【子蜘蛛シリーズ2】Deadly dinner   作:餡子郎
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No.010/Deletion memory.




「レオリオ、シロノがどこに居るか知らないか?」
「あー……」
 面談を終わらせたクラピカが、ベンチで長身を横たわらせて休んでいたレオリオに尋ねると、彼はどこか疲れたような顔をして、ロビーの隅を指差した。
「寝てる」

 クラピカは、絶句して立ち尽くした。

 ロビーの隅に置いてある白い小さめの棺桶が、どうしようもなく異様に目立っている。そしてその異様さのせいか、棺桶の周りには人が居ない。
「……本当にあれで寝ているのか」
「らしいな」
 気が知れねえぜ、とレオリオは呆れた口調で言って、顔の上に上着を被せて再び寝る体勢に入った。
 一番最初に呼ばれたシロノは、暇を持て余し、棺桶の中に入ってずっと眠っているらしい。そもそもシロノは普段、昼間寝て夜起きる生活を送っている。だからこの試験中、実はいつもどこか眠いのである。
 クラピカはやや戸惑いつつも、コンコン、と控えめに蓋をノックした。すると内側から、小さなうめき声とともに、ガチャリと鍵が開けられる音がした。内側から鍵が開けられる棺桶、と思うとますますシュールで、クラピカは改めて微妙な気分になる。
「ん~……、クラピカ? なーに?」
「起こしてしまってすまない」
 眩しそうな顔をして棺桶の中から身を起こし、目を擦っているシロノに、クラピカは申し訳なさそうな苦笑を浮かべて言った。
「だが今を逃すと話せないかもと思ってね。……ここは人目が多いから、場所を移しても?」
「うー、ん? ふぁ、うん、いいよ」
 シロノは寝ぼけ眼の上に寝癖が着いたまま、棺桶から出て、今度は外側についている方の鍵を閉めた。



 クラピカは、空と雲がよく見える飛行船の窓際にあるベンチにシロノを案内し、自分の隣に座らせた。ずるずると棺桶を引っぱってきたシロノは、素直にそれに従う。

「クラピカ、面談終わったの?」
「ああ」
「そっか。なんか色々聞かれたよね。何するのかなあ」
「……シロノ」
「なーに」
 窓から差し込む光の眩しさを避けるのも兼ねて、シロノは、隣に座るクラピカを見上げた。
 顔立ちが女性的で華奢なイメージのあるクラピカだったが、どうやらそれはよく隣に居るレオリオやほかの参加者たちがかなり大柄なせいもあったようだ。シロノが小さいせいもあるが、すぐ隣に座られると、おそらく身長百七十センチはあるだろうことがよくわかる。
 クラピカは、真剣な顔でシロノを見つめている。シロノは不思議そうな表情で首を傾げた。
「……シロノは、十歳だと言っていたな?」
「うん、そうだよ。そのくらい」
「“そのくらい”?」
 自分の年齢を説明するには不似合いなその表現にクラピカが反応すると、シロノは「うーん」と言いながら、くるりと視線を漂わせた。
「あたし、誕生日とかわかんないし、あと他にも色々あって……。んーと、年月計算して多分これより下はあり得ないだろうっていう歳が十歳なの。それにしちゃチビだろってよく言われるんだけど」
「そう……なのか。……なら、君の話によく出てくる君の父上は……」
「うん、血がつながったパパじゃないよ。師匠でもあるし、お兄ちゃんとかお姉ちゃんたちも、同じ感じ」
「そうか。……込み入ったことを聞いてすまない」
「んーん?」
 シロノはクラピカに顔を向け、少し眠そうな顔のまま首を振った。
「……私にも……そういう人たちが居たよ」
 クラピカは俯き加減に景色を見ながら、重い口調で話しだした。

「……私は、クルタ族だ。聞いたことは?」
「んーん、初めて聞いた」
「……そう……か」
 クラピカは、少しホっとしたような、おおいに落胆したような、複雑な表情を浮かべた。

