やはり俺の福引旅行はまちがっている。   作:EPIPHANEIA

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私がpixivで書いたSSの第1話です。

不定期更新になりますが、宜しくお願い致します。


第1話

~プロローグ ~

 

カラ~ン!カラ~ン!

 

「特賞!特賞が出ました~!!おめでとうございま~す!!」

 

八幡「…………はっ?」

 

はじまりは、3月の春休み前のとある休日の日だった。

 

何が起こったのか頭の中で理解出来ず、思わずそんな間抜けな声が出てしまった。

 

まさか小町に頼まれて一緒にららぽーとのペットショップに行って、そこでもらったたった一回の福引きでそんな幸運な事が起こるなんて、想像すらしていなかった。

 

小町「う、嘘でしょ……?おにいちゃん……?」

 

一緒にいた小町ですら、今の状況が信じられず呆然としながら俺を見ている。

 

「特賞はなんと!4名様ご招待の3泊4日の春休み札幌・函館ツアー!!本当におめでとうございま~す!!」

 

そんな呆然としている俺達に、福引係の人は声高々に祝福していた。

 

 

小町「すごい!すごいよ、おにいちゃん!!小町、もうおにいちゃんの事、ゴミぃちゃんなんて言えないくらい、ポイント爆上げだよ!!」

 

福引係の人から目録をもらって、ようやく特賞の旅行ツアーを当たったと実感した小町は、凄く興奮しながら喜んでいる。

 

八幡「あっ、ああ……。サンキューな。」

 

一方の俺は、目録を持っていながらも未だに特賞が当たったと実感出来ず、思わず戸惑った返事をする。

 

小町「これは神様が小町の中学校卒業&4月から総武高校に入学するお祝いを、おにいちゃんから貰いなさいって事なのかな?」

 

八幡「バカ言え。そんなわけあるか。」

 

小町は3月に中学校を卒業し、4月から総武高校に入学する。

 

つまり、俺の後輩になる事が決まっていた。(ついでにいえば、川崎の弟である大志の野郎もだが。)

 

小町「何言ってるの、おにいちゃん。この時に使わなかったら、いつ使うの!?今でしょ!」

 

八幡「お前、もう古いからな。そのネタ。」

 

小町の何年か前によく使われていた流行語にツッコミをいれつつも、言葉を続ける。

 

八幡「……でも、そうだな。俺ももう少しで春休みに入るし、せっかくだから親父とお袋にも話して、一緒に小町の卒業&合格祝いで家族旅行に行くとするか。」

 

小町「やったー!さすが、小町のおにいちゃん!!…………あっ、でもお父さんとお母さん、今仕事忙しくて、なかなか時間がとれないって言ってた。」

 

八幡「えっ……?そうなのか……?」

 

親父とお袋…………俺には話さないのに、何で小町には話すんだ……?

 

俺、泣きたくなったぞ。

 

八幡「うーん……。じゃ、延期するか?親父とお袋が時間とれないんじゃな……。」

 

小町「うん、そうだね……。」

 

小町は口では納得したものの、ガッカリした悲しそうな表情を浮かべる。

 

小町にこんな顔をさせて、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

八幡(何か、何かいい方法は無いのか?)

 

小町の為にどうすれば旅行に行けるのか、そう考えていた時だった。

 

留美「……あれ?八幡?」

 

めぐり「あら?比企谷君じゃない?久しぶり~。」

 

偶然なのか予定調和なのか。城廻先輩と留美と出会ったのだった。

 

 

 

 

~サイゼリヤの店内~

 

小町「はじめまして、比企谷小町と言います。兄がいつもお世話になっています。留美ちゃんも久しぶり!」

 

めぐり「私は城廻めぐりです。はじめまして、妹さん。留美ちゃん。こちらこそ宜しくお願いしますね。」

 

小町「小町と呼んでください。ねっ、留美ちゃん。」

 

留美「……うん。久しぶり、小町さん。はじめまして、めぐりさん。鶴見留美です。」

 

城廻先輩と留美と出会った俺と小町は、成り行きで一緒にサイゼリヤで昼食をとっていた。

 

一見全く接点の無い3人(特に城廻先輩と留美)が、まさか一緒の席でメシを食べるなど、想像すらしていなかった。

 

小町「それでめぐりさんと留美ちゃんは、どうしてららぽーとに来ていたんですか?」

 

