笑顔仮面のサディストがダンジョンに潜るのは間違ってるっすか? 作:ジェイソン@何某
前回の話は多くのご意見、ご感想をいただきました。自分のような初心者が始めたこの作品も、お気に入り件数が1200件を越えたのはとても嬉しいことです。
しかしその分、多くの視点から物語を見直す必要があるのだと気付かされました。
まだまだ若輩故今後も不快に思ったこと、違和感を感じたことはあるかもしれませんが、どうぞ応援よろしくお願いいたしますosz
それでは、社交性の高いルプーをどうぞご覧くださいませosz
――夕暮れ時
ダンジョンから帰ってきた冒険者たちはそれぞれが【ファミリア】の
各々が行きつけの酒場で飲んで、騒いで、時には喧嘩をしてと迷宮都市ならではの昼とは全く異なる活気が辺りを包み込んでいた。
西のメインストリート沿いに建つ大きな建物――『豊饒の女主人』もまた、今宵は一段と大きな賑わいを見せている。
忙しなく店内を駆け回るウエイトレス姿の美女達。冒険者はその姿を見て、酒を飲み、心身ともに癒していく。今日のダンジョン探索での出来事を振り返っては高らかに笑い、仲間が怪我をしたと話してはそこについて反省する。各テーブルに座る冒険者によって雰囲気まで変わる中、“彼女”は常に変わらぬ愛嬌を冒険者たちに振りまいていた。
「はーい、
『おう、ありがとよ姉ちゃん!!』
トレイの上に乗った酒と料理を片手に混み合う店内をすいすいと進む女の姿に、一部の冒険者は酒を飲むのも忘れて目を奪われる。もともと美人揃いのウエイトレスたちの中に、今日から入ったという新しいウエイトレスがまた極上の美人だったからである。
天真爛漫という言葉が非常に似合う明るい笑顔を絶やさず、普段だったらその辺の田舎娘を連想させるような赤い三つ編みはイモ臭いどころか彼女の美貌にマッチしており、活発さと魅力を手助けしている。ほかのウエイトレスたちと違って頭に着けているのがホワイトブリムではなく動物の耳の形をした帽子なのもまたチャームポイントとして冒険者たちには受け入れられていた。
酒が入っていなければ声を掛けるのも躊躇ってしまいそうなほどの美女に食事を運んでもらえるという幸せは、彼らの気分をより高揚させていた。
「ふぬぬぬぬぬ…」
「…アーニャは何をしているのですか?」
「あ、あはは…」
そんな絶好調のルプスレギナを、カウンターの向こう側に身を潜めながらも見つめる人影が1つ。そして、そんな人影を少し呆れた目で見る者が2つ。小さく唸るキャットピープルの少女…アーニャの行動に素直な疑問を口にしたエルフのリューに、苦笑いを零したヒューマンのシルは言葉を続ける
「あの厨房での騒動の後、今度は厨房の掃除とかを指導しようとしたんだけど、ルプスレギナさんその辺は完璧で逆にアーニャが指導を受けちゃって……それで、ミアお母さんの言葉もあって今はああやって給仕もしてもらってるんだけど…」
「…それさえも完璧で指導することがないから、“先輩”として複雑、と…」
今のところ、ルプスレギナが苦手としているのは“料理”くらいのものであった。だが、生憎とアーニャも料理に関しては指導できるほどのものではない。ついには2階にある個室のベッドメイキングだなどというウエイトレスには全く関係のないことをさせてみたところ、予想通り完璧。まぁその辺に関しては普段着ているのがメイド服だという時点でご察し下さいといった所だが。
…
……
「いやいや、此処はいっつもこんな感じなんっすか? 物凄い大盛況っすね」
ついには予備のテーブルを外にまで並べる事態になり、いよいよ大忙しといった所で、料理を運び終えて戻ってきたルプスレギナが隠れていた(つもりの)アーニャに声を掛ける。『ニャ!?』なんて最初は尻尾をビン、と立ててびっくりした様子のアーニャであったが、やがて屈んだ状態からまっすぐ背筋を伸ばすとコホンと咳払いをして
「こ、これぐらいの混雑は当然ニャ。ミャー達は常にこの程度軽々と乗り越えてきてるニャ」