「クルタ族は、緋の目という目を持っている。感情が高まると目の色が緋色になるんだ。その色は世界三大美色の一つと言われ、希少価値のある宝として高額で売買される」
「ふうん……」
 クルタ、ヒノメ。どちらも、──シロノに聞き覚えはなかった。
シロノとしては、正直なところ青い脳ミソやら赤い目やらを集める人間の気など知れないと思っているが、しかしそういった人体の一部を収集する人間がいるということ自体は、身近によく知っている。
「だから私の村では、外部から危害を加えて来る敵を迎え撃つ役目を持つグループがある。……私の両親は、私が物心つくかつかないかの頃に亡くなってね。一人残った私の面倒を見て、格闘技をしこんでくれたのが彼らだった。──だが、四年前」
 彼らは残さず殺された、と、クラピカは言った。隣に座るシロノには、クラピカが抑えようとしながらも漏れる殺気が感じられ、ピリピリと肌を刺した。

「幻影旅団、という盗賊団を知っているか?」
「んーん、知らない」
 いつもと全くもって同じ声で、シロノは今度は嘘をついた。なぜなら、シロノはA級首の大嘘つきを師匠に持つ蜘蛛の子であるので。
「四年前、数人の同胞を殺し、そのうちの一人の緋の目を奪ったのがその連中だ。私はあのとき奪われたあの人の目と、そして過去に奪われた全ての同胞の緋の目を取り戻したい。そして」
 クラピカから立ち上る殺気が、いっそう強くなった。
「……仲間を殺した幻影旅団を、残らず捕える。これが私がハンターになりたい動機だよ」
 シロノは、黙ってクラピカの話を聞いていた。「パパってば、めんどくさいことしでかしてるなあ」と思いながら。

「そして、もう一つ」

 クラピカは、シロノをまっすぐに見た。シロノも同じように見返す。
「……旅団は、私たちを残らず皆殺しにするつもりでやって来た。しかし奴らは同胞たちの命と、一人の緋の目を奪うと引き返した」
「なんで?」
 これは、シロノも本当に疑問に思った。あのクロロが、やると決めたことを途中で覆すことは本当に珍しい、というか、天災などの不可抗力以外では、シロノは見たことがない。

「一人の、……小さな女の子だ」
 クラピカは、酷く慎重な様子で、ゆっくりと話しだした。
「その時より……半年かもう少しか、その位前に森の中に居たのを誰かが見つけたという子で……当時四つ位だった。そして村で唯一クルタではないその子は不思議な力を持っていて、何をどうやったのか未だに良くわからないのだが……。その力を使って、一人で旅団に立ち向かった」
「すごいね、四つなのに」
 今度もシロノは素で驚いて、目を見開いていた。自分のことだとは知らずに。
「結局旅団は、既に殺した同胞の目と、その子を連れて行くこと、この二つを条件に引き下がり、今後私たちを狙わないという約束までした。……実際、あれから奴らが私たちの村を追ってきたことはない」
「え、その子連れてかれちゃったの?」
「……ああ。私たちは、四つの子供の身と引き換えに命拾いをし、生き残った」
 今でも悔いている、と、クラピカは悲痛な表情で目を伏せた。しかしもう一度シロノをまっすぐ、先程よりも強い視線で見つめて、意を決したように言った。

「その子の名前は、シロノという」
「えっ」

 シロノは、丸く口を開けた。そして、おんなじ名前、とシロノが言う前に、クラピカは興奮したような口調で続ける。
「そして、君と同じ髪と目をしていた。……シロノ、君は」

 ──あのときの“シロノ”ではないのか?

 クラピカは、縋るように、そしてとても強い意思を込めてシロノを見た。
 しかし、シロノの目はどこまでも透明で、きょとんとその視線をすり抜けさせてしまっている。その果てしないほどの透明度は、強い決意をもって、いやほぼ確信を持ってそう言ったはずのクラピカが、あまりに暖簾に腕押しな手応えに不安になってくるほどだった。

「ちがうよ」

 シロノは、あっけらかんと言った。
「あたし四年前はママといたし、そのあとママからパパに預けられたんだもん。クルタ族って今初めて聞いたし」
「しかし……」
「あー、でも、あれかも」
 思い出したように言うシロノに、クラピカは不思議そうな顔をした。
「あのねえ、ロマシャって知ってる?」
「ああ、知っているよ。ジプシー……と呼ぶと失礼になると聞いているが、ヨルビアン大陸起源の移動型民族だな」
 クラピカが博識を披露すると、シロノは「そうそう」と頷いた。
「あたしのママ、ロマシャでね、占い師なの」
「ロマシャの……? そう、なのか」
 クラピカは、僅かに驚いたような顔をした。彼はあの体験以来色々な勉強をしたが、かつてその独特で神秘主義的な考え方と文化のために長い間偏見・差別の対象とされ、酷い時は魔女狩りと称して多くが焼き殺されたという歴史を持つロマシャに、一時ひどく共感を覚えたことがある。

