓜生は疲れていながら苦笑する。

「ジジ先生本人に聞いてみるんだな。大笑いされ、その笑い声がどんどん大きくなって、目が覚めたらキミら二人、すっぱだかで教室の真ん中で麻痺してるだろうけど」

 ケエラとダンカが真っ赤になる。

「あ、そういうことか。すまなかったな」瓜生の言葉に、もっと赤くなる。

 ダンカがごまかすように周囲を見回し、

「あ、あとジニとも噂が……養子とは名ばかりで、とか」

 ダンカの口から別の美少女の名が出たケエラが、なんだかむくれる表情になる。

「親がわりはレグラントさんとロムルさんだ。あの二人は素敵な人だよ」

 ダンカがうなずく。

「それに、ジニが夢中なのは、エヴァレスト・ガロアだけさ」と、くっくと瓜生は笑った。

 そこでケエラが強い反応を見せたのを見てそちらを向くと、しぶしぶといった表情でジニが戻ってきた。

「学んだか?」

 瓜生の言葉にうなずき、ポンチョの端に触れる。

 瓜生はさっと手に身長より長い両手剣を出すと、ジニもろとも消えた。

「じゃ、おれも、こっちで武術の補講だから」ダンカがケエラを見る。

「あたしも、ジジ先生にモシャスの」ケエラが言って、ダンカに何かいいたそうにして、工場から座礁した船までの短い道を見る。

 ダンカが早足で歩き出す、その背を、ケエラは一瞬手だけライフルを構えて撃ち抜き、そのまま追った。

 

 ロンダルキア。魔物たち。十メートルは軽くあるサイクロプス。銀の毛皮で強力な魔法を使うシルバーデビル。前に瓜生たちが来たときは、メルカバ重戦車の火力ですら通用せず、ミカエラの剣でやっと切り抜けたことも何度もある。

 アロンドとアダンの圧倒的な強さでなければ、サデルやムツキでも苦戦ではすまなかっただろう。

 寒さ。まつ毛が凍りつき、わずかでも皮膚を露出させたら瞬時に凍結し、金属に触れればへばりつく。

 だが、雪上車が雪丘を乗り越え、襲う敵は熾炎の鳳凰、猛毒の蛇槍が次々と粉砕し、平然と前進する。

 そのほこらは、雪に埋もれているように見えた。気配を感じることができなければ、巨大な岩と思って見落としていただろう。

 いつの間にか、ついてきていたはずのハーゴンの姿がない。

 氷に封じられた扉が、内から自然に開く。内部は暖かく、旅の扉を守るだけの、神聖な雰囲気のものだった。

 戸口で山彦の笛を吹くと、繰り返し音が響き渡る。

 気がつくと、男がいた。

(生きた生身の人ではない)アロンドはまず気がつく。かなりの実力者だとも。

『よく来たな、わが子孫よ』この世のものではない、電波の悪い携帯電話のような声が響く。

「あなたは」サデルが、信じられないものを見ているような表情。

「知っているのか?」と聞くアロンドにあおざめながら、

「ミカエル様の写真を、見たことがあるのです」

『その、ミカエルだ』と、また声。

〈ロトの子孫〉。

 勇者ロトことミカエラは、〈上の世界〉でネクロゴンド王国を再興し女王となった。

 夫であり、ともにゾーマを倒した仲間であり、アリアハン王家の血を引くラファエルとの間に、双子の王子が授かった。

 双子は忌まれるため、一方は遠くへ……双子の一方である赤子ラファエル二世はミカエラの王位を継ぐため〈上の世界〉に残り、かたわれの赤子ミカエルは、ゾーマを倒した仲間である賢者ガブリエラ、ミカエラの祖父ボルヘス、そしてミカエラに特に強い恩義を感じる男女十数人とともに、〈下の世界〉に行った。

 瓜生に医術を習った医者がいた。サマンオサの地下牢からミカエラに救われ、ラファエルにゾーマ由来の奥儀を教わった武闘家がいた。水田・味噌・納豆の技術を手につけたジパングの男女がいた。

