笑顔仮面のサディストがダンジョンに潜るのは間違ってるっすか?   作:ジェイソン@何某

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 どうも、どうもどうも…っていう流れを定着させようとしましたが、飽きました←

 そんなわけで、大変長らくお待たせいたしました、漸くの次話投稿で御座います。なんか、次話投稿のたびに『お待たせいたしました』って書いてますね。こっちを定番にしましょうk(殴


 いやはや…サポーター編すっごい難産……ひたすら書き途中のやつが出来て、それらを完成させるたびに他の書きかけのやつを編集しなおさなきゃいけないのが面倒くさくなるというこの計画性のなさよ←

 誰か、僕と一緒にボダラン2やってくれる人はおらんかね(何急に


 そんなわけで、面白み皆無のお話、はっじまーるーよー

 


第25話『モンスター牧場とサポーターっす』

 

 

 【ヘファイストス・ファミリア】が経営している武器防具店を後にしたルプスレギナは、昇降設備(エレベーター)を使って下へと向かう最中この後の行動についてを考える。

 ヘスティア曰くベルはハーフエルフのアドバイザー君ことエイナと共にいたらしく、流石に2人のお買い物(デート)に乱入するのは忍びない…ヘスティアには遠回しに其方へ合流してしまえと言われたが無視した。

 

 そうなると、候補に挙がるのは『モンスター牧場』か『豊饒の女主人』なのだが、実のところハムスケとは昨日の朝、ベルと共にダンジョンに潜る前に顔を見ている。とは言っても、だ。一応は冒険者という職業になっているからには、長期の遠征などでハムスケの顔をしばらく見れないという事もあるかもしれない。

 

「…うん、やっぱ行けるときには行った方がいいっすかね」

 

 いくら知性あるモンスターといえどもストレスは溜まるだろう。途中立ち寄った露店で早めの昼食を取りながら、ルプスレギナは東地区のメインストリートへと向かっていく。

 

 

……

………

…………

 

 

 ―――『モンスター牧場』

 

「ちわ~っす」

 

 『ギルド』と【ガネーシャ・ファミリア】が共同で経営している『モンスター牧場』は、動物園や博物館のように一般にも公開されている施設である。そんな中、『ギルド』に認可された調教師(テイマー)であるルプスレギナは、本来入場料が掛かるこの施設を基本的に無料で入ることが出来る。

 

「【ヘスティア・ファミリア】のルプスレギナ・ベータ様ですね。では、此方にサインをお願いいたします」

「了解っす」

 

 とはいえ完全な顔パスというわけではなく、入館の際には書類にサインや入館理由を書く必要がある。前回エイナと共に来た際に一通りの説明を受けていたうえ、1人で来るのもこれで2回目というだけあって早々に小慣れた様子で書類にサインし、出迎えてくれた従業員へと手渡した。

 

「確認しました。では此方が入館証になります。ご案内は必要ですか?」

「うんにゃ、大丈夫っすよ。てか、もっと砕けた喋り方でもいいんっすよ?」

「申し訳ありません、喋り方はこれが素でして……では、何か御用がございましたらいつでもお呼び下さい」

 

 出迎えてくれた従業員は、落ち着いた物腰のエルフの男性だ。ハーフエルフのエイナを始め、レフィーヤ、リューという知人がいるのでエルフという種族にはとても真面目な性格の者が多いというのは知っていたが…まぁ、気にすることはないか。

 エルフの従業員とは別の方角に歩き出したルプスレギナは、そのまま従業員や飼育員、自身のような調教師などの関係者用の廊下を暫く歩き、この牧場の中央付近にあたる比較的大きめの扉へと手を掛ける。

 

「ハムスケ~、様子見に来たっすよ~」

「モグモグ…むおっ! 姫っ!」

 

 扉を開けると同時に軽い口調で中に声を掛けてみれば、部屋の中央で『ジャンボ・ヘリアンタスの種』をバリムシャバリムシャと齧っていたハムスケが勢いよく起き上がった。部屋に入っただけだと、まだルプスレギナとハムスケの間には格子があるが、ルプスレギナは何の躊躇いもなく壁に掛けてある鍵を使って格子を開け、ハムスケのもとへと歩み寄る。

 

「こんちわっす。いつも申し訳ないっすね」

「いえ、ガネーシャ様より与えられた大事な仕事ですから」

 

