最低不審者ドゥルーク   作:RYUZEN

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第9話 本当を知るためのトビラなの?

「ハァイ。なのはの最初の友達にして皆の友達ドゥルークだよ。今日も元気に『最低不審者ドゥルーク』第9話をやっていこー! …………と、言いたいのは山々なんだけどさ」

 

 前半のハイテンションが嘘のように、リストラを宣告されたサラリーマンのように肩を落とすドゥルーク。

 お昼時は職員で大いに賑わう次元航空艦アースラの食堂も、早朝4時という時刻のせいか人影はまったくなかった。食堂を切り盛りする食堂名物〝食堂のおばちゃん〟すらいない全くの無人である。

 

「今日でなのはがアースラに協力を決めてから早十三日。勘の良い……というか重度のリリカルなのはファンの読者なら気付いただろう。そう、海上決戦もアルフ再会イベントも全部終わっちゃってるんだよ! 臨海公園での最後の一騎打ち直前だよ!

 おいこらどうなってるんだよ作者! 一期屈指のなのはの名台詞『友達になりたいんだ』すらカットかよ! あれがないと一期ラストの別れの場面の盛り上がりが欠けちゃうでしょうが! 原作既読であること前提の二次創作だからって、カットしちゃいけない部分ってのがあるが!  実写版デビルマンでもリスペクトしてんのか作者ぁ~。気分的平和主義者の僕でも我慢の限界ってのはあるんだぜぃ」

 

 無人の食堂にドゥルークの作者に対する文句だけが反響する。

 だが一人のクレームでは限界があると悟ったドゥルークは、通信教育で修得した多重影分身の術を使い五百人くらいに分身すると、全員で『書ーけ! 書ーけ!』と合唱し出した。

 そこまで言うのなら仕方ない。需要があるかどうかは分からないが書くとしよう。まずは海上決戦から。

 では気を取り直して……。

 あれは今より三日前、高町なのはがアースラと協力体制を敷いて十日目まで遡る。

 管理局のジュエルシード回収速度に焦りを抱いたフェイトは、海にある六つのジュエルシードを一気に回収するために、海中に魔力の電気の魔力を流すことで強制発動するという暴挙に出た。

 海上では暴走した六つのジュエルシードによって形成された『海の怪物』と必死に戦うフェイト。そしてそれを必死にサポートするアルフ。

 なのはは今すぐ自分も駆け付けようとしたが、クロノとリンディは『放っておけば自滅するから、それからジュエルシード諸共に確保する』という非情な答えを出す。

 幾らフェイトが九歳の少女といえど、管理局からすれば犯罪者。犯罪者の安全の為に余計なリスクを背負う必要はない、というのは極めて合理的な判断といえるだろう。

 だが合理的理由で納得できるならば、なのははこの場所にはいない。ユーノのアシストにより命令違反を犯して勝手に出撃するなのは。

 なのはが出撃すれば当然のように隣にはドゥルークが付き添う。

 

「行こうかなのは! フェイトを助け読者に露骨な好感度アピールするために! 無限の空へ、さあ行く――――むむっ! ジェットパックに雷が直撃!? いやーーーーん!」

 

「ドゥルークゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

「カット」

 

 物語が良い所に入った途端、ドゥルークが強制的に過去回想をストップさせる。

 自分からカットするなと言っておいて、口の根も乾かぬうちに今度は自分でカットするとはどういうことなのか。地の文だって我慢の限界というものがある。

 

「過去は気にするなよ。未来に生きようぜ」

 

 主人公には過去未来でもなく、ちゃんと現実を見て生きて欲しいところだが。

 

「〝現実〟なんて曖昧なものさ。客観的に現実だけを映すのは機械だけだよ。観測者が〝人間〟である以上、多かれ少なかれ主観が混ざる。大抵の場合は自分にとって都合の良いね。もっと酷くなると都合の良い妄想に自分の現実を合わせ始めるんだ」

 

 無駄話はそこまでだ。しつこいようだが読者はオリジナル主人公と地の文の漫才なんて地雷丸出しなやり取りなんて欠片も興味ないのである。

 いつまでもこんなことやってると、いい加減に洒落抜きで読者が離れる。

 

「分かってるさ。だからこそこれから行くんだろう。出番を確保するために――――僕の、一番の友達のところへ」

 

 

 

 涼やかな潮風が海の香りを運び、水平線の彼方からは太陽が顔を覗かせ始めている。今日、この臨海公園で全てに決着がつく。

 お互いの持っているジュエルシードを全て賭けた、フェイトとの最後の本気の勝負。

 約束の時刻まで後少し。

 なのはは目を瞑って自己の埋没しながら、ユーノもアルフも固唾を飲んでフェイトが現れるのを待つ。

 

「なのはぁぁああああああああああああああああああ!!」

 