なんて、普段以上の大盛況にも拘らず胸を張って偉ぶる。後ろのシルとリューの視線に何かを察したルプスレギナは、やがて満面の笑みを浮かべると
「そうなんですか、やっぱり先輩は凄いなぁ!」
こうして思い出したように猫を被るのであった。そして一気に上機嫌になったアーニャはカウンターから出るとルプスレギナに負けじと給仕に勤しみ始める。
…チョロイ。3人の女の意見が一致した瞬間である。
…
……
『おーい、ルプスちゃん注文いいかな~!?』
「はーい、今お伺いするっすよ~」
『アーニャちゃん、俺たちも注文~!!』
「はいニャ。今行きますニャー!」
噂好きの男神を中心にルプスレギナの名前はギルドに登録したその日のうちに外部に漏れ、さらには此処で働き始めた数時間のうちに自分が働いていることを聞きつけた冒険者や男神で混み合うようになる。すっかり客には『ルプスちゃん』で定着した名前を呼ばれては反応し、注文を取り、ミアに内容を伝えては別のテーブルに運ぶを繰り返して、ふとルプスレギナは壁に掛かっている時計に視線が向いた
「(あー、マズイ。一旦ホームに帰ってヘスティア様やベル君にここで働いてるからご飯いらないってこと伝えないと…)」
一応まだまだ働く気力はある…というか、
「…シルちゃん、なんであんなソワソワしてんすか?」
「ん~? あぁ、あれはシルの奴が今朝引っ掛けたオトコを待っているからだニャ」
「ほほう」
キラン、と目が光ったのを自覚した。どうやらアーニャもまた自身と同じような気持ちらしく、にまにまとシルの後姿を見守って…と。噂をすれば影というやつか、シルが表へと出ていき、誰かと親し気に話をしている。生憎とこの位置からではその相手の姿は見えないが、当然この場にとどまる2人ではない。2人してちょっかいを掛けに行こうとしたところで
『おーい、注文良いかなー?』
「じゃ、アーちゃんよろしくっす!!」
「あっ!!お前きたニャいニャー!!」
速攻で先輩を裏切り一人早足でシルのもとへと向かい、シルの背中からぬっと顔を出す。
「わっ!? る、ルプスレギナさん!?」
驚くシルを余所に愛想のいい笑みを浮かべるために細めていた目を開けると…
「はーい、いらっしゃいませー…っす……」
「……え?」
………非常によく知る少年と、ばっちり視線がぶつかった。
…
……
「は、ははは…まさか、ルプーさんがここでバイト始めたなんて…」
「私も、まさかベルさんとルプスレギナさんが同じ【ファミリア】の方だったなんて…」
「自分も、まさかベルっちに“4人目”が出来るなんて…」
「「「思ってませんでした(っす)」」」
「「……4人目?」」
「いや、正確には
頭上に疑問符を浮かべる2人を余所に、ルプスレギナはへらへらと笑う。と、こんなところでいつまでも喋ってても他の客の邪魔になるし、ミアに怒鳴られかねないと判断したシルは早速ベルを店内へと案内した。自身もベルと並ぶ形で店内に戻りつつも、気になっていた疑問をぶつける
「そいや、ヘスちゃんはどうしたんすか?」
「あぁ…どうもバイト先の打ち上げがあるとかで、一人で食べるようにと言われたんです」
「ふぅん…(こりゃなんかあったな…)」
詳細を聞いたわけではないので断言はできないが、乙女の勘というやつが告げている。『面白いところを見逃した』と。その後、嬉々として今日のダンジョンの成果や更新後の【ステイタス】について大声で語ろうとするベルをシルと2人で抑えると、やや離れた位置にあるテーブル席から声が上がった
『おーい、注文ー!』
「あ、はーいっす! んじゃあベルっち、精々私とシルちゃんの為に大金を落としてくれっすよ」
「いやいや、ルプーさんにお金落としても意味ないじゃないですか!?」
「うふふ、それじゃあ私だけの為に、お願いしますね?」
「うっ…」
まるで事前に打ち合わせしていたかのような連携に言葉の詰まったベルを余所に、互いに目を合わせサムズアップする美女2人。
ルプスレギナはまた給仕に戻り、シルはベルを席へと案内してミアを含めた3人で会話をしている。…今『大食漢』とか聞こえた気がするけど、聞き間違いか?
