『彼』と出会う前の『彼』の話。

『人外になった者』の番外篇なもの。

全てに置いて過去形であり、彼に合わせての原作。

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突然と頭に思い浮かんだ。



愛しき髪の女王を守ると誓った殺人貴の少年の独白

 

 

 

『運命』とはなんだろう?

 

恋愛小説やそういう類いの作品には必ず登場する言葉だ。

 

『運命の相手』とか、『敵となる運命』とか、『運命を変える』とか色んな言葉が出てくる。

 

かくいう僕もその『運命』ってのに『あの日』出会った。

 

 

 

僕の名前は『灰村(はいむら)(きり)

 

その日、たまたま学校帰りのバスを降り間違えた僕は・・・

 

「林のとこのバス停奥」

「古くて白いお屋敷には」

「髪の長い女の幽霊がいるよ」

 

そんな学校の噂を思い出して、その屋敷とやらに興味本位で見に行く事にした。

 

お屋敷は存外に広く、どこか寂れていて、何が出ても不思議ではない雰囲気が漂っていた。

 

それなのに僕は何故かそんな雰囲気がちっとも怖くなかった。それどころか胸が興奮でドキドキしていていたんだ。今思えば、アレは『運命』に出会う前の予兆だったのかもしれない。

 

僕は何かに引っ張られるようにお屋敷の裏にあるガラス張りの温室に導かれた。

 

 

「・・・ハッ・・・」と僕は息を呑んだ。

 

そこには温室の中で花の手入れをする足元まで黒髪を伸ばした『少女』がいた。

 

そんな姿を見て、僕はいつの間にか懐から取り出した御守り変わりの『鋏』を手に持ちながらこんな事を考えていた。

 

 

「(まるで『殺人鬼』みたいだよなぁ・・・・・でも、あぁ・・・ざくり、ざくり・・・『切り裂いて』みたい。あの子を僕の手で・・・)」

 

今でも思う、なんて変態なんだ僕は・・・・・

でもそう思う程に彼女の髪は美しかった。誘われるように僕は温室へと近づいていく。

 

引き返そうと思った・・・でもそれが出来なかった。僕はまんまと火に飛び込む虫のように温室の窓へと手を置いて・・・

 

 

「・・・髪! 綺麗だね!!」

 

叫んだ・・・そう叫んでしまった。

彼女は驚いて僕の方を見る。藍色の綺麗な瞳を僕に僕に向ける。

 

 

「あ・・・あの、いや・・・・・いっ、今のはその!!///」ゴッ!

 

「ッ!?」

 

「のぉ~~~・・・!」じ~~ん

 

「えッ、えっ、えええぇぇ~~~!!?」

 

僕は天パってガラスに頭を打ち付け、その場に膝まずいた。

 

・・・・・噂は本当だった。

 

 

僕はそのまま彼女に介抱される形でお屋敷の中に入り、手当てを受けた。

その時だ。僕が無意識に取り出し持っていた鋏を彼女に見られていたのだ。

 

今でも覚えてる。僕を見て鋏を指差す彼女の顔を・・・

 

 

 

 

 

僕は小さい頃から好きな事があった。ウチに昔からあったこの鋏で友達や家族の髪を切っていた。でも段々みんな美容院に行くようになって、嫌がられて・・・・・

あとに残ったのは『髪の毛を切りたい』と言う強い衝動だけ・・・

 

この僕の恥ずかしい黒歴史を正直に話すと彼女は・・・

 

 

「・・・切らせてあげたいなぁ・・・///」ハァ

 

・・・と、そう呟いた。もちろん、その言葉は僕の耳に入った。

 

 

「えッ!!??」

 

僕は踏んづけられた蛙のような声を出して、彼女を座っていたソファに押し倒してしまった。

 

 

「いッ、いいのッ!?」

 

「えッ!?え、えぁあああ!??」

 

僕は興奮していた。今まで押さえつけていた欲望がその呟きで溢れ出た。

 

 

「ホントに?ホントに?!」

 

「い・・・いやっ、あのっ・・・!///」

 

血走った眼で迫る僕に彼女は叫んだ。

 

 

「『切れない』のッ!!!///」

 

「へっ・・・・・『切れない』?」

 

まさか、そんか筈はない!・・・・・それが叫びに対する僕の感想だった。でも・・・

 

 

彼女の髪は生まれてから『一度も』髪の毛が切れたことがないとテーブルに並べられた数々の鋏を前に語ってくれた。

 

 

「・・・やってみる?」

 

「!」

 

渡された鋏を受け取った僕は、ドキドキドキドキとけたたましく鳴る心臓を胸に彼女の髪に鋏をいれた!

 

キシッ

 

「・・・あれ?」

 

「・・・ハァ~・・・」

 

黒髪が切れる事はなく、渡された鋏が只、キシキシと音が鳴るだけだった。

 

 

「え、うそ・・・あれ、これも。えッ、え?なんで・・・なんで『切れない』の?」

 

戸惑い焦る僕に彼女は言った。

 

 

「・・・『呪われてる』からって言われるよ」

 

「!」

 

「私の名前は『武者小路(むしゃのこうじ)(いわい)』・・・・・『祝』、なのにね・・・」

 

そう言って彼女は寂しそうに悲しそうに笑った。

 

 

「(あ・・・)」

 

そんな彼女の姿を見て、僕はドキリとする。そして、吸い込まれるように彼女の髪に顔を埋めた。

彼女はビックリして恥ずかしそうに僕の頭を剥がそうとするけれど・・・

 

 

「触ってるだけでも嬉しい・・・僕は・・・///」

 

「・・・///」

 

構わずに彼女の髪を愛撫する。彼女も段々と気持ち良さそうに目を細める。

 

美しく、艶やかで、汚れを知らず、気高さもある黒髪に・・・僕は虜となってしまっていた。

 

『愛おしい』その黒髪に・・・

 

 

 

これが僕と彼女の初めての・・・・・『運命』の出会いだった。

 

 

 

 

 

それから僕達は色々な事に巻き込まれ、出会う事となる。

 

 

『殺害遺品』

『権利者』

『代償』

『醜聞』

『受注製品』

『マフィア』

『人狼探偵』

『IS』

『呪い』

『金の魔女』

『黒の女王』

『世紀を越えた因縁』

 

そして・・・彼・・・・・『吸血鬼アーカード』に

 


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