fate/Apocrypha EX 名古屋聖杯乱舞 作:天崎
ランサーとアーチャーとそれらを率いる二人の少女の戦いを眺める者がいた。
「姉さんったら先行したと思ったら早速戦いを始めるなんて血気盛んですね」
「ミス・遠坂は荒っぽいですからね」
「それで、御姉様。私達はどうするのですか?」
「しばらく様子を見るとしましょう。他にも見物人はいるようですし」
「なら、俺達の出番はまだ先か」
「貴方と纏めないでください」
金髪で青のドレスを着た少女と黒髪で紫のドレスを着た少女の背後に金髪の大男と長髪で目隠しをした女性が現れる。
共に少女たちのサーヴァントなのだろう。
激しくぶつかり合うアーチャーとランサーを眺めながら周囲を警戒するのだった。
◆◆◆◆◆
バイクのエンジン音が鳴り響く。
ジャケットの上からでも分かる程の筋肉質な男がバイクに跨りながら名古屋城を遠目に眺めていた。
「あれがこの騒ぎの元凶の根城か」
敵でも見る様な目で睨み付けながらバイクのエンジンを鳴らす。
そのバイクは明らかに正規品では無かった。
それもそのはず男によって魔術的に改造し尽くされているのだ。
それでいて道路交通法などには反しない外見を保っている。
男がバイクを走らせようとした時、バイク後部に何者かが着地する。
「サーヴァントを置き去りにするとか正気ですか?」
「ふん、貴様を連れ歩く必要は無いだろう?」
「警視総監がこんなとこにいるのも問題だとは思いますが」
「俺が守るべき国で此処まで派手にやらかした相手だぞ?俺が直々に叩き潰すに決まっているだろう」
手を開き閉じるを繰り返しながら言う。
サーヴァントの方は溜息を吐きながらも文句は言わない。
正義感の塊を熟成に熟成を重ねたような男であることはサーヴァントは知っていた。
だからこそ、指示には従う。
「それでどうします?いきなり本陣に乗り込みますか」
「いや、その前に魔術師どもを蹴散らす。本命を討つ時に邪魔される訳にはいかないからな。付いて来い、セイバー」
「はい。了解ですよ、マスター」
付いて来いとは言われたがバイク後部からは降りない。
男はしばらく黙っていたが諦めてバイクを走らせるのだった。
◆◆◆◆◆
「全く面倒事を押し付けられた物だ」
何処かの地下で狩衣を着た男が陣を書きながら呟く。
男は片手で描きながら、もう片方の手では何者かの頭蓋骨をポンポンと弄んでいた。
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、」
男は何かを唱えながら部屋を一周する。
「宇内八方ごほうちょうなん、」
部屋の壁に貼り付けられていた呪符が発光する。
「たちまちきゅうせんを貫き、」
部屋に何かが吹き荒れる。
「玄都に達し、太一真君に感じ、」
部屋に淀んでいた物が追い出される。
「奇一奇一たちまち感通、如律令」
神仙・太一真君と交換する呪言を使い、男は部屋に淀んでいた邪気を祓い尽くす。
加えて多大な神秘力をその身に宿す。
右手の甲に刻まれし令呪を眺めながら準備が整った事を確認する。
「余計な邪気は晴れたか。この触媒は無駄に邪気を集めるから扱いにくくて駄目だな」
言いながらも頭蓋骨を陣の中央に設置する。
そして、手首を軽く切って血を陣に垂らしながら詠唱を始める。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
「
「繰り返すつどに五度」
「ただ、満たされる刻を破却する」
「_____
「――――――告げる」
「――――告げる」
陣が怪しく光り始める。
周囲の壁に張られた呪符を共鳴するかの様に振るえ始める。
だが、本来出るはずの輝かしい光は無かった。
むしろ禍々しい瘴気が集まり始めていた。
男は気にせずに詠唱を続ける。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
何故なら男には何となくこうなる事が読めていた。
男が召喚しようとしているサーヴァントは間違いなく英雄では無いく、反英雄だ。
その為の触媒が頭蓋骨なのだから。
「誓いを此処に」
