緋弾のアリア――碧き守護者――   作:メルチェ

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大変お久しぶりです。めるちぇです。


もし更新を待ってくれている方がいたらとてもうれしいです。


サラッと更新させていただきます。


19.平和ボケ

陸side

 

 

「貴方本当なら重症なんだからね?ICUにまだいるような怪我だったんだからね? 何かあったらすぐくるのよ?」

「分かってますってば!」

 

 

 

翌日。

 

 

やっと退院できる事になった俺は病院の入り口で矢常呂先生に捕まっていた。

 

 

心配してくれてるのは分かっているけどなにぶん距離と圧がすごい。

無茶なことは(多分)しないので少し離れて下さい。

 

 

 

「ではお世話になりました」

「気をつけるのよ」

「はい」

 

 

 

一礼して武偵病院から遠ざかる。

 

昨日の夜、あかり達も無事に夾竹桃を逮捕したと連絡があった。後輩達は見事作戦をやり遂げたらしい。先輩としてここは何としても『武偵殺し』を逮捕しなければいけなくなったな。あと、俺を襲って来た犯人も。

 

 

「陸!」

「アリア」

 

 

考え事をしながら歩いていると前からピンクのツインテールが。

 

すごいスピードで走って来て、ドン!っと俺に突進してくる。

 

 

 

いや、俺は支えられるからいいけどね?キンジとかにしたら吹っ飛ぶ勢いだったからね?気をつけようね?いや、マジで。

 

 

 

「退院おめでとう! 元気になったみたいでよかったわ」

「ありがとう。今日の夜はこないだできなかったから祝勝会でもするか?」

「うーん…それは今度にしましょ」

 

 

 

アリアが微妙な顔をした。

 

まあ、まだ『武偵殺し』を捕まえたわけでもないしな。勝ったとは言えないか。

 

 

 

「でも陸の退院祝いはするわよ! バカキンジに作らせるわ!」

「え? アリアが作ってくれるんじゃないの?」

「あ、アタシとレキは装飾係だからいいのっ」

「ふっ。なんだよそれ」

 

 

 

 

顔を赤くして慌てているアリアに笑みをこぼす。

 

 

アリアに料理では期待してないけどね?何回作らせても炭ができるんだもんなぁ。

 

 

 

でも俺の戦妹(アミカ)やっぱり可愛いわ。

 

 

頭を撫でながら笑っていたら更に真っ赤になって怒られた。

 

 

 

 

 

「ただい___どうゆう状況?」

「なっ!? 何盛ってるのよ!エロキンジ!!」

「ち、違うんだ!! これは誤解で!」

「キンちゃんちに女が!? 泥棒猫! 今すぐ出て行ってー!!」

「うわ!? ちょっとキンジ!なんなのよこの女!!」

 

 

 

お菓子やら何やら買って寮の自室に帰るとそこはもうカオスだった。

 

 

ズボンにスウェットという楽な服装のキンジが白雪を押し倒している。しかも白雪の服が結構乱れている。

 

 

今までの様子からみてキンジが自分から迫るわけがないのはわかっているので誤解はしていない。

 

 

だが何がどうしてそうなった?

 

 

 

「アリアにいきなり『料理しろ!』って言われて、俺まともなもん作った事ねぇから白雪に電話したんだよ。で、料理教わろうと思ったらこっちにきちまって…こんな事に」

「そうか」

「わかってくれたか!」

「まぁ、事情は分かったから取り敢えずそこからどいたほうがいいと思うぞ?」

「___!!」

 

 

 

隣で恥ずかしさに燃えてるアリア火山が噴火寸前です。

 

はい、どーどー。

 

 

 

キンジが恥ずかしさからとアリアの怒り具合をみて顔を真っ赤にしながら青ざめるという器用なことをやってみせた。

 

 

そして白雪の上からパパっとどき、端の方に避難していく。

 

 

「私、き、キンチャン様になら何をされてもいいよ!」

「キ、キンジ…このっ!!」

「だから誤解だーー!!白雪も黙れ!頼むから黙っててくれ!」

「そ、そうだよね…。妻たるもの夫の3歩後ろを黙って着いていくべしだよね!」

「ちっがぁーーう!更なる誤解しか生まない発言をするな!」

「つ、妻ってあんたたちそーゆー関係…!?」

 

 

 

ダメだ。カオスが解消されない。そろそろ白雪の発言により慌てふためくキンジと、アリアの地団駄(怪獣)によって沈みゆく床が本格的に可哀想になってきたので助け舟を出すとするか。

 

 

「白雪ー、今日は俺の退院祝いで美味いもん作ってくれるって聞いたけど?」

「はっ!そうだった!りっちゃん退院おめでとう!本当によかったよ!」

「おー。ありがとな。と、言うことでアリアにもぜひ料理を仕込んでくれ」

「「え?」」

 

 

戸惑いを見せるアリアと白雪をぽいっとキッチンに放り込む。

 

 

「ちょっと陸!?私は料理できないって…!」

「スーパー家事マシーンの白雪がいればお前でも作れるって。アリアの美味しい手料理食べたいなー?」

「うっ。…不味くても美味しく食べなきゃ風穴だからね!」

 

そんな理不尽な話ある?もう美味しい(強制)しかないじゃん?

