今回の話は、艦これの世界観にある魔眼だけを突っ込んだだけの話です。大分オリジナルの設定が組み込まれていたりしますがアニメ版の設定も使いつつ書いていきます
あぁ、頭が痛い。ガツンガツンと……いや、言葉にできない痛さが頭を支配している。今、この目で見ているこの景色に、吐き気がする。
一度沈み、再び浮上し、得た肉の体と力。だが、それと共に付いてきたこの目は要らなかった。沈んだ敵だって助けたい。そう考え、戦い、沈み、新たなる生でそれを成そうとした結果がこの眼だ。
大人しく目を閉じる。頭を抑えようにも手は動かない。手錠が両手両足にかけられ、鎖で壁に固定されているから。出来るのは、ベッドの上で寝返りを打つこととトイレに行く事だけ。
こんな眼、欲しくなかった。何度も何度も呟く。もう、何度目だろうか。何日、いや、何ヶ月だろうか。こんな狭苦しく住みづらい部屋にいるのは。でも、それでいいとすら思える。だって、誰も殺せないから。
「D-074。入るぞ」
ガチャガチャ、と鍵が開かれ、何の返事も聞かずに誰かが入ってくる。おそらく、海軍の偉い人。
「……なんですか?」
「貴様の配属先が決まった。ブイン基地に新しく着任した提督の元に行ってもらう」
「……はい、なのです」
「では、これより貴様の拘束を解く。だが、その代わりにこの目隠しを着けてもらうぞ」
また何の返事も聞かず、先に目隠しを着けられ、視界を奪われる。だが、手錠が外され、手足が自由になる。
「この目隠しはあちらの提督の判断でのみ、着脱可とする。独断で外した場合は……」
「解体処分、なのですね?分かってるのです」
「ならいい。ついて来い、D-074」
どうせ、またすぐにここに戻ってくることになる。
だって、この胸の内の、人を殺したいという衝動は、殺人衝動は決して消えないから。
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車で搬送され、艤装はもう先に届けてあるといわれ、杖を渡され、鎮守府の前に放り出された。これでどうしろと、と言いたくはなったが、真っ暗な視界の中、杖で足元に何も無いのを確認しながら鎮守府の中に入る。
ブイン基地の鎮守府等、現存している鎮守府の内部構造は暇つぶしがてら把握していたので、司令室の場所は分かる。だが、たどり着くのには一苦労。荷物を持ってあっちへふらふら、こっちへふらふらと歩き続け、壁にぶつかりながらも場所を把握して何とかそれらしき場所に到着する。
「えっと……ノックして……」
扉らしきものを探し当ててからノックすると、どうぞ、開いてるよと優しそうな声が帰ってきた。それを聞いてから、彼女はドアを開ける。
「やぁ、待っていたよ」
「本日付けで配属になりました、駆逐艦『電』です。よろしくお願いします」
彼女は、久方ぶりに自分の名を、兵器である己の名を口にした。
駆逐艦、電。今でこそ、茶色の髪を後ろで上向きにして束ね、セーラー服のような服に身を包んだ可愛らしい少女ではあるが、昔は鉄の船、敵を殺すために生み出された駆逐艦だった。
この目を持っていない彼女ならあたふたした感じで自己紹介したに違いない。だけれど、精神が擦り切れた彼女は何の感情もなく自己紹介をした。
「電ちゃんだね。よろしく」
「はい、司令官さん」
顔は気になるが、目隠しがあるため見えない。だが、見てしまえば殺したくなってしまうかもしれない。だから、何も言わない。
「ん?可笑しいな……資料じゃ目隠しなんて着けてない筈なのに……」
「これは私の案件なので、気にしなくてもいいのです」
「でも、一度くらいは素顔で顔合わせしなきゃダメだろ?これから一緒に戦うんだから。まぁ嫌なら別にいいけど……」
「……まぁ、私は構わないのです」
司令官の優しい声を聞いて、電はゆっくりと目隠しを外す。そして、電は自由になった視界に頭痛を覚え、司令官らしい男性は驚愕に表情を固めている。
その眼は、青かった。黒目の部分は青く、その中には赤い彩色が浮かんでいる。何とも綺麗で……それでいて不気味で、怖い。まるで、何もかもを覗き見られているようだった。
「……もう、いいですか?」
「……あ、ああ、いいよ」
司令官もいきなり頭を抑えて唸るように声を出した電に若干気押しされたのか、電の問に是で答える。
やはり、人を見ると頭痛が悪化して殺人衝動が、見境の無い殺人衝動が湧いてくる。
「……えっと、電。僕はまだ、着任したばかりで右も左も分からないんだ。案内してくれると助かる」