…
……
「ご予約のお客様のご来店ですニャー!!」
シルとベルのやり取りをにやにやと遠巻きに眺める程度の余裕が出来たとき、アーニャの元気な声が店内全体に響き渡る。自然とルプスレギナの視線も出入り口へと向けば、ぞろぞろとやってきたのは十数人規模の団体だった。
先頭を歩く糸目と緋色の髪が特徴の“男性”から始まり、
「(あぁー…あの男の人が神様なんだ…)」
纏っている雰囲気からすぐに【ファミリア】に所属している冒険者の一団であると理解したルプスレギナは、さらに先頭を歩いているのがその【ファミリア】の主神であると気付く。一見すると普通の人間と変わらぬ姿の神々は、“神威”とやらを発しているので普通の人間との違いが判るのだ。
「ベルさん…?」
「…ん?」
不思議そうにベルを呼ぶシルの声が耳に届き、ルプスレギナは酒場の隅の席で夕飯を取っていたベルへと視線を向ける。何故か真っ赤になったまま動かなくなっているベルと、そんなベルに必死に呼びかけるシルの姿に僅かに目を細め、ベルの視線を追いかける。
そこにいたのは、金眼金髪の女性。傷1つ見当たらないしなやかな肢体は、ルプスレギナとは対照的に白く透き通って見える。整った顔立ちながら、その静かな表情からは感情を窺うことが難しい。華奢な体でありながら共に歩く冒険者たちと同じ強者の雰囲気を纏った女性が誰なのか、彼らのエンブレムと、彼らを見たほかの客の言葉を盗み聞ぎすれば自ずと答えは導き出される。
――迷宮都市最大派閥の片翼、【ロキ・ファミリア】所属の女剣士、アイズ・ヴァレン何とかだ
「ほれ、ルプス、あの連中に料理を運んでやりな!」
「んぉっと…はい、了解っす!」
不覚にもしばらくの間棒立ちになってしまったが、ほかの客同様自分を愛称で呼ぶミアの言葉で我に返り、大皿に乗った料理を器用に3つずつ運ぶ。中央の丸テーブルは予約席だと事前に言われていたが、案の定そこに腰を下ろした【ロキ・ファミリア】の邪魔にならぬようアーニャたちとも協力しながらテーブルに料理を並べ、カウンターに戻り、また違う料理を並べ…としていると、なにやら妙な視線を感じる
「…自分、新入りさんか?」
「…はい、そうっす。ルプスレギナ・ベータっていうっすよ」
「ほうほう、ルプスレギナ…じゃあ、ルプスたんって呼ばせてもらうわ!」
「たん…? いや、まぁいいんすけど……なにしてんすか?」
その視線のもとは、彼らの主神である緋色の髪の
何故に関西弁なのかという疑問はあったが、話しかけられた内容自体は別に変わったものでもなかったのでいつもの態度を崩すことなく自己紹介をすませる。まさかの呼び名に一瞬
…さわさわ、と己の尻を撫でるロキの右手に視線を落とし、次いでロキ自身の顔に戻して…うわぁ…と声を漏らしてしまった
「ぐふふ…ええ感触やのぉ……」
ドン引きである。これに気付いたロキの眷属たちが呆れたような顔をしたり苦笑しているのを見る限り、どうやらこの
「ロキ様。よろしければ右手を見せていただけますか?」
「ん? なんやなんや、もしかして手相でも見てくれんのか?」
にっこり、と微笑んだルプスレギナの言葉に素直に従い右手を出したロキ。『うほほ、すべすべや~』なんて自分の右手を包むルプスレギナの両手を堪能していたのもつかの間……親指の爪の付け根の部分を、めっちゃ押し込まれた。
「イダダダダァッ!!?」
「ロキ様、店内ではセクハラ及び暴力行為は禁止っす」
「自分言うとる事とやってる事が矛盾して…あだだぁっ!!?」
両手でがっちりとホールドされて抜くことも出来ずに悲鳴を上げるロキであったが、その場の全員が自業自得だと思ってるので止めに入ることは終ぞなかった
…
……
「ベルっちー、食べてるっすかー?」
「あ、ルプーさん…!」
【ロキ・ファミリア】が乾杯を始めたその隅で、料理や酒を運び終えたルプスレギナは束の間の休息にシルとベルのもとへ向かう。大皿に乗っている魚の骨と、大分量の減ったパスタを見るに、こりゃかなり頑張ったなぁと思いながらも一寸シルの方に視線を向けた。ベルさんに吹っ掛けちゃった、てへぺろってか、オイ。
しかし…と、視線を戻した先にいるベルはなぜか知らないが気持ち身を屈めている。一体何をしているのか、少し考えただけでなんとなくの予想はできた。あのアイズ・なんたらかんたらから隠れているのだろう。どれだけ恥ずかしがり屋なんだと苦笑を漏らし、ほんの一瞬だけここで騒いでやろうかとも考えたが、流石に可哀想なのでやめておく。シルが見てる前でベルのアイズに対する気持ちが露見してしまうのもなんだか申し訳ないし。
…別に、面白がってるわけじゃないよ?
