緋弾のアリア――碧き守護者――   作:メルチェ

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お久しぶりです、メルチェです! 


試験近いのに勉強に飽きて載せてしまいました……あはっ。



15、事件発生

 

 

 

――sideキンジ

 

 

 

 

インカムに入ってくる通信科の話によると武偵高のバスはいすゞ・エルガミオ。武藤らを乗せた男子寮からはどこの停留所にも停まらず、暴走を始めたという。その後車内にいた生徒達からバスジャックされたという緊急連絡が入った。

 

 

 

60人という定員オーバーな人数を乗せたバスは現在台場に入ったらしい。

 

 

 

 

「警視庁と東京武偵局は動いてないのか」

 

 

 

ヘリの轟音で互いの声が聴こえないため、インカムを通じて会話をする。

 

 

 

『動いてるだろ。でもバスジャックともなるとすぐには急行できないんじゃないか?』

「じゃあ俺達が一番乗りか」

『陸の言うとおりよ。相当な準備が必要なはず。それにヤツの電波を掴んで、通報より先に準備を始めたんだもの。そのぐらい当然だわ』

 

 

 

相変わらず偉そうにフン、と鼻を鳴らしたアリアは愛用の二丁拳銃のチェックを行っている。

 

 

その横では、まるで母親のように優しく目を細めた陸がアリアを見ていた。……戦兄妹として組んでいた影響だろうか。陸は時々アリアにこういう視線を向ける。この後は大概……

 

 

 

 

「アリア、1人で突っ走るなよ? パーティーとは1人の行動をその他が支えるんじゃない。"全員で"同じ任務に挑むものだ」

「知ってるわよ?」

「……ならいい。単独任務じゃないんだ。連携はかかさずにいこうな」

「も~~う! なによ!?」

「いつものおまなじない」

「お、おまじないなら仕方ないわね!」

 

 

 

 

……最後に恋人的展開が来るんだよな。主に陸の所為で。

 

 

衝動的にインカムの電源を落とそうとした右手をなんとか手前で止める。よくやったぞキンジ。

 

 

そういうのは俺のいないところでやってくれないかなと心中で思いつつ(口に出すと飯が消えるので)、隣に座るレキをちらりと横目に見る。

 

 

こいつもこういうのには縁がない人種のハズだ。きっと俺と共感できるものがあるに違いない、って! いつもどおりの無表情でカロリーメイト食ってるし!

 

 

 

 

そうだ……レキは縁がないとかじゃなくて別に関心が無いからどうでもいいってタイプだった。この2人のやり取りを前にして2対1っていうのは俺のヒス的にかなりやばい気がするんだが。

 

 

 

 

 

 

『見えました』

 

 

 

それから少ししてやっと危ない展開が終わった頃。

 

 

窓の外を見ていたレキがインカム越しに端的な報告をしてきた。

 

 

俺達は揃ってヘリの防弾窓に顔を寄せる。右側の窓からは台場の町並みやりんかい線が見える。しかし道路を走っているだろう車を識別できるほどの距離ではなかった。

 

 

 

「何も見えないぞレキ」

『ホテル日航の前を右折しているバスです。窓に武偵高の生徒が見えています』

『ホテル日航……ああ、本当だ。剛気のツンツン頭が入り口の窓から見える』

「!? 陸、お前も見えてるのか!?」

『あんたたち、よく分かるわね。視力いくつよ』

『『左右ともに6・0だ(です)』』

 

 

 

サラッと超人的な数字を言った2人に俺とアリアは思わず顔を見合わせてしまう。陸、お前はもう人間じゃねえな。

 

 

ヘリの操縦士が陸とレキの言った辺りへ降下していくと、本当にそこに武偵高のバスが走っていた。速い。かなりの速度を出しているぞ。

 

 

 

他の車を追い越しながら、テレビ局の前を爆走している。局の中から人々がこちらを撮影しているのが見える。

 

 

 

 

 

 

