世にリリウムのあらん事を   作:木曾のポン酢

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PSPを買い直して未所持の3からやろうかなと思う今日この頃。

ちなみに好きなレイヴン第2位はリム・ファイアーです。強くてカッコいいキャラに憧れる傾向がある。


それは異世界転成においてテンプレ的な触れ合いである。

「リリウム、ハイエンドノーマルという言葉に聞き覚えは?」

 

「国家解体戦争以前に存在したハイエンドモデルのノーマルの事ですね。リリウムの読んだ本では、コストの問題から企業統治時代になってからは製造されていないと書かれていました」

 

「うん、そう」

 

流石、よく勉強している。

 

「これが、そうだと?」

 

「恐らくね、企業量産のノーマルにしては造りが複雑すぎる。」

 

AMSの接続を解き、ハッチを開く。

 

「リリウムは本社に連絡して、私が確認してくる」

 

「は、はい。わかりました」

 

ひょっこりと体を機体から出し、オラクルへと飛び移る。ガギンという鈍い音。痺れはあるが痛みは無い。うん、さすがに信頼と実績のクレスト製品だ。私という実弾攻撃じゃビクともしない。

 

……ほんと、美しい機体だ。こいつがいなければ、私がインターネサインにたどり着く事も無かったと思うと涙が出てくる。

 

さて、外部から開くハッチは……っと。これか。ふむ、やはりネクストとは構造違う……なっと!

 

オラクルのコア、ビョビョビョンと伸びた銃身のようなモノが開く。うわ、装甲あっつ。うーん、良いねぇ。ミラージュは重量級が好きなんだけど、クレストは中量級が良いよね。なんか、こう、主人公っぽくて。

あ?キサラギ?虫。

 

さてさて、コアにいらっしゃるのはあらイケメン。パツキン細身のモデル顔。色付きのスタイリッシュなサングラスがイカすね。

 

口元に手を近づけて呼吸を確認。OK、生きてる。流石にオラクルだけ来ても面白みが半減だからね。

 

と、なると。起こさねばならぬだろう。へいへいはりーはりーどみどみどみなんとー!!

 

ぱんぱんぱんとエヴァンジェの顔近くで手を叩く。

 

「ん……あ……」

 

オーイェイ。目が覚めたらしいな。おはよう、くそったれなこの世界へ。

 

「起きたみたいね」

 

イメージはクール系ツンパイロットです。デレたその回に無惨に死にます。コックピットに突き刺さったミサイルの推進剤で焼き殺されるパティーンです。

 

「き、君は…………」

 

大混乱中らしい。そりゃそうだ、なんたって国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だったんだからな!!

 

「ただのしがないAC乗りよ。こんな所で寝ている不審者に職務質問に来たね」

 

「寝ていた…………?」

 

そこで、ハッと何かに気がついたように周囲を確認するエヴァンジェ。まず自らの右腕や脚を確認して頭を押さえた後、こちらを向く。

 

「パルヴァライザーは?インターネサインは?」

 

何言ってるのよ!パルヴァライザーならあんたが乗り込んでインターネサインはジナイーダが破壊したわよ!!

 

「パルヴァライザー?インターネサイン?何の話だ?」

 

もちろん、そんな思考などおくびにも出さずに怪訝な表情を作る。だってんなもん知ってたらやばいもんげ!

 

「知らないのか……?いや、しかし……」

 

ここで、エヴァンジェが私の後ろを覗き込む。クレスト本社ビルはそこになく、ただただ広がる平原はさぞ彼の度肝を抜いた事だろう。

 

「どこだ……ここは……?サークシティは……レイヴンは……?」

 

「どこって言われても……」

 

私は困惑した表情を作りながら、言葉を続ける。

 

「ここはアクアビットの主権領域内よ。サークシティってのは知らないわね。それにレイヴンなんて……アナトリアの知り合いなの?」

 

少しばかりセリフ選びがわざとらしいかとも思うが、まぁ相手は混乱中、この程度の怪しさには気付かんだろうと高を括る。

 

「サークシティを知らない……?アナトリア……?いや、だが、私は……」

 

混乱しているエヴァンジェを眺めながら、私は肩を竦めて後ろを見る。そしてランスタンに乗り込むリリウムに向かって……あ、ハッチから心配そうに頭だしてる。可愛い……ハンドサインを送る。

 

まず右腕中指で頭を二度ノック。そのあと人差し指を三周ほどくるくる回し、一度拳を作り。ぱぁーっと広げる。

「よくわからんがこいつ頭がおかしいらしいぞ」のサインである。

 

「グダグダ言ってないで、とっとと立ちなさい。あんたが何者かは知らないけど、アクアビットの敷地内に入ったんだから事情は聞かせて貰うわよ。いったいどうやって前線の警戒網を抜けてここまで侵入してきたとか……」

 

「……先程から言っている、そのアクアビットというのは?」

 

驚愕の表情、それもだいぶ大袈裟のを作る。なお、アクアビットとはポテトの蒸留酒の事らしい。

 

「アクアビットを知らない!?なんの冗談!?ここら一帯地域を支配する大大大企業よ!!赤ん坊が最初に使う言葉でママの次にアクアビットが多いって程の有名企業なのに……」

 

端的に言うとキサラギみたいな所よ。生物兵器は作ってないけど。

 

「この辺りを支配する企業……?アクアビット……?」

 

ここで、エヴァンジェはもう一度頭をかかえる。そして、自分の右腕や脚に触れ、もう一度周囲を見る。何があったんだ右腕と脚に。

 

そして、天を仰いだ。何かに気づいたのだろう。

エヴァンジェはこちらの顔を見ると、一つ尋ねたい事があると口を開いた。

 

「クレストやミラージュ、そしてキサラギといった言葉に聞き覚えは?」

 

ハマーン・カーン、消えろイレギュラー女子、AMIDA

 

「何それ。聞いた事も無いけど?」

 

私はもう一度肩を竦めた。すると、エヴァンジェは何かを悟ったように笑った。自らの運命の数奇さにだろうか。それとも現状のおかしさに?あ!わかった!ジャンヌ・オルレアンちゃんの可愛さにほおが緩んじゃったんだ!!もぉうダメだぞ、このえっち!!