「でね、……あんまりよく覚えてないんだけど。前にママが言ってたんだ、ロマシャにはなんとかっていう特別な力を持って生まれる子がいてね、あたしみたいに真っ白なんだって」
 シロノはその透明な目で、どこか遠い所を見るような雰囲気を纏って言った。ロマシャという単語を聴いたからだろうか、クラピカにはその姿が何やら神秘的なものに見えてならなかった。
「……特別な力?」
「うん。あたしは別に何も出来ないんだけどね」
 ああ、なんだっけ名前、とシロノは一応思い出そうとしたが、思い出せなかったので早々に諦めて、ふわあと大きな欠伸をした。ここにパクノダが居れば「口を覆いなさい!」と小言を食らっている所だ。
「なんかだいぶ前のことだから細かいこと忘れたけど、他の人とは違うことができるんだって。だからその子も、もしかしたらそれなんじゃないかなあ。ほら、ロマシャとの混血って多いしさ」
 本来安定した住処を持たずに旅を続け芸を売るロマシャは、それ故に、各地に彼らの血脈を受け継ぐ者が数多く存在する。かつてはその血が濃いと差別の対象になることもあり捨て子も多かったが、ロマシャの血が人口全体にあまりにも広く浅く行き渡ってしまった今となっては、そんな事も稀になってきている。

「……そう……か」
 クラピカは盛大な肩すかしを食らって、……そして未だそうではないのではないかという疑問を根強く抱え、複雑に表情を歪めた。
(似すぎている。だが)
 あのとき、あの小さなシロノはおそらくだが四つ程度だった。しかし今目の前に居るシロノは、十歳。見た目だけの年齢であれば間違いないと言い切っていたかもしれないが、「十歳以下はあり得ない」とシロノは言うし、何よりクラピカが知っているシロノは拾われっ子で、村全体で面倒を見ていた。“ママ”などいるはずもない。

「……本当に、君はあのシロノではない?」
「うん、違うよ」

 そして、この断言する態度。いくら幼くとも、四つともなれば、しかもあのショッキングな光景を全く覚えていないというのはあり得ないのではないだろうか。逆に言えばショック過ぎて忘れてしまっているというのも大いにあり得るが、どちらにしても、この様子では本人を問いつめても答えは出ないだろう。
 クラピカはそう判断してこれ以上の追求を諦め、短いが重い溜め息をついた。
「クラピカはさ、その子に会ってどうしたいの?」
「……とにかく、無事を確かめたい」
 そう言って、クラピカは長い間、……たっぷり三十秒ほど沈黙した。
「正直な所、生きては居ないだろう、と」
 あの幻影旅団に、ヒトとしてではなくモノとして、珍しい戦利品として連れて行かれたあの子供が、今も無事に生きて居るとは考えづらい、とクラピカは思っていた。どんな風にかは想像できないししたくもないが、好きなように玩ばれた挙げ句に殺されてしまっている、というのが最悪のパターンで、そして当然の成り行きだろう、と。
 だからこそクラピカは、クルタではないにも関わらず、クルタ全体の無事と引き換えになって蜘蛛に連れて行かれた小さな子供に、ずっと深い罪悪感を抱いていた。

「だが、……もし、生きているのなら」
 謝りたい、とクラピカは言った。
「そして……可能性はとても低いが、幸せに生きていてくれればいい、と」
「そっか」

 シロノは、飛行船の窓から外を見た。
 シロノの知る限り、クロロたちは珍しい子供を興味半分に攫うことはあるだろうが、玩んで殺すというような趣味はない。ならばその子も、多少は辛い目に遭ったかもしれないが、そのあとクロロが飽きて施設なりなんなりに託したか、の可能性が高い。
 クロロは獲物に飽きると売り飛ばしてしまうが、よほどの特別な事情がない限り、壊してしまうということはない。そしてその際選ぶ販売ルートはいつも確かなものなのだ、ということを、シロノはシャルナークから聞いていた。それが、かつて愛した獲物たちへのささやかな餞別なのだ、とも。