 擦り寄ってきたハムスケの頭を撫でながら、声を掛けるのは、自分が入ってくるまでハムスケの世話をしていた【ガネーシャ・ファミリア】の眷属でもあるヒューマンの飼育員。

 主神・ガネーシャの厚意によって、ハムスケの事情を知っている構成員がローテーションでこうやって飼育員としてハムスケの面倒を見てくれているのだ。もともとこの『モンスター牧場』の飼育員でもあるので給金は『ギルド』から支払われることになっているのだが、ルプスレギナはこうして専属で付いてくれているのだからと自らもまた彼らに心ばかりの給金を追加で払うという形で落ち着いている。

 

 

「姫~、それがしとも話をしてほしいでござるよ~!」

「はいはい、分かってるっすよ。表へ出ても大丈夫っすかね?」

「えぇ、ルプスレギナさんが来ると連絡を受けた際に許可もとっています。どのみち、そろそろハムスケにも外に出てもらう予定でしたしね。ルプスレギナさんがいるという事で猿轡はしませんがお客さんも来ていると思いますので、会話は慎重にお願いしますね」

 

 頻繁に会うことが出来ない影響なのか、()()()()()ハムスケは幾分甘えたがりだ。原作『オーバーロード』のハムスケと違い、生まれたばかりというのも大きいのかもしれない。

 この部屋には扉が3つ存在している。1つはたった今ルプスレギナが使用した、関係者用の廊下に繋がっている扉。2つ目は、檻に囲まれた各モンスターの基本的な展示スペースへと繋がる扉。最後の1つが、モンスターの放牧用の広場に繋がる扉である。飼育員の話を聞いたルプスレギナは、礼の言葉を告げると放牧用の扉へと近付き、鍵を使って扉を開く。

 それを見たハムスケが嬉々として外に向かったのを確認してからルプスレギナも外へと出て、ハムスケの上に横乗りする。

 

「どうっすか、ハムスケ。此処での生活は」

「いつでも姫に会えないのと、普段外を散歩するときは口を塞がれるのはちょっと嫌でござるが、それ以外は概ね良くしてもらってるでござるよ!」

 

 扉を潜ればすぐ外――という訳ではなく、モンスター用の広い廊下を少し歩くことになる。外に出ればハムスケが喋れることを知らない一般人の目もある可能性があるので大声で喋れない分、今のうちに会話をしておく。

 ハムスケという今までに例のなかった新種のモンスターというだけあって『ギルド』や【ガネーシャ・ファミリア】に生態検査などを受けたりはしているらしいのだが、これといって酷いことなどはされていないようで安心した。

 

「…そろそろ外っすね。んじゃハムスケ、なるべく喋らないように。喋るときもヒソヒソ声っすよ」

「了解でござる」

 

 

 長い廊下を抜けた先にある放牧用の広場は、四方がミスリル製の柵に囲まれている。モンスターの運動不足解消のための広場というだけあって広さはなかなかのものであり、まぁ余程大声を出さない限りは会話が見に来ている客に聞こえたりはしないだろう。それに、まだ『モンスター牧場』も出来て間もないというだけあり、客の数自体そこまででもなさそうだ。

 

 それでも、ハムスケの存在に気付いた女性客から黄色い声が上がったりなんかして、暫くはクマ牧場のクマよろしくハムスケに観客に向かって手を振ってもらったりすることになったのだが。

 

 

……

………

…………

 

 

 ―――なんだかんだと、夕暮れ時

 

「いや~いやいや……すっかり長居しちゃったっすね」

 

 お陰様で飼育員には『よいストレス解消と運動になった』と感謝されたのだが、此方としては当たり前のことをしたまでで、寧ろ自分がいない間もハムスケの面倒を見てくれる彼らには此方が感謝したいぐらいだ。

 

「う~ん…やっぱ、自分で飼育員も探したほうがいいっすよね…」

 

 一応自腹を切って追加料金を払っているとはいえ、やはり【ガネーシャ・ファミリア】の厚意に甘えすぎるわけにもいかないだろう。ハムスケの事情を話しても問題ない程には信用できる飼育員の確保…これは、今後の課題か。

 

 

『……! …!!』

「……うん?」

 

 いつも通りのルートから本拠(ホーム)である教会へと向かうべく西のメインストリートから外れたところで、ルプスレギナの耳が何者かの声を捉える。はっきりと何を喋っているのかは分からないが、誰かしらに怒鳴っているようで、ルプスレギナは眉を顰めた。

