第13話をお届けします!
「では、間宮班の勝利に、カンパーイ!」
「おめでとう」
「おめでとー!」
乾杯の音頭を取るアリアに続いて祝いの言葉を述べる俺と理子。もう1人はあかりの妹・ののかちゃんだ。
席順は俺を挟むように理子とアリアが座り、理子の隣にののかちゃん。対面に1年だ。場所を決めるのに女子の皆様は必死になっていたが、最終的にアリアがガバで脅し、理子が言いくるめてこの席になった。全くもって意味が分からん。
理子はさっきからやたらとひっついてくるし、それを剥がそうとアリアは大騒ぎだし。貸し切りにした方がよっかったかな、とか思ったりするほどの騒ぎだ。周りのお客さん済みませんねぇ。
注文したアイスティーを飲みながら1人、心の中で謝る。こいつらそろうとうるさいんだよ。
「しっかし良く高千穂に勝てたよなぁ。たまたまベスパが置いてあるなんてラッキーだったな、あかり」
「間宮様は強運の持ち主ですの!」
「勝てたのはあかりちゃんが頑張ったからですよ!」
「そんな事ないよ! みんながいなかったら勝てなかったもん」
みんなに一斉に褒められてあかりは照れまくっている。微笑ましくて良い光景だ。
「そういえば陸先輩。さっき高千穂さんと何話してたんですか?」
「何か真っ青な顔で座り込んでいましたけど・・・・・・」
あかりと佐々木さんが『先ほどの件』について聞いてくる。
あの場にはこの2人もいたけど、結構至近距離で話して居たため聞こえていなかったのだろう。
高千穂はあの時、あかりが乗っているベスパでも手でも無く、頭を狙っていた。故意に『
「別に大したことは言ってないよ。3条を元に少し『お説教』を、ね」
「り、りりり、陸! アンタ、まさかあれを!?」
「あ、アリア先輩・・・・・・? どうかしたんですか?」
武偵憲章3条。強くあれ、その前に正しくあれ。
『お説教』を強調していうと、隣でアリアが震えだした。っていうか『り』多くね?
1年生ズは頭にハテナを浮かべてるし。理子はなんか動画再生して・・・・・・・っておい。
「理子、お前のその動画。何撮った?」
「お? りこりんの秘蔵動画、りっくんも見たいのかにゃ?」
「いや、なに人のこと勝手に撮って秘蔵にしちゃってんの」
「りこりんの特技なのですよー!」
まさかの隠し撮りされてましたよ、はい。
高千穂にお説教したときのヤツね。アングルがバッチリ真横なのはどうしてでしょうね。
「りっくん、こんな怖い顔しちゃだめだぞー?」
「怖いか?」
「理子お姉様見せて欲しいですの!」
「わ、私もみたいです!」
「ちょ、アンタ達やめときなさい! 死ぬわよ!?」
しなねぇよ。動画見て死んだら呪いのビデオじゃねぇか。
アリアが必死に真っ青な顔で止めるも、好奇心に負けた1年生は動画の公開を迫る。俺としては別に見られても良いけど、撮ってるのが理子ってあたりがちょっと・・・・・・。
「後で加工して売りつけるつもりだったけどー、後輩にも優しいりこりんは見せてあげるぞよー?」
そういった理子は画面を1年生ズに向けて再生する。残念だが言葉全てが理子に対する不信感を全力で肯定してしまっている。
アリアは顔を覆った指の隙間からチラリ、と見ていた。お前は怖い物見たさにホラー映画を借りるびびりか。
「見ても面白く無いと思うけど」
「まあまあ。物は試しってーことで! ポチッとな」
理子がタブレットで撮った動画を見た結果。
「うぇぇぇぇん!!」
「こ、こここ、こわ・・・・・・!」
「恐ろしいですわ・・・・・・!」
「い、今まで済みませんでした・・・・・・志乃とお呼びください・・・・・・!」
「だから見るのはよせって言ったじゃない!!」
「にゃはっ!」
上からあかり、ライカ、麒麟ちゃん、志乃、アリア、理子だ。
もはや大災害に匹敵するほどの騒音。店員さんには本当に申し訳ない。
「あの・・・・・・お客様」
「ああ、すみません。うるさいですよね」
注意のためだろう。近寄ってきた店員さんに謝罪をしたところ。
バタン。
・・・・・・店員さんが倒れてしまった。
それを仲間らしき人たちが急いで引きずっていく。きっとぶっ倒れるほどの騒音なのだ、こいつらの会話が。
「お前ら少し静かにしろよ? うるさすぎて店員さん倒れちゃったじゃん」
チューッとストローからアイスティーを口に含み注意を促す。少しは公共の場所でのマナーを学習して貰わないと付き添いの俺が恥ずかしい。
「「「「「(いや、あんたのせいだろ)」」」」」
何故か不服そうな顔の5人。悪いのはお前らだぞ?