 二度と戻れぬ移住。アレフガルドの人々からも身分を隠し、赤子を育てるためだけに。

 時々〈ロトの民〉と交流することもあったが、ゾーマの予言を考え隔たりを持ったまま。

 ミカエルが少し大きくなったら、デルコンダル統一のため戦っていた、ミカエラの叔父……実父であった可能性もある……カンダタのところを訪れて剣術を習ったこともある。

 カンダタの部下だったジジも、デルコンダルで戦いつつ、自分たちの利益にもなるときには〈ロトの子孫〉〈ロトの民〉が、世界各地と交易をし、情報を得られるよう諜報組織の礎を築くのに協力した。また、ガブリエラの恋人であった吟遊詩人ガライも、瓜生が残した大量のCDを聞き、ガライの町を拡大しながら芸能による情報収集を担う、〈ロトの子孫〉と半ば一体になる一族を築いた。

 成長したミカエルは優れた剣技、美貌、そして瓜生由来の医術を身につけ、半ば隠れて生きた。〈下の世界〉に移住し、彼を育てた人々は、高い医療技術を瓜生から受け継いでおり、それを子供たちにも教えたのだ。

 ミカエルは第二世代の女子全員に、何人も子を産ませた。高い医療水準で、母も子も死ぬことなく。

 産み分け技術で、第一世代の多くの夫婦は、最初の二人は女子を産み、それから十年ほど間を開けてから男子を産んだ。ミカエルの同世代は女子ばかり。その弟たちは十歳ほど年が離れており、成長してミカエルの娘たちをめとった。

 大半がミカエラの、またラファエルの血を引く〈ロトの子孫〉。組織を築いたのはガブリエラだが、血の祖はミカエルに他ならない。

 その、もう百何十歳にもなるミカエルが、いた。ミカエラに、そしてアロンドによく似た、若く美しい男。

「多くの子をなし、医者と剣術教師として隠れすごし、そして何十年も前に高齢で亡くなったと長老たちにはうかがっています!」とサデルが、恐怖と畏れに叫んだ。

『もう、人生が終わりだって知ったとき、思ったんだ。種馬だぞ?あっちでは、同じ血を引くかたわれが王様なんだ……そう思うとたまらなくて、魔法で死を装って、旅に出たんだ。あの洞窟を抜け、ロンダルキアにたどりついて、気がついたらこの姿さ。眠っていたのか生きていたのかも知らない』

「なんということ」と、サデルが怯えた。「とてつもない強さがなければ、生身であの洞窟を抜けて、ここに来るなんて。半ば神になるなんて、できない」

『その鎧と、兜。お前、勇者の称号を受けたな?名前は?誰の子だ?』ミカエルの目が鋭くアロンドに刺さる。

「はい、受けました。アロンド、本名はメタトロン」

「ラファエラの子、ラファエラはサンダルホンとウリエラの子です。私はサデル、サンダルホンの娘ウリエラの子です」

『玄孫ってわけか。俺だって、勇者になれたはずなんだ!その資質はあったはずなんだ』夢幻の咆哮が、ほこらを、ロンダルキアの魔の大地を揺るがす。それはアダンの激しさを思わせた。

「私、わたしも、勇者になりたかった!それに、アスファエル最長老も、竜王の出現が二十年早ければ自分が、と」サデルが叫び、涙ぐむ。

『だよなあ。まあいい、用は、そう、夢で精霊ルビスさまに聞いた気がする。これだな』と、ミカエルの手に太陽の紋章が輝く。

「はい」

『やるよ。だが、しくじったらすぐ取り上げて、また眠れない大陸に戻すからな』

「はい」

『残り四枚は持ってるか?こんなとこ来たのは最後だよな』

「はい」と、アロンドは四枚の紋章を見せる。

『じゃ、ルビスの神殿に行け。炎のほこらからほぼ真北にある』

「はい、ありがとうございます」

『あの大陸の解放を発表するため、諸国から何十人も有力者を迎えろって精霊ルビスさまが言ってる。それだけじゃなく、俺が呼んで加えてやる、何百人もあちこちの世界から。二十日間、うまくもてなして、思いっきり楽しませてやれ』

「はい」アロンドは動じない。サデルは慌てている。

 ミカエルの幻はふっと微笑し、アロンドにカードを渡した。そして突然強い目になり、

『勝負してくれ』

「はい」アロンドは平然としている。

『わかってるんだ、勝手なんだって。向こうの、俺の弟のラファエルは、俺より辛い一生を送ったんだろうって。淋しいのは俺だけじゃなかったって。美女三十人のハーレムなんて最高にうらやましい人生だろう、って』