 

「穏やかじゃないっすね」

 

 やれやれとかぶりを振って、彼女は小走りにその足音の聞こえてきた方角へと向かう。

 途中から怒鳴り声は聞こえなくなったものの、まだその場には誰かが残っているようだ。恐らくは現場に向かえるであろう路地裏の出入り口に差し掛かったその時、突然小さな1つの影が飛び出してきて、ルプスレギナは慌てて立ち止まった。

 

「っとと…!」

「……!」

 

 向こうも此方に気付いたのだろう、自身よりも遥かに小柄なその人物は、深く被ったフードの奥から一瞬だけ此方を見ると、慌てて俯き立ち止まることなく駆け抜けてしまう。

 

 …はて、少し前にも似たような状況があった気もしたのだが…と、そこまで考え、突然周囲の空気が一瞬だけ重くなったのを肌で感じると再びルプスレギナはそちらに意識を向け、走り出した。

 そして、辿り着いた現場に居たのは…

 

 

「……あれ、ベルっちにリューちゃん?」

「…あっ、ルプーさん!」

「ルプスレギナさん」

 

 本拠が近いうえ、なんとなくトラブルに巻き込まれやすい体質のベルはさておき、滅多に人の通らないこんな路地裏に大きな紙袋を抱えた状態のリューが居た事には目を丸くして驚いた。

 

「2人とも、こんなとこでなにしてんっすか?」

「あ…えぇと、その…」

「私は買い出しの帰りです。ご存知のように、夜は多くの冒険者の方が来られますから」

 

 抱えている紙袋を見た時点でなんとなく分かってはいたが、案の定リューは買い出しに行っていたようだ。そういえば()()()()()()も夕暮れ前に彼女が買い出しに行っていた気がするが、まさか毎回こんな路地裏を使っているのだろうか。

 リューより『お2人は何故ここに?』と視線で問いかけられると、ルプスレギナは正直に『帰りの途中で怒鳴り声が聞こえたから』だと答え、2人の視線はベルに向く。

 

「えっと、僕は……あれっ、そういえば、あの子は…?」

「誰かいたのですか?」

 

 ベルも恐らくは帰る途中だったのだろうが、此処は普段使うルートから逸れている。故に、何らかの理由があったのだろうとルプスレギナも思っていた。案の定ちゃんと理由はあったようなのだが、周囲を見渡す様子からして、此処にはベル以外にも誰かいたらしい。リューの質問に頷くベルを見ながら、ルプスレギナが思い出したのは先ほどの小柄な人物。生憎と顔は見れなかったので男なのか女なのか、種族さえも分からない。

 

 ベルに聞いたところ、どうやらその人物がガラの悪い男性冒険者に追いかけられていたのを庇い、そこにリューまで現れてなんとか事なきを得たそうだ。

 

「…だとすると、怖くなって逃げちゃったんっすかね?」

「そ、そうかもしれませんね」

「ともあれ、何事もなく済んだのですから、もう良いでしょう。私はこれで戻りますね」

「あ、はい。本当にありがとうございました」

「バイバイっすよリューちゃん。皆によろしくっす」

 

 聊か釈然としないながらもその場は解散となり、ベルとルプスレギナは共に教会へと戻るのであった。

 

 

……

………

…………

 

 

 ―――翌日

 

 

「…うん、よし」

「ふわ~あぁ……ん…こんな朝早くから、ベルっちは気合十分っすねぇ…」

 

 

 昨日のエイナとの買い物で新調した新たな軽装具を装備し、姿見の前に立って確認するベルを、ベッドに縁に腰かけながらもルプスレギナは見守っていた。大きな欠伸を零しているようで実は既に目の冴えているルプスレギナ。実は日課の掃除はとっくに終わっていたりする。

 

 ルプスレギナの後ろには、未だにベッドに沈むヘスティアの姿がある。これからほぼ毎日のようにバイトをすることになるというのに、もうだいぶ疲労が溜まっているようだ。生憎と『家事』のスキルや回復魔法じゃ精神的な疲労までは回復できないので、ここは好きに寝かせてあげるとしよう。

 

 エイナに買ってもらったという緑玉色(エメラルド)のプロテクターを最後に撫でて、ベルは後ろで見ていたルプスレギナへと振り返った。

 

