ゴダイがGUTSの研修を始めて六日が経った。
アイエフはゴダイに様々な戦闘訓練やGPCが所有する車輌などの操縦訓練を行ったがその技量に驚いた。
銃を撃たせれば、的に必ず当て、格闘訓練ではアイエフと互角に渡り合い、バイクや車、戦闘機に乗せればアイエフですら素直に感心する腕前だった。
だからこそ、アイエフはゴダイをGUTSに入れるべきではないと判断した。
記憶喪失で素性の知らない男。
加えて謎の発光体が墜落した海岸で発見される。
そして、軍人顔負けの戦闘技術と操縦技術。
(もしかしたら国際的なテロリストか反国家派、過激派の一員ってこともありえるわね)
ゴダイの研修最終日。
アイエフは翌日、ネプテューヌに提出予定のゴダイの審査の結果表を作っていた。
(本音を言えばGUTSにほしい人材よね。書類整理も凄く丁寧だし)
ゴダイが作った研修レポートを見ながらアイエフはそう思う。
「はぁ~………素性さえ分かってれば、私も首を縦に振るんだけどね~」
何一つ書けてない紙を眼の前にアイエフは椅子にもたれ掛かる。
「アイエフさん、パトロールの時間ですよ~」
すると、アイエフの悩みの種であるゴダイがGPC職員の着る青い制服に身を包んでやってくる。
「ええ、わかった」
アイエフは提出書類を机に仕舞い、ゴダイと共に部屋を出る。
GPC本部の地下駐車場に降り、二人は車に乗り込む。
ゴダイが運転席に座り、アイエフは助手席に座る。
車の名前はシャーロック。
GPCが開発した特殊合金製の頑丈な車体を誇るパトロール用超高速特捜車で、無公害のマルチコンバージョンエンジンを搭載しており、有害物を出さずに走行する。後部にスクロール砲を装備し、光波バリアを張る事も出来る。
GPC本部は海の中にあり、そこからシークレットトンネルを通り、プラネテューヌの街の中にある複数のビルの地下駐車場から街の中に入る。
「それにしても、まだ一週間しか経ってないのに随分復興作業が進んでますね」
ゴダイは街の様子を見ながらそう言う。
「そうね。プラネテューヌは技術力ではラステイションに、科学力ではリーンボックスには劣ってるけど、科学力と技術力を両方合わせた総合力なら、二つの国よりも上よ」
「まだ他の国は見てないけど、プラネテューヌは凄いんだな~」
他愛のない世間話をしつつ、街を巡回する。
「そう言えば、あの巨人は何者なんでしょうね?」
「さぁね。よく分からないけど、ねぷ子はあの巨人をプラネテューヌ、引いてはゲイムギョウ界の守り神だと思ってるみたいよ」
「国を守る女神様がそう言うんですか?」
「ま、そう思ってるのはねぷ子だけよ。他の国はあの巨人を一週間前の怪獣と同じに見てるわ」
「GPCではあの巨人をどうするんです?」
「まだ決まってないわ。今ねぷ子を筆頭に上層部が話し合いをしてるみたいだけど………」
そのとき、突如、地響きが起こり、車が揺れる。
「何これ!?地震!?」
「地震にしては大きすぎるぞ!」
そして、道路にヒビが入り、そこから片目のつぶれたゴルザが顔を出す。
「あの怪獣!………やっと復興作業が終わりそうだって言うのに!」
アイエフはシャーロックから下りて、GUTSハイパーガンを抜く。
「私は国民の避難誘導を行うから、ゴダイは地下シェルターに向かって!」
「待って下さい!俺も避難誘導を!」
「研修生を前線に立たせるわけないでしょ!いいから、地下シェルターで国民の受け入れ作業をして!前線に来たら有無も言わさずGUTS入隊はなしだから!」
そう言い残し、アイエフは走って避難誘導を始める。
「あっ……くそっ!」
ゴダイはシャーロックのエンジンを入れなおし、走らせる。
「早くこっちに!地下シェルターへの避難を急いで!」
アイエフは必死に国民に呼びかけ、避難誘導をする。
そのとき、あるビルから一人の年寄りが出てきたのを見て、駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「わ、わしは大丈夫じゃ。じゃが、まだビルの中に………子供が!」
「え!?何ですって!」
アイエフはビルを見上げ、ゴルザの方を見る。
「助けに行こうにもわしは足が悪くて……」
「分かりました。子供は私が。早く避難所に!」
「すまん」
年寄りはおぼつかない足で避難所を目指し、アイエフはビルの中へと入る。
「誰かー!誰かいないのー!」
何処かで火災が発生してるらしくビル内は煙が充満していた。
アイエフは服の袖で口と鼻を押さえながら、子供の捜索をする。
すると、近くの部屋から小さい咳が聞える。
すぐにその扉に近づき、扉を叩く。
「そこに誰かいるの!?」
「た、助けてー………」
か細い少年の声が扉の向こう側から聞える。
ドアノブを回すが、扉の周りの壁が歪んでしまった所為で扉は開かない。
アイエフは扉から少し離れると、GUTSハイパーガンを構え、扉の金具を全て吹き飛ばし、そのまま蹴り破る。
「大丈夫!?」
中では少年が蹲り、手で口と鼻を覆っていた。
「もう大丈夫よ。さ、こっから出ましょ」
「あ、足が……」
少年の足を見ると膝を怪我しており、血が出ていた。
「分かった。私に掴まってて」
アイエフは少年を背負い、部屋から出る。
姿勢をなるべく低くし、煙を吸わないようにビル内を走り抜けるが、予想以上にビルの崩壊が激しく、瓦礫が頭上から降ってくる。
それをなんとか躱し、そして、とうとう階段を見つける。
「もう少しよ、頑張って!」
少年を励ましながら会談へと走る。
だが、その時、アイエフの足元が崩れ出す。
「しまっ……!」
アイエフは下に落ちそうになりながらも、前だけをまっすぐ見る。
「…………とっべえええええええええええええ!!」
崩れ出し、不安定になり出す足場でアイエフはなんとか一歩踏み出し、そのまま跳躍する。
右腕で背負ってる少年を支え、左腕を伸ばす。
(あと………もうちょっと………!)
祈りながら手を伸ばすが、長さが足りないのか、それとも助走が足りなかったのか分からないが、アイエフの腕は届かなかった。
そのままアイエフと少年は重力に従い、下へと落ちて行く。
だが、その腕を掴む者がいた。
急に落下が止まり、左肩に衝撃が走る。
アイエフは何が起きたのか上を見る。
「大丈夫ですか?アイエフさん」
それは、後方に下がらせたゴダイだった。