奇・・ドラゴンクエスト1の続き   作:ケット

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哀都ムーンブルク

 美しかったムーンブルク王都だが、今は人も少なく、半ば廃墟となっている。

 半ば魔物となった軍勢が暴虐の限りを尽くし、多くの人は郊外に避難した。殺され、ゾンビとして軍勢に加わった者は二度と帰ってこない。

 憎悪と欲望に駆り立てられ、北に向かった若者たちもいる。

 王が殺され、テアハス女王と何人かの王弟が支配するようになってから、税も際限なく上がり、ほとんどわけもなく人は処刑され、また徴兵され、悲惨のきわみとなっている。

 そして苦しい生活は、すべてアロンドたちロト一族のせいだ、と何度も喧伝され、単純な者はそれを信じて憎悪に燃える。それでローレシア征討軍に加わり、帰ってこない者も多い。

 ガライ一族も逃げており、時たま侵入しては逆に宣伝して、追われては逃げる。首に賞金をつけて追討されており、かなり危険な任務だ。

 

 憎悪の象徴になっているのが、無残に焼けこげ今も異臭が漂う、巨大な離宮跡だ。

 ガラスや金属は略奪され、弔いも許されず串刺しになった死体が腐っていっている。

 放った火が燃料に引火して、攻めた人たちも多数死んだ。ロト一族は客たちを逃がし、戦い抜いた。そして離宮を作った時に雇い、使用人として、また兵士として訓練した人たちの半分はローレシアに避難させ、多くの犠牲は出たが撤退した。

 特にムーンペタの人々を避難させるときには、客船で訓練した人たちもザハンで耕していた人たちと並び、核になっている。

 焼けてしまえば、客船は鉄の塊だ。その鉄も略奪されているが、略奪しきれない。アルミニウムは錬金術師には金銀以上に貴重な金属だが、うかつに手を出すと群衆に殺される。

 本や機械もあり、それらをリバースエンジニアリングすれば相当な技術も得られただろう。だが、そのようなことをするのは近代的な考え方をする者だけだ。宗教的憎悪に支配された人々は、すべて焼き尽くし破壊し、ごみとなった残骸を奪うだけだ。

 

 憎しみに支配され、生贄を焼く煙が絶えぬ魔城となってしまったムーンブルク城が、突然統制を失った。

 王が死んだのち、テアハス王妃が女王となってはいたが、実権を握っていたのはハーゴンに操られたサマンエフ王弟だった。多くの貴族や庶民を生贄にして魔軍をローレシアに送り、恐怖と憎悪で支配していた。

 ハーゴンの石化と同時にそのサマンエフが狂い、おぞましい魔物となってテアハス女王を食い殺してしまった。

 もともと王弟たちや残った大貴族、僧侶、どれも恐怖と憎悪と欲望、妄執に狂った愚か者ばかり。ただ主導権を取ろうと争い……

 そこに、騎馬の疾風が襲った。

 中には、彼らを味方につけて王位につき、裏切ろうとしていた者もいた。

 憎悪に燃えて迎え撃つ、なかば魔物と化していた者もいた。恨みに満ちたバレヌラが率いる千人もない軍勢が、五万と宣伝されて迎撃に出撃した。

「この永遠のムーンブルク王城は落ちん」とおめく、傲慢で自分の見たいものしか見ない人たちも多かった。

 ゴッサたちは淡々と、圧倒的な戦力と機動力で攻撃してくる者は殺し、そうでない者は殺さず武装を解除し秩序を守らせた。

 バレヌラ率いる迎撃軍が西側に防衛線を張っていた。そこに東側からもムーンブルク城が襲われているという知らせ……偽情報を流して混乱させ、さらに戦闘ヘリのロケット弾で混乱をもっとひどくし、全員がAK-74をフルオートで連射しつつ突進する騎馬隊が蹂躙した。

 

 ムーンブルク城の城壁もロト一族にとって、もはやないも同然だった。重力呪文や攻撃ヘリ。メドローアを使いこなす上位魔法使いも十人はいる。

 城塞都市を住民ごと全滅させるほうが簡単だろう。だが、あくまで無辜の被害は一切容認せず、十分に警告し避難時間を与えてから城壁だけ破壊し、突撃。

 混乱の中を人馬一体・馬軍一体の精鋭が駆け抜け、暴走して無差別殺戮を起こしている魔物をRPG-7や上位呪文で確実に屠る。

 そのすさまじい戦闘力の前に虚脱し心を止めた人々が集められ、保護される。

 圧倒的な速度と大呪文の爆炎・凍結・稲妻、馬や竜の迫力は、思考力を奪う。さらにそのことを理解して、発煙手榴弾や閃光手榴弾を放つ。時には殺傷能力が出ないよう人がいないところにサーモバリック弾も使い分ける。