『空中からバスの屋上に移るわよ。あたしはバスの外側をチェックする。キンジと陸は車内で状況を確認、連絡して。レキはヘリでバスを追跡しながら待機』

『いや、「武偵殺し」ならキンジのチャリジャックのときのように外側からの攻撃があるはずだ。俺はそのまま屋上で待機する』

『それもそうね。じゃあ陸は屋上で待機、そこからの細かい指揮は任せるわ』

『はいはい』

 

 

 

テキパキと2人で指示を出し合い強襲用のパラシュートを天井から外し始める。

 

 

 

こういうとき、アリアと陸は一緒に任務をこなしてきたんだなと思う。相手への掛け合いも、指示の的確さも、ともに過ごしてきた時間があるからこそできることだろう。

 

 

 

 

 

「内側……って。もし中に犯人がいたら人質が危ないぞ」

『「武偵殺し」なら、車内には入らないわ』

「そもそも『武偵殺し』じゃないかもしれないだろ!」

『違ったらなんとかしなさいよ。陸もいるんだしあんたならどうにかできるはずだわ』

「お前なあ……――」

『落ち着けキンジ。アリア、お前は周りの人間が全員自分と同等だと思うな。環境だったり精神状態だったり、能力を活かすには"条件"がある』

 

 

 

 

――――――『条件』。

 

 

その言葉に心臓が跳ね上がる。まさかこいつ俺のヒステリアモードのこと知ってるのか?

 

 

 

俺のヒステリアモードは性的興奮によって引き起こる。それによって俺の能力は何倍にも膨れ上がるわけだが……あまり好きではない。なのでなるべくならないように気をつけている。

 

 

それがアリアでなっちまったから今目をつけられてるんだがな……。

 

 

 

 

 

『現場でそんな甘いことは言ってられないわ』

『そのとおりだ。だからこそのパーティーだろ? 足りないところを補い合って事件を解決するからこそ複数人で組む。その場その場で仲間の調子を読み取るのもリーダーの役目だ』

『……』

『よし、キンジ』

「あ、ああ。なんだ?」

『多分車内にはいない。通報ができるってことは犯人からの脅しがかかってないってことだ。それにもし車内に犯人がいて誰かに緊急要請を出させたなら、恐怖で声が震えるはず。電話をかけてきたのは救護科の生徒らしいが途中から強襲科の生徒に変わってる。俺が犯人なら反撃されるかもしれない強襲科の生徒が動く前に脅して止める』

 

 

 

陸の言うことには一理ある。

 

 

ちゃんとした根拠があるなら俺も納得するしか無い。ここまで来てしまっては後に引けないのも事実だし。

 

 

 

「……それもそうだな」

 

 

 

俺は渋々頷いて強襲用のパラシュートを天井から外した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと。しっかりしろよ」

「ちょっと―――ちゃんと本気でやりなさいよ!」

 

 

 

久々の空挺(エアボーン)だったのでバスの屋上から危うく俺は滑り落ちそうになる。そこを陸とアリアが2人で両腕を掴んで引き留めてくれた。

 

 

 

 

「本気だって……これでも、今は……!」

 

 

 

イラッとした声で叫ぶアリアにワイヤーを打ち込みながら返す。これでも必死にやってるんだよこっちは。

 

 

そこの超人()とは違って運動神経ももともと良くないし。こいつ今、ワイヤーも刺さずに爆走中のバスの上に立ってるんだぜ? しかもご丁寧にパラシュートたたみながら。

 

 

 

 

 

「爆弾が仕掛けられているなら下の可能性が高い。アリアは見つけたらとりあえず型を報告してくれ。キンジは車内に入って状況を。一応車内に爆弾が無いかも確認してくれ」

「分かったわ!」

「了解」

 

 

 

 

陸の指示に従い、一応伸縮ミラーで車内を確認してから中の生徒に窓を開けもらい乗り込む。

 

 

 

もともと大混乱だった生徒たちは俺が来たことで更に騒ぎ立て、一斉に何かを喋り始めた。言葉が交錯していて誰が何を喋っているのか理解できない。

 