「それに、医者としても何百人も救われたと聞いています」アロンドがつけ加える。

『でも、こんな姿になっちまったんだ』

「受け止めさせてください」アロンドは、まっすぐにミカエルの目を見る。

『じゃ、こっち来てくれ。オフクロたちの魔力で聖なるほこらにされてるここじゃ、会話はできるが実体化できない』

 ミカエルがそういうと、皆を誘う。

 アロンドは静かに出る。その左右をしっかりアダンとサデルが守る。

 そして、ミカエルの軽い目配せから、ルーラ。

 着いた先は、おどろおどろしい魔の城だった。実体はない、ひたすら巨大な力が、頑丈な門……それも実体ではなく、巨大な魔神力の門から噴出している。

 それを、すさまじい稲妻の力が封じている。

『百何十年前に、オフクロたちが封じたんだ。あと百年ぐらいはもつだろ。ここでなら……』と、ミカエルが静かに、門に手を伸ばした。

「さあ、ごゆっくり。審判はしますよ。ケケケ」と、いつの間にか戻っていたハーゴンが笑う。

 ミカエルの手にもいつしか美しい剣が握られていた。

「隼の剣」サデルがつぶやく。

『おまえも同じ剣を持っているな、やってみるか?』

「は、はい、光栄です」と、サデルが隼の剣を抜き、構える。

 無造作に歩み寄ったミカエルとサデルが、激しく切り結んだ。

 実力では、アロンド以外の〈ロトの子孫〉で最強と呼ばれ、竜王を倒した後も多くの魔と戦ってきたサデルだが、ミカエルは互角だった。いや、しばらく互角に見えた。

 サデルの額に、この極寒のロンダルキアで、じっとりと汗がにじむ。

「メラゾーマ!」一瞬下がって大呪文を放ち、同時に飛びこんで二閃を同時に放つ。

 その三発同時を、ミカエルは螺旋を描く突きひとつで消し去り、サデルの左太腿を貫いていた。

「う」

 ミカエルが、悲しそうに微笑む。

『いい腕だったぜ』

「つ、強い……これほどの強さで、倒すべき敵も好敵手もいないなんて」サデルが激しい痛みと悲しみに、頬をゆがめる。

 その彼女にベホマをかけたアロンドが、立つ。その右手から、短い稲妻の刃が伸びている。

「お願いします」

 ミカエルは呪文を唱え、ギガデインを剣にまとわせて大上段にふりかぶる。表情がふっと、消えた。

 アロンドが無造作に歩み寄り、一瞬で激しい雷電が雪天に十字架を描く。

『やられたな。雷神剣か……とんでもねえ、なんて強さだ……』

 その姿が、柔らかく薄れていく。

『一つの手加減もなし、嬉しいぜ。その強さじゃ、ゾーマだろうとスライム扱いできるんじゃないか?』

「はい。ですが、私が修行した場の人たちから見れば、私こそスライム扱い、ですよ」特に、孫悟空と孫悟飯親子を思い出す。桁外れどころではない。

『上には上がいる、か。そっちにも行ってみたかったぜ……ぼっちに、なっちまうんだな、そんな強さじゃ』

「強さ、では。でも、もっと大変なことがあります。ローラを、子を、みんなを幸せにする。どんなに強くても、できるかどうかわからない大変なことが」

『そっか。ありがとな。封印を強化して帰れ、それと、気をつけろ、そこにいるハ』続きを言えず、ミカエルの姿は薄れ、消えうせていった。

 あとは、稲妻の鎖に封印された魔城がそびえるだけ。

「少し、封印を強化しておく。雷電の武器を用いるようだ」

 と言うと、アロンドは自らの手首を少し切って、血を撒いた。

「私の心身には、雷神剣が一体化している……最大限に魔力を拡大して」

 一瞬、アロンドの姿が魔城よりも巨大にそびえるように見える。

 全天が凄まじい稲妻に輝き、封印を押し包み激しく美しい輝きで彩らせた。

 その魔力の凄まじさは、サデルは見ただけで気絶するほどだった。




リアル「炎の孕ませ お医者さんと三十人の美少女幼なじみ」
どう見ても、上の世界で王様やって暮らした兄弟より勝ち組です。まあそっちには両親がいますが、こっちも小さい頃は曾祖父に育てられ、大叔父(祖父?)のカンダタとも会ってました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。