やはり俺の福引旅行はまちがっている。 作:EPIPHANEIA
また、メインメンバー9人以外の幕間的なおまけ物語も出てきます。
予めご了承した上で、閲覧のほう宜しくお願い致します。
では、第3話どうぞ。
~福引翌日・ファミレス~
いろは「『復讐』……ですか?」
結衣「それに『私達のやり方』って……?」
陽乃「『復讐』って言っても、別に危害を加えるとかの意味じゃないよ。言い変えれば、『サプライズ』―――ドッキリを仕掛けてやろうって事。」
雪乃「ドッキリ……?って、姉さんまさか!?」
陽乃「そのまさかよ。比企谷君達の旅行に参加しようって事。比企谷君達にはオフレコでね。」
いろは「ええっ!?でも、今週末ですよ!?そんな急に、チケットとか宿泊先とかとれるんですか!?」
陽乃「何とかなるよ。ここに来るまでの間に少し調べたんだけど、その福引、私と雪乃ちゃんの父さんの会社が1枚噛んでるから。」
雪乃「父さんの会社?それで調べて分かったの?」
陽乃「勿論。どの飛行機に乗るか、どの宿泊先に泊まるか分かったし、比企谷君達と同じ行動をとれるようにだって出来るよ。但し……。」
沙希「ただし?」
陽乃「やっぱり急な話だから、今からだと人数が限られちゃう。おそらく最大で5人が限界かな。」
結衣「5人ですか?」
陽乃「そう。たまたま、比企谷君達の乗る飛行機の余り席も、泊まるホテルの空き部屋も丁度5人分しか無いから。」
雪乃・結衣・いろは・沙希『…………』
陽乃「さて、どうするの?強制じゃないから、参加か不参加かは、みんなに任せるけどね。」
陽乃の問い掛けに暫し沈黙する一同。しかし、その沈黙を破ったのは意外な人物だった。
大志「…………行ってきなよ、姉ちゃん。」
沙希「えっ!?大志!?」
大志「姉ちゃん、いつも俺達の為に頑張ってくれてるじゃん。たまには自分の為に頑張ってみなよ。姉ちゃんがいない間は俺が京華達の面倒見るからさ。」
沙希「そ、そんな事言ってくれるのは嬉しいけど、なんでアタシが自分の為に頑張るって……!?」
大志「姉ちゃん、お兄さんの事が好きなんだろ?よく家でお兄さんの話する事、多いじゃん。」
雪乃・結衣・いろは『…………はっ?』
沙希「バ、バ、バ、馬鹿!!大志、アンタ、何て事を言って……!?」
京華「そーだよ!さーちゃん、けーちゃんとおなじで、はーちゃんのことだいすきなんだよ!」
沙希「け、けーちゃん!」
大志の爆弾発言に唖然とする雪乃達とそれに対して顔を真っ赤にして慌てる沙希、そして追い討ちをかける京華。
陽乃「沙希ちゃん。」
そんな中、1人冷静に状況を見ていた陽乃が沙希に声をかける。
沙希「は、はい!」
陽乃「こんな可愛い応援団がいてくれるなんて、随分心強いじゃない。」
沙希「え、ええ……。」
陽乃「今回はこの子達の好意に甘えてみたら?この子達の為にも、沙希ちゃん自身の為にも。」
沙希「……でも、旅行に行く余裕なんてアタシには……。」
陽乃「旅費の事?それなら心配しないで。今回、私の名前でもう予約したし、私が出すから。」
雪乃「えっ!?姉さん、もう予約したの!?」
陽乃「当たり前じゃない。こんな楽しそうなイベント、私が見逃すとでも思ってるの?当然、私も参加するからね。」
沙希「で、でも悪いです!!初めて会って話したのに、そこまでしてもらうなんて……。」
陽乃「別に見返りなんて求めてないよ。私がやりたいって思っている事に、沙希ちゃんがいたら面白そうだなって。」
沙希「…………」
陽乃「最終的には沙希ちゃんの意志に任せるよ。さっきも言った通り、強制じゃ無いからね。どうするの?」
沙希「…………」
陽乃の言葉に沙希は目を閉じながら思案する。そして―――
沙希「……アタシ、行きます。行かせてください、北海道旅行に。」
陽乃に対して強い意志を宿した瞳を向けながら、沙希は旅行の参加を宣言した。
陽乃「オッケー、これで沙希ちゃんは参加、と。それで雪乃ちゃん達は?」
結衣「あたしも行きます!沙希に負けられないですもん!」
