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揺れるバスの中一人うつらうつらと外を見る。
行く宛もなくとりあえず旅をしてみたのはいいが何をしようか計画すら立ててなかった、行き当たりばったりの勢い任せで家を出た為に返って余計に困り果ててしまった。
「どうしよっかなぁ……。」
私は桜雨桐乃、小説家だった人だ。
前々まで書き続けていた小説が不人気だったが為に諦めたのだ。こんなことになるなら小説家になんてならなきゃ良かった。
「まぁ、しばらくは大丈夫かなぁ……。」
幸い、旅の資金にはかなりの余裕があった。
しばらく放浪していても大した問題にはならないだろう。
………とはいえ、本当に困った。とりあえず田舎からでて東京まで旅する事にした。
一日3本あるかないかのバスに乗って電車に乗り換えまたバスに乗っての繰り返しでようやく東京に着いた。
「久しぶりだなぁ……。何年ぶりだろう。」
駅から外に出ると真正面には空に向かって高く突き刺さるように伸びたビルの群集が最初に飛び
込んだ。
「…………だいぶ変わったかな…。」
前に来た時と比べなんだか狭く息苦しく感じた。多分また増えたのだろう……都会の人は狭いのが好きなのだろうか…。
「さぁて…着いたのはいいけどどこに行こう……とりあえずマンガ喫茶に行こっかな。」
東京に来たならまずは居を構えなくてはと思ったのならここはマンガ喫茶だと相場が決まってる、らしい……。
「よぉし……そうと決まれば早速動こう…。」
しばらく考えたあと近場のマンガ喫茶を探すことにした。
***
「あれぇ……?」
とりあえず近場のマンガ喫茶を検索して地図を表示。その場所に向かってみたが何故か着かない。
(もしかして迷ったのかな?)
冷や汗をかきまくりながら辺りを見渡すもマンガ喫茶のマの字も見当たらない。
「………どうしよう。」
まずい、完全に迷子だ……。このままでは着かない。
「やばいよやばいよー……。いろんな意味でやばいのー…。」
再度辺りを見回してもマンガ喫茶は見当たらない。仕方ない…とりあえずすぐそこゲームセンターに入った。
「うー……。」
ゲームセンターに入ってすこし奥のベンチに腰を掛けた。
とりあえずジュースを買って音ゲーコーナーの方に向かってみた。どうやらちょうど大会が開いていた様だ。凄まじい熱気を感じる。
「ふぇぇ……凄いなぁ……」
なかでも一人の女性に目がいった。
とても綺麗で、でもその姿は何処か雄々しくすら感じた。
「誰だろう……どこかで見たような……。」
そう思っていたら歓声とアナウンスが響き渡る。
『出たーッ!SEENの得意エリア![スライド&フリック]だーッ!スライドとフリックを綺麗に同時にこなしてくーッ!』
得意エリアとハンドルネームを聴いて確信を持った、この人……雑誌でもよく見かけた人だ。たしか名前は紫崎椎名って人だ。
まさか有名人が目の前に居るという偶然には流石の私も唖然とした。
「凄い………。」
その一言以外言葉が出なかった。
驚いてることもあるがなによりその人のプレイが美しくて、綺麗で、カッコよかった。
『さぁ!最終エリアに突入だーッ!曲の終盤はフリックのラッシュ!ラッシュ!ラーッシュ!』
ナレーションが終わると同時に怒涛のフリックラッシュがやってくる。
もう一人のプレイヤーはMissやAttackを大量に出して焦っていた。それに対しSEENはラッシュでも焦らずJustなどを叩き出す。
『さぁこれでフィニッシュだーッ!気になる結果はーー?SEENの大勝利となりましたっ!エクセレントッ!両者の勇姿に盛大な拍手をーッ!』
勝負はSEENこと紫崎椎名が勝利を納めた。
『今年度の優勝者もやはりSEEN!さすが絶対王者!その実力は計り知れないーーッ!』
ナレーションの言葉と共にSEENへの拍手と歓声が上がり、大会は幕を閉じた。