「あれっ、ののか何処行くの?」
「あ・・・・・・ちょっとお手洗いだよ」
あかりの質問に答えながらののかちゃんは席を立つ。
それを見送りながら俺は彼女を注意深く観察していた。彼女、何かが引っかかるんだよね・・・・・・。
祝勝会から数日後の昼休み。俺は強襲科の射撃レーンに来ていた。理由は簡単。
「じゃあ、何発か撃ってみて。普通に」
「え・・・・・・・はい」
あまりにも命中率が悪いと言うことでアリアが矯正を命令したところ拒否されたんだとか。普段アリアには絶対服従のあかりが反抗するなんて珍しい事もあるもんだ。
アリアも相当ショックを受けたと見えて意気消沈してたし。
バララッ、バラララッ!
あかりは正しい姿勢を心がけているようだが、実際にそれでうまく撃てるかと言われれば答えはNOだ。マイクロUZIは唯でさえ反動が大き、巨漢かよほど銃の扱いに慣れている者でなければ着弾点がぶれてまともに当たらない。そもそもこの銃は前提として精密射撃用では無く、牽制や至近距離からの攻撃で使われることが多い。どちらにせよ、アリアより身長が低いあかりに向いている銃とはお世辞にも言えない。
「・・・・・・マジか」
「・・・・・・マジです、すみません・・・・・・」
よってあかりの命中率が良い訳もなく、人型ターゲットには数えられるほどの弾痕しか無かった。それでももしかしたら何発か重なってるかもしれないし、とスコアペーパーを見た結果。現実を突きつけられた。
アリアより命中率の悪さは聞いていたので10メートルレンジと5メートルも短くして見たのだが・・・・・・。結果は何度見ても同じ11/100、つまり100発撃って有効着弾数が11発。前回は6発だったらしい。今回のスコアは2倍近くに増えたが安易に喜べるわけない。距離が短いのだ、それなりに当たるだろう。というか10メートルでこれだけしか当たらなかった、というべきか。
これは予想以上だ。額に手を当て考え込む俺にあかりは申し訳なさそうな顔でシュン・・・・・・としながら銃を置いた。
「あー、別に責めてるわけじゃないからな?」
「本当にすみません・・・・・・」
弁明はするものの、あかりの態度は相変わらずネガティヴである。
このままでは埒があかない。
「先に言っておくけど別にやましい気持ちは無いから」
「?」
「ちょっとごめんね」
「!? 陸先輩!? な、なにをっ」
あかりの右腕を軽く数回撫でる。端から見たら確実に変質者だろう。やべぇ。
まあ宣言通りやましい気持ちは一切無く、これは単に確認行動だ。
「うん、こう、かな?」
バババッ、バババッ。
脇を開けて腕を伸ばし、余計な力は抜く。銃の反動で手がぶれるのまでを意識して発砲。
隣からは驚愕の声が聞こえてきた。
「それは・・・・・・! 何で陸先輩がその技を使えるんですか!?」
「間宮は公儀隠密の家系。請け負う任務の大半が―――暗殺。もちろんあかりはそれがイヤだから無理にでも矯正してたんだろうけど・・・・・・。これ、『9条破り』の技だよね?」
俺がやったのは多少違いがあるが、あかりの家系、間宮一族の『殺人技』。
相手の急所を確実に打ち抜き、声を上げる暇さえ与えずに絶命させる。その証拠に放った10発の銃弾はそれぞれ額、右目、左目、ノド、心臓に各2発ずつ命中している。どこか1つでも致命傷になる箇所だ。
「―――陸先輩は、私が隠してたこともすぐに暴いちゃうんですね」
「・・・・・・」
「こんなの、武偵の技じゃない!」
涙をためた瞳でキッ、とこちらを睨むあかり。いつも底抜けに明るく笑っている後輩の姿はなく、ただ、悲しみとやるせなさに溢れた瞳で『助けて』と懇願する少女がいた。
あかりの性格で暗殺なんて出来るわけがない。でもその体には人を殺めることが出来る技が染みついている。
「今のは忘れてください」
「あかり」
ペコリ、とお辞儀して去ろうとするあかりの腕を掴む。この後輩が逃げ出してしまうことは予測できていた。人の為ならどんな危険なことにでも突っこむくせに、自分の事となると途端に臆病になる。