沙希「ゆ、由比ヶ浜……?負けられないって、何が……?」
いろは「私も行きます。川崎先輩っていう強力で新しいライバルまで参加するのに、私が参加しないなんて、あり得ませんから。」
沙希「ラ、ライバル!?アンタまで何言って……!?」
雪乃「姉さんにまた借りを作るのは癪だけど、私も参加するわ。川崎さん、私、凄く負けず嫌いなの。だからそのつもりで。」
沙希「ゆ、雪ノ下!?そのつもりってどういう……!?」
雪乃達にライバル宣言をされて、顔を真っ赤にしながら戸惑う沙希。
そんな様子をドン引きして見ている大志と何が起こっているか分からない表情で見ている京華達。
そんなやり取りを見ながら、陽乃は心の中でほくそ笑む。
陽乃「(……さて、役者も揃った事だし、覚悟しなさいよ~比企谷君~♪こんな面白イベントに、私や雪乃ちゃん達を除け者にして、めぐり達と楽しもうとした罪は重いんだからね~♪)」
陽乃も雪乃達同様、内心悔しかった……のかもしれない。
~旅行1日目・成田空港~(八幡side)
八幡「……なんでいるの?お前ら……。」
目の前にいる5人を見た瞬間、俺の今回の旅行に対する淡い期待が、儚くも崩れ落ちる音が聴こえたような気がした。
俺をはじめ、城廻先輩も小町も留美も、開いた口が塞がらない。
陽乃「やったー!ドッキリ大成功!!!」
そんな俺達に対して、魔王こと陽乃さんが、この中の最年長者であるにも関わらず、してやったりの表情ではしゃぎながら喜んでいた。
めぐり「へっ?ド、ドッキリ?どういう事ですか?はるさん。」
陽乃「決まってるじゃない、めぐり。めぐりや比企谷君達の北海道旅行、私達も参加させてもらうからね。」
小町「ええええええっ!?雪乃さんや結衣さん達が!?」
留美「……八幡、どういう事?」
小町が凄く驚き、留美が睨み付けながら俺に問い詰めてくる。
八幡「い、いや!俺は知らんぞ、ルミルミ!俺が旅行に誘ったのは、お前と城廻先輩と小町だけだ!」
留美「ルミルミ言うな、キモい。あと、お前じゃない、留美。」
八幡「……ごめんなさい。」
小学校を卒業したばかりの留美に頭が上がらない俺。情けなさすぎて、涙が出そう。
いろは「むー。先輩、留美ちゃんと随分仲良さそうじゃないですかー?」
八幡「馬鹿言え。それより、なんでお前らまで俺達の旅行に参加するんだよ?」
雪乃「あら、それは勿論、城廻先輩と小町さんと鶴見さんの卒業と進学をお祝いする為よ。その為の旅行なのでしょう?」
八幡「へっ?城廻先輩と小町と留美の為?」
結衣「そうだよ、ヒッキー!あたし達だって関わりがあるんだから、声掛けないなんて水臭いじゃん!」
八幡「いや、でもおかしいだろ!小町以外接点の無い、か、か、……川村?まで来て……!」
沙希「……川崎なんだけど。いい加減覚えないと、本気でぶん殴るよ?」
八幡「すいません。勘弁して下さい。」
いろは「とにかく、私達にもお祝いさせてくださいよ。せっかくの記念旅行なんですから、みんなでお祝いして楽しまないと損じゃないですか。」
八幡「……そういや、どうして城廻先輩と留美が一緒だって知ったんだよ?俺は小町と行くとしか話してねぇじゃねぇか。」
俺が雪ノ下達に疑問を投げ掛けると、意外な人から答えが返ってきた。
めぐり「あっ、それ多分、私だと思う。私がはるさんに話しちゃった。」
八幡「……えっ?」
そう言いながら、舌を出して謝る仕草をする城廻先輩。
し、城廻先輩……!よりによって、一番話してはいけない人に話しちゃったんですか……!?
八幡「い、いや、それでも川崎まで来る理由にはならないですよ。陽乃さんとも城廻先輩とも、直接的な接点が無いはずだから……。」
心の声を抑えつつ、城廻先輩に問い掛けると
小町「あっ、もしかして、沙希さんは大志君に聞いたのかも。この事、大志君にメールしちゃったし。」
八幡「……はぁっ!?」
今度は小町が「てへぺろ」と顔に出しながら、川崎の来た原因らしき事を話した。
あのクソ野郎……!ふざけた真似を……!
