奇・・ドラゴンクエスト1の続き   作:ケット

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老師の教え

 自分の影との戦いを終えて合流したローレルたち四人の前で霧が渦巻くと、

「警戒しろ!」

 と、瓜生がサイガブルパップを構える。

 次々と出現する四体の怪物。

 長い薙刀を持った、木のような表面のケンタウルス。

 通常の二倍はあるキラーマジンガ。

 20mぐらいありそうな、空を浮遊するクラゲ。

 金属のような、15mぐらいのザリガニ。

 その四体の周囲に、100mはある巨大な石像が四体地面から伸びあがる、と思ったら四体がその石造を襲う。

 ケンタウルスは目にも留まらぬ速度で切り刻み、さらに音速を超えて走り衝撃波を叩きつけた。

 巨大なキラーマジンガもすさまじい速度で襲い、剣が巨像の腕をあっさりと切落とし、その傷口に打ち込まれた棍棒、胴体に一瞬クレーターが生じ、そのまま全身が崩壊する。

 クラゲの触手が巨像を捕まえると、軽々と持ち上げて地面に叩きつけ、一本一本の触手が石を、砂を揉み潰すように砕いていく。

 ザリガニはただ、すさまじい速度で体当たりするだけで、あっさりと石像を粉砕した。

「強さを見せつけているんですね」

 サデルが冷ややかに言う。

「あれには戦車は使わないほうがいいな」

 瓜生が冷静に言って、近くに大量の火器を積み上げつつ、ピオリム・スクルト・バイキルトなどを唱える。

 40mmボフォース機関砲。20mmバルカンの対空砲版。Kord重機関銃。最新軽量のカール・グスタフ無反動砲。ゲパード14.5mmセミオート狙撃銃。多数の個人用無人機と、無線でつながったノートパソコン。

 ジニが素早く、40mmボフォースの操縦席に飛び乗る。モーターで動かすので、非力な彼女でも使える。

 サデルもロト直系の怪力で巨大ライフルと無反動砲を担ぐ。

「一度だけ言う。そちらから攻撃しなければ、こちらも攻撃しない。話せないか」

 サデルの呼びかけに対する答えは、ケンタウルスの突進だった。あっというまに膨れ上がる。

 瓜生に迫った、その目の前にそこらの一軒家より巨大な塊が出現する。

 20トン以上の、巨大な鋼のトイレットペーパー。まともに激突した瞬間、鋼板ロールごと瓜生とサデルのメドローアで風穴を開ける、

 だが冷静な声。

「回避している」

 ジニはノートパソコンで無人機の情報を集めながら、40mmボフォースをザリガニに向けて発砲している。

 強力な徹甲弾、だがそれでも突進を止められない。

「射撃停止」

 瓜生が叫ぶと同時に魔剣の短距離ルーラで実質瞬間移動、ザリガニの目の前にまた鋼板ロールを出す。それをあっさりと跳ね飛ばしたパワーには驚いたが、さすがに止まった間に瓜生が背に乗るように短距離ルーラ、魔法のブルパップショットガンから短距離メドローアと極端に加速されたスラッグを5発ずつ交互にぶちこみ、サーメイト焼夷手榴弾を放り込んで離脱。

 猛火が上がる間に、サデルは特大キラーマジンガの攻撃をかわしつつ巨銃で対抗している。スピードも速く、狙いをつけている間に鋭く動いてはクロスボウで反撃してくるので、落ち着いて狙えない。