「お待たせしました。行きましょうっ!」

「ういうい、元気なのは良いことっすね!」

「2人とも眩しいくらい元気だねぇ……くれぐれも気を付けて行っておいで~…」

 

 ついベルのテンションにつられて勢いよく立ち上がったルプスレギナ。

 なんとも元気な2人の眷属()にしみじみと呟きつつも、この中では一番見た目の若い主神様は力なくひらひらと手を振って出ていく2人を見送り、今日の出勤時間まではまだ時間があると再び夢の世界へと旅立っていく。

 

 

 

 

 

「…神様、無理しすぎなければいいんですが…」

「う~ん…そうっすねぇ…」

 

 昨晩、ヘスティアとベルの間でちょっとした問答が起こったのをルプスレギナは知っている…目の前でニヤニヤしながら2人のやり取りを眺めてたんだから当然だが。

 純粋にヘスティアのことを心配するベルの呟きに、ルプスレギナは両手を頭の後ろで組みながらも同意を示すものの、彼女自身ヘスティアを説得するつもりはない。既に彼女は一度過労で倒れているし、神友であるヘファイストスが、ヘスティアが倒れるほどの重労働を課したりはしないだろう。

 周囲に対する恥とか外聞は……まぁ、仕方ない。

 

 

……

 

 

 メインストリートから中央広場(セントラルパーク)へと辿り着いた2人は、既に波が出来上がりつつある冒険者たちの動きに合わせて摩天楼(バベル)へと近付いていく。その時点ですでにルプスレギナは認識阻害の魔法を使っており、ある程度近づかない限りは彼女の存在を認識することは難しいだろう。

 

「それじゃあ、今日も1日頑張るっすかね」

「はいっ、頑張りましょう」

 

 当然ながら隣に並んでいるベルにはしっかりとルプスレギナの存在は認識できている。2人して笑みを浮かべ、広場の中央にある噴水の前を通り過ぎようとした、その時

 

 

「お兄さん、そちらの白い髪のお兄さん」

「…えっ?」

 

 明らかにベルに向けて発信された声に思わず立ち止まり、周囲を見渡すベル。ルプスレギナは反応がやや遅れたか、ベルより2歩ほど進んだ時点で立ち止まっている。

 やがてベルの視線は不自然な大きさのバックパックを捉え、顔と共に視線を下げる。

 

()()()()()、お兄さん。突然ですが、サポーターを探してはいませんか?」

 

 その姿を確認し、目を丸くして驚いた様子のベルが口を開くその前に、先手を打つようにして大きなバックパックを背負った、非常に小柄な少女は言葉を発する。バックパックこそ大きいものの、クリーム色のローブや深めに被ったフードなどはやや薄汚れており、お世辞にも目立つ外見とは言えない。愛嬌のある笑顔を浮かべながらも投げかけた言葉に、ベルは暫し目を丸くしたまま固まって、そして考えた。

 

「…サポーター…?」

「そうですっ。もしもよろしければなのですが、この哀れで貧相なサポーターを冒険者様のおこぼれにあずからせてほしいんです」

 

 自らを卑下するような物言いではあるが、変わらぬ笑顔はきっと自分を売り込むためにわざとそう言ったのだろうと思わせる。

 

 そして、ベルは前回、7階層まで進んだ日のことを思い出していた。モンスターを倒すたびにルプスレギナとドロップアイテムや魔石を拾う作業をしていたことを。基本的に戦うのがベルであったため、集団戦ではちょくちょく隙を見てはルプスレギナが先に魔石などを拾ってくれてはいたものの、それでも時間が取られることには変わりないし、自分たちのバックパックがいっぱいになってしまって仕方なくダンジョン攻略を切り上げた日もあった。

 そして、その度にベルは『サポーターを雇おうかな』と思っていたのだ。

 

 

「……ルプーさん、どうしますか?」

「ん~…そうっすねぇ…」

「……えっ?」

 

 暫しの間、顎に手を置いて考え込んでいたベルは、やがて顔を上げると後ろで待機しているルプスレギナへと声を掛ける。少し離れた状態からまたベルの隣に並んだルプスレギナに、声を掛けてきたサポーターの少女は驚いたように目を丸くしていたが、ルプスレギナの方を向いていたベルはそれに気付かない。

 

 

「…てか、君…前に会ったことないっすか?」

「あっ…僕も同じこと思ってました…昨日の小人族(パルゥム)の子だよね?」

 