 

「すまないが、今から君にとって信じられ無いような事を言っていいか?」

 

「なによ。まさか、私は宇宙から来たエイリアンです!だなんて言い出さないでしょうね」

 

エヴァンジェはその言葉を聞き、自分も困惑してるんだと言わんばかりにはにかむ。

 

「まぁ、近いな」

 

「……と、言いますと?」

 

「どうやら私は、別の世界からここに飛ばされたようだ」

 

その言葉を聞いて、まず私はため息を一つ。そしてあーハイハイといった理解のポーズを示し、優しい笑顔を浮かべて言った。

 

「成る程、頭の病院から脱走してきたという事ですね」

 

我ながら失礼な言葉である。許せエヴァンジェ、でも常識的にそんなこと信じられるわけないだろ?

 

 

 

本社からやってきたトレーラーやらMTやらに乗り、エヴァンジェとオラクルはアクアビット社内に運ばれた。今頃、オラクルはバラバラに解体され、エヴァンジェはどう説明すれば良いかと頭を抱えている事だろう。

 

「あの人は、異世界から来たと言っておられたのですか?」

 

訓練が途中に終わり、部屋の中で一緒にゴロニャンしていたリリウムが尋ねてくる。久しぶりにドラクエ5をやりなおしていた私はポーズボタンを押すと、リリウムの方を見た。

 

「そうそう、ふざけた事言うよね。あんな科学的にありえない言い訳する奴初めて見た」

 

全身神様チートとかいう非科学的極まりないアドバンテージをもらって転成した奴が絶対に言ってはいけないセリフである。しかもエヴァンジェが来た原因私やし。

 

「…………」

 

「ん?どないしたんリリウム。」

 

まさか隊長を嫌いになってしまったん?やめて!今は側から見たら変な事言ってるけど最高のイケメンなのよ!あんたも命救われたらわかるって!ACだなんて過信してる奴は過信したまま死んでいくのが常なのに、隊長は自分の間違いに気付いてなおかつ彼のドミナントが為さねばならぬという気持ちに基づいてレイヴンを庇って一人勝ち目の戦いに挑むのよ!あんなかっこいい奴いないよ!!

 

「……いえ、異世界というのが本当にあるのではと少し胸をときめかしてしまったので」

 

そういえば、イギリスといえば指輪物語とかハリポタとかファンタジー文学のイメージあるな。ナルニア国物語とか異世界との行き来の物語だし。リリウムは文学少女だから、その辺りに夢を持ってるのかしら。何それ可愛い。まぁ、まだ12歳くらいやもんなぁ。

あぁ、それなのに私は!サンタクロースを純粋に信じる子どもに向かって、親が枕元にプレゼントを置く写真を突きつけるような、そんな情緒の無い事をやってしまうとは……あぁ……私の馬鹿……ゴメンねリリウム。異世界はあるよ。コジマ粒子なんて存在しない異世界や、特攻兵器によって壊滅状態になってる異世界があるんだよ!ライオン?喋らないよ!

 

「それに……」

 

「ん?」

 

「ジャンヌ様、何か隠してきますよね?」

 

今更何を、私なんて魂以外は全てが嘘だぞ。

 

「どうしてそう思うの?」

 

「ジャンヌ様の喋り方がおかしい時や芝居掛かっている時は、だいたいそうです。あのノーマルのパイロットに対して、何か思う事があるのでは?」

 

ふむ、せやな。意識的に三流芝居の大根役者をやってるってのもあるけど。

まぁ、喋る気は無い。だが、否定する気も無い。こういうのは余裕ぶって適当言っとけば良いのである。私は冷蔵庫から緑色の瓶を取り出す。これを見ると、リリウムは目に見えて身体を引く。大丈夫大丈夫、開けない限りは絶対安全安心よ。

 

「さぁね」

 

私はそう呟き、部屋を出ようとする。そうだな、地下のコジマ試験場あたりで飲もうかな。あそこの光景は幻想的で綺麗なんだよねぇ……。

 

「まぁほら、女は謎と秘密の分だけ綺麗になるって言うしね。じゃ、私は一杯飲んでくるから。」

 

ロリロリ幼女には全く似合わないセリフとついでに回収する気の無い伏線を残し、部屋を去る。今から行くのがジャンヌ以外にとっては死の世界である事を知っているのでリリウムは追ってこない。

うん、いい逃げ道を手に入れた。味もそうだが、持つだけで誰も追ってこないと言うのは素晴らしい。感謝しなくちゃな。

 

私はコジマ・コーラの瓶を上に放る。クルクルと空中で舞うそれを、私は余裕を持ってキャッチす……

 

あっ

 

…………

 

……………………

 

………………………………そーっ……

 

セーフ!!セーフ!!流石アクアビットの技術力!!素敵!!最高!!

 

久々に恐怖で高鳴る心臓を無理矢理奮い立たせ、私は急いでコジマ試験場へ向かった。もう、コジマ・コーラの瓶を投げたりはしなかった。




クロスオーバーものにおいてオリキャラによって目覚め異世界と確信するのはテンプレなのかという顔をしてる。

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