マリス・イン・アナザーランド   作:Die-O-Ki-Sin

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SAVE4.狡猾な翼

「ブーン隊は合図に合わせて突撃を、プカプカ隊は味方の生産、ブッブー隊はプカプカ隊の警護をお願いします!」

 

 嵐の平原。その中央には竜巻と、古ぼけた時計塔が建っている。その時計に針は無く、二度と動き出すことはない。

 今日は土曜日。ゆっくりと魔女でも探そうかなーなんて言っていたら、聖ドレアン学院の近くでこの魔女結界とエンカウントしたのだ。

 嵐に乗せられて、結界内をくるくると廻る魔女。黒いカラスのような羽根が生えた、二枚舌の唇だ。

 私は落書きの魔女に召喚してもらった使い魔達で軍隊を作り出した。キュゥベえによると使い魔ってのは基本無能らしいが、この子達はそれなりに言うことを聞いてくれる。ブーン隊は飛行機に、ブッブー隊は車に乗っている。中でも船に乗ったプカプカ隊は優秀で、他の使い魔を召喚する能力を備えていた。

 

「そーれ!突撃ぃっ!」

 

『『『ぶぅぅぅぅぅん!』』』

 

 私の声に合わせて、飛行機に乗った使い魔達が魔女に向かって飛び立っていく。するとそれを遮るように魔女の使い魔達が現れた。

 

『イイワカ、クゴス、ンジュシゴ』

 

『ネイタテミ、トッズ』

 

 黒い一本の羽根の先に目玉が付いた形の使い魔は、何かを言い合いながら魔女を見つめる。するとその姿が歪み、魔女とおんなじ姿になった。

 

「えっ!?成長したんですか!?」

 

 使い魔は成長すると魔女になるらしいが、2体同時にだなんて。さらに搭の中から次々と現れる使い魔達も、同じように魔女の姿に変化する。

 

『タガスナキテス、キテス、キテス』

 

 新しく生まれた魔女達は、2枚の舌を伸ばしてきた。突進していった使い魔達が、舌に巻き付かれて潰される。

 私もカードを投げて応戦するが、不規則な風に動きを委ねる魔女達に攻撃が当たらない。

 

「っ、めんどくさいですね……っ!」

 

『ナルスヲマャジ、ナルスヲマャジ』

 

 後ろに回り込んだ魔女が、2枚の舌を私に向かって伸ばした。

 

「んなっ!?」

 

 ぬめっとした不快な感触。魔女は私の両手と両足を縛ると、そのまま浮遊を行った。

 

「は、離してください!」

 

 結界の空をくるくる、くるくると回っていく。

 魔女にこちらの言葉が通じるわけもなく、縛られた四肢からはギチギチと嫌な音がする。

 

「っ、もう怒りましたよ!―ツーペア―!」

 

 4つのゲートを呼び出し、カードを発射。2枚の舌と羽を切られ、魔女は草原へと落下していった。

 

「止めですよ!」

 

 最後に1枚のトランプを、落下しながら魔女に向けて投げた。カードは一直線に飛び、魔女の身体を貫いた。

 

『?!ァァァァァャギ』

 

 魔女の身体を白い霧が覆った。霧はすぐに晴れ、そこにいるのは羽と目玉の使い魔。

 

「……えっ?」

 

 つまりこいつは……変身してたってことですか?

 

「これは……マズイですね」

 

 使い魔は次から次へと湧いてきて、魔女に姿を変える。皆が皆風にのって移動するものだからもうどれがオリジナルなのか分からない。

 

「全滅させれば……」

 

 でも、残念ながら私の魔法にそこまでの火力はないようだ。まとめて蹴散らせる砲撃みたいな必殺技が欲しくなってくる。何とかフィナーレみたいな。

 

「……よし、退きましょう」

 

 正直言うなら、こいつと私の相性はすっごく悪そうだ。一対一なら私の魔法は強いけど、こんなに沢山、しかも魔女に化けているのだ。一体オリジナルを倒せるまでにどれ程の時間がかかることやら。その時間を使って他の魔女を探した方がいいかもしれない。

 私がそう考えて、使い魔達をゲートに帰らせた直後。

 

「―ジャッジメント―」

 

 一閃。

 

 使い魔達が真っ二つに割れ、もとの姿へと戻っていく。今の一撃で半分くらいの使い魔が消え去った。

 

「な、何が起きて……!?」

 

 あれは斬撃だった。それがかなりの広範囲を襲ったのだ。

 

「あらあら、貴女も仕留められれば良かったのに」

 

 結界の入り口に立つ少女。白と紺色をメインに、金色で飾られた聖職者の様な服を着ている。教皇とかが着ていそうなデザインだ。その手には彼女の身長よりも大きな斧が握られていた。

 

「あなたが、この街の魔法少女……!」

 

 キュゥベえの言っていた私以外の2人の魔法少女。彼女はその1人なようだ。つまりもう1人が、黒いフードの魔法少女なのだろう。

 

「この街にわたくし以外の魔法少女は要りませんわ。この街を守るのはわたくしの役目なのです」

 

 分かったのなら……。そう言って少女は斧を大上段に構えた。

 

「……失せなさい、ウジ虫」

 

 彼女が斧を降り下ろすと、衝撃波が斬撃となって放たれる。さっきの攻撃はこれですか……!