「生きてるよ。んと、たぶん」
「……そうだろうか」
「うん、きっとそうだよ」
 獲物として攫われたというのであれば、その子供が生きている可能性は大いに高い、とシロノは考えた。逆に、ニンゲンとして攫われたのであれば殺されてしまっていたかもしれないが。
「……君に言われると、そんな気がしてきたよ」
 シロノの考えている内容など夢にも思わないクラピカは、そう呟き、悲痛な顔で微笑んだ。そして彼は、目の前にいるこの少女があの小さなシロノではなかったとしても、とてもよく似た姿をした少女に言われると、ほんの少しだけ心が和らぐような気がする、と思った。

「シロノ、君は今の家族が好きか?」
「うん!」
 それは、今までクラピカが見たシロノの表情の中で、一番幸せそうな笑顔だった。日に全く焼けていない白い肌が、綺麗なピンク色になる。
「いっちばん、大事!」
「そうか。それは良かった」
 クラピカは、フっと微笑む。

「そうだな、あのシロノも…………君のように、幸せに暮らしているといいな」

 青く眩しい空を仰ぎ、クラピカは、祈るように目を閉じた。
 そしてシロノはそんな彼を見てから、すぐそこにある雲の間から刺した日光に、痛みを感じるように目を細め、フードを深く被り直した。



++++++++++++++++++++++++++++



 四次試験終了から、三日後。
 飛行船の中と、着いてから丸一日教会が運営するホテルを贅沢にも丸々貸し切って受験者たちは休息を取り、ほぼ万全の体勢で最終試験に臨んだ。
「最終試験は、一対一のトーナメント形式で行なう」
 体育館並みの大きな部屋に、おそらく試験官のハンターであろう黒服の男たちとともに受験者たちを集めたネテロは、布をかけたホワイトボードを前にそう言った。
「その組み合わせはこうじゃ」




【挿絵表示】




 ホワイトボードに書かれた奇妙なトーナメント表を、受験者たちが不思議そうに凝視する。疑問だらけの顔をした彼らに、ネテロは説明を始めた。
「さて、最終試験のクリア条件だが、いたって明確。たった一勝で合格である!」
 つまりこれは、負けた者が上に登っていく勝ち抜けトーナメントなのだ、とネテロは説明した。不合格者は一人、誰にでも二回以上、勝つチャンスが与えられている。
 そしてそのチャンスの多さが公平でない理由をボドロが質問し、それにネテロが答えたとき、キルアがピクリと反応した。プライドの高い彼は、成績が良い者ほどチャンスが多い、ということに納得がいかない、と評価基準の詳しい説明を求めたが、ネテロに「ダメじゃ」と即答で一蹴された。
「~~~なんでだよ!」
「採点内容は極秘事項でな、全てを言うわけにはいかん。……まあやり方くらいは教えてやろう」
 身体能力値、精神能力値、そして印象値。審査基準はこの大きな三つからなる、とネテロは説明した。そして前者ふたつについてはここまで残っている者たちには今更ということであくまで参考程度の扱いだということも。
「重要なのは印象値!」
 これはすなわち、身体能力値、精神能力値でははかれない“何か”。いうなればハンターの資質評価こそが高得点、つまりハンターになれるチャンスを多く貰えるの最大のポイントなのだ、とネテロは言う。

「それと諸君らの生の声とを吟味した結果こうなった。以上じゃ!」

 黙りこくりながらも、ありありと納得いかない、という顔をしているキルアを、隣に立っていたシロノが見上げた。
「別にいいじゃない、勝てばいいんだし」
「そーいう問題じゃねーよ、オレの点数が低いってとこが問題なんだよ!」
 それを聞いていたレオリオは、「ああコイツ、テストが99点でパーフェクトじゃなかったからって悔しがって周りからヒンシュク買うタイプだな」と思いながら、生暖かい目でキルアを見た。対してシロノは、せいぜい自分の今までの成績と比較して自己ベストであれば満足、というマイペースタイプだ。
「まーまー、ほら、あたしもキルアとおんなじチャンス三回だし。おそろいおそろい」
「ガキをなだめるみたいな言い方すんな。オレが駄々こねてるみたいじゃねーか」
 いや立派に駄々こねてんだろうよ、と周囲の大人たちは内心で突っ込む。そしてネテロがコホンと咳払いをし、説明が再開された。
「戦い方も単純明快。武器OK反則なし、相手に「まいった」と言わせれば勝ち!」
 ただし、相手を死に至らしめてしまった場合は即失格。残りの者がその時点で全員合格、試験終了となる、という説明のあと、最終試験の開始宣言がなされた。
「第一試合、ハンゾー 対 ゴン!」