これが赤の他人の話であれば、俺は絶対に引き留めなかった。だってそれは、俺と関わりの無い人が関わりの無いところで抱えている問題だから。
「なんですか。離してください」
「――武偵ってさ」
実力があっても、全人類を救うことなんか出来ない。
「『殺すこと』と逆の性質を持つ職業じゃないと思うんだ」
「・・・・・・? だって、武偵は」
ましてや、気持ちだけでどうにかなる仕事じゃない。
「結果的には助けてる。助けようと思ってみんな戦っている。でも」
依頼人と仲間。命の危険が及んだとき、最優先で助けるのは依頼人の命。
「助けるためにはさ、『殺す知識』がないといけないんだよ」
誰かを助けるとき、他の場所で誰かが助けを求めているかもしれない。
そういうとき、人間は無力だから。いくら力が有っても神様でも無い限り自分の近くの人しか助けられない。
「何処をどうしたら人は死んでしまうのか。人を死に至らしめる環境は何か。どういう精神状態が人を死に追いやるのか。―――どうしたらその人を殺せるのか」
「・・・・・・!!」
誰かを助けるには代償が必要で。
それは、遠くの誰かだったり、自分の感情だったり。
「『殺し方』を知っているから、殺せる武器を持っているから」
それでも助けたいと願うから。
「―――そこから1歩ずれた行動を取ることで人を助けることが出来る。その『1歩』をずらすことが出来る人が武偵なんだよ」
「・・・・・・1歩」
目の前の人を、仲間を助けたい。そのために行動を起こすのが武偵。
「これは俺の考え方だし、戦闘系の学科意外にはほとんど当てはまらない事だけど。あかりの持っているその技はただの枷じゃない。武偵として胸を張れるようにするための第一歩だよ」
「・・・・・・!」
「あかりは急所に命中させられる。急所って言うのはそこに当たるから大ダメージになるんだ。1歩でも外れれば、動きを制限できる最大の攻撃になる」
「私の技が・・・・・・最大の攻撃・・・・・・」
うわごとの様に俺の言葉を繰り返すあかり。その頭に手を乗せ、視線を合わせる。
「今はうまく出来ないかもしれない。体に染みついた技を変えるのは凄く大変だ。でも、武偵でいたいと、誰かを救える存在になりたいとそう願うのなら―――諦めるな」
「10条・・・・・・」
武偵法10条。
諦めるな、武偵は決して諦めるな。
「努力すれば何でも出来るなんて、そんなきれい事は言わないけど」
台に置かれたあかりの銃を取り、その小さな手に握らせる。
「努力しなきゃ何も出来ないし、なにも変わらない」
あかりの瞳には光が戻っていた。いつも前向きで、なににたいしても一生懸命な後輩の姿が。
頭の上から手をどけてかがんでた姿勢を元に戻した。
「あかりがその気なら俺も手伝うし。お前の周りにいる人、全員協力してくれると思うよ?」
「・・・・・・こんなこと、初めて言われました。陸先輩はやっぱり、すごい人ですね!!」
さっきとは違い、目に涙を浮かべながら微笑む。その手に握っている銃が何ともミスマッチではあるが・・・・・・可愛い後輩のイイ笑顔だ。
「アリアはどうする? 昨日随分と悩んでたけど」
「・・・・・・自分で伝えます。もう少し、勇気が溜まったら」
「そう」
目元の涙を拭って俺と視線を合わせるあかりからはなみなみならぬ覚悟が伝わってきた。
俺の方から話しても良かったけど・・・・・・・余計なお世話だったな。
「本当にありがとうございました! 私、頑張ります!!」
「うん。じゃあ一番最初のアドバイス」
「はい!」
射撃場のドアを開けながら一言。
「安物だからって、大量生産の銃を使うんじゃなくて、自分にあった銃を探す努力もしないとね?」
「・・・・・・・・・はい」
腕の良さを生かすには、良い武器を使わないとね。
本来ならあかりがアリアを突っぱねるシーンですが、オリジナル展開にしてみました!
な・の・で
アリア先輩はほとんど出てこないですww
最近あかりばっかりやん、キンジでてこないやんと思ったそこの貴方!!
大丈夫、出しますよ! 次話で!!
といことで、次もお楽しみに!!
メルチェでした。