奇・・ドラゴンクエスト1の続き   作:ケット

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 霧が出た。

 それは、普段の霧とは全く違った。

 白い塊が押し寄せてくるようだった。

 竜の警告は他の開拓村にもあった。また、ザハンから通って耕していた人たちも、霧の恐怖を語り伝えていた。とにかく霧に呑まれたら誰も助からない、と。

 避難訓練は徹底していた。

 家畜は担げる最低限だけは担ぎ、それ以外は斜面に掘った仮倉庫に隠し、一度来てくれたサデルがマホカトールで封じた扉を閉めて、人は全員大灯台の島にルーラ。

 全員を探し当て、強引にひっくくるのに、ダンカは最後まで竜馬で走り回った。姿を見なかったケエラを探してギリギリまで走り回り、そして姉に捕まってキメラの翼で跳ばされたが、泣きわめいていた。

 後にケエラは学校で居残りをしていたことが判明したが……

 

 霧が迫る、まだゲルでしかないローレシア王宮には、少人数だけが残っていた。

 アロンド、アダン、瓜生、竜女、ジジ、サデルの六人。

 アロンドとアダン、竜女の三人が生身。

 瓜生は一人で射撃・操縦を兼ねられるよう、遠隔砲塔に改装したM2ブラッドレー歩兵戦闘車に乗っている。ジジとサデルも、ハッチからいつでも飛び出せるよう身構えている。

 サデルの手には隼の剣とAK-74。威力より使い慣れていること、軽さを優先した。

 加えて、戦車の操縦に優れ、全員ルーラは使えるロト一族が十四人。メルカバと87式自走高射機関砲が二両ずつ。

 ゴールキーパー対空システムが三つ、王宮周辺の地盤が頑丈な高台をコンクリートで固めて設置され、膨大な弾薬を抱え瓜生のノートパソコンにつながっている。

 それだけで、城壁は不要だ。モンゴル帝国全軍やダースドラゴン百匹が攻めてきても全滅させられる。

「警告は受けているが、何が来るかはわからない」静かにアロンドが言う。

「腹ごしらえはすんでるわよ」とジジ。

 強力な魔法使いたちが、ミナカトールを張って備える。

 霧が来た。白い闇。

 それはわかっていた。瓜生が赤外線に切り替える。

「レーダーは?」と、瓜生が対空自走砲と無線連絡し、目をノートパソコンの画面に近づけてゴールキーパーのレーダー情報を確認する。

「ロトの掟は忘れるなよ。先制攻撃はしない」というアロンドに、ジジが「いつもうるさいんだから」と笑い飛ばす。

「霧そのものは、中性。普通の水微粒子だな」と、瓜生が車外に用意した分析機器のデータを遠隔で見る。

「でも、魔法がかかってる。普通ならこんな霧、遠くまでは出ないけど、ルビスがかけたこの大陸の結界全体に広がってる」と、ジジが言い添える。

「む?巨大だな」と、レーダーを見た瓜生がいぶかる。

「どれぐらい?」聞くジジに、〈上の世界〉の言葉で答える。

「まさかあ」

「高さだけで500mか……故障じゃないだろうな」と、瓜生は日本語で言い直し、別のレーダーも確認する。

「こ、これ」サデルの、震え声。

「無理せず戻れ。今回は小手調べだ、死なないことが最優先」とアロンド。すでに指揮官の声だ。

 くん、と一瞬アダンが鼻を空に向け、「散れ!」と絶叫した。

 同時に、対空レーダーがそれを認識し、瓜生が戦車隊に叫ぶ。

 竜女が巨大なダースドラゴンに戻った。

 一気に、戦車と巨竜が時速五十キロで四方にダッシュする。

 そこに、100mはある塊が高速で落下した。

 アロンドだけを狙って。

 霧の中、かすかな光。音は霧に吸収されている。

 対空レーダーが至近距離に、巨大な姿を浮かび上がらせている。20mはある何かから伸びた何かが、一瞬でメルカバの一台をつかまえ、軽々とひっくり返した。

 乗員四人が後方ハッチから脱出し、ルーラで逃げようとしたが、一人が寸前に深く切られた。

 くずおれそうになるのを、人の姿に戻った竜女がバシルーラで逃がした。無論それは霧の中、他の者には何一つ見えはしない。

 そして竜女を、四方八方から見えない刃が襲う。

 何か、何かとしか言いようがない。対NBC水準で密封し、カメラは霧しか見えない。

 ほんの一瞬、無数のトゲが浮いた棒が見えることはある。

 ほんのわずかに、黒い影が高速で見える。

 ケンタウロスのような姿の影が、駆け巡っている。変形したアダンにまたがったアロンドだ。

 乱射していた対空戦車の一台から激しい悲鳴。

「退避しろ!」と瓜生が叫ぶ。

「どこ?」と聞くジジを抱えてハッチを空け、「ルーラで逃げろ」とサデルに命ずる。

 サデルは迷いなく従った。

 そして両手剣を手に出した瓜生は一瞬消えて、対空戦車の脇に立つと切れぬものなき剣をふるって、何かに穴を開けられた装甲を切り破り、乗員を露出させる。

 全身を何か小さい虫に食われて絶叫する乗員が三人見え、ジジが呪文を唱えると三人が一瞬表情を消し、ルーラを唱えて消える。

「おまえも、危険だ」と瓜生が言うが、ジジがにっこり笑ってブラッドレーのところにルーラで戻る。

 あとは目に見えていないが、魔法でわかった。瓜生が得意とする、ドラゴラムの応用でブラッドレーと融合したのだ。

 瓜生も即座にメルカバをもう一両出し、融合する。ここで生身でいるのは危険すぎる。

 竜の魂が機械と融合し、あらゆる通信をそのまま受け取る。それが、三台のゴールキーパーが伝える、超高速の敵の姿をつかみ通信で発砲を命じ、同時に炎を吐き120mm砲弾を連射した。