「あははははは、ゴンって面白いねー」

 きゃらきゃらと、シロノは笑う。しかし笑っているのはシロノだけではなく、そこにいるほぼ全員が、堪えきれないような笑いを浮かべていた。
 開始早々にハンゾーから首筋に鋭い手刀を食らい、脳震盪を起こしたゴンは、それから三時間延々と殴られ蹴られ、既にぐったりと床に倒れ伏していた。……しかし、それでも彼は決して「まいった」とは言わない。そして腕まで折られても、ゴンは結局信念を曲げなかったのだ。
 シロノは、黙ってその様を見ていた。フェイタンが行なう拷問と比べれば何倍もぬるい拷問だったが、きっとそういった経験もなければ訓練も受けていないゴンには辛いだろう。まず三時間耐えきっただけでもかなり驚愕ものだが、それよりも驚くべきはゴンの目だ。ただ耐えきるだけなら、訓練次第で出来る。しかし、痛めつけられて尚あんな目が出来る人間を、シロノは見たことがなかった。

 とにかく、そんな一方的かつ終わりの見えない試合であったが、結局ゴンの俺様理屈に折れたハンゾーが「まいった」を宣言したのだ。
「──そんなのダメだよ、ずるい!」
 いくらか回復したらしい、だがやはりボロボロのゴンが、負けを宣言して退場しようとするハンゾーの背中に指を指して言った。
「ちゃんと二人で、どうやって勝負するか決めようよ!」
 引き続きの、俺様理屈。勝負に納得していないらしいゴンはハンゾーに尚も食い下がった。そして目の据わったハンゾーは、ゴンの理屈を要約して、「こーゆーことか!?」と念を押す。
「うん!」

「アホか──!」

 かなりイイ顔で返事をしたゴンだったが、ハンゾーの素晴らしいアッパーで吹っ飛んで今度こそ完全に目を回し、試験官に担がれて、控え室で手当を受けることとなった。
 そしてハンゾーはネテロにゴンの合格を確認し、次の試合まで待機すべく、部屋の脇に寄る。
「きゃはは、負けちゃったねハンゾー」
「黙れクソガキ。ていうかいつの間に呼び捨てだコラ。年長の人間には敬意を払う育ちしてんじゃなかったのか? お?」
「ハゲチャビンのオナラ忍者に払う敬意なんかないよ」
「ハゲでもオナラでもねー! 取り消せ!」
 どうやらハンゾーとシロノは先天的に相性が悪いらしい。
 そしてシロノを小突こうとしては素早く避けられて憤慨するハンゾーに、なぜわざと負けたのか、とキルアが真剣な表情で尋ねた。ハンゾーはシロノを追いかけ回すのをやめ、キルアの問いに答える。
「気に入っちまったんだ、あいつが」
 あえて敗因を挙げるならそんなとこだ、と、ハンゾーは少し照れたような表情で言った。

 そして続く第二試合は、クラピカ 対 ヒソカ。
 しばらく、……明らかに手加減しているヒソカとクラピカが闘ったあと、ヒソカがクラピカに何やら耳打ちし、その直後に負けを宣言。クラピカの勝利、ヒソカの負け上がりとなった。シロノは飛行船でクラピカと話していた時、後ろの物陰にヒソカがいたことに気付いていた。多分面白がって、旅団の情報でも少し囁いたに違いない、と軽く溜め息をついた。

 第三試合はハンゾー 対 ポックル。
「……悪いが、アンタにゃ遠慮しねーぜ」
 このひとことが決め手となり、ポックルがあっさりと負けを宣言。そして続くは第四試合、ボドロ 対 ヒソカ。一方的な試合だったがボドロはなかなか負けを認めず、しかしまたヒソカがなにごとか囁き、ボドロが負けを宣言した。
「……ヒーちゃん、ボドロさんに何言ったの?」
「んー、ちょっとね♦ ホラ、次は君だよ♥」
 頑張ってね、とヒソカは言い、壁にもたれかかった。ヒソカはこれで勝ち抜け、ハンターライセンスを手に入れたこととなるのだが、試合は見物するつもりらしい。

「──第五試合、レオリオ 対 シロノ!」

 宣言がなされ、かなりの長身と一番小さな人影が、部屋の中央に進み出た。










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