八幡「城廻先輩はともかく、大志の野郎、旅行から帰ってきたら……!」
沙希「帰ってきたら、何だって?」ギロッ
八幡「ごめんなさい。何でも無いです。」
思わず大志への報復を口に出したら、すかさず川崎が睨み付けてきたので、速攻で謝罪する。
小町「でも、本当に嬉しいですよ!まさか、小町達の卒業記念旅行に雪乃さんや結衣さんやいろはさん、更には陽乃さんと沙希さんも来てくれるなんて!小町的にポイント高過ぎどころかカンスト寸前です!」
このメンツの中で、俺を除いたら全員とそれなりに親交のある小町が、凄く嬉々としている。
結衣「そう言ってくれると、あたし達も嬉しいよ。小町ちゃん。」
沙希「ありがとね、小町。」
いろは「小町ちゃん、本当に嬉しそうだね。参加して良かった。」
小町「そりゃそうですよ!未来のお義姉ちゃん候補が全員集合なんですもん!」
めぐり「…………へっ?」
しかし、小町の次の言葉に、一部を除いた全員が石のように固まる。
雪乃「こ、小町さん。あ、貴女は何を勘違いしているのかしら?わ、私はそこの男が貴女や城廻先輩や鶴見さんにやってはいけない事をしないか、監視する目的もあって……。」
留美「お義姉ちゃんって……。私、小町さんよりも年下なのに……。」
雪ノ下と留美は否定的な発言をするものの、小町の言葉に陽乃さんと小町以外の全員が顔を赤くしながら俯いている。
何これ……?何で小町の戯言に顔を赤くしてるのですか、皆さん?
陽乃「まあ、そういう訳だからね。比企谷君。めぐりと小町ちゃんと留美ちゃんの一生の思い出になるような、楽しい旅行にしましょうよ。ついでに、私と比企谷君の一生の想い出もね♪」ギュッ
八幡「いいっ!?は、陽乃さん!?」
陽乃さんはそう言いながら、俺の腕に抱きついてくる。
雪乃・結衣・いろは・沙希・めぐり・小町・留美『あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
その刹那、他のメンツが叫び声をあげて大騒ぎになった。
雪ノ下・由比ヶ浜・一色・留美が俺と陽乃さん(といっても、雪ノ下以外は俺のみ)を散々非難し、川崎もジト目で睨んできたり、城廻先輩も苦笑いをしたり、小町も何故かキラキラした目で俺達を見たり等、一悶着も二悶着もあって、時間ギリギリに飛行機に乗った事となってしまう始末だった。
そんなドタバタの中、俺達9人の北海道旅行がスタートしたのであった。
~新千歳空港~
八幡「ふわぁ~……。よく寝たなぁ……。」
飛行機から降り、北海道の地に足を着いた俺の第一声。そんな俺に対して小町が茶化すように言う。
小町「おにいちゃん、スッゴク寝てたよね。二度寝しといて。」
留美「ホントだね、小町さん。せっかく、あの人達と席が離れて、八幡と話すチャンスだったのに……。」
めぐり「いいじゃない、留美ちゃん。比企谷君の寝顔、良かったでしょ?」
留美「………うん。いつもの八幡と違って、格好よかった。」
めぐり「やっぱり?私もそう思っていたんだ~。見れて良かったね、留美ちゃん。」
あの、めぐりん先輩にルミルミさん。そんな事言われると、俺、もう人の前で居眠りなんて出来ないですよ?恥ずかし過ぎて、穴に入っちゃいますよ?
