どうもメルチェです!
更新をサボ・・・・・・げふんげふん、止めている間に10月になってしまいましたね!
では第14話どうぞっ。
その日は、朝から煙たい雨の降る日だった。
「キンジ、いつも遅刻寸前なんだから早めに出るぞ」
「50分って・・・・・・早くね?」
「そういう考えだから遅刻するんだ」
「してねえよ」
人間何でも早めの行動が基本です。
いつもなんだかんだアリアと揉めたりしてバスに乗り遅れそうになるからな。
だが今日は遅刻の原因となりそうなアリアも別登校だ。さっきあかりから写真付きで送られてきた。サイドカーに乗せて貰うんだと。
だらだらとしているキンジのケツを押してバス停に向かう。
「あれ・・・・・・?」
いつもより結構早めに出たはずなのに、何故かそこには7時58分のバスが到着していた。
1時間目が始まる前に着くのはこのバスが最後。一般校区にはギリギリ間に合うぐらいの時間に到着することもあって、すでに学生による詰め込み大会が行われている。
「やった! 乗れた! やったやった! おうキンジに陸おはよう!」
キンジ共々慌てて駆け寄ると、入り口のタラップで剛気がバンザイしている。
ただでさえ満員になる事もあるこのバス。それが今日は雨だということもあり、自転車で通っているヤツも乗ってきている。奥の方まで満杯で、とてもじゃないが人が乗れるとは思えない。
「のっ! 乗せてくれ武藤!」
「頼むよ剛気! お前だけが頼りなんだ!」
「そう言われてもなあ……。 陸だけでも全力疾走すれば間に合うかもしれねえぞ?」
キンジが手つきで中へ行け、と指示をするが、剛気はむしろ押し出されそうになるのを必死に堪えているようだ。
全力疾走って・・・・・・雨の時にやっても濡れるだけじゃねえか!
「武藤頼むッ!」
「ムリなモンはムリだ! お前ら、男は思い切りが大事だぜ? 雨の中全力疾走してこい!
水も滴るいい男ってな!!」
水も滴るいい男じゃねえよ!
ただのずぶ濡れで可哀想なヤツじゃねえか。
無情にもバスのドアは俺たちを残して閉まった。中にいる剛気に恨みがましい視線を送ってやる。
強襲科式の感謝でフルボッコにしてやろうか。
「仕方ない。濡れはするがチャリでいくか」
「そうだな、遅刻するよりは・・・・・・って、は!? お前チャリあったっけ?」
「最近拾った」
そう、ついこの間不法投棄されてたチャリを見つけ修理したのだ。そしたら結構普通に乗れた。装備科で必要な部品を仕入れてきたし。なんか文ちゃんにぼったくられた気もするけど・・・・・・。
「拾ったって・・・・・・それ大丈夫なやつなんだろうな?」
「俺がそんな初歩的なミスをするとでも?」
「・・・・・・しないな」
今のご時世、防犯登録などが厳しく行われている。不法投棄されていたと言うことは、もちろん持ち主が捨てた可能性もあるが、盗難品が用済みになったから捨てた、という可能性もあるのだ。そして後者の場合だと盗難届けが出されており、俺が犯人みたくなってしまう。
よって俺は証明書などが無くても新しく防犯登録をしてくれるお店に行き、登録を済ませてあるのだ。
まあ、警察に協力する立場の武偵が警察に補導されることは無いだろうけど。されたらよほどのバカだ。
「自転車だとギリギリか・・・・・・。キンジ早く乗れ! じゃないと置いていくぞ?」
「お、おう」
「じゃあ、飛ばすからな。しっかり捕まっておけよ?」
「お前どんだけスピード出すつもり―――うわあああああああ!?」
自転車の後ろにキンジが乗ったのを見て、ペダルに足をかける。
それじゃいっちょ行きますか。
1限目には間に合うようにこいでやるから、振り落とされないようにがんばれよ?
キンジの悲鳴を聞きながら、一般校区までの道を剛気の言うとおり全力疾走してやった。
「はっ・・・・・・はあ・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・」
「大袈裟すぎだろ」
「いやマジで。絶対60キロぐらいは出てただろ」
「体感で57キロな」
「早すぎるわ!」
時刻は8時10分。あと5分後には授業が始まるのでギリギリだが・・・・・・まあ少し遅れて入っても問題ない。
それにしても乗せてやったのに文句の多いヤツだ。振り落とされなかっただけ有り難いと思えよ?