めぐり「私はスーツを買いに来ていたんだよ。大学の入学式で着る為のね。」

 

留美「……私は参考書を買いに来ていた。総武高校に入る為の。」

 

小町「えっ?留美ちゃん、この間小学校卒業したばかりなのに、もう進路決めてるの?」

 

留美「うん。だって八幡の通っている学校だから。」

 

めぐり「すごいね、留美ちゃん。私は留美ちゃんの頃にそんな事全く考えていなかったよ。留美ちゃんが私達の後輩になってくれたら嬉しいな。」

 

留美「……ありがとう、めぐりさん。私、頑張る。」

 

……………………

 

こんな感じで、意外と3人の会話は弾んでいた。

 

小町はともかく、まさか城廻先輩と留美がここまで会話するとは、俺は予想していなかった。

 

特に留美は、俺と同じぼっちである為、人見知りする傾向があると思っていた。

 

だけど、城廻先輩と小町の雰囲気がそうさせるのか、留美も城廻先輩や小町と普通に会話が出来ている。

 

3人が意気投合している間、俺は完全に蚊帳の外だった。

 

八幡「(……そういや、この3人の共通点といったら……)」

 

俺は3人が会話をしている間、3人の共通点をふと思い出していた。

 

この3人の共通点、それは3月に学校を卒業している事――――

 

八幡「(全く接点無いのに、意外な共通点があるんだな。)」

 

そんな事をふと思い浮かべていた時だった。

 

小町「あっ、そうだ!」パン

 

突然、小町が両手を叩きながら席を立ち上がる。

 

八幡「っ?どうしたんだ、小町?」

 

小町「おにいちゃん、どうせだったらこの4人で行かない?北海道旅行!!」

 

八幡「…………はい?」

 

めぐり・留美「えっ?」

 

突然の小町の提案に、俺は唖然とし、事情を知らない城廻先輩と留美が驚いた。

 

めぐり「ちょ、ちょっと待って、小町ちゃん。私と留美ちゃん、何の話か全く分からないんだけど?」

 

留美「そ、そうだよ。小町さん、どうしてそんな話になるのか説明して。」

 

小町「あっ、そうだった。今日おにいちゃんが…………」

 

突然の提案に戸惑う城廻先輩と留美に、小町は先程俺が福引の特賞である北海道ツアーを当てた事、4名まで使えるので家族と行こうとしたら、親父とお袋が仕事で時間がとれない事を、2人に説明する。

 

留美「八幡、本当なの?」

 

八幡「あっ、ああ。これがそうなんだが。」

 

俺はそう言いながら、目録とその中身を2人に見せる。

 

めぐり「本当だ~!!比企谷君すご~い!」

 

留美「……」

 

城廻先輩は凄く感心しながら、留美は何も言わなかったものの、それぞれ俺の見せた目録に目を輝かせていた。

 

小町「それでどうでしょう?3月に卒業して4月から新しい生活をスタートさせる小町達が出会ったのも何かの縁ですし、おにいちゃんを含めた4人で行きませんか?」

 

八幡「おっ、おい小町。いくらなんでもそれは……」

 

小町が暴走しそうなのを制止しようとしたその時だった。

 

留美「私、行きたい。八幡と一緒なら。」

 

めぐり「わ、私も比企谷君と一緒ならいいかなって……。」

 

八幡「…………えっ……?」

 

城廻先輩と留美が顔を少し赤くしながら、小町の提案に対して答えていた。

 

八幡「ほ、本当にいいんですか?城廻先輩。留美も。」

 

めぐり「う、うん。比企谷君が駄目だって言うなら、しょうがないけど……。もし誘ってくれたら嬉しいなって……。」

 

留美「私も八幡ともっと親密になりたい。今回がそのいいチャンスだと思っている。」

 

八幡「うっ……。」

 

2人の言葉を聞いて、俺の顔も少し赤くなる。

 

小町「(はは~ん。これはもしかして……!)」

 

その瞬間、小町が目を輝かせていたような気がする。しかし、間髪を入れずに小町が続ける。

 

小町「ねぇ、おにいちゃんいいでしょ?小町とめぐりさんと留美ちゃんの卒業をお祝いしてよ。」

 

小町が上目遣いでそうおねだりされた俺は

 