結衣「あっ、ヒッキー!」
陽乃「おーい!比企谷君ー!」
いろは「せんぱーい!!」
そんな事を考えている内に、席が離ればなれだった由比ヶ浜達が来て、俺達と合流する。
よく考えてみたら、女8人に男が俺1人って、どんな罰ゲームだよ……?只でさえ、最初の予定だったら、女3人に俺1人でも気が引けるっていうのに……。こんな事だったら、俺が自腹切ってでも、戸塚を参加させれば良かった……。あと、お情けで材木座でも(奴は払って貰うが)。
?「あの……比企谷様ご一行で宜しいでしょうか?」
そんな下らない事を考えながらターミナルを出ると、突然女の人の声が聴こえて、顔をあげてみる。
八幡「えっ……!?」
そこには、バスガイドの制服を着た黒いロングヘアーの綺麗な美女が、にこやかな顔で立っていた。
八幡「あっ、は、はい。そうでふけど。」
突然、こんな美女に声を掛けられてキョドってしまい、舌を噛みながら答えてしまった。
?「ようこそ、北海道へ。この度は、福引でのご当選、本当におめでとうございます。今回比企谷様達の旅行のガイドを担当させて頂く事になりました。宜しくお願い申し上げます。」
八幡「いっ、いいえ。こちら宜しゅうお願いひます。」
また舌を噛んでしまう。恥ずかし過ぎて、泣きたい…………。
?「あれ……?」
その時、俺達を見てガイドさんが、きょとんとした顔をする。
八幡「どうしたんですか?」
?「いえ。比企谷様は4名様とお伺いしていたのですが、見たところ9名様いらっしゃるみたいなのですけど……?」
陽乃「あっ、私達の事ですか?比企谷君達と同じ日に5名で予約した雪ノ下です。」
?「あっ、雪ノ下様もご一緒だったのですね。大変失礼致しました。雪ノ下様、この度は当観光会社をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。」
陽乃「大丈夫ですよ。こちらこそ宜しくお願いします。」
笑顔で会釈をする陽乃さん。しかし、これまでにこやかな笑顔をしていたガイドさんの表情が曇る。
?「……それで、皆様には1つお詫びしなければいけない事がございまして……。」
雪乃「お詫びしなければいけない事?何ですか?」
?「ええ、実は……。」
ガイドさんが何かを言いかけた時だった。
??「――――――――――え~~~~ん!!ごめんなさ~~い!!遅くなりました~~~!!」
突然、大声で泣き謝りながら、俺達の方にダッシュで向かってくる女の人の姿が見える。よく見ると、ガイドさんと同じ制服を着ていた。
その女の人は亜麻色のショートカットの女の人で、ガイドさんと違って、綺麗と言うよりも可愛らしい感じだった。
その女の人を見た瞬間、ガイドさんの表情が一変する。
?「璃夢!あれほど遅刻は厳禁だって、いつも言ってるでしょう!」
璃夢「あ~~~ん!!ごめんなさい、姉様~!!目覚ましもちゃんとかけてたのに~!!」
?「こら!仕事では『姉様』じゃなくて『先輩』って呼ぶようにって言ってるじゃない!それに、寝坊での遅刻は通算何十回目だと思ってるの!」
ガイドさんが先程のにこやかな顔とは対照的に、怒った表情で璃夢さんと呼んだバスガイドさんを叱っている。その光景を見て、俺達全員が唖然としていた。
八幡「あ、あのー……もういいんじゃないですか?」
見かねた俺(というより、うちの女性陣全員に無理やり後押しされて)が、ガイドさん達に声をかける。
?「あっ……も、申し訳ございません!お客様の前で、ついお見苦しいところを見せてしまって……!」
璃夢「ご、ごめんなさい!私が遅刻してきたばっかりに……!」
八幡「いえ、良いんですよ。俺達、気にしてませんから。」
2人に深々と頭を下げられて、なんか逆にこっちが(というより俺自身が)恐縮した気持ちになってしまう。こんな綺麗な美女達が、俺の事を丁重に扱ってくれるなんて……。うちの女性陣もこの2人に見習ってほしいものだ……。態度といい、綺麗さ……
雪乃・結衣・いろは・留美・陽乃・小町『比企谷君?(ヒッキー?)(先輩?)(八幡?)(ゴミぃちゃん?)』
何で一致団結して、俺の頭の中を読んでくるんだよ、お前ら?
城廻先輩も苦笑いしてるし、川崎も睨みつけてるし。
八幡「と、ところで、貴女はいったい……?」
璃夢「あっ、自己紹介が遅れました。私は雪ノ下様のバスガイド担当をさせて頂きます、能登谷 璃夢(のとや りむ)です!今回がバスガイドデビューになりまーす!皆さん、宜しくお願いしますねー!」
……うん。明らかに新人さんですね。さっきのガイドさんの挨拶に比べたら…………。あれ、そう言えば…………?
