艦載機妖精さんなんだが仕事場がブラックな件について 作:たろまる
龍驤ってこんな話し方でしたっけ?
違和感ある方はそれが今作の龍驤ということにしておいて下さい(懇願)
その日、軽空母龍驤は自分の気分が高揚していくのを抑えられなかった。
今日は彼女がこの鎮守府で建造されてから初めての開発を任されたからである。
彼女が建造されたこの鎮守府は、まだ運営され始めたばかりの新しい鎮守府で、所属する艦娘の数はそれ相応に少ない。彼女はそんな中でも上から数えたほうが早いくらいの時期に建造された、所謂古参の艦娘であり、搭載できる数は少なくとも空母である自分はすぐに戦場に立つと思っていた。
しかし運営が始まったばかりのこの鎮守府では、所属する艦娘の練度は総じて低く、本営から送られる資材も微々たるものであった。
そういった理由から、最低限の艦娘が建造されてから、初めのうちは自分たちが十分に戦えるようになるまで演習や訓練などを行い、後はタンカーの護衛や鎮守府近海の防衛任務などに少ない資材が用いられていたのである。
もちろん開発を行うことも何度かあったのだが、それらはまず護衛任務を承ることになる駆逐艦や軽巡洋艦の艦娘の装備の開発のために行われたため、自分たち空母の艦載機の開発は後回しにされていたのだ。
そうして自身の練度を高めながら自分達の出番を待つこと1か月、提督も書類仕事に慣れて、艦娘の練度も上がり、鎮守府が落ち着いてきたところで、ようやく深海棲艦への反攻を行うにあたって、艦載機の開発が行われることとなったのである。
その記念すべき初めての開発の担当艦娘に選ばれたのが龍驤であり、これから開発を行う許可を貰うために提督のいるであろう執務室へ向かっているところである。
「いや~今日は楽しみやなぁ~どんな子が来てくれるんやろ、うち仲良くできるかな~」
彼女特有の独特な言い回しで呟きつつ、ウキウキしながら歩いていたところに、後ろから声がかかる。
「あっ龍驤さん、おはようございます!」
聞き覚えのある声に振り向いてみると、肩にかかる程度の黒髪を一つにまとめたジャージ姿の少女がこちらへ歩いてきていた。
「おっ吹雪やん、おはようさん」
特型駆逐艦吹雪型の1番艦吹雪は、龍驤より少し後にこの鎮守府に配属になった艦娘である。
所属してからすぐに護衛任務や遠征などに就き、まだ艦娘の少ないこの鎮守府でローテーションが短い中よく働いており、あまり話す機会はなかったが、そんな中でもいつも明るく元気に仕事をこなしていたのが龍驤の印象に残っていた。
「はいっ龍驤さんは今からどちらへ?」
「執務室や、提督に開発の許可貰わなあかんからな、そっちはどうしたん?」
「今日は休暇を貰ったので、訓練をしようかと思いまして」
「せっかく休暇もらったんなら、ゆっくりすればええのに……よう頑張ってるなぁ」
「いえっこれからは深海棲艦との戦闘も増えてきますから、少しでも練度を上げなければならないのでっ」
……本当によく働く子である
そんなことを思っていると、吹雪が急にこちらを向いて言った。
「そういえば、さっき開発するって言ってましたね、どんな子が来てくれるか楽しみですね!」
「そうなんよ~、吹雪は初めての開発の時はどんな感じやった?」
やはり初めて行う開発には少し不安な部分があるのか、龍驤は開発を先に経験している吹雪に尋ねてみる。
「私が開発を担当したときは……なんというかボロボロでしたね、
10回ほど開発したんですが、7回は失敗して変なものができてしまって……
あっでも今使ってる連装砲は自分で開発したものなんですよ!」
彼女は楽しげにそう返してきた。
しかし龍驤は少し疑問に思ったことがあった。
「おぉっそうなんや……でもその装備ってほかの子が使ってるのより性能が低かったと思うんやけど。それでええの?」
その問いに彼女は少し考えてこう答えた。
「う~ん、性能は他の子が使ってる装備のほうがいいってのはわかるんですけど……あの日、開発してた時は失敗ばかりしていて……もう自分には装備の開発なんて出来ないんじゃないかって、そう諦めかけてた時に、光とともに出てきてくれたあの子たちを置いて他の装備を使うと思うと……なんかいやだったんです」
私が開発した装備をすべて使ってるってわけではないんですけどね……
最後にそう呟いた彼女の横顔が、本当に嬉しそうで、誇らしげな表情をしていたからなのだろうか。