 カール・グスタフの対戦車弾はよけられ、フレシェット弾を注ぐがダメージがない。

 巨大な剣の一撃目は受け流したが、巨大な敵に剣で斬り結ぶのも無茶だ。

「私には、かなわないかもしれない。なら」

 と、素早く呪文を唱える。そこには、ジジの姿があった。

 そして巨大な棍棒を叩きつけるキラーマジンガ、だがその棍棒は外れている。

 さらに、彼女が幻覚呪文を使いつつ、ちょっとカードを操り銃撃したらクラゲと特大キラーマジンガが、激しい同士討ちを始めた。

「ウリエル」と、軽く呼んだジジのところに瓜生が飛ぶと、素早くメドローアで二匹まとめて消し飛ばす……と思ったら、それが跳ね返されて二人を飲む。

 メドローアをはねかえしたケンタウルスが、これで脅威が消えた、とばかりにジニとローレルを襲う。

「ざーんねん、ベギラマでした」

「マンガそのまま真似るのもなあ、でも引っかかるこいつも単純だよな」

 サデル/ジジが網状にかけた糸で転ぶケンタウルス、その人間部の胴体を両手剣がばっさりと断ち切った。

 そこにサデル/ジジがメラゾーマをフィンガー・フレア・ボムズで三発ぶちこみ、とどめを刺した。火力は累乗で増すので、大岩を蒸発させるほどの熱量と温度になる。

 空からクラゲが襲おうとした、そこで瓜生が短距離ルーラで消えて、即座にF-15Eを出して融合、空戦になる。

 目覚ましい機動性で触手をかわし、爆発的な加速で逃れて距離を取り、対空ミサイルを連打する。

 そのまま、激しい空戦を続けている。

 元の姿に戻ったサデルとジニ、そしてローレルに、巨大なキラーマジンガと、傷癒えたかザリガニが襲いかかる。

 ジニが精緻に呪文を編み、サデルに発動してもらう。その瞬間、ザリガニの動きがゆっくりになった。アロンドやローレルを運動させるための、バギ系とボミオスを応用した呪文。どんなに力があっても、力が強ければ強いほど負荷が増す。

 それにローレルが、五寸釘を手に躍りかかる。

 背後から襲おうとする特大キラーマジンガを、ジニが精緻に編んだ、増幅されたピオリム・バイキルトで加速されたサデルの魔法剣が貫いた。

 行動を制御するジャイロを正確に。

 何体も残骸を研究し、キラーマシーン系統の構造はよく知っている。

 それで暴走し、まともに動けず暴れる特大キラーマジンガに、ジニの40mmボフォース、サデルが操る20mmバルカンが注がれ、完全に潰す。

 その時には横で、パワーは変わらず振り下ろされるハサミを片手で支えたローレルの五寸釘に、ザリガニが消し飛んでいた。

 機関砲の操縦席でノートパソコンをいじるジニが突然、

「ウリエル先生から無線連絡です」

 と言って、40mmボフォースで瓜生を援護する。

 F-15Eが触手に捕まった、だがその瞬間上空に瓜生が出現し、即三人のところに戻って、

「ここに隠れろ」

 と鋼板ロールの影に三人の仲間を引きこんだ。

 直後、大爆発。鋼板ロールも大きく揺れ、ローレルが怪力任せに支えた。

「デイジーカッターぶちこんだ」

 飛び出すと、きのこ雲が立ち上っている。

 

 

 

 アロンドは、舞い続けている。

 華麗な動きで、激しい攻撃を柔らかくしのいでいる。超高速の動きもあるが、ほとんどはゆっくりと舞っているだけだ。

 だが、それは三手先の相手の攻撃を正確に封じ、四手先にはアロンドが望むとおりの蹴りを出させている。

 舞いながら静かに語りかけることもやめていない。声が普通に出せるほど、呼吸が乱れていない。

「そいつ、とんでもねえ欲望だ。食いたい、欲しいの塊だ」

 とアダンも戦いながら叫ぶ。

 アロンドは沈痛に、敵に語りかけた。

 両手での急襲を柔らかく背後に回りつつ。集中と動きの巧妙さ、微妙な呼吸と布石で、相手を事実上操り戦い続けている。

「ウリエルが残した本で、小さいころから両親から学んだ。人間を含む生物というのは、おおもとは病原体の細菌みたいな、単細胞生物だと。

 それは栄養があれば、二つに増える。熱力学第二法則を、部分的に破り大きくは守って。周囲の、栄養というやや高い秩序をたくさんとりこむ。そして栄養を消費して二酸化炭素やアルコールのようなより低い秩序にして、それを代償に自分を複製する、という高い秩序を作る。全体は秩序が低くなる。