八幡「わっ、分かった。城廻先輩、留美、一緒に行きましょう。」

 

思わず戸惑いながらも、OKの返事を出した。

 

めぐり「本当!?ありがとう~!比企谷君~!!」

 

留美「八幡、ありがとう。」

 

OKの返事を聞いた2人が、凄く嬉しそうな表情を浮かべながら、俺に感謝している。

 

その表情を見た時、何故か俺も凄く嬉しい気持ちになった。

 

その後、俺達は旅行の日時を決めて、目録に記載されていた宿泊先のホテルの予約、チケットの予約等の旅行の打ち合わせをしていた。

 

その際、俺と小町は城廻先輩と留美の連絡先も交換したり、スマホで札幌と函館の名所などを検索しどういうルートを通るか、旅行当日の集合場所等を話しながら、時間を潰していた。

 

八幡「それじゃ、城廻先輩、留美。また旅行当日で。留美はちゃんと親御さんの許可をとってから、来るんだぞ。」

 

留美「大丈夫。八幡と一緒って言えば、お父さんとお母さんも安心する。」

 

小町「えっ!?おにいちゃんって留美ちゃんのご両親から、そんなに信頼されてるの!?」

 

留美「うん。八幡には感謝してるって。八幡に会ってみたいとも言ってた。」

 

つーか、知らない間に俺はルミルミの両親から信頼されてるのか?なんか照れ臭いぞ。

 

めぐり「私も大丈夫だと思うよ。友達と旅行だって言えば。」

 

八幡「ええ。城廻先輩なら大丈夫だと思いますが、一応ご両親の許可をとってからお願いしますね。」

 

めぐり「うん。分かったよ。それじゃね、比企谷君、小町ちゃん、留美ちゃん。」

 

留美「またね。八幡、小町さん、めぐりさん。」

 

そう言いながら、今回は解散した。

 

 

 

 

~帰り道~

 

小町「ふ~んふんふん♪」

 

小町が上機嫌に鼻歌を歌いながら、スキップしている。

 

それほどまでに、今回の旅行が楽しみなのだろう。

 

今回旅行に行くメンバーは、城廻先輩、留美、小町、そして俺。

 

偶然とはいえ、まさかこのメンバーで行く事になるとは思わなかった。

 

でも、俺にとって心を穏やかにして旅行に行ける癒し系のメンバーではあると同時に思う。

 

留美も俺が「ルミルミ」など変な事を言わない限り毒は吐かない癒し系、城廻先輩も悪い言葉を言わない癒し系の人。

 

勿論、小町は俺にとっての癒しの天使。戸塚と双璧を成すくらいの。

 

……よく考えたら、ある意味最高なんじゃねぇか?そんなメンバーで旅行に行けるなんて。

 

仮の話だが、雪ノ下・由比ヶ浜・一色で行くよりも、遥かに良いかもしれないぞ……?アイツらだと、罵倒されまくりで楽しい旅行になると思えないし。

 

小町「おにいちゃん、どうしたの?もう家着いたけど。」

 

八幡「えっ?あっ、悪い。」

 

そんな事をふと思い浮かべているうちに、いつの間にか家に着いていた。

 

そして、自分の部屋に入ってベッドに大の字になりながら、ふと呟いた。

 

八幡「……旅行、楽しみだな…………。」

 

今回のメンバーで行く旅行。

 

来週の春休み初日から行く旅行に、俺も小町同様これまでにない楽しみを期待していた。

 

 

 

 

 

――――しかし、その淡い期待は

 

いろは「お待ちしてましたよ、先輩♪」

 

結衣「ヒッキー、やっはろー!」

 

陽乃「ひゃっはろー!駄目だよ、比企谷君。こんな楽しそうなイベントにお姉さんを呼ばないなんて♪」

 

雪乃「おはよう。随分な重役出勤ね、遅刻谷君。」

 

沙希「……おはよ、比企谷。」

 

八幡「……なんでいるの?お前ら……」

 

5人の招かれざる客達によって、旅行初日の朝から儚くも崩れさろうとしていた。




どうも、この間の王様ゲームもどきを書いた作者ですw

今回は、この間の短編の元となる、pixivで投稿したSSの第1話を、掲載してみました。

この旅行をきっかけに、八幡と8人のヒロイン達の物語が始まったという感じですw




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