 ブラッドレーに変じていたジジから、他の普通人が乗っていた戦車の乗員を助け出し、ルーラさせたと連絡。そしてブラッドレーが、ものすごい速度で空に持ち上げられ破壊されるデータが入った。

 だが、瓜生は動じない。もう彼の魂は竜だ、戦いしか頭にはない。鉄と炎、双方を爪にして。

 アダンとアロンドは、軽い失望を感じていた。

 確かに、ロンダルキアよりも数段強く厄介な魔物ばかり。何十メートルもある、鋭い毒牙を秘めた触手。高速で飛び交い触れれば何でも切断する糸。強靭なアゴでアルミ装甲を食い破った、昆虫とは全く違う数センチの虫。強酸を吐いて鉄装甲も溶かす空飛ぶ七本腕のヒトデ。そして、鋼でできた戦車より大きな体を何本もの脚で支え、凄まじい威力の鉄球を叩きつける何か。

 どれも、二人には一指も触れられない。

 近づけば高速の小虫も、アダンの髪が変じた毒蛇に食われる。金属より硬い塊が、雷光を帯びた一撃で粉砕される。巨大な獣が破壊の剣に斬られ、溶けるように自壊する。

 ダースドラゴンは苦戦していた。鋼に匹敵する鱗も頑丈なアゴを持つ小虫に食い破られ、内部から食い荒らされそうになる。その背に乗っていたジジがそれを確実に焼き焦がすが、逆にそれも痛い。

 痛みが怒りになり、理性を失いそうになるのを押しとどめ、高速で移動することで標的にならないようにする。

 少なくとも、巨大なイカのようなものに濃厚な炎を叩きつけ、食いちぎりあっていれば、余計なことは考えなくていい。

 瓜生が融合したメルカバも、飛ぶ怪物の吐く強酸に分厚い装甲を溶かされ、苦しみにうめいていた。

 限界が来ればメルカバを乗り捨て、遠距離に移動して新しい戦車を出してまた融合するが、それも数分持たない。

 

 戦いが続いていた中、アロンドたちは霧が来た西側に向けて移動していた。

 無論、ルーラ寸前まで霧を見ていた各地の開拓者や測量員が、今ルーラで退避した大灯台の島で霧のマッピングをしている。

 無線通信でそれを聞いていた瓜生/竜/メルカバMk4が、照明弾を発砲し、それは霧を隔ててもかすかに見えた。

 そして、引いていく霧を追ってアロンドたちは移動した。

 アロンド以外は、一度霧から離れて空母に戻り、ベホマをかけてもらってから、艦載機の後部座席に乗って。

 大陸からかなり離れていた空母の飛行甲板では、すでにF-18が十機スタンバイしていた。

 増槽を限界まで積んだスーパーホーネットたちが次々と、ガライの墓で経験済みのパイロットに操縦され飛び立ち、霧に入らないように霧を、アロンドを追う。

 アロンドの電波ビーコンを追って広い大陸を横切り、増槽を一つ、また一つ捨てる。

 その眼下、突然霧が消えた。

 そして、アロンドと馬の姿をとったアダンは、大陸の半分を横切ったところで、瞬時に霧が消えたのに苦笑していた。

 ただ、たまたま彼が見つけたものがある……旅の扉だ。

 調べてみると、それはベラヌール北の、封じられていた扉に通じていた。

 二人の横で、モシャスで変じていた怪物から元の姿に戻ったジジが、しれっと笑っていた。

 

 死者は三人。正確には行方不明だが、わずかな血痕が残るだけで絶望とされた。逃げ損ねた開拓民だ。

 戦車兵の多くは全身を小虫に食い破られたり、体半分を奇妙な口に食いちぎられたり、戦車を激しく叩かれて衝撃で体が潰れたりして、五人は世界樹の葉で増強したザオリクで復活させる必要があった。

 奇妙にも、負傷者の体内を食っていた虫は、霧の外に出ると瞬時に死んだようだ。

 家畜の被害は多かった。担いでルーラしたり、マホカトールで封じた穴の中にいたのは無事だったが、その暇がなかった開拓村も多い。

 アロンドたちが竜と話すと、大陸を闊歩する竜たちも、実は霧の時には魔法で魔の島や未開の地に逃げていたという。

 いくら殺されても瞬時に増殖できるスライム・グンタイアリ・大ネズミ・大ナメクジの類ぐらいしか、この大陸では生きていけないのだ。

 植物は、草木も貯蔵されていた作物も無事だった。

 




キング「霧」がモチーフで捏造設定が大量にくっついています。
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