「おかげで間に合っただろうが。それともさっきのカーブで崖下に落とした方が良かったか?」
「いえそんな滅相もございません」
廊下でそんな会話をしながらタオルで濡れた制服をふく。
雨の中自転車を飛ばして来ればそうもなるわな。
ほとんどの生徒は授業開始の数分前と言うこともあり、いつもなら教室にいる時間だ。が、今日は何故かほとんどの生徒が廊下にいる。そして何か喋りながら悲鳴を上げている。主に女子が。
・・・・・・なんだ? Gでもいたのか?
俺は多くの人が嫌うであろう黒い虫がいるのかと思ったけど、中には俺たちを指している人たちもいる。
しばらくその理由を考えて、やがて1つの答えに思い至った。
・・・・・・ああ。俺たちが濡れ鼠だから哀れみの目を向けられてるのか。それはどうもお見苦しいところをお見せしました。
廊下に溜まっている女子達に目礼して自分の教室に向かう。
「(こいつの無自覚やめてくんねえかな・・・・・・)」
もちろん、キンジがこんな事を考えているなんて俺には分からなかった。
「あの・・・・・・桜田くん、おはよ///」
「ん? おはよう」
クラスの女子に声をかけられたので挨拶を返す。と言ってもそこまで仲がいいわけでも無いのだが。
「相変わらずモテるなぁ! このリア充め!」
「今日も絡んでくるな、吉野」
椅子に腰掛けたところでいつの様に声をかけてくる吉野。
当然の様に肩を回してくるほどの馴れ馴れしいヤツだが、嫌いなわけではない。
「それはいつもの事だろ~?」
「まあな」
適当に吉野の相手をしながら濡れたブレザーを背もたれに掛ける。意外と重い。
「お前今日歩き?」
「いやチャリだけど」
「この雨の中チャリとかマジか!? バス連中より早ぇじゃん!」
そう言えば、バスは俺たちの前で出発したはず。俺たちもそこからほぼ同じ時刻にバス停を出発している。
いくらこぐのが早くても此処まで差があるとは思えない。雨だから速度を落としているッてこともあるだろう。だが―――
・・・・・・イヤな予感がする。
「なぁ吉野。剛気ってもう来た?」
「武藤? いやまだだけど」
やっぱり。
「OK。今からキンジを連れて少し出る」
「は? 今から?」
「そう。だから先生には『後で話します』って言っておいて」
「お、おう」
さっき掛けたばかりのブレザーを着直して席を立つ。雨で濡れたワイシャツが体に張り付くが、今はそんな事もいっていられない。
「キンジ、ちょっと来い」
「は? なん、」
「いいから。早く」
「は、ハイ」
キンジの腕を掴んで半ば強制的に連れて行く。
俺が考えている通りならば。
――――俺たちが乗り損ねたバスは事件に巻き込まれている。
『陸、今どこ!』
キンジを強襲科の体育館でC装備――SATやWATに似た、武偵が『出入り』の際に着込む特殊装備――に着替えさせていると、焦った様子のアリアから電話が掛かってきた。
「強襲科の体育館だ。もうすぐキンジの着替えが終わる」
『! さすがね。事件があったわ! とりあえず第三女子寮の屋上に来て!』
「了解」
やっぱり事件か・・・・・・。
このタイミングって事はアリアがここ最近電波を追っていた『武偵殺し』のものだろう。頻繁に通信科に出入りしていたからな。
「陸、終わったぞ。しかしなんでC装備なんか・・・・・・」
「今アリアから連絡があった。事件が起きたそうだ。その装備で出張る意味、しっかり考えろよ」
「・・・・・・! そんな、大きい事件なのかよ」
自分の装備をキンジは苦々しく見回す。
まあ『C装備で挑む事件』に小さいのは無いからな。
事件に消極的なのが武偵として良いか悪いかは別として。関わると決めたからには油断しないで欲しいんだがな。
「アリア」
「陸!」
向かった屋上にいたアリアもC装備に身を包み、額にしわを寄せている。それだけ事態が深刻になっていると言うことだろう。
「陸はその制服で良いのか?」
「ああ。C装備はあんまり好きじゃなくてな。この服少し改良してるから丈夫だし」
武器の位置や弾の数など、装備を確認しながら答える。
俺が着ているのはキンジたちの様なC装備では無く普通の制服だ。ただ、服の防御力自体を大幅にあげてある。
「レキ」
無線機に向かって話すアリアの傍らで、キンジは階段のひさしの下に座っている美少女に話しかけていた。
黄色い大きなヘッドフォンをしていて、何かの音楽を聴いているようだ。キンジの声に気づかず、虚空を眺めている。
無表情ながらも精巧な作りで整った顔のこの少女の事は俺も知っていた。
狙撃科Sランクのレキ。愛銃のドラグノフをいつも背負い、基本無表情。天才少女と名高い人物だが、近寄りがたい雰囲気の所為か友人関係は広くない。
「お前もアリアに呼ばれたのか」
「はい」
頭を突かれて視線をあげたレキは、随分と抑揚の無い声で答えた。
それからこちらに視線を移す。
「初めましてレキ。俺は桜田陸」
「レキです」
その視線の意味は何となく理解できたので自己紹介をしておく。と言っても会うのが初めてなだけであって、名前と顔はお互い知っているのだが。
「何か音楽でも聴いてるの?」
「いえ」
「じゃあいつも何聞いてんだ、お前」
「風の音です」
風?