 だがそんな張り詰めた雰囲気を台無しにするように、ドゥルークの叫び声が静寂を切り裂いた。

 

「どぅ、ドゥルーク! どうしたの? アースラで高みの見物するって言ってたじゃない」 

 

「僕はなのはが不安な時にはいつだって駆け付けるのさ」

 

「!」

 

 ドゥルークの口調は相変わらずの調子だったが、それは鋭いほどに図星をついていた。

 フェイトと友達になりたい。その気持ちは掛け値なしになのはの最も強い感情だ。だからリンディやクロノに無理を言ってまで、この戦いを許可してもらったのである。

 けれど心の片隅には黒い霧が漂っている。

 本当に大丈夫なのか、負けたらどうしよう、もしも何もかもが失敗に終われば皆に迷惑をかけるだけではないのか。何もしないでいるとそういう不安な想像が次々に思い浮かんできてしまう。

 決戦前だというのに目を瞑って自己埋没していたのは、精神集中などという立派なものではなく、ただ目の前の不安から逃げていただけだったのかもしれない。

 

「不安がらなくたって大丈夫。フェイトとの一騎打ちなら、僕も戦うし」

 

「だ、駄目だよ! これはフェイトちゃんと一対一の本気の勝負なんだから!」

 

「おいおい。僕はなのはの最初の友達なんだぜぃ。つまりは一心同体、問題なんてないね。

 それに正々堂々な主人公より、卑怯上等な主人公のほうが厨二病患者には受けが良いんだ。『戦いに卑怯も糞もないだろ(キリッ)』みたいなこと真顔で言っちゃうお年頃には絶対ヒットする。夢溢れるファンタジーな世界で、世界観無視して銃火器とか使っちゃう主人公なら尚良しだ」

 

 自分の出番がかかっているからなのか、或はなのはの不安が余程強いからか。普段以上に勢いよくドゥルークは畳みこんでくる。

 

「分かるだろ? このまま原作準拠な展開をだらだら続けていたら、読者がそろそろ『原作をなぞってるだけで面白味がない』っていう的確な指摘をしてくる。

 このssが大成するためにはここらで一つ読者をアッと言わせるような展開が必要なんだ。例えばこう……僕がフェイトにフラグをたてるとか?

 いや駄目だな。客受け狙って不必要な恋愛描写を入れるのは駄作への第一歩だ。実写版ガッチャマンの悪例は真似しちゃいけないな、うん。ならいっそ――――」

 

「ドゥルーク」

 

「じゃあ僕となのはが融合して、スーパー野菜人ナノークになるっていうのは……」

 

「ドゥルーク!」

 

「おいおい、そんなに気焔をあげてどうしたんだい? 夫の不倫現場を目撃した妻のヒステリックみたいに」

 

「ごめん」

 

「……!」

 

「ドゥルークの気持ちは嬉しいよ、不安でいっぱいだったから、ちょっと元気が出た。でも……フェイトちゃんとは、私が一人だけで向き合わないといけないの」

 

「……………つまり、僕は不必要かい?」

 

「必要とか必要じゃないとかないよ。ドゥルークは……応援してて。そしたら頑張るから」

 

 天使のような空元気にドゥルークは常日頃の剽軽なそれではなく、微かに父親のような暖かい笑顔を見せる。

 ドゥルークはなのはの頭をわしゃわしゃと撫でてから、大人しくユーノやアルフのように観戦へ回った。

 

「まったく。決戦直前だってのにこの調子で大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫さ。なのはの目を見てごらんよ。もうドゥルークなんて見ていない。なのはが見ているのは――――これから来るフェイトだけだ」

 

「まったく寂しいことだけどね。ボカァ娘を嫁に出す父親の心境だよ。僕、泣いちゃいそうだぜ」

 

 アルフの心配にユーノはなのはの瞳を指さすことをもって答えとした。それを見てアルフも納得する。

 目は口より物を言うとはよく聞く話だが、なのはの不屈の双眸は覚悟と決意の強さを雄弁に告げていた。

 そしてその時が訪れる。

 街灯へ降り立つ黒衣の魔導師。フェイト・テスタロッサが決戦の場に現れたのだ。

 

「フェイトちゃん……っ!」

 

「――――――――」

 

 白の魔導師と黒の魔導師は、朝焼けの中で激突する。

 分かりきった物語を記す必要はないだろう。

 高町なのはが不屈の心で束ねた星々の輝き(スターライト・ブレイカー)は、フェイト・テスタロッサを撃ち落とした。

 そして次元を飛ぶ舟に、破滅の紫雷が堕ちる。

 一連の流れを見届けると、ドゥルークは何も言わず去っていった。

 




 これまでこのss内において全く投稿期限を守らないというポカをやらかした私ですが、次こそ本当のことを言います。明日15日午後6時に第10話の投稿を行います。今度こそ本当です。では。
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