龍驤はそれがとてもうらやましく思えたのだった。
「じゃあ私はこれから訓練してくるので、また後で」
執務室の前でそう言った吹雪と別れた龍驤は急かすように執務室に入ることにした。
……今は少しでも早く開発を行いたい気分だったのだ。
ノックをして、入室の許可を貰い、執務室に入る。
龍驤がここに所属して初めて来たときは、この建築物の中では最高位にあたる人物が毎日の執務を行う場であるというのに、殺風景な内装だと思ったものだった。
入って左手には、海軍の資料やそれ関係のことが書かれた本がびっしりと詰まっている本棚が置かれていて、右手には秘書艦のものであろう高さが変えられるような椅子がある机、そして正面には大きく開かれた窓があり、その手前にある、書類がどっしりと積み上げられた大きめの執務机、そこに座って今も書類と格闘している人物が、龍驤が許可を求めに来た人物である。
「おはよう龍驤、開発の許可を取りにきたのか?」
最近になってやっと着られている感がなくなってきた二種軍衣を少し直しながらそう聞いてきたその人物は、司令官の地位に座るにはまだ年若く、その態度は軍人らしいとはお世辞にも言えないものであった。
それもそのはずで、彼はつい1年ほど前に軍属になり、9か月程度士官学校で勉学したのちにこの鎮守府に配属になった元一般人なのだから。
一昔前までの日本ではこの程度の期間で司令官クラスの椅子に座ることになるなんてことは考えられなかったのだが、通常兵器の効力が少ない人類の敵である深海棲艦が世界中の海から現れてから間もなく、突如出現した唯一の反攻の要となる艦娘の存在によって、その考え方は覆されていくことになった。
その理由は、艦娘を指揮するにあたって、ある生命体が視認できる特別な適性が必要であることが分かったからである。
―――――――――妖精さん
体長が60センチ前後で2等身の不思議な生命体で、艦娘の登場と同じくして出現したとされる彼らだが、艦娘の発見者と同じ場にいた他の全員が視認することができなかった為、初めは存在しないものとして扱われていた。
しかし、とある将校が艦娘と行動を共にする小さな人型の生命体を視認し、その証明として何もないところで物が動かされる場面を見て初めてその存在が軍内で知らされたのだった。
その場にいた艦娘に事情を聴取した際に聞かされたことは、彼女たちが軍事行動を起こすのに必要不可欠な存在だということだった。
艦娘を新しく建造するのも、その装備を開発、量産するのも、電子機器が使用不可能になりコンパスも狂ってしまう遠洋での指針としても、ほとんど全てが妖精さんによってしか行えない事実を知った海軍には衝撃が走ったのであった。
当然だろう、自分たちの目に見えない生命体が存在していて、さらに彼らなしでは敵と戦うことすら困難なことを理解してしまったのだ。
しかし今も視界に映らないまま何をするのかわからない生命体が自分たちの近くに存在しているなど、上層部としては脅威としか感じなかった。
そんなわけのわからない存在に近くにいてほしいと思うような物好きな人物もおらず、上層部は妖精さんたちを艦娘と彼らを視認することができる適任者――――のちの提督と共に現在世界で最も危険な海岸近くに押し込んだのである、そうして押し込められた彼らを国の中枢に入れないと同時に国防を行わせるために作られた建造物が日本の最前線で最終防衛ラインである『鎮守府』である。
それでも初めは軍属の人間だけで提督を固めようとしていた海軍だが、妖精さんを視認できる人物は圧倒的に少なかった、その数わずか12名である。
国土の全周囲が海に囲まれた島国である日本では、その程度の数で防衛出来るわけもなく、ただでさえ少ない提督が数人戦死してしまったことで、海軍は妖精さんを視認できる提督を国民からも徴兵することに決めたのだった。
この鎮守府の提督も成人してから行われる検査で見つかった妖精さんを視認できる人物の1人である。
「当たり前やろ、うちがどんだけこの時を待ってたんか、君も知ってるやろ?」
「ふふっそうだな、航空母艦の娘達には碌な艦載機を配備してあげられなかったのは悪く思ってる。でもそっちに回せるような資材が無かったというのも本当だったんだぞ?」
提督は、物事が思うように進まなくて拗ねている子供をあやすようにそう返した。
