直死の眼を持つ優しき少女   作:黄金馬鹿

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電さんが大暴れ。え?いつもの事?仕方ないね♂


助ける。そう決めたから 後編

 晴れ渡る空に煌く銀色。青い眼が妖しく光り、敵を捕らえる。その切っ先に迷いはなく、ただ殺すためだけの力となる。その力の証明として旗艦であったヲ級は体を真ん中から真っ二つにされ、体液を噴出しながら沈んだ。

 返り血を全身に浴び、深海凄艦の真っ黒な体液が電の体を真っ黒に染める。その中で光る青い瞳は、まさしく恐怖の象徴。明らかに何か違う物を見ているその瞳は得体の知れない不気味さと気味悪さと恐怖を感じさせる。まさしく魔眼。魔の眼だ。

 刀を突きつけ、自身に暗示をする事により体を作り替え、刀を効率良く振り回すための体を再構築する。直死の魔眼すら組み込み、頭痛すら消し去ったその完全なる無意識下の暗示によるその行為は、意思を持たぬ深海凄艦すら怯ませる程の異常さを感じさせた。近づいてみろ。さっきの愚か者と同じようにしてやる。そう、言外に言っているようだった。しかし、雷達にとっては頼もしさの象徴にも感じられた。勝てる。あのクソッタレな深海凄艦共に勝てると。

 海に力なく漂っていた雷達が何とか立ち上がり、逃げようとするが、体が言う事を聞かず、立ち上がれない。響に至っては血を失いすぎたのと、腕の断面から絶え間なく響いてくる激痛に意識は朦朧。力を抜けばすぐに沈んでしまいそうだった。

 雷達が何とか立ち上がったその直後、海面が激しく揺れた。その揺れに体のバランスを持っていかれ、また海面に伏そうとした時、後ろから誰かに支えられる。振り返れば、姉である暁が雷の事を支えていた。響の方も天龍が支えていた。二人は優 しい笑顔を浮かべながら、そっと雷と響の腰に何かを着けると耳のインカムに手を当てた。

 

『回収!!』

「え?ひゃああああああああああ!!?」

「フルトンンンンンンンンン!!?」

 

 雷と響の体が腰から重力に反して引っ張られ、輸送ヘリに回収される。その際に二人の意識はブラックアウトしたが、輸送ヘリはすぐに二人をハッチの中に回収して、鎮守府へと帰っていった。これで雷と響は何とか助かるだろう。バケツで次の日には傷一つなくなるだろう。響に関してはしばらくリハビリが必要だが、死ぬよりはよっぽどマシだ。

 降下してきた暁、天龍、龍田は電の近くには寄らず、完全に電に敵を任せていた。もう、彼女は何を言っても聞かないと分かっていたから。暁も、ここで電の邪魔をするよりも、電にこの一足一刀の間合いを任せた方がいいと感じたから。

 流石に距離を離されたら加勢するが、それまでは何も言わずに見ているのが正しいだろう。でないと巻き込まれそうでもある。

 電が暁達の方を見れば、三人は好きにやれと頷くだけ。暁だって、目の前の深海凄艦を拷問にかけたいと考えるほど腸が煮えくり返りそうな気持ちだが、今の間合いは電の間合い。任せた方がいい。天龍も龍田も、介入の準備をするだけで隣には並ばない。

 電は少しだけ頭を下げてから、深海凄艦に視線を戻す。視界に見えるのは死の線。直死の眼は余すことなく死の線を映している。軽巡ホ級が焦ったのか主砲を構える。だが、その瞬間が隙になる。

 刀に手をあて、艤装で動くのではなく 、海面を蹴って海面を滑空するように飛び出すと同時に刀の切っ先を真後ろに向けるように振りぬく。

 そして、ホ級二隻とすれ違う瞬間、銀色の閃光が煌いた。

 

「死に消えろ」

 

 刀を振り下ろし呟いたその瞬間、ホ級の体に一筋の亀裂が走り、それが傷口へと変わった瞬間、真っ黒な血液が噴水のように噴出する。まさに瞬殺。

 不意を突かれ、駆逐艦に真正面から刀で殺されるとは微塵も思われなかったからこその奇襲の成功。故に、これからは警戒される。故に、二隻のリ級に囲まれる。が、電の目は闘志を捨てない。

 そして、リ級が向けるのは副砲。連射が可能であり、駆逐艦なら当て続ければ轟沈だって考えられる武装だ。マズい。天龍と暁が即座に砲を向ける。が、それも間に合わず副砲は放たれる。

 

「その心臓……」

 

 電が呟き、姿が消える。いや、違う。艤装の機能を全て切断し、海へと一時的に潜ったのだ。

 次の瞬間、電が現れたのはリ級の真後ろ。青色の瞳を煌めかせ、その手を貫手の形に変え、水が滴るのを気にせずにリ級の左胸へと、死の渦が存在する左胸へと突き刺す。

 

「貰い受ける……!!」

 

 電の、駆逐艦の力では絶対に通らないその一撃は、いとも簡単にリ級の左胸を貫き、その心臓を、深海棲艦の急所を掴み取り、空の元へと掴み出す。

 リ級は何が起こったのか分からない表情をしている。左胸から伸びる手は、未だに脈打つ心臓を掴んでいる。何が起こったのか、考える間もなくその心臓は潰され、血が飛び散り、リ級は絶命する。

