第12話です!
新学期始まると大変ですよね・・・・・・・。
「――それでは
11区の中央にある車道交差点の脇に間宮班と高千穂班の計8名が集まっている。交通規制もなにもしてないため、車道には車が走っているし、歩道には通行人がいる。
「間宮班は『蜂』、高千穂班は『蜘蛛』の攻撃フラッグを、敵の『目』のフラッグに接触させれば勝利です。フラッグの隠匿や班員間での受け渡し、敵からの奪取、破壊、全てOK。折られたり破かれたりしたフラッグは無効となります」
そして、教官として監督するのは、救護科非常勤講師の小夜鳴徹。武偵高の先生にしては珍しくきっちりとスーツを着ている。俺は正式に教官なわけではないので、試験監督補助、小夜鳴先生の手伝いが主な仕事だ。尋問科に情報を渡す役割もある。
「エリア内の物は何を使っても良い。けど火器の使用弾薬は
小夜鳴先生の説明を引き継ぎ、ポケットから黒いゴム弾頭の9ミリ弾をつまんであかり達に見せる。
先日の事があったからか、高千穂達に対するあかり達の警戒はマックスだ。説明を聞きながらもその顔は険しい。
「まあ、頭とかに当たると死んじゃうこともありますけどね。あはは」
軽く笑っているが事実である。町中で実弾をぶっ放すわけにはいかないので、
「お互い頑張ろう」
チームを代表して高千穂に差し出されたあかりの手は―――パシッ。
高千穂の
「―――私と対等なつもり? 不愉快だわ」
そう、吐き捨てた。
完全に自分が上に立っていると思い込んでいる。何があっても
それがどれだけ危険なことかも知らずに。
あかりの手は少し腫れてるし、双方一触即発の雰囲気を出している。本当はアイシングをしろ、と言いたいところだったがここで言えばどうなるかは一目瞭然。
「はいそこまで。手を負傷しても実戦では戦わなきゃいけない。痛くても我慢な? 間宮班は南端、高千穂班は北端へ移動開始」
「10分後に試合を始めます」
あかり達を突き放すような言い方をしてしまったが、エコ贔屓だと騒がれるのは面倒だ。おかげで佐々木さんには睨まれてしまったが、別にそれでもしょうがない。
俺が何かと言われる分には慣れてるから良いが、俺が関わったことで他人がその実力を第三者に正しく判断して貰えない場合がある。
何かアドバイスしたとか、手を貸したとか。
ありもしない噂であかり達の実力が疑われるのは俺としても好ましいことではない。
高千穂は一瞬俺に向けて複雑そうな視線を向けた後、余裕の笑みを浮かべて北端に移動していった。
あかりは闘志を燃やしながら南端へ移動。俺に向けて一つ大きく頷いてから行った。
「先生、少し気になることがあるので彼女たちの後を追います」
「分かりました」
小夜鳴先生に報告をし、手近なビルの屋上に上る。
高千穂が陣取るのは北端の工場現場だろう。周りを足場が囲っており、出入り口は1つだけ。遮蔽物が少なく狙い撃ちには最適の場所。相手を痛めつけることで自分が優位に立っていると思いたがるヤツらが好きな立地だ。
俺が高千穂を気にしているのは何も私情じゃない。勿論ああいうタイプはあまり好きではないが、仕事に感情を持ち込むほど落ちぶれてはいないのだ。
過去に出会ってきた高千穂みたいなヤツらは独裁者を気取っているか、失敗して蔑まれていたのが多かった。あの双子みたいなのは別として、高千穂の事を友好的な目で見ているのは少数だろう。
そうなると必然的に単独行動が多くなる。いろんな処から恨みを買う武偵としては単独行動など『フルボッコにしてください』といっているような物だ。アリアは典型的なボッチだが、あいつの場合は返り討ちで徹底的に潰すので問題ない。それでも俺がフォローに入る事がままあるくらいだから、高千穂がうまく捌けるとは思えない。
このままじゃいつか絶対任務で失敗して命を落とす。実力もあって頭もそんなに悪くなさそうなのになんでそれが分からないかな。
「―――人の精神は、その人の育てし者に宿る―――」