***
大会が終わり、アタシはベンチに座って近くの自動販売機で買った炭酸飲料を口の中に流し込む。
ゲームをやった後の炭酸飲料は格別に美味かった。さしずめ勝利の美酒というヤツだ。
「あーあ……明日はどうするかなぁ……。」
大会も終わりしばらくヒマを持て余していた、活動中のバンドも長期休暇をとってるため、夏が明けるまでヒマである。
「明日は家でゴロゴロしてるかな……ん…?」
そう考えていた時一人の少女がこちらに向かってきた。見た目からして高校生だろう。その少女は息を切らしながら話しかけてきた。
「はぁ…はぁ…っ……は、初めまして……さっきの大会見てました!とても凄かったです!」
目を輝かせそう話す少女を見てすこし驚いた。
「お、おう……いきなりどうした。」
サインを求める人ならよく居るがそれと同じだろうか。
「あっ……えと…私は桜雨桐乃って言います!」
息切れしながらも律儀に自己紹介するなコイツと思ってふと思い出すように顔を見る
「んん…?桜雨……?」
どこかで聴いた名だ。なんだったか思い出せない。
「えっと、元小説家です!」
ああ、思い出した。アタシがよく読んでいたあの小説の作者だったのか。
(ん……?ちょっと待てよ…?え、なにすげぇ有名人が目の前にいるんだが。)
流石のアタシも驚いた、実を言えば桜雨桐乃の書く小説は私が愛読してるのだ。
「マジかぁ……アンタがあの桜雨桐乃か……アンタの小説読んでるよ、面白くて気に入ってんだ。」
そうぶっちゃけると桐乃は目を丸くして顔を近づける。
「ほ、ホントですか!?」
そう叫ぶと桐乃は顔が近い事に気付き慌てて離れる。
「あわわ、ごめんなさい!」
コイツの反応を見るとアタシはつられて苦笑した。
「いや、いいよ。いやぁしっかし驚いたなぁ……まさか作者が目の前にいるのはビックリしたわ。」
アタシが苦笑しながら話す。すると彼女は照れくさそうにした。
「えへへ、そう言われるとすごい照れます…。憧れの人に言われるなんて思いませんでした。」
顔を赤くして俯く桐乃を見て自然と笑みがこぼれた。現実とは本当に不思議なもんだなと改めて思う。
「んで、桜雨はなんでこんな所にいるんだ?ただゲーセンにいる訳じゃないんだろ?」
とりあえず単刀直入そう聞くと桐乃は俯き話し始める。
「えっと……スランプ解消するために旅に出て、マンガ喫茶探してたら分からなくなっちゃって……。」
まさかわざわざスランプ解消するためにはるばる田舎から東京に来たという。
一体この歳でどういう精神してるんだよ……。
「なるほどねぇ…。」
桐乃の話を聞いて色々考えてみた。多分寝床を探してるんだろう。
「あはは……はぁ……。」
この反応だと相当参ってるようだ、よく無計画で飛び出したなとある意味関心する。
「うーん……分かった、アタシの家に来なよ、しばらくアタシは仕事もなくて暇だしさ。」
アタシがそう聞くと桐乃は慌てて返事した。
「い、いいんですか!?」
そう答える桐乃を見て笑いながら返す
「いいって、遊び相手は1人より2人のほうがいいだろ?」
まぁ半分本音で半分冗談だが…
「えっと、じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらいます」
とまぁ、そういうわけでしばらく桐乃はアタシの家で生活する事となった。
ぶっちゃけすこし不安なところもある、がなんとかなる精神なので対して心配はしてなかったりな。
「そいじゃ、そろそろ帰りますかね。付いてきなよ。」
アタシが歩き始めると桐乃は後ろから慌てて追いかける。
こうして、アタシと桐乃の短い夏休みが始まった。
こんにちは、yukari5000です。今回は短編小説という形で投稿させてもらいました。すこし長めですが読んでくれると幸いです。今度こそ失踪しないよう頑張りますので声援お願いします。