「はい、では、工廠で仲間を増やしましょう。私は、その……戦力にはならないので」
「でも、その目隠しを外せば……」
「……外して戦ってみます?」
その瞬間、彼にゾクリと背筋が凍るような悪寒が走った。何か、ヤバい。そうとしか思えないものを感じる。
遅れて、それが不敵な笑みを浮かべた電から発せられる、悍ましい殺気からなのだと気づかされた。
「冗談、なのです。さ、早く工廠に行きましょう、司令官さん」
本当に冗談だったのか。言葉だけではない。あの殺気も、深い闇の底から溢れ出るような声も冗談だったのか。
分からない。分からないが、目の前の、今は無力な少女でしかない彼女が、彼には恐怖の対象にしか見えない。だが、電の言う事は最も。仲間を増やさなければどうにもならない。
現在、彼に許されている艦娘の保有数は二十四。第一から第四までの艦隊が編成できる程度。功績を上げる、理由を書いて書類を提出する、資材を提供する、等で保有数は増やせられる。だが、これは建造された艦娘の保有数であり、海域にて保護した艦娘は七十以上は保有できる。
彼女、駆逐艦『電』の力を持つ彼女がどれだけ戦えるかは分からない。いや、出撃に応じてくれるかすら分からないが、今はなるべく多くの艦娘が必要だ。
廊下を歩き、外へ出て辿り着いたのは一つの建物。入口の横には、工廠と書かれた看板が立てかけてある。
「ここが工廠の筈なのです」
筈って……と思ったが、電は今、目を目隠しで隠している。恐らく、あらかじめ頭に叩き込んでおいた地図を参考に動いたのだろう。現に、彼女は看板の無い方を指さしている。
彼も頭の中にこの鎮守府の地図は叩き込んではおいたものの、いざ目的の場所に行こうとしたら、迷ってしまう可能性もある。なのに、何の迷いもなくここに来れたという事は、彼女はもう、目を隠したまま行動することに慣れているのか、あるいは艦娘としての力なのか。
よくは分からないが、扉とは見当違いの方へ歩いていく彼女の手を取る。
「電、そっちじゃない」
「あ、そうなのですか。ありがとう、なのです」
「とりあえず、建造の事についてはあまり分からないから、もっと教えてくれると助かる」
「はい。それが秘書艦の役目ですから」
彼女の手を取ったまま彼は工廠の中へと入っていく。中の構造は既に把握済みの上に、こちら建造所、等と書かれているため、迷うことなく建造所に来れた。
中は言うほど広くはなく、精々、中学校の体育館、いや、それよりも狭いとしか言えなかった。
壁には二つの人一人は入れる程度のポッドが並べてあり、中には緑色の液体が満ちている。
「これは……」
「建造の時に使うポッドなのです。そこら辺においてある端末で妖精さんに指示を出せば建造は開始されるのです」
電の言葉を聞き、周りを見渡してみると、確かにipadのような端末が無造作に置いてあった。
軽く埃の積もっているそれを持ち上げ、埃を払ってからタッチパネルに触れると、燃料、弾薬、鉄材、ボーキサイトの現保有量が右上に表示され、中心には幾つ資材を消費するのか選択できるようになっている。
「確か、資材はある程度なら妖精さんが増やしてくれるんだったか?」
「数値的には三分で三だけなのです。ただ、ボーキサイトは三分で一なのです」
何処から持ってくるのか分からないが、増やしてくれるのならありがたいに越したことはない。
さて、建造はどれだけ資材を増やそうかと考えていると、ズボンの裾を何かにクイックイと引っ張られた。
視線を下に向けてみると、そこには小さな小人のような存在、妖精さんがいた。
「君が建造してくれるのか。よろしく頼むよ」
しゃがみ、妖精さんの頭を撫でてやると、妖精さんはえっへんと胸を張ると、手に持っているトンカチを掲げた。
頼もしい小人だ、と呟き、端末で資材を最低で設定してから右下の建造開始ボタンを押す。
その瞬間、妖精さんはビシッ!!と敬礼をすると工廠の奥の、妖精さんだけが通れる所を通って消えた。
暫くすると、ポッドが泡立った。泡立ったポッドを見てみると、中を見るたガラスの下にあるタイマーのような物が二十分と指していた。
「無事、建造は成功したようですね。なら、高速建造剤を使って、新しい子が来るのを待ちましょう」
「ここで待たなくていいのか?」
「女の子の生まれたままの姿を見たいのなら、どうぞなのです」
「……や、やめておくよ。後が怖いし」
「まぁ、最初から服と艤装は着けたまま、出てくるんですけどね。中の液体も引いてすぐに乾きますし」
「君、中々いい性格してるな」
「照れるのです」
「皮肉だよ」