「暴れる魔物を無力化!ロトの掟は守れ、暴れない魔物は保護!」

 ゴッサの大音声と共に、騎馬隊が崩れた城壁を駆け抜け、城下町を駆け回って城内に飛びこむ。

 魔獣と化したサマンエフ王弟が人々を食い荒らしながら飛び出す、そこにいち早く駆けつけたゴッサとムツキが挑む。

 身分の上下を問わず恐怖に呆然としている民の前で、オークの上半身とバブーンの下半身が不気味につながり、頭髪が無数の蛇になった怪物に、馬を下りたムツキが閃光の拳を叩きこみ、離脱する。

 そこに竜に乗ったゴッサがすさまじい速度で突進し、稲妻をまとわせた剣で斬りつける。

 ムツキは別のオークを迎撃し、ゴッサが強力な呪文と魔法剣、そして背から外した20mm機関砲弾を放つボルトアクションライフルで戦い続ける。

 的確に手足をぶち抜いて弱らせ、マホトーンとマヌーサで戦闘力を奪い、自らの傷も構わず至近距離に手榴弾を放る。

 強大な槍を紙一重でかわしつつ突進、稲妻をまとわせた長剣で魔獣の腹を深く突き刺す。

 その大穴に、さらに巨大な銃をねじこんで20mm機関砲弾を三発ボルトアクションで連射。巨体が大きくえぐられ、三つ大穴が開く。

 ついに倒れる魔の巨体に、群衆の歓呼の声が上がった。

 

 秩序を失った人々を、サマルトリア軍が確実に助け、集めて秩序を作る。病み傷ついたものを癒し、トイレを整備し、まず砂糖を入れた暖かい湯、そして柔らかい粥を配る。

 人を集めて仕事を割り振り、監督する。

 運河を通じて小舟で物資を運ぶ。その、小舟の出発港と、近くの海岸に停泊する強襲揚陸艇を、大型輸送ヘリがピストン輸送で物資を運んでいる。

 中には暴れない魔物もおり、それは放置すると人々に襲われるので、隔離し後送する。

 それらはベラヌール戦役から、徹底して経験を積んでいる。

「だが、われわれはどうなるんだ」

「われわれは、こいつらに征服されるのか」

 そんな不安が貴族たちの間に出るころ、アロンドが駆けつける。イリン王太子とムーンブルクの貴族たちを連れて、まるでディズニーランドのパレードのように豪華な演出、大音量の音楽で。

 その演出はリレムとジジ、ガライの苦心の作だ。

「ムーンブルクの人たちよ、安心せよ。ムーンブルク王国の正統なる王、イリン四世王はここにある!東のレアヤどの、ムーンペタのヤフマどの、そしてマリア王女ら、ムーンブルクの尊い人々の支援もある」

 アロンドの大声が拡声器で響き、その美貌と綿密に計算されたカリスマが群衆を引きつけ統制する。

「イリン四世王をわしは支える!アロンドどのを説得して、捕虜をことごとく解放させた。彼らが再建の力となろう」

「ムーンペタも健在です、ムーンブルク王国の再建を支えます!」

「これからはアロンドさまたちロト一族やアレフガルドは、よき友として、再建を助けてくださるそうです」

 レアヤ、ヤフマ、マリア王女が豪華に着飾り、高いところから大声を上げる。

「王妃の親族も砂漠より多数お連れしている。そして新しい王宮を助けてくださるそうだ」

「そしてごちそうもたくさん持ってきた、再建のための資金と資材も」

 そして、アロンドについていた瓜生が、当主が処刑され離散した大部屋のある邸宅に入ると、大量の物資を出す。ロト一族の、それに慣れている仲間が手伝い、宴を準備する。

 大量の焼いた肉、砂糖と油脂たっぷりの菓子、蒸留酒の三点セットと夕日を背景にした照明の乱舞・大音量の音楽は誰でもひきつけ、熱狂を起こす。

 それを制御して人々を精神的にまとめ、国という集団幻想を作り上げるのは、アロンドたちにとっては慣れたものだ。

 まだ幼いイリン四世王だが、アロンドたちが戦役の序盤で有能なムーンブルク貴族を多数助け、すべきことを教えてある。

 まずごちそうと音楽。次に恩赦。その次に再建の仕事。

「生き残った王弟たちは、郊外に広い領土と、実権のない名誉職を与えて引退させましょう。金持ちにして権力を奪えばよろしい。処罰はしないほうがいい、恨みが残りますから。

 報復よりも、政治が円滑に回ることを優先しましょう」

 と、アロンドがレアヤたちを事前に説得していた。敵陣すら観察して有能な者を選び出し、捕虜にして、捕虜たちの管理を任せて経験を積ませることさえやっていた。

 まずムーンブルクの新しい政権を機能させ、それから講和に向けた段取りを始める。

 明らかにムーンブルクによる侵略戦争だったが、そこはあいまいにして、賠償や領土などの問題とはしない。

「賠償金とったり領土奪ったりして、ナチスが勃興したらどうする」とアロンドの鶴の一声。

 ただ、ローラの門の、将来に至る管理権・鉄道敷設権という、相手には意味の分からない一文を入れただけ。

 むしろムーンペタとムーンブルクの関係の調節に苦心する。

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