「…ぇっ…あ、…えー、と……多分、他人の空似だと思いますよ。少なくとも、()()()()()リリには見覚えがないですし、なにより…リリは、犬人(シアンスロープ)ですので」

 

 サポーターの少女を見つめながらも考えていたルプスレギナは、ふと気になっていたであろう疑問をぶつける。ベルもまたそれに同調するように頷くと、サポーターの少女に確認するように視線を戻す。

 ルプスレギナを見つめ返しながらも固まっていた…自身をリリと呼んだ少女は、ハッと我に返ると暫し視線を泳がせて、やがて困惑したような表情を浮かべて首を傾げる。『え、でも…』と零しかけたベルに、少女は深く被っていたフードを外して犬の耳を見せることでそれがベルの勘違いであると証明してみせた。

 

「それで…如何でしょうか? サポーターはいりませんか?」

「……私はベルっちに任せるっすよ。リーダーはベルっちっすからね」

「うぅん…そう、ですね…確かに、サポーターが居てくれたらとは思ってたので…」

 

 まだ若干腑に落ちない様子のベルではあったが、少女の言葉に再び視線をルプスレギナに向ける。暫しの間、黙って少女を見つめていたルプスレギナは、ベルの視線を受けると小さく頷いてから最終的な決定権をベルへと託した。少しばかり迷うような仕草を見せるベルであったが、やがて少女の言葉に頷きを見せると

 

「本当ですかっ! なら、是非ともリリの事を雇っていただけませんか?」

「うわわっ…う、うん。それは構わないんだけど…」

 

 わざとらしく見えるほどに瞳を輝かせてずいと顔を寄せる少女に、ベルは若干顔を赤くし狼狽えながらもまだ少しだけ迷うような仕草を見せる。一体その理由が何なのか、今思い出したと言わんばかりに少女は声を上げた

 

「あっ! すみません、リリってば自己紹介もしていませんでした。リリの名前はリリルカ・アーデと申します。是非ともリリとお呼び下さい。お2人は、えーと…」

「僕はベル・クラネル。だからベルって呼んで。よろしくね、リリ」

 

 “様”付けに慣れていないのだろう、少しばかり驚いた様子のベルではあったが、少女…もといリリルカの確認にフルネームで名乗り、頷く。ベルの名前を小さく復唱し、覚えたとでもいうように笑顔を浮かべたリリルカに、やはりベルは少しだけ照れくさそうにしている。

 

 そしてリリルカの視線は、ベルの隣に並ぶルプスレギナへと移った。

 

「私はルプスレギナ・ベータっす。気軽にルプスって呼んでほしいっすよ」

「はい、よろしくお願いいたします、ベル様っ、ルプス様っ!」

 

 

 こうして互いに自己紹介を終えたところで、3人はひとまずこの場に留まると他の冒険者たちの動線の邪魔になるとしてバベル内の大広間へと向かうことに決めるのだった。

 

 

 

 

「(……果たして、これはどう受け止めるべきなのでしょう…)」

 

 バベルへと向かう道すがら、リリルカ・アーデは困惑するように心の中でごちる。

 

 

 少し前まで組んでいた冒険者に対する()()が終わり、次に目を付けたのは明らかに新米と思わしき、真新しい軽装備の白髪の少年。

 

 理由は色々ある。その中でも最も大きいのは、先程も述べたように明らかに新米であることが分かるという事と、バックパックを装備して1()()()()()()()()ことから恐らく“ソロ”であるという事。それに、自身の見間違いでなければ、あの少年は昨日の…

 …前の雇用主のことを思い出して少し気分は悪くなるが、かぶりを振って思考を切り替え、その顔に笑顔を張り付ける。

 

 そして、いざ声を掛けてみれば…

 

『……ルプーさん、どうしますか?』

 

 迷っている事や()()()()()()高圧的な態度でない事から、上手く擦り寄れば雇ってもらえそうだと内心ほくそ笑んでいたリリルカは、その瞬間に驚愕で目を見開いた。

 白髪の少年の隣に並んだのは、言っては何だが少年とはどう見ても釣り合いそうにない、第一級冒険者レベルの装備の赤毛の女性。しかも、その女にもリリルカは見覚えがあった。

 

 数日前の事だ。出会った…というよりは互いにぶつかってしまい軽く言葉を交わしただけに過ぎなかったが、間近で見た彼女のメイド服に、リリルカは目を奪われたのを覚えている。とある事情から、そういった装備の目利きには自信のあるリリルカでさえ、そのメイド服の価値は計り知れなかったのだ。

 

 到底手の出せる相手ではないと、顔を見られる前に逃げ出してしまい、遠くから眺めるだけにしたのだが…まさか、こんなところで再会することになるとは。

 

 …というか、()()()()()()()()()()()()()()()のだ? ()()()()()()()()のだ?