いまいちよく分からない。音楽の代わりに風のサウンドでもきいてるのか?
『自然の音』みたいなやつ。確かそんなのがあった気がする。
「あと2,3分ってところね」
通信を切ったアリアが、濡れたツインテールをひらめかせてこちらへ来る。
「アリア、
「バスジャックよ。この4人パーティーで追跡するわ」
「―――バス?」
「武偵高の通学バス。7時58分に男子寮前に停留したヤツだな?」
「そうよ」
外れて欲しいと願っていたが・・・・・・当たっちまったか。
キンジが驚いた顔で目を見開いている。
「悪いな、キンジ。ただの予想だったから確信が持ててから言おうと思って」
「いや、別に、いいけど」
そう言う割には随分と不満げな顔をしている。
「犯人の目処は立ってるのか」
「ええ。バスには爆弾が仕掛けられているわ」
――爆弾――
そう言えばキンジと初めて会った日。チャリに爆弾を仕掛けられたと言っていた。
武偵、爆弾それに
「これは『武偵殺し』の仕業よ。キンジ、アンタの自転車をやった犯人」
『武偵殺し』
捕まったとされている凶悪犯。爆弾魔。
「――車内に犯人は?」
「分からないけどヤツは爆弾を遠隔操作するわ。高確率で車内にはいないと思う」
あのバスは定員オーバーのすし詰め状態で走行している。車内にいないと言うことはあそこで戦わなくても済む、ということだ。その点だけが唯一の救いだな。
「最初の武偵はバイクを乗っ取られたわ。次がカージャック。その次がキンジの自転車で、今回がバス・・・・・・・ヤツは毎回、乗り物に『減速すると爆発する爆弾』を仕掛けて自由を奪い、遠隔操作でコントロールするの。でもその操作に使う電波にはパターンがあってね。アンタを助けたときも、今回も、その電波をキャッチしたのよ」
「でも、『武偵殺し』は逮捕されたハズだぞ」
「それは真犯人じゃないわ」
「なんだって? ちょっと待て。お前はなんの話をしてるんだ――」
困惑した表情のキンジが待ったをかける。今回も、前回と同じように模倣犯の仕業だと思っているんだろう。
だが、模倣犯にしてはおかしな点がいくつかある。でもそれを1から説明している余裕は無い。
「アリア、それは確証があっての話だな?」
「ええ。時間がないから背景を説明する気はないけど、これは確かな事よ」
「キンジ、ひとまず信じよう。アリアは嘘を吐いてない」
「・・・・・・分かった」
「そろそろヘリが来ることになってるわ。それに乗るわよ」
アリアの言葉通り、上空から雨の音に混じって激しい音が聞こえてくる。
さっきの無線ではヘリを呼んでいたらしい。
「武偵憲章1条! 『仲間を信じ仲間を助けよ』! 被害者である武偵高の仲間を救助するのが今回のミッションよ!」
ヘリの音に負けじとアリアが声を張り上げる。一番手っ取り早い救助方法は爆弾を切り離す事だな。
「初っぱなからこんな大事件なんて、俺はとことんついてないな」
「2年の最初ですでに出会ってるだろ」
「イヤなこと思い出させるなよ・・・・・・」
「陸ぐらい、とはいかなくても、アンタの実力には期待してるからね」
「せんでいい。こんな難事件にブランクが長い、それもEランクの武偵を連れてっていいのか」
「もしピンチになったら、そのときはあたしが守ってあげるわ」
「それは頼もしいな。じゃあアリアの事は戦兄の俺が守ってやるよ」
そんな話をしながら4人でヘリに乗り込んだ。
如何でしたでしょうか。
やっと1巻の半ばくらいまで進みました!
この後の展開を色々練り練りしてます。頑張って更新しますので!