屋上の縁から聞こえたその内容は随分と哲学的で。それを言っている人物の容姿と持ち物は全くあっていなかった。
「……そのオペラグラス、眩しくない? ―――理子」
「!? りっくん! こんな処で会うなんて理子、運命感じちゃうなぁ」
クルッと理子が振り返るのに会わせて蜂蜜色のツーサイドアップの髪が揺れる。シナモンの香りを漂わせながら近づいて来た理子は、俺の右手にしがみついてくる。腕が柔らかい物に当たっているのはこの際気にしない。
俺にくっついて何がしたいのかよく分からない。
だって、理子ってキンジ狙いだろ? キンジにくっついてるのをよく見るし。
「キンジに勘違いされるよ?」
「ん? なんでここでキーくん?」
「……分からないんだったらいいよ」
「???」
首を大きく傾げて本当に分かっていないようだ。
演技の可能性も無くは無くはないし、むしろ理子の場合は率先してやりそうだが、もしそうでも会話はこれで終わりにした方が良いだろう。下世話な事をしても仕方がないし。
「……理子って意外と鈍感なんだな」
「!? りっくんには言われたくないセリフナンバー1だよ、それ!?」
「???」
今度は俺が首を傾げる番だった。
確かに人から指摘されて嬉しい物では無いだろうけど……なんで『俺には』って付くんだ?
「本当に分かってないし……。りっくんはここで何してたの?」
そっぽを向いた理子がボソッと何かを呟いた。そのため、最初の方は何を言っているのか分からなかった。でも、わざわざ話題を変えたって事は聞かれたくない事なんだろう。話を続けることにする。
「
「あかりん達の特訓してたから成果を見ようかなー、って」
「なるほど」
そういえば俺が『理子に特訓頼めば?』って言ったんだった。ちゃんとやってくれたようで何よりだ。
「じゃあ、俺はそろそろ行くから」
「えー、もう行っちゃうの?」
高千穂達の姿が見えなくなったところで理子から腕を引き抜く。視力がそれなりに良いのでこれぐらいの距離なら肉眼で見える。
今度は正面から抱きついて来た理子が下から俺を覗き込む。キンジはこんなことされたら顔真っ赤にするんだろうな。
「可愛い後輩の勇姿を見届けに行かないとね」
「じゃあ理子は可愛くなぁい?」
潤んだ瞳で見上げられた俺は――
「可愛いと思うけど?」
あっさりと答えて額にチュッと口づけた。
俺はモテないので女性との経験というのは少ないが、仕事上
「うにゃっ?!」
「じゃあね、理子」
理子も例外に漏れずこの類だったので驚いてあっさり離してくれた。その隙を突いて屋上から隣のビルの屋上まで飛び移る。
振り返り、少し顔を赤くした理子に手を振って、また次のビルに飛び移った。目指すは高千穂班陣地と思われる工事現場だ。
「あそこまで出来るのに鈍感って・・・・・・なんで」
すぐにその場を立ち去ってしまったので、理子がそんな事を呟いているとは知りもしなかった。
ビル群の上を飛び移りながら、北側の工事現場を目指す。
途中、背後から膝裏にローキックを決められているあかりを発見した。あれだけ怪しい要素満載で殺気だってる相手に気づかないとか・・・・・・後で説教だな。探偵科か諜報科で自由履修とらせようか。
それにしてもなんだその「みぎゃっ!?」っていう悲鳴の上げ方。
あかりはいろんな処に手を突っこまれ、フラッグを折られてしまった。俺の名誉の為に言っておくが、断じてその最中は見ていない。
あかりの代わりに佐々木さんが双子を倒し、その隙にあかりが佐々木さんのフラッグをを持って工事現場へ向かう。
連携がうまいのはもちろんだけど一番は佐々木さんの戦闘力向上かな。双子対策もばっちりだし。
佐々木さんの方は心配なさそうだ。むしろあかりの方が危ないよな。
双子が完全に制圧されたのを見届けて、あかりを追いかけることに。道路を使わない分すぐに追いつくことが出来たので視界の端に入れながらゆっくり尾行してしていく。
「―――お前が来たのね。これも因縁かしら」
守り手を一手に引き受けている高千穂が、あかりの前に立ちふさがる。