 

 

「りっちゃん!こんな泥棒猫と一緒に料理なんて…!」

「お前しか頼れる人はいないんだ白雪。頼む!あれもつけるからさ(コソッと)」

「任せて!美味しい料理を作るよ!」

 

 

キンジの寝顔写真(賄賂)により平和は保たれた。許せキンジ。

 

 

 

「あ、ちなみにだけど」

「「??」」

「武器を持ち出すほどの喧嘩をした痕跡が見られたら1週間お前らと口聞かないからよろしく」

「「!!」」

 

 

 

2人が慌ててこちらを振り返った。結構本気だから喧嘩するなら取っ組み合いまでにしとけよー。

 

 

「よし、じゃあ行くかキンジ!」

「いや、どこに?」

「ちょっとお前に話があるんだわ。ちょっとそこまで」

「?まぁいいけど」

「じゃあ出かけてくるな。1時間くらいで戻ると思うから!」

「「い、いってらっしゃーい…」」

 

ぎごちない笑顔で仲良く(装って)手を振る2人を見て笑いが込み上げできた。あいつら意外と相性いいとおもうけどな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、話ってなんだよ?」

 

 

学園島内の公園にて。夕焼け色に染まった太陽が地平線の向こうにゆっくりと沈んでいく。そんな時間帯。

 

公園のベンチに腰をかけても話し始めない俺にキンジが痺れを切らしたように話しかける。どう伝えようか迷ったけど、でもこいつにははっきり言った方が伝わるよな。

 

 

「俺を襲ってきた相手は武偵殺し本人じゃない」

「?まぁ、奴はかなり悪質だが、乗り物ジャックしかしてないしそうだろうな」

「問題はやつに仲間がいることじゃない。俺が完全に不意打ちを食らったってこと」

「それって…」

 

 

一応俺はSランク武偵であり、静嵐なんていう二つ名ももっている。『ランクオーバー』などと呼ばれてSランクの中でもそれなりに強い自信はある。

 

その俺が不意打ちを喰らったってことは、あの時の相手はやろうと思えばあの場にいた全員を殺すこともできたわけだ。それをしなかった理由はただ一つ。そう。

 

 

「あくまで俺だけを狙って攻撃してきた。そしてあの時のあの状況下でうちの鑑識科の検証でも物的証拠が出ないとなると犯人はーーー超能力者」

 

 

キンジがごくりと唾を呑むのがわかった。俺が不意打ちを喰らうレベルの超能力者。武偵ならばSランクは確定の強者だ。そして俺はーーーその相手に心当たりがある。

 

 

「やつは武偵殺しの仲間かもしれないしそうじゃないかもしれない。俺たちが他校や地元警察と共闘(チームアップ)することがあるように犯罪者たちもその場限りで協力することもある。武偵殺しがバスジャックした現場で強襲したことを考えれば()も一緒に仕掛けてくる可能性は高いだろう。いつ、どこでかはわからないが、乗り物ジャックという点は変わらないだろうからお前も十分注意をーーー」

「ま、待て待て!待ってくれ!」

「なんだよ?」

 

 

キンジが慌てたように声を荒げる。

 

これからが重大な話だってのに。何か分からないことでもあったのか?

 

 

「いや、バスジャックが終わったばっかりでなんで次とかって話になるんだよ?そもそももう仕掛けてこない可能性だってあるだろ!」

「ーーーねぇよ」

「っ」

「キンジは前は強襲科にいたんだよな?探偵がに移ってから平和ボケしちまったのかよ?武偵殺しは愉快犯だぞ?あいつは俺たち武偵をどうやって殺すかって言うゲームを楽しんでんだよ。お前だってゲームとかしてさ、僅差で負けたらくそぉー!もう一回!ってなるだろ?それと同じだよ」

 

 

目の前のキンジが愕然とした様子で言葉を飲む。

 

こいつはチャリジャックで武偵殺しの愉快犯っぷりを体感してるはずだ。それなのに何故そんな平和ボケした意見を言える?少し考えればわかることだろう。あまり本人に無理強いするのも、と思ったがやっぱり。

 

 

「キンジ、お前、自由履修の頻度増やせ。それか放課後に俺が直接訓練つけてやる」

「なんでそんな話に、」

「お前は自分から目を逸らすあまり武偵として事件の先を読むことからも目を逸らしてる。お前の頭は悪くないはずだ。逃げてばかりいないでちゃんと考えろ」

「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!」

「お前のその体質(ヒステリアモード)はそんなに忌み嫌うものじゃないだろ。うまく利用できれば多くを救える力だ」

「!? どこでそのことをーーー調べたな?」

 