 

 先程まで、白髪の少年は1人で歩いて……いや、違う。その時、リリルカは思い出した。さっきまで見ていた光景には、確かに()()()()()()()()()()()赤毛の女の姿があったことを。これほどまでに目立つ服装なのに、何故気付けなかったのか……意図的に意識を逸らされていただなどと、リリルカは思い至らない。

 

 

『…てか、君…前に会ったことないっすか?』

 

 …! 拙いッ…! 我に返ったリリルカが一番に抱いたのは激しい焦燥である。

 しかし、リリルカは瞬時に冷静さを取り戻す。()()()()()姿()犬人(シアンスロープ)、あの少年にも初めから『赤の他人』という事で接するつもりだったのだから、何も焦る必要は無い。

 

 フードを外して自身の種族を偽ったことで、なんとか赤の他人だと証明する。昨日の子――つまりは初めて出会った時の自分をパルゥムだと思っている白髪の少年は腑に落ちないながらも納得したことに内心でほっと胸を撫で下ろした。

 

 

 …一方で、初めて出会った時の少女(リリルカ)の種族が何なのかなんて分からなかったルプスレギナは、実のところまだ『シアンスロープだから他人』だというリリルカの言葉に納得していなかったのだが…ルプスレギナが何も言わなかったのもあり、リリルカは納得させたと勘違いしていた。

 

 

 その後は自己紹介までして、なんとか『お試し』にまでこぎ着けたのだが、正直今更ながらに判断を誤ったかもしれないと後悔の念が湧いて出てきた。

 

 なんせ、『仕事』の対象が1人なのと複数なのでは難易度がまるで違う。だからこそ普段は冒険者になりたての初心者や、慢心しまくりのソロを狙っていたというのに…その初心者の隣にプロと思わしき存在が居たんじゃ難易度はもうお察しレベルだ。

 

「(…兎に角、様子を見ましょう。そのための『お試し』なんですし…)」

 

 もしも無理だと判断したならば、適当に理由を付ければ向こうも無理に引き留めはしまい。

 

 

 なんせ、冒険者にとってサポーターなんていくらでも替えの利く存在なのだから。

 

 

「(それに、もし……もしも、上手く事を運ぶことが出来たなら…)」

 

 自身の前を歩く2人の冒険者…その片割れである赤髪の女性をじっと見据え、気付かれぬようにほくそ笑むリリルカの瞳は、泥のように濁っていた。

 

 




鈴木実「フードを深く被った女の子と少し言葉を交わしただけでその子の種族がヒューマンの子供か、ドワーフの子供か、パルゥムか、シアンスロープの子供かとか…分かるわけねぇだろがっっ」


【モンスター牧場】
 テイマーって【ガネーシャファミリア】以外にもいるにはいるんだよね。なら、彼らが調教に成功したモンスターってどうしてんの? とかいう疑問によって作ったオリジナル設定の施設。
 完全中立の筈の『ギルド』、少し【ガネーシャ・ファミリア】と仲良くしすぎじゃねとか考えてはいけない。


【飼育員】
 【ガネーシャ・ファミリア】から派遣されたという設定。無理があるとか思ってはいけない。今後、正規(?)の飼育員要因を確保する予定。


【リリルカとルプスレギナ】
 ルプスレギナの中の人は所詮平和な日本で生まれ育った成りたて社会人。物心つく前から騙し騙され蹴落としあいの世界で育ってきたリリルカの腹芸に、多少の違和感は感じつつも今のところ騙されそう。
 でも、リリルカも得体のしれないルプスレギナを警戒中。


【リリルカの標的】
 魔石&素材。及び2人の装備品。
 ちなみに、悪意のままにルプスレギナの装備品を盗んだりしたら、その後の経過はどうあれリリルカのバッドエンドルートが確定する。


※烏瑠様、誤字報告ありがとうございます。 
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