「ルプス、エールとワインをあっちの客に用意してやっとくれ。アイツらアンタじゃなきゃヤダとか言いやがって」
「えぇ、早っ…まぁいいや。 んじゃベルっち、食後のデザートも是非食べるっすよー」
「えぇぇぇ…た、助けて下さいよ…」
「うふふ、ベルさんってば本当に良く食べるんですね」
まだ会話の一つもしないうちにミアに呼び戻されガクンと肩を落としつつも、エールの樽ジョッキとワインのグラスを用意し始める。
「そうだアイズ、そろそろ例の話、聞かせてやれよ!!」
【ロキ・ファミリア】の主神と同じテーブルで酒を飲んでいたウェアウルフの青年が声を上げたのは、丁度そんな時であった。
表面上は普通にエールとワインの準備をしつつ、ルプスレギナはなんとなく聞き耳を立てる。まぁ、わざわざそんなことなどせずとも、酔って顔の真っ赤になった青年の声はかなり響いていたが。
「覚えてンだろ、遠征の帰りに逃げ出したミノタウロスに5階層で追いかけられてた、トマト野郎のことだよ!!」
話を振られても思い当たるものが無かったのか、首を傾げたアイズに思い出させるようにぺらぺらと喋る青年。この時はまだ、ルプスレギナは『そんな子いたのか』程度にしか捉えていなかった。
…ふと視線を向けた先で、固まったベルの姿を見るまでは。
「トマト野郎?」
疑問を浮かべたアマゾネスの片割れに、ウェアウルフの青年は心底可笑しそうに頷いた
「いたんだよ、いかにも駆け出しですって感じのひょろくせぇ
視界の隅にベルを映しながら、ルプスレギナは黙々と樽ジョッキを並べる。小さく頼りない肩が跳ね上がったのが隅に映り、いつしかルプスレギナの瞳は薄く細く尖って、しかしなんの感情も汲み取らせることのない、恐ろしいまでの無表情へと変化をしていた。
「まるで兎みてぇに壁際まで追い込まれちまって、抱腹絶倒モンだったぜ! 顔引き攣らせて震え上がっちまってよォ!!」
「それで、その冒険者どうしたん? 助かったんか?」
「あァ、アイズの奴がミノタウロスを細切れにしてな。トマト野郎の出来上がりだ。 くっ、くくく…なぁ、アイズ…ここだけの話、あれわざとやったんだろ? そうだろ、な?」
「…そんなこと、ないです…」
目じりに涙を溜めて無遠慮に笑い始めた青年に対し、周囲の反応は如何なものか。失笑する者、眉を顰める者、噴き出すのを我慢する者……話を振られているアイズはやはり感情が読みにくいが、微かに不快感を抱いているようだ。
「くくっ、そうかいそうかい。 まぁ、そう言いたくもなるよなァ? せっかく助けてやったってのに、そのトマト野郎にゃまんまと逃げられちまって、ぽかんとしてたもんなァ!!」
「…っ、ぷ…あ、ご、ごめんアイズ…で、でも…我慢できなくて…っ、ふふ…」
「……」
周囲の仲間には、アイズが怖い顔をしている風に映ったらしい。アマゾネスの片割れがそれを指摘すると、ついに周囲がどっと笑いに包まれる。それに参加をしていないのは、金髪の小人族、翡翠色の髪をしたエルフ、筋骨隆々のドワーフ…あと、もう1人何故かおろおろしているエルフもか。
「もういい加減に口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込まれ命を落としかけた少年を酒の肴に笑い飛ばすなど、恥を知れ。」
ウェアウルフの青年――ベートの話がいよいよベルに対する侮辱と取れる内容になった時、それまでずっと目を瞑って黙り込んでいた翡翠色の髪のエルフが不快感を隠さずに責める。それによってベートにつられて笑っていた者たちは顔色を悪くして俯くが、ベート自身は意に介さず
「おーおー、流石はエルフ様、誇り高ぇこって。でもよ、そんな救えねぇ奴を擁護して何になるってんだ? てめぇの失敗を誤魔化す自己満足に利用してるだけだろ? ゴミをゴミと言って何が悪い」
「これやめぇ、ベートもリヴェリアもや、酒が不味ぅなる」
剣呑な雰囲気が2人の間に漂うも、
「んじゃあアイズはどう思うよ? ミノタウロスなんぞに逃げ回り、助かってもまだお前の前で震えあがるガキがお前と同じ“冒険者”を名乗ってることを」
「……あの状況じゃ、しょうがなかったと思います」
顔は樽ジョッキに向けたまま、視線だけをベルへとむける。俯いていて表情は窺い知れない。だが微かにベルの方から血の臭いがする――恐らくはかなり強く握っているのだろう、拳の部分から。