 私は咄嗟に横に飛び、その斬撃を寸でのところで回避した。斬撃に掠ったらしい髪の毛の先がパラパラと落ちていく。

 

「おやおや、これは随分なご挨拶ですねぇ」

 

 彼女の死角にゲートを3つ展開。さらに挑発して彼女の注意をこっちに向ける。

 

「挨拶は大切ですわよ?……まぁ、貴女のような下等生物には分からないかもしれませんわね」

 

 オホホ、と口に手を当てて笑う少女。……面白い。絶対にぎゃふんと言わせてやりますよ。

 

「上流階級のお嬢様にしては斧なんて野蛮なものを持ってるんですねぇ」

 

「あら、知らなくって?昔から罪を裁くのは斧と相場が決まっておりましてよ?」

 

 そのままにらみ合いが続く。お互いがお互いを警戒し膠着状態になっている。

 そうこうしてる間にも使い魔は増えていってるし、ぶっちゃけこの魔女と戦うつもりもないのでさっさと帰りたい。……だけと、このお嬢様は気に入らない。

 

「へぇ、流石お嬢様は教養がおありなようですねぇ……なら、私もご挨拶しないと!」

 

 スリーカード。3枚のエース達がお嬢様に向けて飛び――

 

「あらあら、乱暴な挨拶ですこと」

 

 ――上に『落ちた』。

 

「……なっ!?」

 

「――ガラ空きですわ!」

 

 お嬢様は想定外の事態に狼狽えた私と一瞬で距離を詰めると、斧の柄で私の腹部を殴打した。

 

「かはっ……!?」

 

 私の体は勢いよく吹き飛び、動かない時計塔に激突した。

 

「このわたくしが実戦経験の少ない貴女に遅れをとると思って?」

 

 そうして嘲るように笑ったお嬢様は、私の腕を踏みにじった。

 

「くっ……」

 

 お嬢様は敵意を向ける私の目を見て、愉悦の笑みを浮かべている。……気にくわない。

 今度は私とお嬢様の丁度中間地点にゲートを生成、カードを発射した。

 

「っ――」

 

 今度は上に落ちることは無かった。カードは真っ直ぐと飛び、お嬢様の腹部を貫いた。

 

「ッ……よくもわたくしの身体に傷を……ッ!」

 

 お嬢様はバックステップで私から距離をとると、再び斧を大上段に構えた。

 

「即・死刑ですわ!」

 

「私刑の間違いじゃ無いんですかぁ?」

 

 私は足元にゲートを展開して、どどめ色の空間に逃げ込んだ。

 私がゲートを閉じた直後、私のたっていた場所には大きな傷跡が残っていた。

 

「うわぁ……」

 

 まず間違いなく『即死』刑だっただろう。間に合ってよかった。

 さて、この安全圏の中で対策を考えなければ。私がカードを飛ばしたとき、カードはお嬢様にぶつかる前に上に落ちた。でも2回目ではそんなことは無かった。1回目と2回目の違い……カードの枚数?いや、きっと問題になったのはゲートとお嬢様との距離だ。彼女の魔法を何かしらのバリアを張るものだと仮定すると、2回目のゲートはバリアの中にあったのかもしれない。

 

「……絶対に泣かせてあげますからね」

 

 私はゲートを展開し、彼女の後ろに飛び出た。

 

「この近距離ならっ!」

 

 両手に持ったカードを扇のように広げ、彼女の身体を切り裂く。

 

「なっ!?」

 

 不意の急襲に対応できなかったのか、お嬢様はその場に崩れ、私の体は上に落ちていく。

 

「って、えぇぇっ!?」

 

 ある程度の高さまで上昇したところで、今度は本来の重力に従って落下を始めた。

 

「……厄介ですわ。貴女はここで殺しておくべきね」

 

 落下してくる私を、斧を構えて待ち構えるお嬢様。このまま落ちれば私の首がサヨナラ満塁ホームラン。なら、私のすべきことは!

 

「またいつか、お会いしましょう?お嬢様っ!」

 

 自分の真下にゲートを作成し、逃げることだ。

 

 

 ボロボロの身体で家につく。魔力は消費するわ、結局他の魔女は見つからないわ、さんざんだ。

 

「あの腐れお嬢様……いつか土下座させてやります!」

 

 私はそんな決意を胸に、とりあえずゴロゴロしていたキュゥベえの触手で蝶々結びを作った。




四話でした。お読みいただきありがとうございます。
まどマギのオリジナル魔女とか考えるのが好きですね。もう色々と楽しいです。
ではでは、また次回お会いできるのを心待ちにしております。


以下設定↓
嘘つきのカラス
嘘つきのカラス。その性質は狡猾。嘘しかない、嘘しか知らない彼女の羽根は羽ばたくことが出来ず、ただ結界内に吹き荒れる風に流される。閻魔様に引っ張られても良いように、2枚の舌は何処までも長く伸びていく。
別名:風見鶏の魔女
特徴:両端にカラスのような羽根が生えた2枚舌の唇。羽根はあるが羽ばたくことが出来ず、風に乗ってゆらゆらと舞っている。2枚の舌は何処までも長く伸び、それを武器にして攻撃してくる。

欺く瞳
欺く瞳。その役割は嘘。瞳の無い主の為の眼。しかしこの目が映すのは主だけであり、主が望む景色は見させない。
別名:風見鶏の魔女の手下
特徴:目玉にカラスのような羽根が生えたシンプルな姿。その目が映したものの姿を真似するが、魔女しか見ないので魔女にしかなれない。

風見鶏の魔女の結界
背の高い草が生い茂る雨の草原で、中心にはロンドンにあるような時計塔が立っている。時計塔には入口がなく、時計も動いていない。塔を中心に弱めの竜巻が発生しており、魔女はこの風に乗って移動する。
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