 

 

 

「と、ととと遠山先輩! 助けてっ」

「どうした、何があった」

 

 

 

俺たちを見捨てた武藤に声をかけられ、「あの子だ」と指された方向を見ると中等部の後輩がいた。メガネを掛けたおとなしそうな少女である。

 

 

 

「い、いい、いつの間にか私の携帯がすり替わってたんですっ。そ、それが喋りだして」

「速度を落とすと 爆発しやがります」

 

 

 

アリアの言ったとおりだ。

 

 

俺のチャリジャックの犯人と同一犯の仕業――!

 

 

 

 

『キンジ、そっちはどうだ?』

『ちゃんと報告しなさい!』

 

 

陸とアリアの声だ。

 

 

 

 

「アリアの言ったとおりだったよ、このバスは遠隔操作されてる。車内はすでに生徒が探してて爆弾らしきものは見つかってないみたいだ。そっちは?」

『――爆弾らしきものがあるわ!』

 

 

 

 

その声にバスの後方を背伸びして見ると、窓の外にワイヤーとアリアの足が見えた。

 

どうやらこっちも陸の言ったとおりみたいだな。

 

 

 

 

 

『ガンジスキーβ型のプラスチック爆弾(composition4)「武偵殺し」の十八番よ。見えるだけでも――炸薬の容量は3500立方センチはあるわ!』

『……それはヤバイな』

 

 

 

ヤバイどころではない。

 

 

3500なんて……ドカンと行けばバスどころか電車でも吹っ飛ぶ量だぞ……!

 

 

 

あまりにも過剰すぎる炸薬量に気が遠くなる。

 

 

 

 

 

『潜り込んで解体を、――』

『アリア、少しうるさくするぞ』

 

 

 

 

陸がアリアの言葉を遮ったのとほぼ同時に、パンパンッと短い銃声が2発聞こえた。

 

 

発砲音に慣れてるはずの生徒たちもこの状況では悲鳴を上げている。

 

 

 

 

慌てて後ろの窓を見ると――

 

そこに追従していたであろう1台のオープンカーが横転するところだった。バラバラに砕けた銃座のようなものも見える。

 

 

 

 

 

陸がやったのか。

 

 

 

 

『アリアは作業を続けてくれ』

『わ、分かった』

『キンジ、生徒たちの様子は』

「今のでだいぶビビってる感じだな。戦闘系の生徒以外は特に」

『そうか……』

 

 

 

 

暫くの間沈黙が続き、生徒の混乱の声だけが聞こえる。

 

 

『みんなに伝えてくれ――』

 

 

 

そして聞こえた声は凛としていて、まさに任務慣れしているプロの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった」

『頼んだぞ。俺は今みたいな襲撃に合わせて見張ってるから』

 

 

 

 

 

会話の間にまた銃声が聞こえ、今度はバスの右側に来た銃座が吹っ飛んだ。あれは、UZIだな。

 

 

 

 

 

「みんな聞いてくれ!」

 

 

 

手を大きく2度ほど叩きながら声を張り上げる。

 

 

ざわめきはあるものの、いくらか落ち着いてきた。

 

 

 

 

 

「今この上に陸がいて襲撃者を寄せ付けないようにしている。その陸からの伝言だ」

「え、桜さまが……?」「桜田がいるなら……!」

 

 

 

――すごい。

 

 

あいつの名前を出しただけでこんなにも混乱は収まるものなのか。

 

 

 

さっきの悲鳴に似たどよめきとは違う、安堵の声があちこちから聞こえてくる。

 

 

 

 

 

「まず専門科目ごとに別れて移動してほしい」

 

 

 

陸が言っていたのは、応急処置などができる救護科や衛生科の生徒を中央に。その周りを強襲科や狙撃科、諜報科の生徒で囲み、前方を装備科と車輌科で運転手をサポート。ランクが低いものや中等部の生徒も中央へ。

 

 