「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
カタカタと頭蓋骨が振るえ始める。
部屋そのものも震え、パラパラと埃が零れ始める。
先程祓ったばかりだというのに邪気が部屋に充満し始めていた。
「汝三大の言霊を纏う七天」
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!!」
唱え終えた途端に部屋に充満した邪気が頭蓋骨に吸われる。
部屋から明かりは消え、漆黒に包まれる。
男は令呪を眺め、確かに「何か」と繋がっている事を確認する。
一先ず明かりを点けようとした時だった。
何処からともなく伸びてきた手に首を掴まれた。
「一応形だけはなぞってやろう。問おう、貴様が余をこの世に呼び戻し従えようという愚かなるマスターか?」
掴む腕の力は凄まじく少しでも力を加えれば男の首が千切れ飛ぶ程だった。
更に冷たかった。
腕も、声も全てが冷たかった。
それでいて熱さを感じさせた。
この世全てを呪うかのような熱き業火を感じさせたのだ。
「あぁそうですよ。愚かは余計だがね」
「死にたいのか?」
「まさか」
男は命を掴まれてなお態度を変えなかった。
令呪を使う暇は無いのは分かっている。
このサーヴァントが冗談抜きで殺すことも分かっている。
それでも態度を変えないのだ。
「今殺されたら困りますが、わざわざ態度を変える気も無いんでね」
「余を呼び出す程の物好きとはどの程度かと思ったがただの狂人だったか?」
「それこそ、まさかですよ。俺はいたって正常だ」
「ならば、何故余を呼んだ?」
「あんたの好きにさせる為さ」
「真面目に答えぬなら消すぞ」
「別に本音なんだがな。まぁ強いて言うならば手に負えない面倒事を押し付けられたから禁じ手中の禁じ手に手を出しただけさ。安全地帯で見学してるだけの連中に危機感を覚えさせるのも兼ねてな」
「それと余を好きにさせるのは繋がらぬ」
「俺はただ見てみたいのさ。ただでさえ混沌を極めてる現状に更なる爆弾をぶちまけて対岸の火事だと思ってる連中が燃やされていく様を。あんたの願いは知らないが。奴らはあんたの復讐の過程で消えるはずだからな」
「余が大人しく利用されるとでも思っているのか?」
「思っちゃいない。だから、好きにさせるのさ。なる様になるってやつだ。俺はこの戦争を荒らせればそれでいいからな」
首を掴む力が強まった。
それでも男は態度を崩さない。
むしろ笑みすら浮かべるくらいだった。
「この状況でそこまで法螺を吹くか」
「何だ、バレたか」
「当たり前だ。余を誰だと思っている?」
「さて、誰だろうな」
「白々しい。余の頭蓋骨を触媒にする者が知らぬわけなかろうに」
「何はともあれあんたを好きにさせるってのは変わりない。俺が用あるのは聖杯とこの戦争の勝者だからな」
「余が負けるとでも?」
「まず負けないだろうよ。でも、あんたみたいな怪物を対峙するのが英雄って奴だろう?」
「まぁ良い。貴様の真意は後回しにするとしよう。だが、余の邪魔をすればどうなるかは分かっておるよな?」
「邪魔はしないさ。漁夫の利は得るがね」
投げ捨てる様に放される。
男は咳き込みながらも暗闇を眺める。
未だにサーヴァントの姿をまともに見れてはいない。
「契約は一先ずは成立としておこう。戦の始まりだけは貴様に委ねてやる。決戦の時に呼ぶがいい」
「その前にクラスを聞いていいか?」
「とっくに気付いているだろう」
「本人に直接聞きたいのさ」
「余はエクストラクラス、
その言葉を最後にアヴェンジャーの気配は消えて行った。
まるで空気に溶けるかの様に部屋に充満していた邪気ごと何処かに行った。
直視出来てないゆえにステータスの確認すら出来ていない。
だが、男は笑みを浮かべていた。
まるでこの状況が期待通りとでも言うかの様に。
はい、今回も何組か参戦するのでした
アヴェンジャーの真名は割と分かりやすいと思います
次回でプロローグは終了
その次から本格的に物語が動く予定です
マテリアルは本格的に始まってからになるかと
感想待ってます!