「・・・・・・私ね、アリア先輩と陸先輩に戦姉妹契約をお願いしたの」
高千穂の言葉に記憶を探る。
「でも戦姉妹契約試験で躓いちゃって。その後いくら契約金を提示してもダメだったわ」
ああ・・・・・・あの時の。
―――基本的に『ADCT』だからと言って戦姉妹契約を規制されることは無い。むしろ学生武偵の『ADCT』には推奨されている事だ。厳しい規定があるこの制度が適用されるのはSランク上位武偵。その武偵が教えるのであれば次世代の『ADCT』候補にもなり得る。
戦姉妹契約試験は申し込まれたら上級生は断れない。よって俺の処にもじゃんじゃか話が来たわけだが・・・・・・。金を積まれたのは初めてでは無かったのでそこまで意識してなかった。あかり達と言い争っているところを見ても思い出せなかったのはそのためだろう。
「でも、今は戦姉妹契約試験に失敗して良かったと思ってるわ。お前を戦妹に強襲科に来て指導しているところを見るに―――錯乱されているとしか思えないもの」
負け惜しみを口にしながらもしっかっりと要点を押さえて挑発している。性格に難があるだけで武偵としての能力は高い、と言う俺の見解は最初から変わらない。
対してあかりは良くも悪くもアリアに似すぎだ。直情的で挑発に乗りやすいところなんか特に。挑発だとは分かっていても俺やアリアの事を言われて頭に血が上っている。
「私の事はなんて言ってもいい・・・・・・でも、陸先輩とアリア先輩の事を悪く言うな!」
――――ドウゥッッッッッ!
怒りに身を任せ突っこんだあかりの胸部に近距離から弾丸が撃ち込まれた。その出発点は、高千穂が構えるスターム・ルガー・スーパーレッドホース。威力の派手さもさることながら、精度も悪くない巨大なリボルバー銃だ。そのグリップには普通着けないようなストックも装着されていて、高千穂の性格が伺える。
「―――かはっ」
もろに食らったあかりは苦痛に顔をゆがめ後ろによろける。ここで倒れないのはアリア直伝の『根性』か。
だが、一撃に持ちこたえたところであかりの重心が定まらないのは変わらないし、戦況が良くなったわけでもない。
「ほほほっ! 取り巻きがいないと何も出来ないとでも思ったかしら!?」
這いつくばりながら物陰に移動するあかりと高笑いをしながら連射してくる高千穂。どちらが優勢かは言うまでも無いだろう。
「なるほどね。やるじゃんあかり」
あかりの意図を理解した俺は1人ほくそ笑む。確かに人じゃなければあそこまで行けるかもしれないな。
周りのものを活用して戦況を変える。これは武偵にとって必要な技能であり、それをひらめくかは才能でもある。
使えるものは全て使って勝利する。そのためには『金』という手段に出ても非難されないのが武偵だ。たまたま
―――ブォオオオン!
けたたましい音を鳴らしながらベスパが進んだ先は、砂山の上に立てられた目のフラッグ。座席に座ったあかりは高千穂の方には目もくれず横を通ってさらに肉薄する。
そこまできてやっと意図を理解したのか、高千穂は銃口をあかりの方へ向け発砲した、その瞬間。
「あかりちゃんの邪魔はさせません!」
高千穂の下のマンホールから出て来た佐々木さんが、刀の柄でグリップを跳ね上げる。その勢いで弾道はあかりの遙か頭上にそれた。
「佐々木志乃・・・・・・!」
「貴方に良いことを教えてあげます。友達は、お金じゃ買えない!」
悔しげに顔を歪めた高千穂の武器を佐々木さんがもぎ取った。もうこれで後は見ていることしか出来無くなった。
「いっけぇ――――ッ!」
あかりが渾身の叫び声を上げた数秒後。
パァンッ!
軽快な音がしてフラッグ同士がぶつかったあかり達4人の
AAのあかり視点を陸視点にしました!
前もやりましたけど、好きなんですよ。視点変えるの。他の人から見たらこの場面ってどう見えるのか、とか色々想像がふくらみますよね!
そろそろバスジャックが来ると思うのでもう少ししたらキンジが出て来ます! やっとだね!