「そんなこと言わんとってもわかってるわ、ちょっち愚痴言ってみただけやし……」
「ありがとう……さて、私も書類が一段落したところだし、見学させてもらってもいいか?なんせこの鎮守府初の艦載機開発を行うのだから」
「それはもちろん構わんのやけど……一つお願いがあるんや」
龍驤の頼み事とは、先ほど吹雪が話したことが少し羨ましくなったからなのだろう、自身が開発した艦載機をそのまま自分が運用したいというものだった。
「……うん、初めての開発を任せるんだしそれ位なら構わないよ」
「ホンマか!?ありがとな!」
「どういたしまして、じゃあ早速工廠へ向かおうか」
「そうやなっ早く行こか!」
そういって我慢できずに一人で工廠へ向かって行った龍驤に苦笑しながら、提督は椅子から腰を上げたのだった。
工廠に着いた二人は、早速開発を頼むために工廠での開発を指揮しており、黄色いヘルメットに大きなハンマーを常に持ち歩いている妖精さん、通称開発長に話しかけた。
「こんにちは、開発長、今日はこの娘たち航空母艦の為の装備を造ろうと思うんだけど……お願いできるか?」
「おう、大将じゃないか、艦載機の開発か……よしっお頭に話しつけてくからちょっと待ってな」
理由は不明だが、通常の妖精さんは人の言語を理解することはできるが、話すことはできない。
しかし、提督という人間とのコミュニケーションが必要不可欠なまとめ役の妖精さんはそのうちに入らないのか、普通に会話することができるのである。
……見えさえすれば、の話だが。
開発長は可愛らしい外見によらず渋い声でそう言い残すと、工廠を取り仕切っている工廠長の元へと歩いて行った。
数分経って話し終えたのだろう、戻ってきた開発長が二人に付いてくるよう言ってから、工廠の奥へと歩いて行った。
二人がそれに付いていくと、そこには身長60センチ程度の開発長より少し高い程度の高さの円錘状に端の4点から垂直に細い機械がのびた機械が鎮座していた。
機械の中央には幾何学的な模様をした陣が描かれており、そこから何らかのファンタジーものの召喚陣のような印象を得た龍驤であった。
「……これで開発するん?」
「龍驤の言いたいことは分からないでもないが、大丈夫とだけ答えとく」
龍驤はつい訝し気な表情をしたまま尋ねてしまったが、提督も思うところがあるらしく、苦笑しながら答えたのだった。
そんな二人のやり取りを無視したままに、開発長が準備を始めた。
「んじゃあ開発に使う資材を教えてくれ」
それに答えた提督が口述した通りの資材を工廠妖精さんが陣の中央に置いていく。
「そんで、開発担当の嬢ちゃんは開発機の前に立ってくれ。」
「……嬢ちゃんやない、うちは龍驤や……」
そう訂正を入れながらも、早く開発したいのか龍驤はしぶしぶと開発機の前に立つ
そうしていると、少し離れたところにあるコンソールを叩きながら開発長は龍驤に注意事項を話していく。
「いいか、開発ってのはこんなオカルトティックな感じで行われるが、その分担当艦娘によって出来上がるものが大きく違ってくる。その担当艦娘が実際に運用可能な装備でないと開発できないんだ、お前たち航空母艦ならレシピを間違えなければ大抵は艦載機ができる。……だがよ、よりよい艦載機が欲しいってんなら強く祈りな、そのほうがいい装備がでるって話だし、こんな大げさな陣が書いてあるんだ、ファンタジーな要素が絡んでくるかも知れないぜ?」
龍驤はその助言にゆっくりと一度だけ頷いた後、胸の前で両手を組んで目をつぶり、無言で祈り始めた。
「……いいだろう、んじゃあ開発を始めるぞっ!」
そう言った開発長は、コンソールを操作して、現れた開発開始の文字に触れた。
その瞬間、陣から光が迸り始め、資材から何かが構築されていくのが見えた。
そんな光景を見ないまま龍驤は一心に祈り続けていた。
(うちらの新しい仲間になってくれる優しくて頼もしい子が来てくれますように……)
そして陣からの光が収まってゆっくりと龍驤が目を開いて見てみると……
そこには段ボールに詰まったペンギンのような生物と、灰色の体にリボンが付いた綿のような生物が堂々と存在していた。
まあ艦これではよくあることですよね……(悟り)
どうも文字数が安定しませんね、もっと文章力も上げたいところです。
……あっ主人公は次回からちゃんと出てきますから。