イラッとしたが、こんな茶目っ気も必要だろうと思い、何の躊躇もなく高速建造剤を使用する。
その瞬間、妖精さん達が奥から巨大なバーナーを手に、出てきた。
「え、なにそれ」
振り返って電にどういう事だと聞こうとした瞬間、バーナーから巨大な炎が噴射され、ポッドを包んだ。
「あっつ!!?あっついあつい!!」
その瞬間、ポッドの中から声が聞こえ、炎が収まる。そして、ポッドが開いて中から黒髪の女の子が転げ出てきた。
「あ、熱かった……」
「……電さんや?」
「そりゃあ、バーナーを噴射したら熱いのです。私も目覚めたときに物凄く熱かった覚えがあるのです」
「いや、先に言ってくれよ……」
「えっと……自己紹介、いいかしら?」
「あ、あぁ、すまない。僕もあの光景は初めてだったから、気が動転していた」
「そ、そうなの……えっと、わ、私は暁よ!一人前のレディーとして扱ってよね!」
暁。目の前の、黒色の髪を伸ばした彼女は、確かに電と同じ制服、艤装を着けていた。
「暁……確か、暁型一番艦か。なら、電の姉妹艦だな」
「え?電いるの?」
「あぁ、そこに」
彼が電の方を向くと、やっと暁が電に気が付いた。
「あ、電!久しぶりじゃない!その目隠しは?」
「ファッションなのです」
「あれ、一目で分かるのか?」
「なんとなく分かるのよ。それで、響や雷はいるの?」
「あー……すまないが、電を除くと君が一番最初に建造した艦娘なんだ。だから、君の姉妹はいない」
「そう……まぁ、居ないのならいいわ」
「けど、何時か君たち四人を揃えてみせるよ」
「ホント!!?なら、期待してるわね!!」
はしゃぐ暁と、これじゃレディーじゃなくて子供なのですと呟く電。
だが、これで最低限の戦力は整った。出撃は出来る。
「じゃあ、早速出撃だ。電、暁、行けるか?」
「もっちろん!」
「えっと……私は……」
「電、頼む。戦力が整うまでは戦ってくれないか?」
暁一人だけでは流石に厳しいだろう。だが、姉妹である二人でいけば、息もバッチリで駆逐イ級程度なら軽くあしらえるだろう。
それに、電の書類上の熟練度は五。一の暁のいい手本にもなるだろう。
「俺は今回の建造について報告書を作ってくるから、準備を頼む」
「分かったわ!」
「……了解、なのです」
彼は一人で指令室まで戻り、チャッチャと書類を書き上げ、通信機を取る。
「電、暁、聞こえるか?」
『はい、聞こえるのです』
『聞こえるわよ』
「よし、なら今日は慣らしも兼ねて正面海域に行ってくれ。危険だと思ったら即退却だ。旗艦は電だ」
『了解なのです』
「あと、電は目隠しを外していいぞ。戦いには邪魔だからな」
『……はい』
「なら、第一艦隊、抜錨!」
彼がそう叫ぶと同時に、艤装装着場にいた電と、艤装を外した暁が出撃と書かれたパネルの上に乗る。
その瞬間、パネルが中心が割れ、足場が出現し、マニピュレーターが足の艤装を装着する。
電は目を閉じたまま目隠しを取り、射出される衝撃に備え、若干、力を入れた所で足場が動き、射出。全速力に近い速度で水面を滑っていき、海へと出る直前、後ろから迫る艤装と位置を合わせ、ドッキング。背中に艤装ががっちりと装着されたのを確認して海へと飛び出す。
少し遅れて暁も飛び出してきた。
「あ、危なかった……」
ちなみに、暁は射出された時に、見事に顔面から水面にダイブしかけていた。それをしらない電は首を傾げ暁を見るも、その視界に写るものに不快感と吐き気と頭痛を覚え、正面を向く。
艦娘にも『アレ』があるのは分かっている。だが、それでもこれはそう簡単に慣れる物ではない。
心の余裕と正常な部分を引き換えにして狂気を植え付けていくそれが忌々しくて仕方がない。
最初は見るだけで悲鳴を上げ、錯乱したように暴れつくしたそれも、今となっては頭痛と吐き気だけで何とかなっている。
「あぁ……頭が痛い」
「何か言った?」
「何でもないのです、暁ちゃん」
水面にも、空にも見えるそれをなるべく意識しないように、彼女は水面を移動していく。頭が痛い、と声を零しながら。
あまり軍隊や装置、場所については詳しくないので、ここはこうだと言うのがあったら指摘をお願いします
この作品の電さんのスペックは、特に高くもなく低くもなく、眼が特別なだけです。それと、建造シーンは完全にオリジナルで、発進シーンはアニメ版からです
後、眼のスペックですが、点は見えませんが無機物には見えます。それと、ONとOFFの切り替えは不可、概念的な物は殺せますが、地球の一部等の規模が大きすぎる物は見た瞬間ぶっ倒れます