 電が手を抜けば、リ級は傷口から真っ黒な血を噴出し、深海へと沈んでいった。

 装甲があろうが関係ない。電のその目は、渦を貫き、心臓を抜き出した。たったそれだけの行為が残りのリ級の恐怖となる。

 アレは違う。決して艦娘という枠に収まる敵ではない。アレは、人の形をしたバケモノだと。

 恐怖の感情のまま、リ級は一歩後ろへ下がってしまう。目の前には、真っ黒な体液を体に浴びてその口を三日月のように歪ませる青い瞳のバケモノ。殺られる。殺らなくては殺られる。そう直感で理解し、リ級は主砲を構え、全砲門から弾丸を発射する。

 

「チッ!」

 

 電は舌打ちしながらも両手で刀を持ち、高速で刀を繰り出す。一呼吸の内に四度放たれた斬撃は、リ級の砲弾を全て切り裂く。

 何が駆逐艦だ。あんなの、駆逐艦なんかじゃないじゃないか。そうリ級は無意識下に訴えるも、電は止まらない。その刀を片手で構え、ゆっくりと、ゆっくりと歩いてくる。

 主砲の再装填は終わらない。リ級は恐怖により固まり、動くことが出来ない。そんなリ級に血濡れの電は零距離まで近づき、耳元で呟く。

 

「死ね」

 

 その瞬間、電の刀が股下から頭上へと一瞬で振りぬかれる。痛みすら感じさせず振りぬかれたそれはリ級の体を真っ二つに切り裂き、左右に泣き別れする。

 血を噴出し、そのまま深海へとリ級は沈んでいき、電は刀に付着した血を振り払い、鞘に収める。

 圧倒的。正に圧倒的だ。元よりそのために造られたのでは無いかと思われる程の圧倒的であり、大胆で繊細な近距離戦の動き。

 

「……終わりました」

「……お、おう」

 

 血に濡れ、ベタつく髪の毛を下ろし、電は呟いた。前線に出て戦った女神が居たとしたら、このような感じなのだろうか。そう思わせる程、今の電は殺人的に美しかった。

 天龍が電に変わって提督に知らせれば、すぐに明石を寄越すという。雷と響はボロボロで、特に響は今にも死にそうな顔をしていたらしいが、何とか高速修復材が間に合い、二人共医務室で横になっているという。

 損害は無い事を知らせ、天龍は通信を切り電に知らせると、電は目を閉じ、頭を抑えたまま頷いた。

 

(魔眼の副作用……ドンドン酷くなってきてる。それに、前よりもよく見えちゃってる)

 

 目を開ければ、自然と眼は小さな死の渦を捉える。そして、今までよりも更に強い頭痛が電を襲う。

 脳が死を見ることに慣れてきたからなのか。そう予測するのも可笑しくはなかった。

 これから先、死の渦を見続けていれば、確実にあの、気絶するレベルの頭痛がデフォルトになってくる。その場合、艦娘の身を持ってしても生きていられるのか。

 最悪の可能性だけは回避したい。が、電は魔眼の効果を強める術は知っていても、抑える術を知らない。元々人の身に備わっていない力だから当たり前なのだが、諦めきることはできない。

 これが薬で治せるのなら万々歳だったのだが、と電は溜め息をつく。失明した後も瞼を開けば見えた死の線は、この肉体が朽ちるまで付き合う事になるのだろう。改めて認識すると溜め息が出る。

 

「電、新しい反応を一つだけ感知したわ。多分、新しい艦娘よ」

「皆で行ってきてください。ちょっと、頭痛が酷いので、少しだけ休むのです」

「そう……大丈夫なの?」

「また倒れる事は無いからそこは安心して欲しいのです」

 

 暁は心配そうな顔をしながらも、電の指示に従って新しい艦娘の元へと向かった。

 頭痛に関しては倒れないと言うよりも、前のように意識がうつらうつらとして脳が焼けるような痛みを感じないというだけで、今すぐにでも眠りにつきたい位には痛い。

 目を閉じれば幾分楽にはなるが、脳を酷使した事による頭痛は目を閉じただけでは消えない。

 頭に手を当てながら、電は片目だけを開けて暁達の後を追った。片目だけにしないと、頭痛は酷さを増す一方だったから。




電の魔眼の副作用の頭痛ですが、現時点で既に魔眼封じでも制御が効かないレベルにまでになっており、頭痛の方も式や志貴のように元々特別な眼を持っていなかったため、かなり酷い事になっています。常人なら数日で痛みで発狂するレベルです

今の所、電の魔眼は二人の長所を減らして混ぜた感じなので、概念は殺せますが、点は見えません。しかし、渦で代用可能。代わりに渦を見る度に魔眼による頭痛は酷くなっていくという諸刃の剣です。これに加えて電は気持ち悪くて吐き気がするという状態もプラスされてるので、志貴よりも酷い状況かと

まぁ、この世界は型月じゃありませんからね。悪化し続けても仕方ないね♂
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