八幡「あの……さっき『姉様』って言われてましたけど、もしかしてガイドさんと璃夢さんって……?」
俺が尋ねると、ガイドさんが困った顔をしながら答える。
奈呼「そうです。私達、姉妹なんです。自己紹介が遅れましたが、私は能登谷 奈呼(のとや なこ)と申します。今回は璃夢の教育も兼ねて、雪ノ下様の旅行にも同行させて頂きます。改めて、宜しくお願い申し上げます。」
成程な。要するにガイドさん改め奈呼さんは、新人教育ついでに、俺達の旅行の案内をするというわけだ。
璃夢「あれ?もしかして、ね……先輩の担当の比企谷様もご一緒なんですか?」
奈呼「そうよ。昨日のミーティングで聞いてなかったの?しかも、比企谷様のご一行と雪ノ下様のご一行はお知り合いみたいだから、一緒に来られたのよ。」
璃夢「そうなんですか!?そう言えば、偶然同じ千葉県から来るから、珍しいなって思ってたんです。」
璃夢さんとやら、知らない人にとっちゃ確かに偶然かもしれないが、陽乃さん達のグループは、俺達の旅行を知って参加した仕組まれたグループだぞ。
璃夢「よーし!では早速私達の旅行会社のバスで、札幌までお連れ致しますよー!皆さーん!ごちらでーす!」
奈呼「皆様、どうぞこちらへ」
そうして、俺達は奈呼さんと璃夢さんに案内されて、新千歳空港から札幌へと向かうバスに乗り込んだ。小さいマイクロバスだったが、俺達だけを乗せるのには充分すぎるくらい広いスペースがあった。
そうして、俺達は最初の目的地、今日と明日に宿泊するホテルへと向かうのであった。
おまけ・第1話
~旅行1日目の夜・総武高校~
静「ふう……」
平塚静は、残された仕事を大方片付けて、一服していた。
春休み初日にもかかわらず学校にいたのは、4月からの新年度開始と新入生受け入れの準備の為の仕事をしていたからであった。
静「この分だと、明日と明後日は連休だから問題ないな。よし、久しぶりに陽乃辺りを誘って、飲みに行くか。」
残された仕事の内容を見て、明日と明後日の休みと陽乃と飲みに行く事を決めて、陽乃に連絡をした。
トゥルル ガチャ
陽乃『ひゃっはろー!静ちゃん、久しぶりだね!どうしたの?』
静「久しぶりだな、陽乃。たまには、お前を飲みに誘おうと思ったんだが、どうだ?」
陽乃『あっ、ごめーん。誘ってくれたのは嬉しいんだけど、今、旅行中なんだ。』
静「旅行……?珍しいな、お前が旅行だなんて。まさか、1人旅か?」
陽乃『違うよー。比企谷君と北海道に行ってるんだよ。婚前旅行でね♪』ドンガラガッシャーン‼
静「………………………………………………はっ?」
陽乃の発言の瞬間、静は頭が真っ白になり、電話の向こう側から、騒がしい物音が聴こえてきた。
静「ひ、ひ、ひ、ひ、比企谷と、こ、こ、こ、婚前旅行だと!?」
陽乃『そーだよー。私、比企谷君と結婚を前提にしたお付き合いを……』
雪乃『何、馬鹿な事を言ってるの!?姉さん!!』
結衣『そうですよ!!これは小町ちゃんと留美ちゃんと城廻先輩の卒業記念旅行じゃないですか!』
いろは『大体、何で先輩とはるさん先輩が、結婚を前提にしたお付き合いをしているんですか!?』
沙希『比企谷、どういう事!?』
留美『八幡、ちゃんと説明してほしいんだけど……。』
八幡『い、いや、落ち着け、お前ら。どう考えても、陽乃さんの戯言じゃないか。』
めぐり『そ、そうだよ、みんな。比企谷君、私は信じてるからね。ちゃんと説明してくれたら。』
八幡『そ、それって、説明しない限りは信用しないって事ですか!?』
小町『うーん。流石、陽乃さんですね。小町的にポイント高い♪』
電話の向こうでは、陽乃や八幡達が大騒ぎをしている様子が聴こえてくる。電話の向こうの声で、静は誰がいるのか瞬時に理解出来た。
静「……………………陽乃、電話を切るぞ。邪魔して悪かったな…………。」
陽乃『あっ、わかったよー。お土産買ってくるから、期待して待っててねー!』
ピッ
静「………………ふ…………ふふふふふ………………ははははは………………!」
電話を切った刹那、静の中の『何か』が壊れて、乾いた笑いが出てくる。
静「同級生なら未だしも…………まさか、教え子達にまで先を超されてしまうとはな………………!」ポロポロ
笑いながらも、静の両目から涙が零れ落ちる。そして
静「―――――――うああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」
叫び声をあげながら高校を出て、夜の千葉の繁華街へと走り出した。
飲み屋で自棄酒をした果てに酒乱になり、その店にいた何組かの不幸なカップルの男に問答無用で襲い掛かり、店を追い出されると、今度は道行く何組かの不幸なカップルの男相手に大暴れをして、最終的には警察のお世話になったという。
なお、警察のお世話になってる間に八幡達が帰ってきて、八幡や陽乃達からお土産を貰えなかったのは、全くの余談である。
静ちゃんファンの皆様、誠に申し訳ございません(土下座)
陽乃の北海道旅行の予約に関しては、確かにこんな急には取れない可能性もありますが、ご都合主義という事で勘弁してくださいw