それから、もし流れ弾などで窓が割れても破片で怪我をしないように予め窓は開けておくこと。戦闘系の生徒はいつでも応戦できるように戦闘準備。

 

 

 

 

以上のことを伝え、各々その指示通りに動いてもらう。尋問科や探偵科の生徒なんか自分たちで事件のあらましを整理し始めている。

 

 

 

生徒たちは武偵である自分を取り戻していた。

 

 

 

 

 

 

『アリア、解体作業は進んでるか?』

『ええ。でも運転が時々乱れるのがやりにくいわね。間違って変なところ切りそうだわ』

『頼むからやめてくれ。……キンジ、運転手の状態はどうだ?』

 

 

 

 

陸に聞かれて初めて運転手の様子を確認する。

 

 

バックミラー越しに見えるその顔は……ダメだ。真っ青で手先も震えてる。

 

 

 

 

「完全に萎縮状態だ。なんとかハンドルを握ってる感じだぞ……!」

『ちょっとこのインカム武藤に渡してくれ』

「あ、ああ」

 

 

 

――爆弾の解体作業、と言うのは多大な集中力がいる。

 

 

危険物な上に、失敗すれば人質が全員死ぬんだ。相当なプレッシャーもかかる。

 

 

 

 

的確かつ安全に作業をすすめるには車体はあまり動かないほうが好ましい。

 

 

それがこの運転手じゃ難しいだろう。この人も完全なる被害者だし。

 

 

 

 

 

「――お、おう。それなら任せろ!」

 

 

 

その点こいつなら安心だ。乗り物ならなんでも乗りこなすAランク武偵だしな。

 

 

 

「ほれ、キンジ」

 

 

 

武藤はインカムを俺の手に乗せ運転席に向かう。

 

 

 

「兄ちゃん、後の運転は俺が引き受けるぜ! 襲撃とかも来るから兄ちゃんは真ん中にいてくれ」

「は、はい。頼みます……!!」

 

 

 

 

運転手の男性と交代し、自分がその席に収まった。

 

 

車輌科の優等生だけあってスピードはありながらも随分揺れなくなった。これでアリアの作業も捗ることだろう。

 

 

 

 

「有明コロシアムの 角を 右折しやがれです」

 

 

さっきの女子の携帯からボーカロイドの声が聞こえてくる。

 

 

武藤はその指示に従って速度を保ちながら右折した。対向車が慌てたように避けていく。

 

 

 

 

「危ないからこれかぶっとけ!」

「いいけどよ! お前はいいのか?」

「俺は……なんとかする!」

 

 

 

 

窓に手をつき外の様子を確認する。よし、今のところあのオープンカーは来てないな。

 

 

 

 

「これスピード違反とかで減点にならねえよな? 俺、この前改造車がバレてあと1点で免停になっちまうんだよ」

「安心しろ。そもそも交通帯違反だ。晴れて免停おめでとう!」

「そこから落ちやがれ! 轢いてやる!」

 

 

 

かくいう俺にも武藤と軽口を叩くぐらいの余裕が出てきた。

 

 

主な敵は陸が全部防いでくれるという安心感があるからだろうか。たまに来る流れ弾に気をつければ比較的バスの中は安全だ。

 

 

 

 

 

 

―――やっぱりお前はすごいよ、陸。

 

 

 

こんななんでもかんでもできる天才と、なぜ俺が同等の戦力に考えられているのか全く不明だ。

 

 

俺には混乱を瞬時に収められるようなカリスマ性も、1人で事件が解決できるような実力も、難事件でもひるまない程の経験も無い。

 

 

 

 

それでも今ここまで来たらやるしか無いんだ。

 

 

 

 

 

 

ヒステリアモードではない、ただのEランク武偵の今の俺の実力で。出来る限り。

 

 

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか。


珍しく1話まるまるキンジside。原作と似たような書き方になってしまいました。



でも少し展開が違うのでそこを楽しんでいただけたら良かったです。


やっと始動したバスジャック。今後の展開も考えてありますので、次話もぜひ御覧ください!



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