 

普段から目つきの悪いキンジがさらに目を細めて詰め寄る。

 

進んで使いたいと思えるような発動条件(トリガー)ではないだろうが、必要な時にはうまく使えばいいだろうに。それもまた一つの大きな能力だろう。

 

 

 

「俺は各国を飛び回ったおかげで結構機密情報に触れる機会も多くてな。遠山キンジーーー遠山の金さんの家系で代々ヒステリアモードと呼ばれる特異体質を受け継ぐ、遠山金叉の息子」

「父さんのことまでーーーお前なんなんだよ。機密情報ってなんだよ!それと父さんと何か関係があるのかよ!」

 

 

 

 

父親のことはともかくヒステリアモードは推理でわかる範囲だ。始業式のチャリジャックの時のキンジを見ればな。

 

突然人が変わったように強くなり発言にも変化がみられる。直前までそのような兆候が見られなかったことから何かしらの発動条件(トリガー)があり、それがあの場で発動されたことになる。キンジにはSSRの適応もないし超能力による身体強化ではない。そしてあの場で薬剤や注射のようなわかりやすいドーピングもかけていなかった。と、なれば遺伝レベルの体質による身体強化。あの時キンジは跳び箱から出てきた瞬間に人が変わった。となれば発動条件(トリガー)は危機的状況か密閉空間もしくはーーー女性関係。そしてチャリジャックをされた時でもなく、跳び箱の上段が飛んで解放空間だったにもかかわらずあの場で発動したということは必然的に女性関係に絞られるわけだ。

 

あとは校内で情報を集め、キンジが女性を苦手としていること、Sランク武偵として活躍しているときの言動について情報が得られれば裏付けも取れる。あとは俺の情報網を使っていろいろ探らせてもらえれば実家のことや父親のことでも確証が得られるわけだ。遠山金叉がキンジの父親ということはやはり父さんが言ってた友達の息子というのがキンジで間違いないだろう。

 

 

 

「まあ今はその話は関係ないんだ。ともかく武偵殺しは絶対にまだ事件を起こす。大なり小なりかかわった事件を1つ一緒に解決するといったよな?この事件はまだ終わらない。チャリジャックにキンジが普段なら乗る予定のバスで起きたバスジャックお前が今度の標的にされていることは十分考えられるんだからな。とにかくそんな平和ボケした考えでいつまでも事件から目をそらさずちゃんと訓練をしろ。今回俺個人を狙ったやつの実力を考えればもしもの時に俺が守ってやるとは言い切れないからな」

「…関係ないってなんだよ」

 

 

うつむいたキンジが静かにそうつぶやく。

 

 

 

「俺の父親の話だぞ。なんで息子の俺が知らなくて他人のお前が知ってるんだよ!何をつかんでるのか教えてくれてもいいだろ!!」

「悪いがまだ言えない」

「なんでだよ!!」

「時期じゃないっていうのもあるが俺には守秘義務がある。いくら遠山金叉の息子でも現段階でいえるのはここまでだ。それともお前---国一つ的に回す覚悟あるのか?武偵殺し(愉快犯)一人と向き合う覚悟もないのに?」

「っーーーー!クッソ……わーったよ!今は聞かないでおく。お前がそんな奴じゃないのは知ってるがヒステリアモードの件は黙っておけよ」

「もちろん。俺は人の秘密をペラペラしゃべるような真似はしない」

「…ならいいけどよ」

「キンジ…ごめんな。いろいろ言っちまって…。言えないことも多くてさ」

 

 

俺はキンジに頭を下げた。少し焦って言い過ぎた自覚はある。まさかあいつが来るとは思わなくて気が立ってたんだな。

 

 

「でも目をそらさないでちゃんと考えてほしい。友達だと思ってるからこの事件を一緒に無事に解決したいんだ。考えておいてくれるか?」

「…ああ」

「よかった。じゃあマンションに戻ろうぜ。アリアと白雪が待ってるはずだ」

「…食えるものができてるといいな」

「白雪もいるし大丈夫だろ。うん」

 

 

 

少しだけ気まずい空気を残しながらも、軽口をいいあってその日はマンションの俺たちの部屋に戻った。白雪先生に料理を教わったアリアは何とか食べれるレベルの料理が作れるようになり、俺も一安心したのだった。あ、ちなみにマンションの部屋をくまなく見たけど武器を使用した痕跡は見られなかったな。よかったよかった。

 

 

事件発生のカウントダウンはすでに始まっている。俺も準備をしていろいろと備えなければいけない。来るその日に。

俺も、キンジも心から楽しめたとは言えないが、それでも十分楽しい思いをした退院祝いだった。

 

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