ベートは、どうやらアイズに気があるらしい。ベルを貶めた上でさり気無く自分を売り込もうとするのは、酒の勢いに任せた結果か。玉砕して先ほどのエルフに当たっている。
「…じゃあ何か、お前はあのガキに目の前で好きだの愛してるだの抜かされたら、それを受け入れんのか? …まぁ、無理だよな。そんな筈がねぇ。自分より弱くてヒョロくて気の小せぇ勘違い野郎がお前の隣に並ぶなんざあり得ねぇ。それになにより、他ならないお前がそれを認めない」
「……っ」
ベートの言葉はかなり悪いが、どうやら図星らしい。ほんの僅かに瞳孔が開いたのを見てそう判断した。ベルは、体を震わせながらも必死に耐えているようだ。だが…
「――…雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」
「……っっ!!!」
「ベルさんっ!?」
どうやら、最後の最後にトドメを刺してくれたようだ、あの
立ち上がり、店の外へと飛び出していったベルと、それを追いかけるシル。困惑した様子の周囲を尻目に、ルプスレギナは注文の数だけのエールとワインをトレーに乗せる。
「……追いかけないのですか?」
背中からそうやって声を掛けられ、ルプスレギナは歩みを止める。しかし振り返らず、首を傾げる動作を見せた。
「――…追いかける? なんでっすか?」
「仲間なのでしょう?」
…聞かれてたのか。後ろの女性…リューは、飛び出していったベルを尻目に給仕を続けようとする自分の態度が気に入らないのか鋭い視線を向けているようだ…目を見てないから関係ないが。
「仲間っすよ? 確かに仲間っす。でもなんでそれがベルっちを追いかけることに繋がるんすか?」
「なっ…貴女は、一体仲間を何だと思って…!」
無表情なリューにしては珍しく、此方の言葉に強い怒りの感情をこめて声を荒げるも、ルプスレギナはやはり振り返らずどこ吹く風といった感じだ。
「仲間は大事っす。だからこそ私は追いかけるつもりなんてないっすよ。 …年上とはいえ、後輩の、しかも女に『あんな奴の言ったこと気にするな』って慰められるって、男としてはかなりプライドが傷つくんじゃないっすかね」
「…しかし、それでも…「あのさ、私はベルっちと同じ【ファミリア】なんすよ? リューちゃん以上に私はベルっちのこと理解してるはずっすけど」…っ」
そもそも、私はベルがあの程度で泣き寝入りするような子だなんて思ってない。追いかけて、慰めるってことは、そうしないと立ち直れないような子なんだと認めるようなものだ。私はあの子が戻ってきた時に、あの子の決意を真正面から受け止めてあげることにしよう。
ここまで言い切られてしまえば流石に口を噤まざる負えなくなったリュー。どうも“仲間”という言葉にこだわっているようだ。
「…ちょっと、言い過ぎたっすね。 申し訳ねっすよ」
返事を待たず、ルプスレギナは歩き出す。カウンターから出る前にいったん酒の乗ったトレーをカウンターの上に置き、ふぅと息を吐いた。
…さて、私は追いかけないとは断言したが…勿論、このまま済ませるつもりも毛頭無い。
視線を落とした先には、トレーに乗ったエールとワイン。徐にエールを持ち、ルプスレギナはミアのもとへと向かう。
「ミアさん」
「……なんだい」
料理を作る手を止め、此方を半分睨む形で見据えるミアに、ルプスレギナはにこりと笑んで――エールを呷った。
「「「!!?」」」
それを見ていたリューを含むウエイトレスと数人の客が驚愕する中、一気にエールを胃袋へと流し込んだルプスレギナはジョッキをカウンターに置き
「私辞めます」
「そうかい」
どうも、ミアにはこうなる予感がしていたらしい。溜息1つであっさり認めたミアに最敬礼の後背を向けて、さりげなくアイテムボックスから取り出した全財産を置く。ベルの食事代と、半日で辞めてしまうことへの迷惑料だ。
視線の先には、騒ぎ過ぎだと周囲に責められ逆上している灰狼。
彼女のハイライトの消えた瞳が僅かに細められ、口が三日月を描いたのを見た者は誰もいなかった――
ルプー、豊饒の女主人辞めるってよ←
こういう世界の食べ物とか料理の名前ってセンスが大事ですよね。僕はセンスがないので普通の名前になりました(ぁ
爪の付け根うんぬんは是非とも試してみてください。押し込む側の指も爪を立てるような感じで、こうグッと…あ、勿論自己責任で←
次回は気合入れます。打ってるとテンション上がるので、ルプーのキャラがぶれないようにしなければ…