 二倍二倍と増えていけば、短時間でとんでもない数になり、どんなにたくさん栄養があってもあっという間に食い尽くす。それほどの貪欲さが、生命の本質なんだ。

 だが、人間は協力し、先のことも考えることができる。過ちも犯すが」

 すぐに、人姿の影は立て直して襲ってくる。

「話せないか?その無限の欲望を抑えて、もっと丁寧に戦えないか?ほら、もっと先を見て戦わないと、こうして背後を取られるんだぞ」

 アロンドはそう語りかけながら、激しさを増す攻撃を受け流していた。

 

 アダンも、すさまじい力で打ちかかる、破壊の剣を持つ魔機械に苦戦していた。

 破壊の剣でないほうの腕の一撃で、大地にキロメートル単位のクレーターができるパワー。今のアダンでも、力と力で圧倒されてしまう。

 破壊の剣の魔毒も効かない、本質的に同じ存在なのだ。

 力と力しかない、それはアダン好みではあるが、その力が遠く及ばないのが、はっきりとわかってしまう。

「アダン」

 星をも砕く霧の人影と戦っているアロンドが落ち着いた声をかけ、激しくつかみかかる敵の腕をゆっくりととらえ、軽くひねって足を浮かせて鋭く蹴り上げ担ぎ投げる。

 その動きに、アダンはふと子供のころを思い出した。

 10歳の時には〈ロトの民〉でも屈指の怪力と巨体を誇る、乱暴すぎる怪童だった。

 そんな彼に、ある日アレフガルドから来た〈ロトの子孫〉の老人が声をかけた。

 力を自慢するアダンに、その老人は静かに、「では、なんとかわしを倒してみないか」と言った。

 馬鹿にしていたが、なぜか知られていた弱みを巧みについた挑発にかっとなり、全力で押しつぶそうとした。

 その小さい老人は、アダンの巨大な力を利用するように投げ倒し、関節を決めた。

 どんなにもがいても、もがけばもがくほど痛みは激しくなるばかり。

 絶叫しつつ自分で関節を外し、無事な側の手で襲いかかったが、一トンを軽くジャークする怪力がまたしても羽のように柔らかな手にそらされ、投げ倒されていた。

「これらの技も、そなたたちも子供のころから毎日やっているはずの、ゾーマ流48式烈光拳の中にあるんじゃぞ」

 そういって、その老人……〈ロトの子孫〉最長老アスファエルは、套路の別の用法を一か月ほど特訓してくれた。ゴッサも特訓に入れてくれた。

 一日二時間、なのに悪さは体力が余っているからと12時間、製鉄所で何十馬力もの動力をさせられたり、ちょっとしたホラから鎖帷子着用+丸太を引きずってフルマラソンを走ったりするより疲れた。ゴッサは常に変わらず一言の弱音も吐かず、アダンもそれを見て音は上げなかった。

「ウリエルさまの故郷では、合気道とか八卦掌とか言われる武術に似たものがあるそうじゃ」

 徹底的に基本の、別の用法を叩きこんで去った老人……〈ロトの子孫〉最長老アスファエルと、再会することはなかった。その半年後にアレフガルドは竜王によって閉ざされ行き来はできなくなった。そしてアロンドが竜王を倒した時、アスファエルも犠牲になったと聞いた。

(そういうことか、くそじいい)

 思い出したアダンが、手の破壊の剣をすっと、いつもと違ってゆっくりと振る。呼吸を整える。機械魔のすさまじい速度を受け止め、そのまま相手の剣が手元に滑ってくるのを、ゆっくり優しく手を添える。

(馬をなでるように優しく)

 すっとすこしだけ引き、関節をひねりながら体を円にそって回す。

 巨大な魔機械が、あっけなく転ぶ。

「そうだ!」

 アロンドの声。

 痛みを知らない魔機械が起き上がる。

「柔の動きを剛にも使え、剛柔は一体だ」

「くそじじいにも言われたな」

 吐いたアダンは自分も打撃を受けつつ懐に飛びこみ、密着し相手が押す力を利用して相手の体勢を崩して、その動きをそのまま隙のない、集中した攻撃にする。

 それまでのように豪快な斬撃ではない小さい動き、なのに威力は集約され、敵が完全に崩壊していった。




「ドラクエ1」で活躍した最長老アスファエル、回想で登場。
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